#65 移住作戦
驚いたことに、たった2日で説得が終わってしまった。相変わらず、この星は決断するのが早い。その報を受けて、僕らは動く。
すなわち、「ゴルゴン星人移住作戦」の発動である。
といっても、その中身についてはほとんど何も決まっていない。
人の移動そのものの手段は、すでに決まっている。第6、第8艦隊所属の戦艦5隻を使い、4万人づつに分けて地上に降ろしていく。この旗艦オオスも、その移送任務に参加することになっている。問題は、その降りた先の住処についてだ。
今からそれを作ったとしても、20万人も暮らせる街を作るとなると最短でも6か月はかかるという試算だ。あまりにも時間がかかり過ぎる。
「困ったものだな、地球001の方にもよい策がないかと尋ねているところだが、ノウハウ豊かなはずの我が地球001でも、なかなか出てこないものだな」
と、ほとほと困り果てた様子のオルランドーニ大将。
どちらかというとコールリッジ大将やアントネンコ大将のように、図々しさの塊のような大将閣下しか知らない僕にとって、オルランドーニ大将の頭を抱える大将閣下の姿は新鮮でならない。そう思うのは、やや不謹慎か。
「そうだ、貴官の麾下に確か、第7艦隊から転属した凄腕の兵站担当士官がいたと聞いたが?」
ところがどっこい、僕の不謹慎な心を読まれてしまったのか、この大将閣下が突然、僕にこの面倒な問題をふっかけてくる。
「は、はい、ブルンベルヘン少佐のことでしょうか?」
「その士官に、この件について何か良いアイデアがないか、聞いてもらえないか?」
というオルランドーニ大将のこの一言で、僕まで巻き込まれてしまった。それは、兵站と関係ないことでは?などと疑問を抱きながらも、僕はブルンベルヘン少佐に尋ねてみた。
「よい考えなら一つ、あるにはあります」
ところがこの少佐、第6艦隊と地球001が悩むこの問題の答えを持っていると言い出した。
「なんだ、その考えとは?」
「簡単ですよ。今の住居をそのまま、転用するんです」
「は? 今の住居を転用だって?」
「だって、今彼らはあの小惑星で暮らしているんですよ」
言われてみればその通りだ。新たに作ろうと考えるからとんでもないことになっているが、今の住居を流用するとなればその手間は大幅に低減する。
「いや、待て。そうはいってもあの小惑星の中にあるものを、どうやって地上に降ろすというのだ?」
「実は事前に調べてあるんですよ。だって私は、彼らの食糧供与を担当してますから、そのついでに彼らの生活について調査してたんですよ」
「そういえばそうだったな」
元々、オルランドーニ大将からの依頼で我が第8艦隊は、その20万人に食糧の供与を行っている。その件はメルシエ准将に一任していたが、兵站担当のブルンベルヘン少佐も関わっている。
彼らの食糧事情は、極めて厳しい状況だった。あとひと月遅ければ餓死者が出ていたかもしれないほど、備蓄食糧は逼迫していた。そこで、彼らに我々の持つ備蓄食料が供給された。
で、その備蓄食糧というのが、大量の「手羽先」だった。
なんでも、あの手羽先ラブなスウェーデン人、アンニェリカにそそのかされて少佐が大量の手羽先肉を買い込んでいた。それが彼らにふるまわれることになったのだ。
『さぁ、宇宙を救う究極の食べ物である「手羽先」を、たくさん食べるのデス!!』
その様子を一度、動画にて報告を受けたことがある。手羽先をゴルゴン星人にふるまうアンニェリカの熱意は、動画越しにも伝わってくる。このスウェーデン娘の勝手な思いつきで蓄えられていた手羽先が、こんなところで役立つことになった。
「で、ゴルゴン星人の住環境を調べてみたのです。すると、なかなか面白い構造をしてまして」
「面白いって、一体どういう構造をしているというのだ?」
「はい、簡単に言えば、ミツバチの巣のような構造です」
「み、ミツバチ……?」
「ええ、あの小惑星の中の一部に空洞があって、その隙間に壁で仕切られた部屋が並んでいるんです。それが何層にも積み重なるように建て増しされているんですよ」
要するに、あの小惑星の中には数万の仕切られた部屋が20層にもわたって存在するらしい。それがまるでミツバチの巣のようだという。
「つまり貴官は、その住居区画を丸ごと切り取って、それを地上に降ろせばよい、と?」
「もちろん、地上に基礎部分は必要でしょうが、それほど時間も手間もかけずに居住空間を築くことができます」
「だが、その居住区は強度的にはどうなんだ?」
「硬い小惑星なので、大丈夫でしょう」
「いや、それ以前にだ、その居住区画はどれくらいの大きさがあるんだ?」
「長さ2キロ、幅1キロ、厚さはおよそ200メートルはありますね」
「そんな大きなもの、どうやって運ぶんだ? この戦艦オオスの半分以上の大きさじゃないか」
「大丈夫ですよ。第6艦隊に、ちょうどいい艦があるんです」
なんかこうなることをあらかじめ想定していたかのような答えっぷりだ。よく調べてるな、ブルンベルヘン少佐は。どうも自分以外にこの問題を解決できないと考えていた節がある。
「了解した。その艦を使えば、居住問題は解決できると?」
「もう少しプランは詰める必要はあるかと思いますが、一週間もあれば」
「分かった。ならば少佐よ、この件は貴官にすべて任せる」
「はっ!」
それにしても、話があまりにもとんとん拍子で進み過ぎていないか? 地上の説得といい、移住計画といい、本来ならば最短でも半年はかかる事業だぞ。
もちろん、オルランドーニ大将もブルンベルヘン少佐の案に賛同する。問題は、当のゴルゴン星人がこの案を受け入れてくれるかどうかだ。
その説得役は、僕がすることになった。
「うむ、素晴らしい考えだ! 余は感動したぞ!」
あっさりと受け入れられてしまった。いや、それはそれで喜ばしいことなのだが、ちょっと早すぎないか。
「ええと、その、陛下……」
「なんだ、ヤブミ将軍」
「いや、この手狭であまり良い思い出があるとは言い難い宇宙生活を過ごした住居を、そのまま地上に移すことに反対する住人はいないのでしょうか?」
「うむ、おるかもしれぬが、大半は慣れた暮らしの住居がそのまま使えることに喜ぶと思うぞ。それにこの玉座の間も、そのまま使われるというのであろう。良いことではないか」
と、ヨルゴス陛下もこうおっしゃるので、ブルンベルヘン少佐の移住作戦が実行されることとなった。
「へぇ、ハチの巣作戦かぁ」
「いや、ハニカム作戦だ」
「似たようなもんじゃねえか。要するに小惑星を切り取って、その部分を地面に降ろそうってことなんだろう、『おっさん』よぉ」
ここ2日ほど、レティシアは僕のことを「おっさん」と呼ぶ。やはり、気に入ってしまったようだな。
「んでよ、ブイヤベース。あたいらはどうすりゃいいんだよ」
「ああ、そうだ。ミレイラ号には、資材の一部を運んでもらう」
「はぁ? なんであたいらが運送屋みたいなことをやらなきゃならないんだよ!」
「いや、海賊船ってのは基本的には運送用の船だろう。おまけに、そういう免許を持っている乗員もいる。うってつけの任務じゃないか」
「そういうのは、本職の運送屋に頼めばいいだろうが」
「そうもいかない。ここは光学迷彩で囲われた星系だから、現状では民間船が簡単にたどり着けないんだ。そういうわけで、民間船の数が足りない。だからミレイラ号にも手伝ってもらう」
文句を言い続けるミレイラだが、この際は協力してもらう。だいたいこいつら、普段はほとんど役に立っていない。こういうときこそ、給料分の仕事をしてほしいものだ。
ところで、ブルンベルヘン少佐が言っていた「ちょうどいい艦」とは、艦暦230年を超える大型輸送艦アンドレアのことだ。
この輸送艦、元々は多段式甲板を持つ航空母艦として建造されたのだが、連合、連盟の戦いが始まり長射程での撃ち合いが戦いの主体となったため、空母の需要がなくなってしまった。このため、多段の航空機搭載甲板をぶち抜き一つの大きな空間に改造し、巨大な輸送庫とした。その大きさ、長さ5キロ、幅3キロ、高さは700メートル。戦艦がすっぽりと収まる大きさだ。
つまりこの艦は、航行不能になった戦艦すらも運べる輸送艦として使われた。そんな需要あるのか? とも思ったが、意外にあちこちで使われていたようだ。故障戦艦の輸送任務以外にも、小型要塞や施設、地上向けの大型建造物も輸送した実績があるという。
そんな都合のいい艦まであったとは、まるで漫画のような展開だ。いいのか、こんなにスムーズに事が運んでも。
とまあ、極めて順調すぎるくらいの準備が進むが、やはりというか、いざ始めてみるとこれがとんでもなく大変だった。
『ガンプラより司令部! 切断位置が定まらない、どこを切ればいいか、指示をくれ!』
ガンプラとは、小惑星から居住区間を切り離すために第6艦隊から派遣された工作隊のコールサインだ。なお、その名の由来は……いや、そんなことよりもだ、今まさに重大な問題に差し掛かっている。
工作隊が報告してきたように、目印の乏しい小惑星表面でどこから切り始めていいのかがまったく見当がつかない、という状態のようだ。ブルンベルヘン少佐がその対応に追われている。
「提督、これより小官は工作隊と合流し、目印をつけに行って参ります」
「頼んだ。失敗は許されない作業だからな、頼む」
「はっ!」
そう、この作業、失敗すれば大変なことになる。誤って居住区部分を削ってもいけないし、その居住区に対してうまく水平に切り出さなければ、地上に降ろした際に傾いてしまう。
大きさが2キロとなれば、簡単に切り出すことはできない。この作業を一発で決めなくてはならない。いくら職人揃いの工作隊とはいえ、その困難さを前に躊躇している。
すでに予定時間を6時間過ぎているが、未だに切り出し作業が始まらない。失敗できないというプレッシャーゆえに、慎重になり過ぎている感もある。が、一番の原因は、そもそもが地上に降ろされることを前提に作った構造ではないものを、無理に転用しようとしたところにある。
『第6艦隊、第2分艦隊司令、チプリアーニ少将より通信! 切り出し作業の終了予定時刻を送信せよ、とのことです!』
「そんなこと、分かるわけないだろう。こっちが知りたいくらいだ。まあいい、目途がつき次第、返信するとだけ伝えよ」
「はっ!」
こんな具合に、第6艦隊からも矢のような催促が来る。が、本来ならばそっちがやるべき作業を、こちらが請け負っているんだ。待つくらい、楽なものだろうと僕は思いつつ、適当にはぐらかしつつ時間を稼ぐ。
だが、この苛立ち具合はむしろ、離れた場所で待つ艦隊よりも現場の方が大きい。一向に基準が決まらないことに業を煮やしたブルンベルヘン少佐が、とうとう動く。
『司令部よりガンプラ! こちらでたった今、印をつけた! その基準に従い、切断作業を開始せよ! 送れ!』
比較的温和なブルンベルヘン少佐が、珍しく叫んでいる。よほど苛立ちがつのったと見えるな。乱雑につけられた白い印めがけて切断せよと言い出した。そんな少佐の姿を、僕は見たことがない。
あのヴァルモーテン少佐の夫にして、兵站の天才と謳われた彼だが、一見穏やかな性格だと思っていたものの、やはりそこはヴァルモーテン少佐の夫。時に熱い一面を見せるのだと、僕はこの時実感する。
『こちらガンプラ、これより切断作業を、開始する!』
とうとう小惑星から、居住区域の切り出しがはじめられた。まばゆい切断用の持続性ビームが放たれ、小惑星の一部を切り刻む。この工作隊は小惑星の切り出しについてはプロだと聞いていたが、その評価に恥じぬ正確な切り出しを僕らの前で実行する。
最悪、傾いてしまったなら、地盤の方で調整すればいい。ともかくこの居住区を地上にさえ持ち込んでしまえば、後はどうにかなる。そう踏んでのブルンベルヘン少佐の決断だ。
そして、30分後。小惑星からの切り出し作業が終了する。
「輸送艦アンドレア、小惑星断片に接近中!」
ところで、あの居住区にいた住人は皆、5隻の戦艦に退避している。もちろん、このオオスにも4万人の獣人、すなわちゴルゴン星人が乗り込んでいる。今、目の前で行われている居住区移動作戦の様子は、街にあるモニターを通じて中継され、この獣人たちにも伝えられているはずだ。
「うまく、行くだろうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。私にあれだけしつこく催促したくらいですから、きっとその後はスムーズに正確に完璧にやってくれるはずですよ」
涼しげな顔でそう答えるブルンベルヘン少佐だが、この言葉からは、先ほどのあの催促を根に持っていることが感じられる。横にいる僕は少し、恐怖を感じてしまう。
が、そこは輸送のプロというだけあって、全長10キロの巨大な艦体に、見事あの2キロサイズの薄く切り出された大きな岩盤を取り込んでいく。そして、その巨体のハッチが閉じられる。
「輸送艦アンドレアより通信! これより、降下を開始します、以上!」
「そうか。では、僕の名前で返信を打て。貴艦の航海の無事を祈る、と」
「はっ!」
航海といっても、高々数千キロ上空にある小惑星から地上までの短い航海ではあるが、その航路上には大気圏突入という大きな関門がある。なにせ、全長が10キロの大型艦だ。地上に降りられるぎりぎりのサイズであるこの艦艇が、小さなシチレール島を目指す。短距離とはいえ、大変な任務だ。
その大型艦の後を、駆逐艦0001号艦で追う。
「大気圏突入。船外プラズマ温度、およそ3000度」
大型輸送艦のすぐ後ろを追随する我が艦は、白い炎に包まれた巨艦の大気圏突入光景を目の当たりにしてその幻想的な光景に驚愕しつつも、整然と地上を目指す。
が、本当に驚いたのは、まさにその巨艦が「荷物」を届ける先のシチレール島上空の光景だった。
すでに小惑星の一部を降ろす場所にあった森は切り開かれ、大きなコンクリート基礎ができている。その周囲を、ぐるりと人と車が囲んでいるのが見える。
この島にも街はあるが、その人口を優に超えていると思われる人の数だ。島とはいえ、半島側とは一本の橋で結ばれているから、そこを経由して大勢の見学人が押し寄せたようだ。
それだけではない、上空にはたくさんのヘリも飛んでいる。おそらくはこの星の報道機関のものだと思われるが、この出迎えにむしろ僕らが驚かされる。
「うへぇ、あれ全部、人かよ」
レティシアですら驚く光景。マツとリーナも、艦橋の窓からその地上の熱狂ぶりを眺める。
「いやあ、凄まじい注目度だ。これはアンドレアの工作隊にはプレッシャーですよねぇ。失敗しようものなら、宇宙一の恥となりかねない」
「まったくその通りです。万が一にも失敗しようものなら、オルランドーニ大将閣下の顔に泥を塗りかねませんねぇ。いやあ、大変だ。緊張しますねぇ」
僕が気になっているのは、ブルンベルヘン少佐と、その妻であるヴァルモーテン少佐だ。この二人、もしかしてその「万が一」の事態を期待してるんじゃないだろうな。二人のあの涼し気でやや影のある笑みを見ていると、そう思えてならない。
『アンドレア、これより荷降ろし作業を開始します。輸送庫、ハッチ開け』
全長が10キロの巨艦が、築かれたコンクリート地盤のすぐ脇で空中停止している。この地上の人々からすれば、圧巻ものだろう。あれがもし機関停止し落っこちようものなら、真下に集まった数万の群衆もろとも……いや、そういうことを考えるのはよそう。
「おいブルンブルン、あそこからどうやってあの岩の板を降ろすんだよ?」
「居住区をぐるりとカーボンナノチューブワイヤーで支えつつ、地上に降ろすんですよ。あれだけの大きさとなれば、牽引船も10隻は必要でしょうね」
「おいまさかワイヤーだけで支えるのかよ。それが万一にも切れたらどうなっちまうんだ?」
「その時は数千万トンの岩が落下するだけです。地上の人々と、上空に群がっている航空機を巻き添えにして」
「うへ……マジかよ」
怖いことを言うブルンベルヘン少佐に、さすがのレティシアも返す言葉を失う。いくら急かされたことを根に持っているからと言って、そういうことを口にしていいものではないと、僕などは思うのだが。
が、そこは過去にこれを上回る大きさの戦艦を降ろした経験を持つアンドレアの工作隊だ。そこは抜かりなく、粛々と作業が進む。ハッチから飛び出す巨大な岩の板が姿を表すと、輸送艦アンドレアはその場から離れる。
そして巨大な岩の板は、徐々に降下する。その周辺をヘリが回る。といっても、長さが2キロの茶色い岩の板、その周りを飛ぶ複数のヘリ。まるで巨大なビーフステーキに群がってきた白い蚊のようにしか見えない。
多くの人々が見守る中、30分かけて長さ2キロの岩板が地上に近づく。そしていよいよそれが地上に降りる瞬間が訪れる。
『30、20、10……ゼロ! 着地!』
無線で着地を知らせる声の直後、ズシンという大きな音が響く。おそらく、地上では音と同時に揺れも襲ったことだろう。その揺れによって砂煙が上がる様子が、ここからも観測できる。
この瞬間、ゴルゴン星人の住む場所が、この星の上にできたこととなる。
が、その直後に突然、レーダーが何かを捉える。
「レーダーに感! 接近する航空機あり、速力200」
「それはヘリじゃないのか?」
「いえ、明らかに大きい物体です。まもなくこの上空に到達します」
なんだ、急に。まさかあの居住区を攻撃する目的で送り込まれたものじゃないだろうな。
一瞬、緊張が走るが、その航空機の正体が肉眼で確認されると、一気にその緊張度が下がる。
そう、それはヒペリオーンVだった。
「何だ? 今ごろ現れて、どうするつもりだ」
この突然の「正義ロボ」の登場に、艦橋内は困惑に包まれる。ただ一人、エルネスティを除いて。
で、その巨大ロボットは何をするのかと思えば、降ろされたばかりの居住区の上に着地する。
そして、ヒペリオーンVにつけられた拡声器と、あらゆる周波帯の無線で、こう叫んだ。
『大成功だぁ! 俺たち地球人、そしてゴルゴン星人は、勝利したぜーっ!』
それを聞いた地上の人々も、一斉に叫び始めた。上空1500メートルにいる我々のところにまで、その熱気と歓声が伝わってくる。
いや待て、勝利って、この作戦はブルンベルヘン少佐が立案し、第6艦隊の輸送艦部隊が成し遂げたんだぞ。最後の最後で、こいつらはその手柄をかっさらうのか?
「いやあ、若いですねぇ。しかし、誰の手柄だと思ってるんだか」
「ほんとだね。でもあれのおかげで、ゴルゴン星人を受け入れ易くなったんじゃないかな」
「なるほど、そりゃあ正義の味方が持ち上げてくれてるわけですから、そういう雰囲気になるでしょうね」
しかし、当のブルンベルヘン少佐は、この行為をむしろ肯定的に捉えている。僕はそれを聞いて、ふと考える。
思えば、ここに彼らを受け入れるよう説得に動いたのは、ジーノたちだった。彼らがいなければ、ここにゴルゴン星人を受け入れることなどかなわなかっただろう。
そして今、この作戦の成功を、この星とゴルゴン星人両者の勝利だと宣言した。
地上に存在したであろうゴルゴン星人へのわだかまりを、このたった一つの行動で、彼らは打ち消したのだ。
なかなかの策士だな。もしかしてこれは、イレーニアの入れ知恵か? だが、この見事な彼らの手腕によって、ゴルゴン星人はこの新たな星の一つの島の大地での生存権を確保することとなる。




