熱の空野さん
私「着いた…けど、本当ここで合って…る?」
着いた場所は、お世辞でも綺麗とは言えない程、ボロボロの二階建てアパートだった。
私は、先生の教えてもらった住所をもう一度検索してみたけど
私「やっぱり、ここみたい。」
ナビは、ここを指している。
私「取り敢えず、201号室201号室っと」
空野さんの部屋に番号に向かった。
本当にここに空野さんがいるの?
私は半信半疑で201号室のインタンホーンを押した。
ピンポーン
「…。」
部屋から応答は無かった。
もう一度鳴らした。
ピンポーン
「…。」
でも、やはり応答は無い。
私「やっぱり、先生間違えたんじゃ…。」
私は、先生にもう一度住所を聞こうと電話かけようとした時っ
ガタッ
私「ん!?」
部屋から物音がした。
私は、もう一度インターホーンを鳴らした。
ピンポーン
すると今度は、すぐ
ガチャ
鍵が開く音の後にドアが開いた。
やえ「はい…。」
私「こんにちは?」
やえ「はぁ?な、んで…?はぁっ。はぁっ…。」
そこには、凄く辛そうに立っている空野さんがいた。
それに私がここに居るを凄く驚いていた。
私「ちょ、だ、大丈夫なの?」
やえ「何しに、はぁっ。はぁっ…来たの?はぁっ。はぁっ。はぁっ…。」
しかも、息も荒い。
私「先生の代わりにお見舞いに。これ、先生からの差し入れ。」
やえ「そっ。はぁっ。はぁっ…。どうも。」
と先生からの差し入れを受け取りドアを閉めようとする空野さん。
私「ちょっ、待って!」
私は、急いで閉まるドアを止めた。
やえ「はぁ!?な、はぁっ、何すんっ」
私「えっ!?ちょっと!!!」
立つのもやっとの空野さんが倒れそうになり、私は急いで空野さんの身体を支えた。
私「大丈夫!?」
やえ「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」
身体が熱い!!
私は、空野さんを布団まで運んで寝かせた。
近くにあった体温計を見つけ体温を測った。
ピピピッ!
私「え?39.8度!?」
空野さんの高熱に私は、驚いてしまった。
急いで買ってきた冷えピタをおでこと脇に貼る事にした。
やえ「冷たっ!」
私「我慢して。」
冷たがる空野さんをお構い無しに貼った。
私「後、スポドリ飲んでっ。」
やえ「いらない…。」
私「駄目だよ。飲まないと脱水になっちゃう。ほら、飲んで。」
と空野さんを起こし蓋を開け渡した。
空野さんは、渋々飲んでいる。
私「後は、良く寝る事。」
飲み終わった空野さんをまた横にさせてタオルケットを掛けた。
やえ「あ、ありがとうっ。はぁっ。でも、もう、はぁっ、帰って大丈夫だからっ。はぁっ。」
私「分かった。でも、空野さんが寝るのを確認したら帰るから。だから、安心して寝て。」
空野さんは、私に看病されるのは嫌がっているのが分かる。
でも、そんな空野さんを置いて帰れるわけもない…。
空野さんは、少ししてから寝始めた。
私は、空野さんの氷枕など交換したり汗を掻く空野さんの顔を拭いたりして看病した。
空野さんが起きた時、私がまだ居る事にまた嫌がると思う。
それでも…嫌がられても
私は、少しでも良くなるまで居るつもりだ。
お母さんにも遅くなると言ってある。
だから、夜遅くなっても空野さんが少しでも良くなるまでは…。
それが私の…移させてしまった私の責任でもあるから。
私は、空野さんが起きた時ようにお母さんに教えて貰ったお粥を作り始めた。
それにしても、空野さん…
凄く細かった。
ちゃんと食べてるのかな?
作り終え、空野さんが起きるまで空野さんが寝ている横に座った。
空野さんの顔を見ると荒い息が少し落ち着いたようだった。
ホッ
私「良かった。」
私も少し安心した。
安心して改めて、空野さんの部屋を見た。
家具は、あまりなくシンプルだった。
それに…
仏壇だろうか…
小さな写真立てに素敵な笑顔な綺麗な女の人が飾っていた。
私は、近くまで行きその女性の写真を見た。
空野さんを大人にしたような綺麗な女性だった。
多分これは、空野さんのお母さんに違いない。
お母さんの写真立ての後ろには、仏壇があるって事は空野さんのお母さんは、この世に居ないって事なんだろう…。
だから、空野さんは一人暮らしなんだ。
本当に私はなにも知らなかった。
でも、あれ?
お父さんは?
やえ「お…母さん。」
ビクッ!
空野さんの声がしたので驚いて空野さんを見るとうなされていた。
私「そ、空野さん!?」
やえ「お母さん…」
私「えっ。。」
空野さんは、お母さんと呼び涙を流していた。
私「…。」
私は、空野さんの涙をティッシュで拭いた。
やえ「お母さん…行かないでっ…。」
何故だろう…。
いつも元気でムカつく空野さんがこんなにも寂し人に見えて、苦しくなった。
私は、空野さんの手を繋いだ。
そうしたら、空野さんは落ち着いのかうなされなくなった。
落ち着いた空野さんに安心して私は手を繋いだままいつの間にか眠ってしまった。
やえ「ねぇ。ねぇえ。」
私「んっ、ん?あれ、私寝てた?」
やえ「はぁ。看病してる最中に寝る何てアナタらしいね。」
とため息混じりで言う空野さん。
そんな空野さんを見た私は
私「空野さん、元気になったの?熱は?」
と質問攻めをしたり
やえ「まだ、熱はあるけどだいぶ下がったみたい。何か、色々してくれたみたいで…あっ…あり…どうもね!」
ありがとうを言うのが恥ずかしかったのか目を逸らしお礼を言う空野さんに少し可笑しくなり笑ってしまった。
私「ふっwはいはい。どういたしまして。」
やえ「あ、のさ…看病してくれたのは分かったんだけど…何で私達、手繋いでるの…?」
私「えっ!あっ!!」
手を繋いでた事を忘れていた私は、慌てて手を離した。
私「こ、これはっ、空野さんがうっ!!」
やえ「う?」
私「空野さんの体温を測るために繋いでただけだよ。そしたら、私も寝ちゃって。」
本人にお母さんの事でうなされていたからって空野さんに正直に言うと多分空野さんは相当嫌がると思った。
だから、嘘をついた。
やえ「ふ〜ん。そっ。てか、アナタ帰らなくて大丈夫なの?」
私「え?」
私は、急いでスマホの時間を見た。
私「20時!?」
それにお母さんから、沢山の着信があった。
私「あ、私、電話してくる。」
そう言い、家の外に出てお母さんに電話した。
私「も、もしもしっ!お母さん!?」
お母さん『ひなた!!アンタ、何時だと思ってんの?何回電話しても出ないしっ!』
お母さんが電話出るなら、怒っていた。
そりゃ、そうだ。
遅くなるとは、言ったけどここまで遅くなるとは思っていない上に電話に出ないのだから。
私「ご、ごめん!!友達の看病してる最中に私まで寝ちゃって…。ごめんなさい。」
お母さん『看病最中に寝るなんて、アンタは…。はぁ。で、お友達は良くなったの?』
私「うん。まだ、熱あるみたいだけどだいぶ下がったみたい。」
お母さん『そう。良かったわね。』
私「うん。」
お母さん『で、今から迎えに行くから住所教えて頂戴。』
私「ありがとう。」
私は、お母さんに空野さんの住所を教え迎えに来てもらうことになった。
電話を終え、家に入るなり空野さんが
やえ「お母さん、怒ってた?」
と心配そうにしている。
私「ううん。怒ってなかった。」
やえ「そう。」
私「で、ここに迎えに来てくれるって。だから、もう少しここにいさせて。」
やえ「勝手にどうぞ。私は、もう一眠りするから迎えきたら、玄関の所に鍵があるから鍵閉めたらポストに入れといてもらえる?」
私「分かった。」
と空野さんは、また眠った。
何だか今日の空野さんは、熱のせいなのか優しく感じた。
私は、お母さんが来るまでスマホをいじりながら待って居ると
ピンポーン
インターホーンのチャイムが鳴った。
私「え?お母さん?」
でも、部屋番号まで教えて無いし、お母さんにしては来るのが早すぎる。
て考えていると
ピンポーン
またチャイムが鳴った。
空野さんは、起きない…
ピンポーン
またまた、チャイムが鳴る。
寝ている空野さんを起こしたくない私は、玄関に向かった。
ガチャ
私「はい?」
「え…?誰…?」
そこに居たのは、小学生ぐらいの女の子とそのお母さんなのか女性の人が驚いたように聞いてきた。
私「え?あ、私?私はっ」
「お姉ちゃんはっ!?」
私の話を遮り「お姉ちゃんは?」と聞く女の子。
私「え?お姉ちゃん?」
やえ「誰か来たの?」
話し声で起きた空野さんに気づいた女の子が
「お姉ちゃん!!!」
と言い空野さんに抱きついた。
やえ「え?つばさ?何で?」
この人達は、空野さんの知り合いらしい。
「やえちゃん、ごめんね。」
やえ「たえさん!?」
空野さんは、女の子をつばさと呼び、女の人をたえさんと呼んでいた。
たえ「やえちゃん、風邪ひいたから会えないのつばさに伝えたのだけれども、つばさがどうしてもお姉ちゃんの所に行くって言うもんだから…。」
やえ「そうですか…。すいません、迷惑かけて。」
と空野さんがたえさんに頭を下げている。
たえ「迷惑なんて思ってないわよ。貴女達は、私の姪っ子なんだから。やえちゃんも辛ければちゃんと言ってよ?」
どうやら、この女性は空野さんの叔母さんらしく
そして、この子…このつばさちゃんは、話から聞くと空野さんの妹さんらしい。
でも、空野さんにあまり似てないような…
つばさ「お姉ちゃん、風邪大丈夫?」
やえ「うん。だいぶ良くなったよ。」
つばさ「良かったぁ。凄い心配したんだよ。」
やえ「心配させてごめんね。」
空野さんは、つばさちゃんの目線に合わせて申し訳ない顔をしている。
それに見た事もない凄い優しい表情をしていた。
つばさ「ううん。お姉ちゃんが元気になったなら良いの。」
やえ「ありがとう、つばさ。」
つばさちゃんを見る空野さんはとても優しい目をしていた。
つばさ「うん!」
やえ「たえさんもわざわざありがとうございます。私は、もう大丈夫です。つばさに移る前に。」
たえ「え、えぇ…。」
と困った表情をし、つばさちゃんを見る空野さんの叔母さん。
つばさちゃんの方を見ると下を向いていた。
やえ「つばさ。お姉ちゃん、元気になったけどまだ風邪をひいているの。だから、元気のつばさに移るような事あったら、お姉ちゃん心配で心配で寝れなくなっちゃう。そしたら、またお姉ちゃん風邪ひいちゃうかもしれない。」
つばさ「それは、嫌だ!」
やえ「うん。お姉ちゃんもつばさには、いつも元気でいてもらいたい。」
つばさ「でも、今週はお姉ちゃん家にお泊まりの日だもん…」
と言い大粒の涙を流すつばさちゃん。
正直、つばさちゃんの言葉を聞いて私は、心が痛くなった…
やえ「本当ごめんね…。お姉ちゃんもつばさと一緒に居たい…でも、分かって欲しい。つばさには、お姉ちゃんの風邪を移したくないの。」
つばさ「でも…お姉ちゃんと一緒居たい…。」
やえ「お姉ちゃんも同じ気持ちだよ。それに再来週月曜日、つばさの学校創立記念日で土日合わせて三連休でしょ?」
つばさ「え?うん…。」
やえ「お姉ちゃんの学校もたまたまその日お休みなんだ。ね?」
と急に私にふる空野さん。
それに再来週の月曜日は普通に学校はある。
だけど、空野さんはつばさちゃんのために学校を休んで一緒に居るつもりなんだとすぐ分かった。
私「うん。そうだよ。」
だから、私は空野さんに合わせた。
つばさ「そうなの!?」
やえ「そうだよ。だから、来週の金曜日学校終わったらお姉ちゃんつばさの事迎えに行くからそしたら四日間はお姉ちゃんとずっと一緒だよ。」
モヤッ…。
つばさ「本当?」
やえ「本当。その為にお姉ちゃんは、この風邪を早く治すから。つばさは、風邪ひかないように気をつけないとだよ?だから、今日はたえさんと一緒に帰りなね?」
つばさ「うん!分かった。でも、お姉ちゃんまた辛くなったら、すぐ言ってよ?私だって、いつも元気なお姉ちゃんに居てもらいたいもん!助けたい!」
やえ「分かった。辛くなったら、ちゃんと言うから。」
なぜだろう…
二人の会話を聞くなり
モヤモヤが止まらない。
つばさ「絶対だよ?」
やえ「うん。絶対!」
つばさ「それとそこの姉さん。」
と私の方を見て私を呼ぶつばさちゃんに私は驚いてしまった。
私「え?は、はい。」
つばさ「お姉ちゃんの学校のお友達ですよね?」
私「う、うん。そうだよ。」
つばさ「お姉ちゃんをお願いします。」
私「えっ!?」
やえ「ちょ、つばさ!?」
と言い頭を下げる、つばさちゃんに勿論驚いく私。でも、空野さんも同じく驚いていた。
つばさ「お姉ちゃん、いつも我慢するから。近く入れれば私もすぐ駆けつけられるけど…私が住んでる所は、お姉ちゃん家から遠いから…。それに今日お姉ちゃんの看病してくれてたみたいだから。だから、私が居ない間はお姉ちゃんをお願いします。」
とまた深々と頭を下げるつばさちゃん。
私「うん、分かった。私に任せて!だから、つばさちゃんは安心してね。」
そんな健気なつばさちゃんを私は安心させたかった。
つばさ「はいっ!ありがとうございます。」
たえ「私からもありがとうね。やえちゃんをよろしくお願いします。」
空野さんの叔母さんまでもが、頭を下げた。
私「大丈夫ですよ。私達、友達なのでっ!ね?」
私は二人を安心させる為小さな嘘を付き、空野さんに問い掛けた。
やえ「え、あ、うん。そうだよ。」
空野さんもまた、嘘をつき頷いた。
たえ「良かった。私も少し安心したわ。それで、お名前何て言うのかしら?」
そうだった。
名前を言い出そうとしたけど、結局言わずに終わったんだった。
私「あっ、えっと、私の名前はねっ。」
やえ「ひなたっ!」
私「え?」
やえ「ひなたって言うの。」
初めて、、、
初めて、空野さんに名前を呼ばれた。
ずっと、アンタやこの子だったから…
だから、初めて空野さんに名前を呼ばれて凄く嬉しくなってしまった。
たえ「あら、可愛い名前ね。」
つばさ「本当だねっ!ひなたお姉ちゃん、お姉ちゃんをよろしくお願いします!」
私「はい!」
私に空野さんを託し、たえさんとつばさちゃんは、帰って行った。
やえ「…。」
二人が帰って行ったのを見届けた空野さんは、無言で布団に向かって行った。
私「空野さん?」
そんか空野さんが気になり名前を呼んだ。
やえ「アンタにあの姿まで見られるなんて…。」
あの姿とは、多分つばさちゃんと接している姿の事を言っているのだろう。
確かに、学校でいる時と二人でいる時とはまるで違う空野さんの姿だった。
多分、つばさちゃんといる時の空野さんは素の姿なんだと思う。
それと私と二人でいる時も、あれも素の姿だろうけど…。
でも、そんなに見られたくない姿だったのか凄くガッカリした顔している。
私「つばさちゃん、空野さんの事大好きなんだね。」
やえ「まぁ、そりゃ、私はお姉ちゃんだし。」
私「いいね。姉妹って…。私も弟がいるけど凄く年の離れた弟で。半分しか血繋がってないんだ…。私のお母さん私が小さい頃に再婚してその義理のお父さんとの間の子なんだ。だから、ちゃんと私の事お姉ちゃんって思ってくれるのか不安なんだよね。 」
と私は、何故か空野さんには関係のない事ペラペラと話してしまった。
誰にも言ったこともないのに…。
やえ「お父さんが違くても、お母さんの子はには変わりないんだから、何も不安になる事はないんじゃない?」
私「え?」
まさか、空野さんがちゃんと返してくれると思わなかったから驚いた。
やえ「なに?」
私「ううん。そうだよね!不安になる事ないよね。」
やえ「当たり前でしょ!兄妹なんだから。」
私「ありがとう。あと、ごめんなさい。」
やえ「はぁ?何で謝るわけ?」
突然謝るの私に対して意味の分からないとばかりの顔をしている。
私「私のせいでつばさちゃんに悲しい思いさせちゃったから…。」
やえ「何でアンタのせいなのよ?」
私「だって、私の風邪が空野さんに移ってしまったから…あの事故のせいで////」
あの事故を思い出すと恥ずかしくなる。
やえ「別にアンタのせいじゃないし、それにあの事故だってアンタのせいって訳じゃないからっ!だから、その落ち込んでるの辞めて欲しいだけど?」
落ち込んでいる私の姿を見て言う空野さん。
私「でも…つばさちゃんのあの姿見たら…。」
やえ「あぁーもう。じゃ、今日の看病でチャラねっ!」
私「え?」
やえ「だから、今日看病してくれたでしょ!アンタに借り作るの嫌だったし、丁度いいしこれでチャラね。だから、もうこの話は終わり。」
私「でもっ!」
ブーブーブー
話の途中で私のスマホが鳴った。
画面を見るとお母さんからだった。
私「もしもし」
お母さん『着いたわよ』
私「分かった。今、行くね。」
と言い電話を切った。
私「お母さん、迎えに来たから…。」
やえ「うん。歩くの怠いから鍵閉めてポストに入れといてくれる?」
空野さんは、そう言うと私とは反対の方を向き布団に横になった。
私「うん。分かった。何か合ったら連絡してね。」
やえ「うん。」
私「じゃ、帰るね。」
やえ「うん。」
空野さんは、帰る私の顔を一度も見る事はなかった。
私は、空野さんに言われた通り鍵をかけポストに入れてお母さんの車に乗り帰宅した。
帰宅してからも私は、何故か空野さんの事ばかり考えてしまう。
空野さんの弱い所を見て辛くなったり、つばさちゃんに対する態度が違くモヤモヤしたり、初めて名前を言われ嬉しくなっあり、熱のせいでいつもより優しい空野さん…。
知らない空野さんを知れたけど
また、良く分からない気持ちか増えてしまった。