~下衆の語る言葉の効果~
「じゃーん!どうです!?取った瞬間見えましたかぁ!?」
そう言う瞬鬼に対して、博一は怒りに身を任せ、鎖の先にある分銅を叩きつけその勢いを残した状態で半回転しながら鎖の巻きついたもう一方の腕で瞬鬼を殴ろうとした。
しかし大振りのパンチが当たるはずもなく拳は空を切り、勢いのまま膝を突いてしまった。
そんな醜態を晒した博一に母親の首から流れる血を飲みながら、瞬鬼は声をかける。
「いやはや人間というのは不思議なものですねぇ」
「自分とは関係がない人間が死んでここまで怒ることが出来るとは……」
語りかける瞬鬼は後ろに曲げた足を治し、何度も飛びかかる博一を避け続けていた。
「私には親子の愛も、他を思いやるという事も、理解出来なかったんですよぉ……よろしければ教えてくださいますかぁ?」
その言葉を聞いた博一は腕に力を入れ殴りかかる。
しかし瞬鬼はその一撃を避け、膝を突いた博一を思い切り蹴りあげた。
蹴り上げられた博一は身体をそりながら吹き飛ばされる。
「ちなみに……」
「別にお母様の血を飲まなくても再生ぐらいならまだ出来ましたよぉ」
瞬鬼がそう言った直後、我鬼が瞬鬼に殴りかかる。
しかしその拳は少々足が地面にめり込みみつつも、拳を捕まえられてしまい有効打にはならなかった。
「さすが!恐ろしい力ですねぇ!私は確かに足の方が力があります……しかし一応私も鬼ですので最低限の腕力は持ち合わせておりますよぉ?」
その瞬間、我鬼は拳を戻そうとするが瞬鬼はそれよりも早く我鬼の拳を握ったまま大きく後ろへ引き付け吹き飛ばした。
「はぁ……ところで貴方々、私と会話はしてくださらないのですかぁ?」
それに対し、博一と我鬼は同じ言葉を返す。
「「お前みたいな下衆と会話をするための言葉はねぇんだよ!!」」
そう言い放ち、博一は我鬼の腕に鎖を巻き付け、投げてもらうことで速度を上げ瞬鬼の鳩尾に拳を打ち込んだ。
さすがの瞬鬼もそのスピードには対応出来ず吹き飛ばされる。
速さが売りの瞬鬼はその速さを確保するために防御面は脆いためその一撃は致命傷となった。
追い詰められた瞬鬼はあるものを見つけ、笑みを浮かべる。