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最弱能力「毒無効」実は最強だった!  作者: 斑目 ごたく
蜜月
34/61

面倒くさい男

「おい!さっさとここを開けやがれ!!時間がねぇんだよ!!」


 村を囲う防壁に高さに見合ったその門は、見上げるような高さを誇っている。

 それを激しく叩きながら声を掛けるアランは、一刻も猶予もないと焦った表情を見せていた。


「ちっ、いつまで待たせやがる・・・ここならもしかして、結界の範囲内か?こう・・・ギリギリ押し付ければ、どうだ!?」


 彼が焦っているのは、その背中に瀕死の少女を背負っているから。

 声を掛けても中々反応のない門に痺れを切らしたアランは何とかその少女、ブレンダを楽にしてやろうと背中を門の方へと押し付けていた。


「何だ何だぁ?これはこれは、アランさんじゃありませんか?ついさっき出て行ったと思ったら、もうお戻りですか?やはり一人では寂しかったのですかな?」

「はははっ、そりゃ傑作だ!」


 押し付けた門に、ブレンダの表情が若干和らいだように見える。

 それに安堵したアランに、ようやく彼の声に顔を覗かせた村人達の声が届いていた。

 彼らはつい先ほど村を出て行ったばかりのアランがもう帰ってきたことを笑い、馬鹿にしていた。


「っ!てめぇらと言い争ってる時間はねぇんだよ!!これが見えねぇのか!いいからさっさとここを開けやがれ!!」

「これぇ?その荷物に何が―――」


 彼らの言い分は、至極もっともなものである。

 アランがこの村を出て行ったのは、それほど前の事ではない。

 そんな彼がのこのこと帰って来たのだ、それを馬鹿にするのは当然のことのように思える。

 しかし今はそんな状況ではないのだと、彼は叫んでいた。

 確かにブレンダの表情は、門へと押し付けることで若干和らいだように見える。

 しかしそれが万全な状態でないことは、火を見るまでもなく明らかであった。


「アラン殿!?アラン殿が帰ってこられたのか!?あぁ!?そ、それは・・・!」

「おぅ、ダンカンか!お前なら今がどういう状況か分かってんだろ!?だったら、とっととここを開けやがれってんだ!!」


 アランの事を小馬鹿にし、碌に取り合おうとしない村人とのやり取りにも、彼の声は大きく響いている。

 そしてその声につられて、この場へとやって来る者もいた。

 慌てた様子で防壁の上へとその姿を見せたダンカンは、アランが背負っているずんぐりとしたシルエットを目にすると、悲嘆にくれた表情を見せていた。


「わ、分かり申した!!そら、早く門を開けるのだ!!早くしろ!!」

「し、しかしダンカン隊長!彼はその・・・」

「えぇい!今はお主らとアラン殿との確執など気にしている場合ではござらん!!彼の背にしているものが、お主らには目に入らぬのか!!」


 アランに言われるまでもなく、その背にしたものを目にした瞬間からそれ以外の選択肢はなかったダンカンは、即座に門を開けるように部下に命令している。

 しかし彼の部下達は、アランとの確執のために彼を簡単に中へと入れることに躊躇ってしまっていた。


「あれが、何か?ん?よく見ると、どこかで見たような・・・」

「あれはブレンダ殿だ!!彼女は姉君を助けるために、耐毒機能のないスーツでアラン殿に救援を頼みに行ったのだ!!それであのような姿に・・・あぁ、お労しや」

「そんな!?あれが、ブレンダちゃん!?っく、急げ皆!!一刻も早く、彼女を中に運ぶんだ!!」


 その村人は、偶々彼女が外に出ていく場に居合わせなかったのか、ダンカンにそこまで言われてもまだ気づいてはいないようだった。

 しかしそれもその姿をよく目にしダンカンの説明を耳にすれば、もはや疑いようもない。

 アランが背負っているのが、意識を失いぐったりとしているブレンダだと知った彼は、慌てて開門を急がせていた。


「よしっ!ダンカン、後の事は頼んだぞ!!俺は―――」

「アレクシア殿の救出に向かわれるのですな!?」


 開いた門に、すぐさまそれを潜ったアランはダンカンへとブレンダを頼むと、再び外へと駆けだしていく。

 そんなアランの姿に、ダンカンは彼がアレクシアの救出に向かうのだと期待に輝く瞳を向けていた。


「ち、ちげーし!!そんなんじゃねーし!!」


 しかしその言葉が、アランのしょうもないプライドか何かを悪戯に刺激してしまう。

 いがみ合っていた相手であるアレクシアを助けに行くだなどと思われたくないアランは、必死にそれを否定しては足を止めてしまっている。

 それはどう考えても意味がなく、マイナスでしかない行動であったが、もはや口から出てしまったものは引っ込ませることも出来ない。

 ダンカンもそんな彼の反応に、しまったといった表情で固まるばかりであった。


「俺ぁ、あれだ・・・あの・・・そ、そうだ!!あいつが死んじまったらブレンダが悲しむからな!あくまでもブレンダのためだ、ブレンダの!!あいつのためとかじゃねーから!!分かったな!!」


 ダンカンの失言によって足を止め、その場で何やら考え始めていたアランは、ようやく適当な言い訳を思いつくとそれを大声でぶち上げていた。


「・・・?それは結局、アレクシアさんのためでは?」

「い、いかん!!余計なことを言うでない、この粗忽者が!」


 アランが無理やり捻り出した言い訳は、すぐに無理があるものだと分かる代物だろう。

 しかしそれは、彼が前に進むためには必要な詭弁であった。

 その詭弁に対して、小首を傾げてはもっともな言葉を呟く村人が一人。

 その言葉にアランの頬は引くつき、ダンカンが慌ててその口を塞ごうとも、それはもはや後の祭りであった。


「ち、ちげーし!!ほ、本当はなぁ!てめぇらのために遺跡から遺物を取ってきてやるだけだし!!ま、まぁ!?そこに偶々アレクシアがいたら連れ帰ってきてやってもいいかな!?それもあいつの能力が遺物を持ち帰るのに便利だからだぞ!!勘違いすんじゃねーぞ!!」


 鋭すぎる指摘にようやく絞り出した言い訳も通じなくなったアランはしかし、すぐに次の言い訳を思いつくとそれを叫んでいる。

 そうして彼は慌てて駆けだすと、何かを指摘される前にその場を後にしていたのだった。


「・・・もはや、ただのいい人になっているような?そう思いませんか、ダンカン隊長?」

「そうかもしれんが、それをアラン殿の前で言ってはならんぞ」

「?何でです?誉め言葉じゃないですか?」


 アランが捨て台詞のように言い捨てていった言葉は、この村にとってはただの善行でしかない。

 そんな彼に対して至ってまっとうな感想を漏らす部下に、ダンカンが何とも言えない表情を見せていた。


「それはそうなのだが。あの方はその、何というか・・・難しいお方なのだ」

「はぁ・・・そうなのですか」


 ダンカンが何度も頭を傾かせて何とか絞り出した説明は、やはりどうにも焦点の合わないものであった。

 そんな彼の言葉に、部下もまたぼんやりとした感想を漏らすばかり。

 彼らの近くでは、毒気の入ってこない結界内へと入り、応急手当てを受けたブレンダが意識を取り戻し、激しく咳き込んでいる姿があった。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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