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#94 砲撃

「どうだ、オレンブルク艦隊の動きに変化はあるか?」

「依然、我々に接近中であります」

「カルヒネン准尉、どう思う?」

「数に任せて、我々を圧迫しようというのでしょう。おそらくは、このまま戦闘に入るつもりかと思われます」


 我が空中戦艦ヴェテヒネンは今、極度の緊張状態にあった。

 オレンブルクのやつらが10隻のサラトフ級を伴い、スァリツィンクス郊外の領空に侵入してきた。この空中戦艦の気嚢(きのう)に描かれた青色の帯を見ても、やつらは退去しようとしない。通常ならば、この青帯がやつらに恐怖心を与えて撤退に追い込んできたが、今度ばかりは数が多いためか、今までの脅しが通用しない。


「やむを得ない。我々の力を思い知らせるだけだ。砲撃戦用意、総員、戦闘配置! カルヒネン准尉も、直ちに持ち場に戻れ」

「はっ!」


 副長の命を受け、私は敬礼して艦橋の後方にある砲撃室のあるゴンドラへと向かう。頼りない布製の管状の通路を抜けて、砲撃室に入る。


「砲弾を備えーっ! 火薬袋もだ!」


 キヴェコスキ兵曹長が2人の砲撃手に指図して、砲撃準備に備えている。相手は主砲を2門も備えた艦で、しかもそれが10隻だ。一方、我々は一隻、砲も一門しかいない。

 幸いなことに、我々は風上側にいる。数の劣勢を補うには、まずはこの風上であることを活かし、射程圏外からの砲撃でできるだけ敵を減らすしかない。


『敵艦隊まで、距離8500! 単縦陣にて、接近中!』


 観測員からの報告を聞いた私は、砲長にこう告げる。


「砲長、距離8000で先制砲撃を加えられます。目標は、敵の先頭艦2隻」

「また射程外からの攻撃か。まあ、お前がいけるというならいけるだろう。どのみち、あちらはこちらの領空を侵犯している。すでに砲撃されても文句は言えまい」

「はっ! では、計算に入ります!」


 私は望遠鏡を取り出し、オレンブルク艦隊、いや、敵艦隊の先頭艦を見る。すでに砲身を回し始め、砲撃を行うつもりのようだ。

 が、あちらが撃ったところで風上側だ。こちらに当たるわけがない。多分、無意味な威嚇射撃だ。私は冷静に計算尺を滑らせながら、敵との方向、速度差、予想風速を計算する。

 計算値を書き込んでいる間に、観測員からの報告がこの砲撃室内に響く。


『敵艦隊、一斉砲撃!』


 みれば、サラトフ級の2門の砲が、一斉にこちら側に火を噴いた。もっとも、距離は8300。とても届かない。回避運動すら不要だ。

 だが、やつらはその2門の砲を交互に撃つ、交互撃ち方のまま接近を続けてくる。つまり奴らの作戦は、弾幕を張りながらこちらの攻撃に備えるというものだ。

 そんな子供だましな作戦に、ひるんでたまるか。


「砲長! 左77.3度、仰角50.4度、火薬袋7、時限信管39秒!」


 弾着時間は45秒ほどだが、散弾式の砲弾を少し早めに炸裂させて広い範囲に弾を散らばらせ、複数艦に当てる。相手はオレンブルク艦隊、つまりその気嚢(きのう)に詰まっているのは水素だ。

 高性能火薬によって数百度に熱せられた散弾が、一発でもその気嚢に当たれば、中にある水素と周囲の空気とで反応し、一気に発火、爆発する。ヘリウムが採取できないオレンブルクの艦ならではの攻撃方法だ。

 この圧倒的な数の不利さを、敵の不利さを突いて補う。もっとも、簡単なことではない。

 砲撃の命中率は通常、2パーセントと言われる。ただ、私のいるヴェテヒネンは8割以上の命中率を誇る。これは、砲術計算士である私の計算精度だけでなく、その計算精度を保証できるほどに正確な時間と方向に砲をむけられる砲撃手たちの練度のおかげでもある。

 その砲撃手たちが、一斉にハンドルを回す。25サブメルテの口径の主砲が宙を向き、いよいよ発射態勢が整う。


「射撃用意よし!」

「砲撃始め、撃てーっ!」


 砲長の号令とともに、砲が放たれる。ズズーンという音を立てて、我が艦の主砲の先端部から砲火が放たれる。と同時に、船体が大きく揺れる。

 大きく弾道を描いて飛翔する散弾式砲弾は、もはや目で追うことはできない。が、それは確実に敵の先頭の艦へと向かって飛んでいるはずだ。

 一瞬、その敵の手前でパッと白い光が見える。こちらの散弾が炸裂した瞬間だ。やがて、弾着時間を迎える。


『だんちゃーく、今!』


 が、弾着時間を迎えても、敵に大きな変化は見られない。外したか?

 いや、風上側からの攻撃にありがちだが、通常の狙いの時間からずれて弾着することがある。今回もまさに、それが起こった。

 突然、敵の先頭艦が火を噴いた。続いて、その後ろの艦も火を噴く。火はあっという間に燃え広がり、飛行船の浮力の源である気嚢を赤い炎が包んだ。むろん、浮いていられるはずもなく、そのまま炎にぶら下がるゴンドラごと、真っ逆さまに落ちていく。


「まだ戦闘は終わりではないぞ! 次弾装填、急げ!」


◇◇◇


「高度4000メートル付近で、高熱反応!」


 僕が乗る0001号艦で、オペレーターの一人が何か熱源を見つけたらしい。


「レーダーの方はどうか?」

「はっ! 先ほどの10隻の飛行船の内、2隻が消滅しました」


 これではっきりしたことがある。今、我が艦のほぼ真下で行われているのは、空中戦闘だということだ。しかも、ヘリウムか水素が詰められたかなり古風な浮力を得る飛行船同士の戦い。そんなものの空中戦なんてものは始めて見たが、その戦況は信じがたいものがあった。

 一方が10隻、もう一方はたったの1隻。しかし、先に攻撃を当てたのはその1隻の方だ。それもいきなり2隻を沈めた。なんという命中率だ。


「見たところ、前近代的な火薬式の砲しか搭載されていないようにしか見えないのだが、どうしてあれほど正確に当てられる?」

「さあ、分かりませんね。ただ、あの1隻側の方からは電波の発進が確認されている模様です。おそらくはレーダーによる精密射撃を行っているのではないかと推測されます、が……」


 この不可解な戦闘を目の当たりにした僕は、ヴァルモーテン少佐に意見を求める。が、なぜかこの作戦参謀は語尾を濁す。


「なんだ、まだ何か言いたいことがあるのか」

「不可解なのですよ。確かにあの飛行船にはレーダーがついているのですが、精密砲撃ができるとは考えられないほどの長波長電波なのですよ」

「それが、どうした?」

「あの解像度で、いくら全長が300メートルの飛行船相手でも、そこまで正確な射撃が行えるとは思えません。しかも初速がせいぜい毎秒280メートル。音速にも達しないあの砲では風の影響なども強く、さほど精密射撃ができるとは考えられないんです」


 今、下で行われている戦闘が不可解だと、ヴァルモーテン少佐は言う。その飛行船を見れば、前後に2つの藤製のゴンドラが2つあり、その間に鋼鉄の腕が延ばされて、それにぶら下がる形で細い砲身が取り付けられている。速射砲というわけでもなく、むしろ弾速としてはかなり遅い。命中率を上げる工夫をしているとすれば、それは空中で炸裂した散弾をばらまいていることくらいだ。それでもせいぜい10度程度の散布範囲でしかない。

 こんな原始的な砲で、いきなり初弾で当てている。何を使ったら、それほど正確な砲撃ができるというのか?

 などと驚いている間にも、さらに報告が入る。


「さらに1隻、撃沈されました!」


 10隻いた飛行船団が、この短時間のうちに3隻も沈んでしまった。火だるまになりながら、落下していく映像がこちらからも見える。あの1隻の方が圧倒されるものと思っていたが、想定外の事態に戸惑うばかりだ。


「とにかくだ、連合軍規の53条を適用し、あの両者の戦闘を停止させる。0001号艦、降下開始せよ!」

「はっ! 0001号艦、降下開始します!」


 我々はあの2つの艦隊戦闘に、割って入ることになった。しかしだ、どうやってあの両者を止める? 僕は高度4000メートルで行われている戦闘の陣形図を見る。

 方や、7隻が単縦陣で砲撃を加えている。もう一方はといえば、一隻だけで応戦。互いの距離はおよそ8000メートル。

 戦闘を止めるのは簡単だ。我が駆逐艦を100隻ほど呼び寄せて、両者の間に割って入ればよい。それだけで彼らは戦意を喪失し、場合によっては撤退するかもしれない。

 が、一方で我々は、この星の人間と接触しなくてはならない。可能ならば、この飛行船のどれかと接触し、直接対話がしたい。

 少し考えたが、もし接触するとするなら、あの単艦で砲撃をしているあちらの方がやりやすそうだ。あの青色の模様が描かれた艦に接近し、何らかの方法で直接交渉することができれば、今回の一番の目的である現地住人との接触も果たせることになる。

 そのためにはまず、あの戦闘を終わらせねば。

 だが、7隻の集団が突然、進路を変えた。どうやら、いきなり3隻沈められて戦意を喪失したようだ。転進し、離れていく飛行船の艦隊を、あの青帯の飛行船は追う様子はない。

 にしても、見たところレーダーはついているようだが、それ以外にはこれといって大した装備が見当たらない。25センチ口径の砲が一門ついているが、当然それはただの砲であり、動きから察するに手動で動かしているようだ。

 そんな飛行船が、なんだってあれほど正確な射撃が可能なんだ?


◇◇◇


「オレンブルク艦隊、撤退していきます」


 やれやれ、最初からそうすればいいものを、無駄な戦闘で、オレンブルクの連中は貴重な3隻を失った。

 船体はこの際、損失してもさほど問題はない。が、乗員を育てるのは並大抵ではない。3隻分の人員といえば、おそらくは7、80人は失われた。それだけの戦艦乗りを育てるにはかなりの時間を要する。

 先の戦いで、相当数失ったであろうに、この期に及んでまだ、無駄死にを選ぶか。

 自分で撃っておいて言うのもなんだが、憤りを感じる。そんな私の目の前で、25サブメルテ砲の尾栓を開け、中の火薬カスを取り除いて捨てるキヴェコスキ兵曹長の姿が見える。


「さあ、今日は久々に撃てたぜ。やっぱり砲手はこうでなくてはな」


 この上空で、多数の人が亡くなったというのにいい気なものだ。一方で、リーコネン上等兵はぶつぶつと文句を言っている。


「くそっ、出番なしかよ。おっかしいなぁ、戦車の絵柄が出たから、てっきり俺にも出番があると予想してたのによ」


 などと言いながら、カードを一枚、ひらひらとかざしている。そこには馬車に引かれ、両輪から槍が飛び出した戦車(チャリオット)の姿がある。

 が、こいつの意に反し、大した敵が現れることもなく、敵は消えていった。あとはこのまま、王都クーヴォラへと帰投するだけだ。

 と思っていた、その矢先だ。


『本艦、左舷(ひだりげん)側、不明な艦艇を視認! 全長およそ400、距離約9000メルテ!』


 敵が去ってホッとしていたところに、新たな艦が現れた。それを伝える観測士に、副長が尋ねるのが伝声管越しに聞こえる。


『艦種の識別は可能か?』

『見たことのない艦影です。いや……何と申しますか、あれは飛行船ですか?』

『どういうことだ!?』

『我々には、判別不能です! ご自身の手元の望遠鏡でご確認ください!』


 これほど投げやりな観測士の態度は初めてだ。よほど変わった艦影らしい。だが、雲か何かに隠れて妙な形にみえているだけか、あるいは新型の艦が現れたのかのいずれかであろう。そう思いながら、左舷(ひだりげん)側に望遠鏡を向ける。

 それを目にした途端、私は自らの目を疑った。観測士の言いたいことが、よくわかる。

 というのも、それはおよそ飛行船ではない。あれはどう見たって、石造りの大型のトーチカのようなものだ。全体が灰色に覆われており、先端には丸い巨大な穴、そして後方には下方に飛び出た流線型の突起物。

 プロペラはなく、代わりに後方から青白い光を放っている。そんなものが、こちらに徐々に接近していた。


『未確認艦艇、急速接近! 距離6000!』


 すでに射程内にいる。にしても、速い。9000からあっという間に6000まで距離を縮めてきた。追い風に乗っているのか? いや、風向きが違う。あちらは向かい風のはずだ。にもかかわらず、非常識までに速い。

 かと思いきや、距離6000メルテで我が艦と並走し始めた。砲撃態勢に入るつもりか? だがどう見てもあの空中戦艦には、砲らしきものが見当たらない。

 ……まさかとは思うが、あの先端に空いた穴が、砲だというのではあるまいな。


『国籍不明、艦種識別不能、しかし我が艦に接近し並走中! これは、攻撃態勢かと推察されます!』


 観測士がそう叫んだ。一方で、艦橋からはおかしな報告が入る。


『こちら艦橋内観測士、電探が、あの空中戦艦を捉えられません!』


 私は望遠鏡を取り出し、再びあの灰色の空中戦艦を見た。長さはざっと400ラーベ以上、舵もなく、プロペラもない。真四角な船体はどうみても気嚢とは思えない。どちらかといえば、石造りの巨大な塔にまゆ状のゴンドラをぶら下げて浮かんでいる、石砦のようなやつだ。

 あれほど露骨に大きな物体が、どうして電探に映らない? 故障したのではあるまいか。


「砲長、直ちに攻撃すべきと判断します」


 私は砲長にそう述べる。それは砲長も同意見だったようで、うなずくとすぐに伝声管で艦橋に指示を乞う。


「砲撃室より艦橋へ。国籍不明ながら、我がイーサルミ王国領空を侵犯する軍船なことは間違いありません。砲撃許可を」

『わかった、砲撃を許可する。その上で、あちらの出方を見る』


 副長からすぐに砲撃許可が下りた。砲撃室は、慌ただしくなる。


「カルヒネン准尉、すぐに弾道計算だ! キヴェコスキ兵曹長、リーコネン上等兵! 主砲および左機銃、発射用意!」

「アイサー!」

「おいっ!」


 キヴェコスキ兵曹長は砲長の命令に従い、砲撃準備に入る。が、機関銃士のリーコネン上等兵は反発する。


「6000メルテも離れた相手に、なんで機関銃士が戦闘準備なんてするんだよ!」

「分からないか? ついさっきまで9000メルテも離れた相手が、短時間のうちに6000メルテまで詰めてきた。常識外れの速さだぞ。いつ、接近戦闘を強いられるか分からないってことだ」


 砲長が、機関銃士まで攻撃態勢にさせるということは、やはりあの艦が並みの飛行戦艦ではないことを知ってのことだろう。それを聞いたリーコネン上等兵は、半ば納得せざるを得ない。すぐに弾倉を抱え、左機関銃を構える。


「そういうことか。まあいいや、近くにくりゃあ、俺が叩き落としてやる」


 そう息巻く機関銃士だが、私はむしろあの船に絶望感を感じていた。

 望遠鏡で見れば見るほど、あれは非常に堅い物質でできた飛行船だろう。とてもじゃないが、我が艦の主砲ごときで撃ち抜ける代物には見えない。

 私は、計算尺を滑らせる。相対速度は0。ちょうど追い風側で、ほぼまっすぐ狙えば当たる位置にあの灰色の不明船はいる。


「砲長! 左80.1度、仰角45.3度、火薬袋6、時限信管33秒!」


 それを聞いた砲撃手らの動きは早い。さすがは、あの独立戦争と世界大戦を戦い抜いた者たちだ。練度が違う。

 砲弾と火薬を詰められた25サブメルテ砲が、あの灰色の船へとむけられる。ハンドルが回され、計算通りの角度を向いた。


「射撃用意よし!」

「よし、撃てーっ!」


 砲長の合図と同時に、主砲が火を噴いた。あれにどこまで通用するか分からないが、ともかく攻撃を仕掛ける。

 私は望遠鏡でその艦を捉える。まさしく砲撃から20秒が経とうとしていた、その時だ。

 あの艦は、信じられない動きをする。


「なんだ、あの動きは!?」


 なんと、高度を3500メルテから一気に4000メルテまで上げた。その間、わずか5秒。たった5秒で、500メルテも上昇したのだ。明らかに、我が艦の弾を避けている。


「だんちゃーく、今!」


 直前に炸裂した弾は、当然、その艦の真下でむなしく広がる。ただの一発も当たることなく、かわされた。

 やはりあれは、とんでもない船だぞ、あれは。私の計算尺を持つ手の、震えが止まらない。


◇◇◇


「砲弾はどうやら、一種の散弾式のようですね」


 ジラティワット艦長が僕に報告する。高度を上げなければ、やつはこの艦の頭上から無数の弾丸を降らせるところだった。

 もっとも、この艦がその程度の弾丸でびくともするわけがない。それに、バリアシステムもある。それで避けてもよかったのだが、あまり刺激を与えるのはよくないという艦長の考えで、ここは高度を上げてよけることにした。


「にしても、正確に撃ってくるものだな」

「ええ、こちらが動かなかったら、確実に当てられてましたよ」

「しかし、相手は飛行船だぞ。ついている砲だって、さほど威力があるものじゃない。どうしてそこまで正確なんだ?」

「初速がおよそ毎秒240メートルですからね。風の影響だってあるこの上空で、よくもまあここまで正確に……」


 感心している場合じゃないな。よく考えたら、彼らはこの艦を「敵」だと認識してしまったことだ。

 どうやって、敵意がないことを示そうか。


「発光信号を送ってみるか」

「いや、無駄でしょう」

「なぜだ?」

「せめてこちらの信号符号が解読できていれば、その方法も可能でしょうが、ただぱちぱち光らせたところで、むしろ攻撃されたと受け取られかねません」

「うーん、それじゃいっそ、接近してから人型重機で……」

「いやあ、余計にダメでしょう。相手から見れば、見たこともない巨人が、飛行船に襲い掛かってくるんですよ?」


 そんなやり取りを、ヴァルモーテン少佐としている間にも、その飛行船は攻撃を続けてくる。


「第2射、来ます! 弾道計算、風に流されつつも、命中コース!」

「やむを得ん。今度は高度を500下げるぞ」

「はっ!」


 今度は高度を4000から3500メートルまで下げた。手前で炸裂した散弾は、頭上を散開していく。が、500メートルも離れればさすがに当たらない。


「うーん、このまま逃げ続けるわけにもいかないな。彼らの弾が切れたら、彼らは引き返すだろうから、接触機会を失うことになる」

「敢えて、あの飛行船と接触なさらず、別の方法でこの星の住人との接触を試みる方が得策では?」

「それもそうだが、見られてしまった以上は、この姿を見せれば他でも警戒されてしまう。やはり、どうにかしてあの船と接触する方法を模索せねば」


 参謀役のヴァルモーテン少佐は諦めるよう進言するのだが、僕はあの飛行船と接触べきだと、そう告げる。


「第3射、来ます!」


 また撃ってきたな。仕方なく、今度は高度を500メートル上げる。しかし、芸のないよけ方だ。いや、別に避けたいわけじゃない。あの飛行船と、何とかして接触したいんだ。

 などと頭を悩ませていたら、僕のところにマツがやってきた。


「カズキ殿、マリー殿が、話があると」


 そんな時だ。僕のところにマツと共に、あの魔法少女がやってきた。


「なんだ、今、あの飛行船との接触機会をうかがっているところだ。マリーの出番はないぞ」


 と、僕は言ったのだが、マリーは反論する。


「簡単よ、私ならば、あの飛行船との橋渡し役になれるわ」

「えっ、マリーが、橋渡し役!?」

「何、悪い?」


 急な申し出に、僕は戸惑っていた。だがそのころ、あの飛行船の放った第3射が、ちょうど艦の下でばらまかれたところだった。

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