#29 海賊
「おい、ランス! どうなんだい!?」
あたいは手下の男に怒鳴る。このランスって男は寡黙で真面目なんだが、どうにもトロい。今もあたふたと双眼鏡を覗き、その船を品定めしている。
「わ、悪くないです、お嬢」
何だその言い回しは? なんともはっきりしねえ返事だなぁ、おい。あたいらが襲っていい船かどうか聞いてるんだが。あれが軍船だったら、今度こそひとたまりもねえ。
「大丈夫ですぜ、お嬢。ありゃあ中型のバラデス級輸送船ですぜ」
「そうかぁ? だけどよ、なんか少し白っぽくねえか、あの船」
「よく見てくだせえ、お嬢。太陽光を反射してるだけでさあ。青色ですぜ、あの船」
ベテランのベンがそう応える。ほんとだなぁ、ありゃ青色だわ。あたいとしたことが、何ビビッてるんだか。
「よ、よし、そんじゃあれを襲うぜ」
「へい!」
「おいチコ! 全速前進だ! 一気に襲うぞ!」
「ちょっと待ってくだせえ、お嬢。ここで全速はまずいですぜ」
「なんだよベン、あたいはさっさとケリをつけたいんだよ」
「それじゃ海賊だってバラしちまうようなもんですぜ。気持ちは分かりますが、ここは堪えて、慎重に寄せるんですよ」
「ちっ! しゃあねえな」
ベンというやつは、いつも冷静だ。慎重すぎるくらい慎重で、あたいはいつもイライラさせられる。が、慎重さのおかげで、今もこうして生きていられるんだ。
だが、待つのは性に合わねえ。あたいはこの退屈な時間を紛らわすため、部屋に戻る。
あたいの名は、ミレイラ。今でこそ海賊なんぞやってるが、元々あたいは、とある国の女騎士団の一員だった。
今じゃ地球1008って呼ばれるあたいの故郷じゃ、宇宙から来た連中のおかげで、急激に様変わりしやがった。
その結果、あたいのいた女騎士団は解散されちまった。で、行き場を失ったあたいは、いろいろあって海賊になった。
この船には、あたいの手下が5人いる。騎士団員だった時からのあたいの取り巻きだったこの5人は当然、あたいと共に職を失う。だから、海賊になるしかなかった。
他に道がなかったわけじゃねえ。だけど、剣の使い道のねえ職なんて就きたくもねえ。騎士団を辞めさせられてしばらく、ショッピングモールとかいうでっけえ店の中でレジ打ちなんてのをやってたが、何のために剣を極めたのか分かんねえこのくだらない仕事に嫌気がさして、すぐに辞めちまった。それから交易業でもやろうと決めて、あたいは財産を売り払って一隻の小さな船を手に入れたが、それもつまんなくなって、やがて海賊業に転じた。
海賊はいい。民間船に乗り込み自慢の剣で脅せば、金目のものが手に入る。これこそが、あたいの生きる道だと悟ったね。
正直言えば、ちょっと虚しく感じることだってある。襲う相手は剣ではなく、銃ばかり握ってやがる。そいつをかわしながら剣一本で船を乗っ取る痛快さはあるんだが、剣士として生まれた以上、本当は剣同士で戦いてえ。それも、強えやつと。
いや、そういや最近、強えやつとやり合ったな。あんときゃ、ほんとにヤバかったぜ。よく生きて帰れたものだと、今でも思う。
『お嬢! あと200キロですぜ! そろそろ、仕掛けやすよ!』
ベッドで寝転んで考え事をしてたら、ベンのやつが電話で知らせてきた。なんだ、思ったよりも早えじゃねえか。それともあたいが、考え事をし過ぎてたのか?
「おう、すぐ行くぜ」
あたいはそう答えて部屋を出る。全長90メートルのちっぽけな船だから、船橋まではあっという間だ。その船橋の扉を開けて中に入ると、脇に置かれたあたいの自慢のレイピアを手にする。
◇◇◇
「何なのです、これは?」
テイヨ艦隊の勝利から4日後。再び宇宙にてパトロール任務の最中に、ダニエラが呟く。
「どうした?」
「ヤブミ様、邪悪なものが見えますわ」
ダニエラとの付き合いは長いが、こんな言葉は初めて聞いた。
「邪悪って……どこにあるんだ、そんなもの」
「この前方の、だいたい50万キロほど先に見えますわ」
「タナベ大尉!」
「はっ! 当該宙域には、民間船団がおります!」
ダニエラのやつ、まさか民間船を邪悪だと言っているのではあるまいな。
「ダニエラ、それは民間船団らしいぞ。何か見間違えてるんじゃないのか?」
「そんなことありませんわ! 私の『神の目』で見抜けぬものなどありません! きっと、何かあるのでございます!」
元皇女だけに、言い出したら譲らないからな、ダニエラという人物は。だが、ダニエラがここまでいうからには、何かあるのだろう。少し調べてみるか。
「ならば調査のため、0001号艦を出すか。ナデート中佐に連絡、0001号艦にて直ちに発進、当宙域を調査せよ、と」
「うむ、邪悪とは気になるな。私も行こう」
いつの間にか、僕のそばでその会話を聞いていたリーナがそんなことを言い出す。あわてて僕は返す。
「いや待て、民間船に紛れた危ない船かもしれないぞ」
「危ない船? 白い船ではないのだろう、危ない船と言い切れるのか?」
「うーん、なんて言えばいいんだ。つまりだな……そうそう、例えば海賊とか」
「海賊? ここは海ではない、宇宙だぞ。何ゆえ海賊などというのか?」
「いや、どういうわけか宇宙空間でもそういう連中のことを『海賊』と呼ぶんだよ……って、そんなことはどうでもいい。そんな危険な船だったらどうするんだ」
「ならば、なおのことではないか。ここは私の故郷の宙域だ。故郷を荒らす奴など、許してなどおけぬ。テイヨですら、危険を省みず戦ったのであるぞ」
「だがな、ただの民間船という場合もあるんだぞ」
「その時は、私のような民間人がいた方が都合が良かろう。その船を捕まえてみて、こちらが軍人ばかりではかえって向こうに不振がられてしまう。その時は私が、仲介役として出るとしよう」
などと、リーナには押し切られてしまった。妙にしぶといな。仕方がないので、危ない場面には首を突っ込まない、何事もなければすぐに帰還することを条件に、僕は渋々送り出すこととする。
「私も行きまーす!」
と、その会話を近くで聞いていた戦魔女団の一人、マリアンジュ上等兵が、自身も行くと名乗り出る。
「マリアンジュ上等兵、貴官が出向いてどうするつもりなのだ?」
「私、怪力魔女ですから、ここぞという時にキーパーソンになるかもしれないですよ。備えあればウェルカムっていいますし」
相変わらず意識高過ぎて、何を喋っているのか分からん奴だな。要するに、海賊と聞いて行きたくなっただけではないのか? 好奇心だけは旺盛な魔女だ。
だが、0001号艦は魔石エンジンのみの船だ。もしかすると、こいつの魔力が役に立つかもしれない。そう考えた僕は、彼女の同行を許可する。
そうして2人を乗せた0001号艦は、艦橋のすぐ脇にあるドックから発進する。やがてダニエラが「邪悪」と称したその場所へと向かって前進し、この黒い宇宙の闇の中に消えていく。
◇◇◇
「そういやお嬢」
「なんだよ」
「この辺りには、出るらしいですぜ」
「で、出るって、何がだよ。まさか幽霊船だとか言わねえだろうな?」
「そんなわけねえですよ、何言ってるんでさあ」
「じゃあ、何が出るっていうんだよ!」
ベンのやつが、気味が悪いことを言い始める。あたいがそういう話を嫌ってるのを知って、そういうこと言うか、こいつは?
「ほら、この辺りにいたって言うクロノスって化物、あれを倒したっていう指揮官が、ここに来てるって話ですぜ」
「……なんだよ、軍人の話か」
「いやでもお嬢、油断ならねえですよ。なんでもそいつは、ノブナガとかいう英雄の生まれ変わりだとか言われてて、そんで何人もの女を侍らせて、この宇宙を渡り歩いてるって話で」
「はぁ!? ロブスターの生まれ変わりだってぇ!?」
「いや、ロブスターじゃなくて、ノブナガっていう……」
「まあいいや、そんなこたあ。どっちにしても、そんな女を侍らせるブイヤベースの具みてえな奴なんて、大したことねえだろう。ましてやその取り巻きの女なんぞ、碌な連中じゃねえ」
「いや、それがですね、連れ歩いている女ってのが強えらしいんですよ」
「強えって、その女どもがか?」
「そうですよ。魔女に剣士、それに百発百中の銃士や、鏡で何もかも見通す金髪の占い師までいるって話ですぜ」
「なんでぇ、ブイヤベースのくせしやがって、そんな怪しい女を侍らせてやがるのかよ。随分と具沢山なブイヤベースだなぁ、おい。くそっ、気に入らねえ」
「まあお嬢、何にせよ、用心に越したこたあねえですぜ」
「どのみちこの広い宇宙で、そんな女たらしな野郎にあたいが出会うわけねえだろう。まあいいや、そのブイヤベースが現れる前に、さっさとあの船を片付けちまおうぜ」
「アイアイサー!」
まあいいや、ブイヤベースだか何だか知らねえが、この広い宇宙で出会うことなんてあるわけねえ。くだらねえこと気にしてねえで、とっとと仕事に取り掛かろうか。
「よーし、そんじゃ目標はあの、青い船だ。行くぜ!」
「おおーっ!」
5人の手下どもが、あたいの掛け声に応えて声を上げる。みんな、調子は良さそうだぜ。機関音が高鳴り、あたいのこの赤い船が加速する。
さあて、狩りの始まりだ。
◇◇◇
「民間船が一隻、急速に速力を上げてます!」
0001号艦が発進してまもなく、一隻の船が急に不振な挙動を見せる。ダニエラが見切った通りだ、あそこにはやはり、ヤバいやつがいる。直感で危機を悟った僕は、すぐに命じる。
「あの船を目指して真っ直ぐ突進している。ダニエラの言う邪悪なるもの、すなわちあれは海賊船だ。0001号艦に連絡、あの船を砲撃せよ!」
「いや提督、いけません!」
僕の命令に意見を挟んできたのは、ジラティワット艦長だ。
「艦長、そうもいかないだろう。このままでは民間船が襲われてしまうかもしれないんだぞ?」
「だからといって、あれが海賊船である確証がありません。そんな民間船に向かっていきなり砲撃を加えるなど、軍規違反になりかねませんよ」
「ならば、どうせよと?」
「臨検です。まずは停船を呼びかけて、応じなければ警告し、強制的に停船させる。それでも振り切ろうとするようならば砲撃、そういう手順を踏まなければいけないのですよ」
何という面倒な手順だ。そんな悠長なことをしている間に、他の船が襲われたり、あるいは逃げられてしまうかもしれんじゃないか。だが、決まりとなれば無視するわけにはいかない。僕は0001号艦に向けて、あの船を停船させるよう、電文を打たせた。
◇◇◇
「司令部より入電! 現在追撃中の不審船を臨検せよ、以上です!」
「了解した。では軍規に則り、民間バンドにて警告文を発信、地球1008船籍の当該の赤い船に対し、停船するよう警告せよ」
艦長殿が、あの船を止めるよう通信士に命じる。すると私の横に立っていたデネット殿が動く。
「デネット殿、どこへ行かれるのか?」
私は、艦橋出口に向かうデネット殿に尋ねる。
「ああ、多分あの船を拿捕することになるんじゃないかと思い、それで突入準備をしようと思ってですね」
それを聞いた私は、咄嗟にこう応える。
「そうか、ならば私も行こう」
「えっ!? いや、リーナさんはいいですよ」
「そうもいくまい。もし相手が海賊というなら、戦いになろう。そうでないというなら、民間人の代表として私が間に立たねばならぬ」
「しかし……いや、そうですね、リーナさんにも来ていただきましょう」
と、デネット殿はそう応える。が、ここで事態は急変する。
「不審船、航路を外れます! 増速しつつ、逃亡中!」
こちらの警告を受けて、逃げに入ったようだ。艦長があれを追うよう指示する。
「機関全速! 追いかけるぞ!」
どうやら、追いかけっこが始まったらしい。が、あの船、やはり海賊船というだけあって脚が速い。
「不審船はさらに増速中、追い付けません、振り切られます!」
「くそっ、この艦の魔石エンジンでは、パワーが足りないか」
不味いことになったぞ。どうやらこのままでは追い付けないようだ。あれに取りつかねば、デネット殿も私も出番がない。
が、そこに叫び声が入る。
『機関室より艦橋! 私、マリアンジュ上等兵が魔石に魔力をチャージします! 一気に距離詰めてキャッチアップしちゃってください!』
ああ、あれは魔女のマリアンジュ殿か。そういえばこの船に乗っていたな。艦長が応える。
「了解、頼む! チャージ率は20パーセント、人差し指でのみ触れよ!」
『アグリーです! では、カウントダウン! 5、4、3、2、1、チャージ!』
ガクンと船全体が揺れる。と、この船に猛烈な力が込められる。そういえばレティシアが、魔石の力の込め方について何か言っていたな。手の平で触れると体内の魔力が目一杯込められるから、そうなると魔石エンジンがエネルギー過多に陥って暴発するという。が、指先だけで触れれば、流れる魔力を調節できる、と。
やがてレーダー員が叫ぶ。
「不審船に、追い付きます!」
「よし、再度通信! 停船せよ、さもなくば突入する、と!」
「はっ!」
いよいよ、突入という言葉が出た。デネット殿が走る。私もその後を追う。
突入といっても、どうやってあの船に乗り込むのか……と、デネット殿に尋ねる。
「船が速過ぎて、このままでは重機も航宙機も発進できません。なのでまず、バリア展開した艦であの船の噴出口に突っ込んでそれを破壊し、停船させたのちにエアチューブを繋いで内部に突入、というのが標準的な方法ですね」
「ということは、直接乗り込むのか?」
「ええ、そうなりますね。私は陸戦隊員ですから、当然参加しますよ」
私にそう告げるとデネット殿は、急いでエレベーターへと向かう。私も、うかうかしてはおれない。
◇◇◇
「おい! 今のは何だ!?」
船の後ろから、すげえ音がした。船も大きく揺れる。
「あの軍船、こっちにぶつけてきやがった! 船が進まねえ! お嬢、もうダメだぁ!」
航海士のチコが叫ぶ。くそっ、とうとう捕まっちまうのかよ。だが、あたいは諦めねえ。
「馬鹿野郎! てめえ、それでも男かよ! こうなったら、敵わぬまでも最後まであがいてやらあ!」
「お嬢、どこへ行くんで!?」
「やつら間違いなくハッチから入ってくるに決まってる。そこを、あたいが迎え撃つんだよ」
「迎え撃つって、まさかそのレイピアで?」
「他に何があるっていうんだよ」
「いやあ、だけど……相手は軍人ですぜ!?」
「うるせぇ! あたいには剣しかねえんだよ!」
ベンのやつがあたいを止めようとするが、聞く気はねぇ。自分でも、半ば自暴自棄になりかかってる自覚はある。が、今さら銃なんぞ持ったところで、軍人相手でなくても敵うわけがねえ。ならばここは、あたいの得意技で切り抜けるしかない。
「や、やつら、エアチューブを伸ばしてきやがった!」
「どっちだ! やはり、ハッチか!?」
「当船の左弦、メインハッチに向けて伸びてきてますぜ!」
イサークが叫ぶ。気の小さいチコとランスは、操船盤の前で震えてやがる。ベンとクルスは銃を取り、ハッチに向かう。
あたいがハッチに着くときには、まさにハッチがこじ開けられようとしていた。あたいは、ベンとクルスに言う。
「あたいがまず飛び込む。手出しは無用だ」
「へ、へぇ」
「ただし、あたいが倒されたら、そん時ゃあたいごと撃て。躊躇するんじゃないぜ」
あたいが倒されたときは、剣で敗れた時だ。もはやその時は、剣士としての名折れ。命を惜しむ理由がねえ。
そういや、最近も敗れちゃいるが……いや、あれはノーカンだ。今度は、上手くやる。あたいはそう、心に決めた。
そして、ハッチの扉がこじ開けられた。その隙間から、銃を構えた男が一人、姿を現す。
それを見たあたいは剣を構え、踏み込む。
あたいの技は、目にも止まらねえほどの素早い踏み込みからの刺突。「縮地」と呼ぶその技は、瞬きをしている間にその相手の前に現れ、心臓を貫く。
そのあたいの剣先は、銃に向けられる。
男があたいの姿をまだ認識できねえ一瞬のうちに、あたいの剣はその銃を突いた。衝撃で、銃が吹き飛ぶ。
「動くんじゃねえ!」
あたいは、その男の喉元にその剣の先を向ける。何が起きたのか分からぬまま、ともかくこの男は首の下でギラギラと光るレイピアを前に硬直する。
上手くいった、人質を取れりゃこっちのものだ。あとはこいつを盾に、ここからずらかるとする……
そう思案していた、そん時だ。いきなり、あたいの剣先がはじかれる。同時に、せっかくとらえたと思った男は、向こうに引き込まれていく。
なんだ、何が起こったんだ?
「デネット殿、下がっておれ。こやつ、ただものではない」
代わりに現れたのは、金髪の女。手にはなにやら剣らしきものを持っている。
いや、あれは剣ではないな。どう見てもありゃあ、木刀だ。まさかあんなもので、あたいとやり合おうっていうのか?
「くそっ、上手く行くかと思ったのによ……」
そう返すあたいだが、まだ頭が混乱している。
この木刀の女、あたいも気づかぬうちに近づいて、あたいの剣を弾いた。あたいの剣の届く間合いにあっさり入り込まれたのは初めてだ。女騎士団一の腕と言われたあたいが、なぜこの木刀女に気付けなかった?
あたいは感じる。こいつ、相当強えやつだ。剣こそ木刀だが、構えや動きに無駄がない。
急に背筋がぞくっときた。おそらくこれが、海賊として最後の戦いだ。最後の最後で、あたいはついに自分の剣の腕を目一杯ぶつけられる相手に出会えた。そう確信する。これを喜びとせず、何とするか?
「……アテーナの加護の、あらんことを」
あたいは一旦下がり、剣を顔の前で掲げ、再び突撃する。相手が一流の剣士なら遠慮などしねえ、狙うは、やつの心臓だ。
が、木刀女も同時に踏み込んでくる。気づけば、あたいの目の前。あたいの剣先をその木刀で払いのけようとしていた。
周りのやつらは、止まっている。2人の間にだけ、時が流れている。ゆっくりと流れるその時の中で、木刀とあたいのレイピアが交わる。
信じられねえことが起こる。火花が散った。そんなバカな、あれは木でできた棒だぞ? どうして火花なんか出せるんだよ。
その木刀は火花を散らしながら、レイピアを弾き飛ばす。それがあたいの手首辺りまで達し、抗い難い力で剣が手からもぎ取られる。
カシャーンという音と共に、あたいのレイピアは通路の壁に当たって跳ね返る。それを足で踏んで止める金髪の木刀女は、その木刀の先をあたいに向ける。
「そなたの負けだ、降伏しろ」
後ろには7、8人の軍人が銃を構えている。剣を奪われたあたいには、抗う術がねえ。
そしてあたいらは、その木刀女と軍人どもに、降伏した。




