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最弱能力「毒無効」実は最強だった!  作者: 斑目 ごたく
蜜月
29/61

蜜月の終わり 1

「あー・・・ったく、一体何度目だよこれ?あいつら全員を食わせるためのもんを、俺一人で取ってこようってのが土台無理な話なんだっての!」


 パンパンに膨らんだ鞄を抱え森の中を歩いていたアランは、その重たい足取りに愚痴を零している。

 彼が言う通り、その物資採集の行程は今日だけで既に数度を数得ている。

 それはあの村で生活している村人の数と、アレクシアのように大量の物資を一度に運べる技能を持たない彼からすれば仕方ないことであったが、それにうんざりしてしまう事もまた仕方ないことであった。


「これをあいつは一人でずっとやってたってのか・・・?幾らそれに適したギフトがあるつったってな・・・へっ、ご苦労なこって」


 重たい荷物をその場に下ろし垂れてくる汗を拭っているアランは、今自分がやっている作業と同じことをずっと一人でこなしてきたアレクシアに対して感心の言葉を漏らしている。

 それは感心を通り越して呆れの色を含んでいたが、それを彼が称賛していることだけは間違いないようだった。


「しかし、俺はいつまでこんな事しなきゃならんのだ?確かに今は俺しか出来ねぇとはいえな・・・そもそも俺はあの村の住民でもねぇし・・・」


 多くはないとはいえ決して少なくもない村人の生活を支える物資を集めるのは、当然ながら重労働だ。

 アレクシアがそれを行えない今、それを一手に引き受けているアランはしかし、その状況に疑問を覚え始めていた。

 そもそも彼はあの村に偶々訪れ、何となく滞在しているだけで別にあの村の住民になった訳でもないのだ。

 そんなアランがこうまで献身的にあの村に尽くす必要があるのかと、彼は思わず顎へと手をやって悩みを口にしてしまっていた。


「ちっ・・・つってもなぁ、あぁも慕われちまうと見捨てる訳にもいかねぇか!あーぁ!人気者は辛いなー!!」


 繰り返される重労働に嫌気がさしてきた様子のアランも、村人達から頼られ慕われるのは気持ちが良かったらしい。

 それは彼が自らに与えられたギフト「毒無効」によって、周りから一気に手の平を返されたように貶められた経験から来ているのだろう。

 それを経験した彼からすれば今の立場は嬉しく、中々手放したくはないものだ。

 それが彼を、無理な重労働へと駆り立てていた。


「さーて、そうなれば早くこいつを持って帰ってやるとしますかね!あいつら喜ぶぞー!なんだって今度はこいつが・・・ふふふ」


 湧き上がった疑問も、自らを慕い讃える大勢の顔を思い浮かべればすぐに霧散する。

 疑念を振り払い休んだことで疲れも取れたアランは、再び荷物を背負い直すと改めて歩き出す。

 その背中の鞄からは、はみ出すようにして山芋のような長細いシルエットが覗いていた。




「はぁ?井戸が枯れちまっただぁ?それを俺に何とかしろだって!?」


 自らが取ってきた成果を誇るように鞄を抱え、それを出迎えた村人達に誇っていたアランは、彼らが口にした言葉に驚きの声を上げている。


「いや、無理に決まってんだろ?何言ってんだお前ら?俺を超人か何かだとでも思ってんのか?俺の能力は「毒無効」であって、枯れた井戸から再び水を湧かせるとか出来る訳ねーだろ!」


 持ち帰った物資に村人達の喜ぶ顔が見れると期待していたアランは、その期待を裏切る彼らの陰鬱とした表情に、思わず持ち上げた鞄をずり下げてしまっている。

 その手から零れ落ちた鞄からはオジギリグサの地下茎、つまり芋が飛び出ては地面に転がってしまっていた。


「それは分かってますって!そうじゃなくて俺らは兄貴に近くにある遺跡の調査に行って欲しいんです!ここの近くに以前住んでいた爺さんから聞いたんですが、何でもここの付近に朽ちた神殿の遺跡があるとか。爺さんの話では、そこに祭られてたのはメイヴィス様かもしれないって話なんです!何か役立つものがあるかもしれないって思いませんか!?」


 アランの持つギフトは、確かにこんなことになってしまった世界では救世主にも思える能力だ。

 しかしだからと言って、それで何でもかんでも出来る訳ではない。

 村人達からの無茶ぶりに呆れた声を上げるアランに、彼らの中から一人進み出てきた青年はそうではないのだと主張していた。


「あぁ?つうと何か?俺にその遺跡とやらに行ってきて、何か役に立つもん・・・それこそ飲み水を確保出来るもんでも取って来いっつうのか?」

「えぇえぇ!その通りです、兄貴!井戸はまだ一つだけ残っていますが、それもいつ枯れてしまうか・・・それで、いつ頃行かれます?私達としては明日にでも・・・」


 近くにある遺跡から役に立つアイテムが手に入るかもしれないという語る村人は、アランに対して期待の瞳を向けている。

 それは彼がまさに救世主として、そこからアイテムを持ち帰ってくれることを期待する視線だろう。


「はぁ?馬っ鹿じゃねぇの、行くかよそんなの」


 しかし、そうはならない。

 アランは彼の願いをあっさりと跳ね除けると、まるでつまらないものを見るような視線で彼らの事を見下していた。


「えっ!?し、しかし兄貴それでは我々の生活が・・・!」

「知るかよ、そんな事。大体よぉ、まだ一つ井戸が残ってんだろ?頼むんなら、それが枯れてからの話じゃね?」

「それはそうですが、既に取水制限は始まっています!皆、喉が渇いても我慢している有様で、このままでは士気が下がる一方です。第一、取り返しがつかなくなってから対応したのでは遅すぎるではありませんか!」


 当然の如くアランがそれを引き受けてくれると考えていた村人達は、彼の返答にざわざわと騒ぎ始めている。

 アランと会話している村人達の代表も、それに引き攣った表情を浮かべていたが、彼はそれでもアランならば引き受けてくれると信じて説得の言葉を続けていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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