偽装恋人の始まり
それから私達は、教室に戻るまでお互い一言も話さないまま教室の前に着いた。
ドアに手をかけ、止まる空野さん。
私「どうしたの?」
気になり声をかけてしまった事に後悔したがそんな事お構いなしに話し始まる空野さん。
やえ「手出して。」
私「え?手?な、何でよ!」
と答える私を無視し、私の手を取る空野さん。
私「ちょ!な、なに…を////」
私の手を取った空野さんが私の指に絡み手を繋いできて私はテンパってしまった///
だって、恋人繋ぎなんてした事ないし////
やえ「皆んなの前では、私達は恋人のフリをしない怪しまれるでしょ!だから、皆んな前だけは私達は付き合ってるフリしないといけないわけ!分かる?」
テンパってる私なんてお構いなしに空野さんは勝手に教室なドアを開けた。
私「えっ、ちょっ」
ガラッ
朝のホームルームが終わり、一限目の始まる前で皆んなは、ワイワイしていたけど私達を見るなり皆んな一瞬にして静まりかえった…がっ。
男子「なー!本当にお前ら付き合ってんの?」
とクラスの男子が私達に問いかけで、クラスの皆んなが騒めき出した。
やっぱり、聞きにくるよね。
私だって、逆の立場だったら気になるもん。
私は、空野さんをチラッと見ると空野さんは私の手を引き、教卓に移動した。
やえ「見れば分かる通り、私達付き合ってるよ〜。」
と繋いだ手を上に持ち上げ、皆んなに見せつける空野さん。
「まじかよ〜。」とか「本当だったんだ。」とか「俺らの空野さんが〜」とか落ち込む男子がちらほら居る中、はなが私達の前に来た。
はな「ひなた。さっきは、疑ってごめんなさい。」
と私に頭を下げるはな。
私「だ、大丈夫だよ。気にしないでっ疑いが晴れただけ良かったしさぁ。」
疑いが晴れたのは、本当に良かったとは思っている。
はな「ひなた…。ありがとう。」
私「うん!」
はなと仲直りが出来て、私は嬉しかった。
これで、また普通に生活が送れると思っていた…のも束の間。
はな「でも、本当驚いたよ。まさか、ひなたと空野さんが付き合ってたなんて。何で、今まで黙ってたの?」
そうだよね…
私は、今…空野さんの偽装彼女なんだよね…。
嫌われてる理由を知るまで、空野さんの弱味を掴むまでとは思いながらも私は空野さんの言われた通りしないといけないとなると、憂鬱だ…。
私「それ…は…。」
やえ「言いづらかったんだよね…。」
と空野さんが困った表情をしてはなを見つめる。
さっき二人でいる時とは、まったく違く…。
いつもの喋り方で穏やかな顔で。
はな「なっ////何で?」
はなは、あの可愛い顔で空野さんに見つめられ照れてしまったのか頬を赤く染めた。
やえ「だって、私達…同性同士でしょ…。だから…。」
はな「そんなのっ!そんなの、今のこのご時世、そんな人沢山いるよ。気にしないでよ。さっき、クラスの女子、皆んなで話してたけど、私達ひなたと空野さんを応援しよって!だから、なんでも相談して何でも言ってね。」
と落ち込んでいる空野さんに必死て慰めるはな。
多分、これは何かの作戦なんだろうな…。
やえ「そう言ってもらえると嬉しい。皆んな、ありがとうっ!じゃ、一つだけいい?」
やっぱり。
はな「うん!なに?」
やえ「私、本当この子大好きなの〜。」
と言い空野さんは、私を自分の方に寄せ私の腰に手を回し抱き付き始めた。
私「ちょっ////」
あまり、こういうのに慣れたない私の事をお構いなしに話を続ける空野さん。
やえ「で、他の人に取られるのが心配で…。」
はな「わ、分かった。皆んなに空野さん達の事、伝えとくね!空野さんがひなたの彼女って知ったら、皆んなひなたに手出さないと思うからっ!」
えっ?
み、みんなにって?
学校中って事!?
空野さんが全部言う前にはなは、何かを察したのか変な事を言い出した。
やえ「それなら、安心だよ〜。これで安心だね?」
と私に満面の笑みを浮かべた。
二人きりでいた時は、笑顔何て見せなかったのに皆んなの前では、そんな嘘の表情も嘘の言葉出来るんだ。
本当、この人怖い人だ!
でも、私はこの人の言う通りに頷くしかない。
私「う、うん。」
やえ「皆んな、ありがとうねっ!」
とクラスにお礼を言うとクラスの皆んなは、
「頑張れ」とか「応援してるよっ」とか「羨ましい」とか色々、私達を祝福の言葉をくれた。
私は改めて空野さんは、人気者なんだと認識した。
やえ「それと〜乾くんっ!」
颯太「えっ?あ、はいっ。」
いきなり、乾くんを呼ぶ空野さんに驚いて敬語で返事をする乾くん。
やえ「正直、乾くんには感謝してるんだっ。」
え?
な、何を言い出すのこの人。
乾くんに感謝なんかする所なんてないのに何で感謝してるって、どう言う…。
颯太「えっ?」
乾くんも私と同じで意味が分からないのか困惑している。
やえ「乾くんのお陰で私達が付き合ってる事、公表できたんだもん。それがなかったら、今もコソコソ付き合ってたし…。いつ彼女が誰かに取られるかと思うと不安だったから…。だから、ありがとう!」
あぁ、そう言うことね。
空野さんは、私の人生をめちゃくちゃにする絶好のチャンスだったんだ。
私を誰の物にしないよう自分の物にして、私を破滅に追い込もうとしてるんだ。
そんな事される前に暴いてやる!
颯太「い、いや…。お礼言われる事なんて、俺…」
やえ「だから、もう二度とこの子を…」
私「ちょ、えっ?」
いきなり私の顎を掴み自分の方に向かせ親指で私の唇をなぞり横目で乾くんを見て
やえ「好きにならないでねっ?私の物だから。」
と言った。
乾くんは、私達の光景を見て頬を赤く染め頷いた。
他の人も私達の光景を見て、頬を赤く染めていた。
勿論、私もだ!
涼しい顔しているのは、空野さんただ一人。
キーンコーンカーン♪
皆んなに私は、空野さんの物だと更に認識させ終わったタイミングで一限目のチャイムが鳴った。
チャイムと同時に先生も入ってきて皆んな席に座った。
やえ「またねっ。」
と私の耳元で言い、空野さんも自分の席に座った。
私も自分の席に座った。
さっき起こった事が無かったかのように授業は始まる。
でも私は空野さんになぞられた唇が熱くて授業に集中出来なかった。
空野さんをチラッと見ると普通に授業に集中している。
何で普通にいられるのだろうか?
偽装恋人だと分かっても、私達は同性同士。
変な目で見る人だっているに決まってるのに何も思わないのだろうか?
本当に私の人生を壊せるなら、この人は何でもするのだろうか…。
皆んなに何言われても、私の人生を壊せるならって…。
何だろう。
何故かだんだんイライラしてきた。
そんな私は、ひらめいてしまった!
そう、そのひらめきは、
空野さんの本性を皆んなに見せつけてやろうと。
だから、その時までの我慢だ。
ヨシ!そうと決まれば、まず嫌われてる理由を早めに探ってやる!
恋人繋がりやら、ハグやらどんと来い!
っと思っていたのに…
ん?
んん?
あれ?
あれれ?
授業の間の休み時間の度に私の方に来ると思っていたけど、空野さんはいつも一緒にいる友達と楽しそうに話していた。
空野さんは、私の方に来る事なくあっという間にお昼休みが来た。
昼休みも空野さんは、私の方に来る気配もなく友達と購買に向かっていった。
私は、いつも一緒に食べている部活の子達の所に行こうと教室を出ようとすると
クラスの女子「猫宮さん、空野さんと食べないの?」
と朝の「私の物だからっ!」と発言したのにあれから全然絡んでない私達を気になり聞いてくるクラスメイト達。
そりゃ、気になるよね…。
私だって、この状況について良く分からないもん。
あっちが来ないければ、私は何も出来ない。
私「うん…。お互い、友達居るし。友達の時間も必要だから。」
やえ「でも、寂しいから私の時間もちゃんと作ってよ?」
私「へぇっ!?」
いきなり現れ抱き付いてきた、空野さんに私はめちゃくちゃ驚いた変な声が出てしまった。
やえ「ごめんごめんっ。驚いた?」
私「そりゃ、いきなり来たら驚くよっ。」
やえ「だって、寂しい事言うからさぁ〜。」
はぁ〜?
アンタがそれ言う〜?
クラスの女子「そうだよね。寂しいよね!お昼ぐらい一緒にいたら良いのに〜」
と私に言ってくるクラスの女子。
私「え?私っ!?」
クラスの女子「そうだよ〜。猫宮さんが友達の時間も大切って言うから空野さんが寂しそだよ?」
はぁ〜?
私のせいなの!?
やえ「でもっ、友達の時間は、大切なのは本当だよ。私も友達いるから、ずっと彼女ってわけにも行かないから、私は平気だよ?」
と笑顔で答える空野さんにクラスの子達は、「本当、優しいねっ!」とか「本当、心広い〜」とか「友達想いで彼女想いなんだね」とか色々と空野さんを褒めている。
イラッ!
私は、彼女想いじゃないし、優しくないってか?
ってか、別に偽装の彼女に何で優しくしないといけないのよ!
イライラしている私を分かったのか横目でニヤニヤする空野さん。
イライラッ!
この人、私がイライラするのを楽しんでるんだっ!
はぁー、超ムカつく!
本当この人、何なの!?
とイライラしていると
「ひなたー」
と教室の廊下側から私の名前を呼ぶ声した。
私「あ、ゆみ、さや、れいな!」
教室の窓から、顔を出す部活が一緒で仲の良い三人が私を迎えに来てくれた。
私は、三人の元に駆け寄った。
私「ごめん、遅かった?」
ゆみ「待ってても、なかなか来なかったから来ちゃったんだけどさぁ。来る最中、とんでもない噂聞いたんだけど、ひなた!アンタ、あの空野さんと付き合ってるって本当なの!?」
えぇ?
もう、広まってるの?
ゆみは、元気で楽しい子。
そして、こう言う恋愛系が大好きですぐ食いつく!
はぁ。
やだな…、仲の良い子には、知られたくなかったなぁ…。
私「あぁ、その事ね。」
あぁ…。
言いたくないなぁ…。
れいな「言いたくなかったら、無理して言わなくて良いんだよ、ひなた。」
私より背が高いれいな。
決して、私は小さくない。
私でも165センチは、ある。
でも、れいなは170センチもあってスタイルが良いし気が効く子だ。
だから、れいなは私が言いたくないのを察してくれたのか私の頭をポンポンしながら、笑って言ってくれた。
ゆみ「そうだね!ごめんねっ。いきなり聞いたりして…。」
と申し訳なさそうに謝るゆみ。
私「謝らないでよ、ゆみ。別に嫌だって訳じゃなくて…ただ…」
ゆみ「ただ?」
ただ、嘘をつきたくないんだよ…。
やえ「そーだよ。私達、付き合ってるよ。ね?」
と私達の会話に入ってくるなり、私の手を繋いでくる空野さん。
私「…う、ん。」
さや「ふ〜ん。そうなんだ。とりあえず、その手早く離してもらって良いかな?私達、お腹空いてるんだよね。」
さやはバスケの事しか興味がなく、面倒な事は、避けるタイプの子だ。
そんなタイプがバラバラな私達4人は、バスケが好きって共通点がありとても仲の良い友達だ。
やえ「あっ、ごめんごめん。寂しいけど、行ってらっしゃい。」
と手を離し、手を振り笑顔で見送る空野さん。
私「う、うん…。」
私は、三人といつもの場所に向かった。
向かう最中もチラッと空野さんを見ると、もう私を見ずに仲の良い子達と笑顔でご飯を食べ始めようとしていた。
イラッ!
な、何なの本当っ!
さっき、寂しいって言ってたじゃん!
嘘だって分かってるけど、ムカつく!
少しは、寂しいふりしたっていいじゃんよ!
とムカついていると
ゆみ「なに、ぶつぶつ言ってんの〜?」
とゆみがいきなり声をかけてきた。
私「えっ!あ、私何か言ってた?」
さや「うん。言ってた!」
ヤバッ!
イライラしすぎて、声、出てたみたい!
気をつけないと…
私「そ、そうなの?な、何言ってたんだろ?」
と誤魔化した。
ゆみ「ねぇ。本当に空野さんと付き合ってたんだね。めっちゃ、驚いたよ!」
ゆみは、目をキラキラさせている。
私「う、うん。」
ゆみ「同性カップルって、正直驚いたけど。ひなたなら、私応援するからね!それに、相手はあの空野さんだよ?安心だしだよ〜。」
ゆみ、あの人は最低最悪の性悪女なんだよっ!
て言ってやりたい。
私「そ、そう?」
さや「…。」
ゆみ「彼女だからって、謙遜しちゃってっ!てかてか、空野さんに何て呼んでるの?やえっ♡とか呼んじゃってる感じ?」
とニヤニヤしながら、聞いてくる。
私「いや、普通に空野さんって呼んでるよ。」
ゆみ「えぇぇー!なんか、堅苦しいくなーい?」
だって、偽装彼女だもん。
そんな、名前で呼べるわけないよ。
ゆみ「じゃ、空野さんに何て呼ばれてるの?」
私「え?空野さんに?うんっと…」
ってあれ?
空野さんに何て呼ばれてるんだっけ?
と今日の出来事を思い返すと『アンタ』、『貴女』、『この子』って言われたけど…名前では、一度も呼ばれてない!
ヤバい。
な、なんて言おう?
私「う、んとね、空野さんも猫宮さんって呼んでるよっ。」
ゆみ「え〜、なにそれ〜。何で苗字呼びなの?」
何でって言われえも…
私「つ、付き合い始めたばかりだから、まだ名前で呼び合うの恥ずかしいねって。」
ゆみ「そうなの!?それなら、しょうがないかっ!てか、今何ヶ月なの?」
私「い、1ヶ月」
ゆみ「1ヶ月か〜。じゃ、まだまだ初々しいね。じゃさ、じゃさ、まずは、ひなたが空野さんの名前を呼んだら?そしたら、空野さんも名前で呼ぶんじゃない?」
私「む、無理無理。そんな、私にはハードル高いよっ!」
ゆみ「そうかな?」
私「そうだよ!」
大嫌いな私に名前で呼ばれたら、空野さんの冷たい表情が目に浮かぶ。
ゆみ「じゃぁさ、じゃぁさっ!」
れいな「こら、ゆみ質問しすぎだよ。もう、終わりにしないとひなた疲れちゃうよ。それじゃなくても、今日二人が付き合ってるの皆んなで広まって疲れてるだろうし。」
れいなにまた私のこと察したのか、ゆみに注意した。
ゆみ「あ、またやっちゃったね…。ごめんね。」
私「ううん、大丈夫だよっ。」
と私達は、他愛のない話をしてお昼寝を食べた。
お昼寝休みも終わり教室に戻った私を見ても何も言ってこない空野さん。
あれから、空野さんが私の所に来ず放課後を迎えた。
私は、部活動があるから仲良く友達と話す空野さんに声もかけず、荷物を持ち部室に向かった。
てか、私が声かけることないし。
本当に付き合ってもないし、空野さんに嫌われてるんだから、別に私が空野さんにする事ない。
私は空野さんから来るのを待ってれば良いわけだし。
だとしても、なんかムカつく!!!
一応皆んなには付き合ってるって事になってるんだからさぁ!
バイバイとか言ってくれても良くない?
なんか、ここまで素っ気ないと何かムカついてくるんだけどっ。
私「はぁ。」
やえ「ちょ、ちょっと、はぁっ、はぁっ」
私「えっ?」
やえ「何で黙って行くのさ!はぁっ、はぁっ」
と息を切らし私の腕を掴む空野さん。
私「何でって…。てか、何でそんなに息切れしてんの?」
やえ「アンタが黙って部室に行くからでしょっ!私、放課後は用事あって急いでるのにアンタは、黙って行くし!急いで体育館に行っても誰もいないし。それに私、女バスの部室どこか知らないから、知ってそうな人に聞いたのにアンタまだ、部室にまだ来てないし!で、色々探し回ってやっと見つけたわけっ!分かる?」
と眉間にシワを寄せ怒る空野さん。
私「そうなの?ごめっ!」
いやいや、私、謝る事無くない?
別に悪い事してないし!
私「で、何で私の事探してたの?」
やえ「アンタと偽装恋人なったのに、アンタの連絡先知らないと皆んなに変に思われるから、今のうちに聞いとかないとって!」
そう言うとポケットから、スマホを取り出す空野さん。
そう言う事ね。
私「そっ。」
私は、連絡先を空野さんに教えた。
やえ「今、私の連絡先送ったから!じゃ、私帰るね。」
と言い帰って行った。
本当それだけの為に私を探してたんだ…。
この装恋人を続けるためだけに。
私「…。」
私は、何とも言えない感情のまま部室に向かい着替えて体育館に向かった。
部活でも案の定、私と空野さんの話が出た。
その場は、ゆみとれいなが分かりに説明してくれたお陰で私は、何も言わずに済んだ。
部活の人達も「頑張れ」「応援してるね」とか言ってくれ無事その日は、終わった。
私は、これから偽装恋人をしないといけないと思うと憂鬱で仕方なかった。