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最弱能力「毒無効」実は最強だった!  作者: 斑目 ごたく
変わる世界
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一触即発の初対面 1

「おいおいおい?危ないところを救ってやった救世主への扱いがこれか?大した歓迎っぷりじゃねぇか!あぁ!!?」


 開いた門に足を踏み入れた先には、男達が槍を手に待ち構えていた。

 自らで作ったのであろう不格好な槍を構える彼らの目には、怯えと疑いの色が浮かんでいる。

 それは今にもその舳先をアランへと突き出してしまいそうで、とてもではないが魔物に襲われている窮地を救った彼へと向ける態度には思えなかった。


「お、おい!やっぱり魔物なんじゃないのか!?あの凶暴な面を見ろよ、あんなの人間が出来る面じゃねぇって!」

「そ、そうだそうだ!やっちまえ!!」


 そんな村人達の態度に苛立つアランは、彼らを挑発するような言葉を吐くと、その感情のままに表情を歪ませてしまう。

 しかしそのはっきりと敵意を滲ませた形相は、彼らを刺激にするには十分なものであり、怯えた彼らは構えた槍を前へと押し出して、アランを追い出してしまおうとしていた。


「あぁ!!?やんのかこらぁ!!」


 そしてそれを、甘んじて受けるほどにアランは優しくはない。

 こちらへと突き出された槍に、それを自分への攻撃だと受け取ったアランは即座に剣を抜き放つと、その舳先を切り落として見せる。

 そうして逆に彼らへと切っ先を突き付けたアランは、彼らを脅すように声を荒げていた。


「つ、強いぞこいつ!?一人じゃ敵わねぇ、一斉にかかるぞお前ら!!」

「お、おぉ!!」


 突き出された槍を一振りで薙ぎ払って見せたアランの腕前は、彼らに脅威を覚えさせるには十分なものだろう。

 その実力に少数では敵わないと悟った彼らは、今度は一斉に襲い掛かろうと企てている。

 それは完全に全面衝突を意味しており、アランもそれを止めるどころか望むところだという態度を見せている。

 双方の態度にもはや止めようのない雰囲気が漂い、どちらと問わずに互いが一歩を踏み出すタイミングを窺っていた。


「待て待て待てーーーい!!双方とも、そこで止まれーぃ!!」


 恐れる者と怒れる者、どちらが先に一歩を踏み出すかと言われれば、恐らく後者だろう。

 それに違わず、口火を切り足を踏み出そうとしていたアランの耳に、やかましく野太い声が響く。


「この、馬鹿もんどもがぁ!!わしは、こちらからは手は出すなと厳命しておっただろうが!!命令が聞こえなかったのか、貴様らはぁ!!」

「し、しかしですね隊長!」

「しかしもかかしもあるかぁ!!そこに並べ貴様らぁ!修正してやる!!」


 響いた声以上にド派手に、どたどたという物音を立てながら飛び込んできた髭面の大男は、アランと村人達の間に割って入ると、彼らの行動を頭ごなしに叱りつけている。

 そんな大男に対して言い訳をしようとしている村人達の言い分を、彼は聞こうともせずにこぶしを振り上げていた。


「・・・おい、おっさん。急に出てきて、仕切ってんじゃねーよ。大体俺を無視すんな、殺すぞ?」


 そんな大男の蛮行を止めたのは以外にも、彼に急にこの場の主導権を奪われて不満そうな表情を見せているアランであった。

 彼はその大男の背中へと剣先を突き付けると、こちらを無視するなと苛立ちを口にしている。


「む?確かにお主の言うとおりであるな。よし!貴様ら、修正は後にしてやる!!」

「や、やった!助かった・・・」


 背中に軽く刺さってさえいた剣先をまったく気にしないように振り返った大男はしかし、アランの言葉にはもっともだと頷くと、振り上げていたこぶしを収めている。

 その大男の様子に、彼の前に整列させられていた村人達は安堵した様子で息を吐き、それを齎したアランに感謝する様子すら見せていた。


「しかぁし!!それまで反省の思いを込めて、腕立て伏せ!!腕が疲れたら、腹筋とスクワットもセットだ!!ぼやぼやするな、さっさと始めんかぁ!!」

「ひ、ひぇぇ!!?」


 大男からの懲罰がなくなって安堵した村人達は、それを許さない彼によって再び地獄へと突き落とされる。

 もはや問答無用という迫力で迫る大男に、彼らは言い訳すら許されずに地面にその腕を捧げていた。


「・・・それで、おっさん。てめぇは誰なんだ?ここの村長か何かか?」


 地面にその手をついて一斉に腕立て伏せを始めた村人達の姿に、大男は満足そうに頷いている。

 そんな彼らの姿に若干呆れ、少しばかり苛立ちが収まった様子のアランは、大男に彼が何者なのかと尋ねていた。


「んん?いやいやいや!わしはそんな村長などという、大層なものではござらん!ここの防衛を任されておる、ダンカンという者でござる」


 この場に急にしゃしゃり出てきて、それ以降仕切っている様子を見れば、彼がこの村の主なのではないかと疑ってしまう。

 そんなアランの言葉に大男は激しく首を振ると、自分はそんなものじゃないと必死に否定してきていた。


「それでお主は・・・?」

「・・・アランだ」


 自らをダンカンだと名乗った大男は、アランにもそれを訪ねている。

 その言葉にアランがダンカンに倣うように名前だけを返したのは、何も彼を真似したからではない。

 彼は自らの名前がまだ、人からの嘲笑を受ける対象なのかと怯えていたのだ。


「アラン?アランか、そうかそうか・・・ふむふむ、アランでござるか。確かにありふれた名前ではあるが・・・しかしだからと言って、うむむ・・・」

「な、何だ!?何か文句でもあるのか!!?べ、別に俺は変な能力とか持ってないからな!!」


 アランの名前を耳にしたダンカンは、何やら一人でぶつぶつと呟くと何やら考え始めていた。

 そんなダンカンに振る舞いに、彼がかつての自分について何か知っているのではないかと勘繰ったアランは、慌てて聞いてもいないことまで口走ってしまっていた。


「能力?あぁ、ギフトの事でござるか・・・それは別に、どうでもいいでござるが。ん?ギフトを持っているという事は、やはり人間なのでござるか?いや他の種族でも得られるという話は、聞いたことがあるでござるしな。うむむ・・・」

「何だ、違うのか・・・ほっ」


 自らが思わず口走った言葉が、自らの存在を証明してしまう。

 それを恐れたアランは、自らの失言に慌ててその両手で口を塞いでいる。

 しかし当のダンカンはアランに全く心当たりがないようで、またしても何やらぶつぶつと一人で呟き始めていた。


「おっさんさぁ・・・さっきから何か一人でぶつぶつ言ってっけど、さっさとこの状況をどうにかしてくれねぇか?俺はいつまでここにいりゃいいんだよ?」

「お、おぉ!これは申し訳ないことした!う、うむ、そうだな!いつまでも悩んでもしかたあるまいな!」


 ダンカンが恐らく自分の事を知らないと安堵したアランは、そうなればいつまでもここで足止めされ続ける理由はないと彼を急かしている。

 アランの言葉にようやく顔を上げたダンカンは、彼を待たせてしまったと謝ると何か決意したかのように胸を反らせていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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