敵に塩を送る 2
「あぁもう!そんな御託どうだっていいのよ!!それよりもあんた、さっき食べてた奴どこで取ってきたの!?」
「え、あっちだけど・・・」
「あっちね!」
貴重な食糧の前では、勝負だ何だのは脇に追いやられてしまう。
物凄い剣幕でアランに野草を取った場所を訪ねるアレクシアに、彼は思わず気圧されてその方向を指で示すばかりになってしまっていた。
「あーーー!!!あんたねぇ、まだこんなに残ってるじゃない!!ちゃんと取りなさいよ!分かってんの、こんなのでも貴重な食糧なんだからね!!?」
「あぁ、うん。そうですね、はい」
アランに指示された方向へと歩みを進めると、そこには食用となる野草のヨモギモドキが群生していた。
それを目にして怒りの声を上げたアレクシアは、物凄い勢いでそれらを毟り取ると、アランにそれの大事さを叫ぶ。
その迫力には、アランもただただ頷くしかないようだった。
「で、でもよぉ、アレクシア?俺達、今勝負してんだよな?」
「それが何よ!?」
「いや、何よって・・・普通、敵にそんな情報与えるか?現にそれが食べられる野草だったなんて、俺全然知らなかったぞ?」
アレクシアの迫力に飲み込まれたアランも、一つどうしても気になることがあった。
それはそんな情報を、勝負の相手である自分に教えてももよかったのかという事だ。
「うっ!?そ、それは・・・別に何の問題はないわ!!勝負以前に、これは村の食糧問題に直轄することよ!!大体、この勝負だってお互いに物資を持ち帰るんだから、変なもの持ってきてもらっても困るだけじゃない!!だったら、ちゃんと食べても問題ないものを教えるのは、村の事を第一に考えた行動になるわ!そう考えれば、何も問題ないじゃない!!」
「お、おぅ・・・そ、そうか」
それを指摘されたアレクシアは、自分でも不味かったと思っているのか一瞬言葉に詰まってしまう。
しかしすぐに開き直った彼女は、自分の行動を村の事を考えての事だと大声で誤魔化してしまっていた。
「そんじゃあ、そういう事にしといてやりますかね。サンキュー、ヒント教えてくれて。これで今後が捗るわ。じゃ、そういう事で・・・」
早口で次々と言葉を捲し立てるアレクシアは、反論を許さない。
彼女の言葉を飲み込むしかなかったアランはそれを適当に受け取ると、そのままこれで話しは終わりだとその場を立ち去ろうとしていた。
「待ちなさい、何どっか行こうとしてんのよ?まだ終わってないわよ!」
「は?いやいや、ここはこのまま分かれる流れだったろ?何引き留めてんだよ!?」
「そういうのいいから!!さっさとここに座りなさい!!折角だから、このアレクシア・ハートフィールド様がここで採れる食料と有用な物資について教えてあげるわ!」
「はぁ!!?」
そそくさとその場を立ち去ろうとしていたアランの肩を、アラクシアが掴んで引き留める。
口ではああ言ったものも、ここでの遭遇が予定外のものであったと考えるアランは、そんなアレクシアの振る舞いに驚いた顔を見せるが、どうやら彼女はそうではなかったらしい。
先ほどのものだけではなく、知っている限りの情報を教えると宣言するアレクシアに、アランは信じられないと口をあんぐりと開けていた。
「いやいやいや!流石にそれはやりすぎだろう!!大体、俺はもうこの勝負とかどうでもいいんだよ!!あとは適当にその辺ぶらついて帰っから!そうすりゃお前の勝ちだし、それでいいだろもう!?」
「はぁ!?そんなことされて勝っても、嬉しい訳ないでしょ!?あんたにはこれから私が教えることをしっかり憶えてもらって、真剣に勝負に挑んでもらいますから!分かったら、そこで正座!!」
偶然に遭遇してしまった気まずさに、敵に塩を送ることはあるかもしれない。
しかしそこまで手助けされてしまうと、何かあるのではないかと勘繰ってしまう。
それに何より、アランにはこの勝負に力を入れる理由がすでになくなってしまっていたのだ。
「はぁ!?何で俺が・・・」
「いいから、そこに座りなさい!!じゃあ早速、一つ目ね。ヨモギモドキは分かるわよね?じゃあ次はそうね・・・あぁ、ちょうどそこに生えてるじゃない!これはオジギリグサっていう植物で、このツタの根元から生えてる根が―――」
しかしそうして抵抗を示すアランを無視して、アレクシアは早速とばかりに講義を始めてしまっていた。
彼女は近くの木に巻き付いている蔓を見つけては、その根っこに生えている芋について話し始めている。
(もう勝負はついたも同然だし、これぐらいは教えてもいいわよね?このままじゃ勝負にもならなくて、私の凄さが伝わらないかもだし・・・それに村のためにもなるんだから、問題ない筈・・・だよね?)
勝手に講義を始めたアレクシアに、渋々といった様子でその場に腰を下ろしたアランを前に彼女は訳知り顔でぺらぺらと喋っている。
その目はチラリと、自らが背負っている鞄へと向かっていた。
そこにパンパンに詰められた物資と、アランが背負っている荷物の量を考えれば、勝負は決まったも同然だ。
そうであるならば、これぐらいの甘えは許されるだろう。
そう考えて、アレクシアは自慢げに自らの知識を披露する。
その口元は、自然とニヤニヤと緩んでしまっていた。
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