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第96話 まさかの結果

前回のあらすじ:

威圧に耐えた赤石PTが、レイドボス戦で脱出の指示を聞き入れずに戦い始めてしまう。

しかしずっと耐えきれるわけではなくピンチへ。

そこへ丁度ユウキたちが強化レイドボスを討伐し、赤石PTも全員無事に塔の外へと脱出できた。

 ユウキたちが強化レイドボスを倒すことによって赤石PT側のレイドボス戦を終わらせたとは言え、それで全てが終わったという訳ではない。



 塔から出てきた赤石PTは、直ぐに気を失ってしまった。

 これはこの場で魔法を用いて回復させることもできるものの、精神的な疲労や心理的な後遺症が残ることも考えられる。そのため病院で意識を回復させ、検査をするということになった。

 教会から来た聖女と補助員も病院まで同行する事になり、仮に何かあったとしても強力な回復魔法使いが傍にいるので出来る対処は多くなる。


 また、海藤、増田、瀬川の3人は事情を説明する必要があるため、入試責任者の東京第2大学ダンジョン学部長とスミレと行動を共にする。そして石崎も当然状況の説明に間違いが無いかを確認するために、そこへ同行することになる。



 とはいえこれらはユウキたちにとっては全て他人事であり、本命の試験が終わった今となっては後はのんびりと過ごすだけの事だ。もちろん高校に入ってからも授業はあるため、勉強の手を抜こうなどとは考えていないのだけれど。



「俺たちはやることが無くなったのかな?」


「今日のところはのんびりかしらね」


「そんなことは無いわよ~。折角だからこれ、終わらせてきちゃいなさいな」



 ユウキとタマキがのんびりモードになりかけたところで、スミレから書類を手渡される。



「詳細素質判定?」


「そうそう。迷惑かけられたんだから、おねがい位聞いてくれるわよねってここに居る人に頼んでみたのよ」



 そう言ってスミレは学部長の方を見るが、学部長自身は苦笑いである。



「本来は全体の戦闘試験の結果が分かった後で、合格者のみ人数をまとめて行うのだがな。君達は推薦試験で結果も出しているから早く終わらせてしまっても問題ないと判断したのだよ」



 詳細素質判定の結果は、高校に入った段階で入学した生徒の分は公開される。これはスミレの頃も同じであったが当時は詳細ではなくただの素質判定結果であった。極大から極小迄分かるものの、今の数値ほど正確という訳ではなかった。


 特に今回はサクラの回復魔法力の素質が100という事前情報がある。入学までは教会に目を付けられたく無いので、他の生徒が居ない時にやってしまおうとちゃっかりこのタイミングを利用したのである。

 スミレとしては赤石PTがついてくるパターンも考えていたが、結果的に気を失った上に聖女たちもそちらに同行するという事で実に都合のいい状況が出来上がったのだ。





 *****


 魔道列車でのんびり移動すること約1時間。

 ユウキたちは今回の測定でお世話になる、国立ダンジョン研究所へと到着した。



「何か普通の建物だね」



 3m近い高さの壁に囲まれているものの、中の建物はごく普通の四角い建物である。



「丸かったり三角だったりもっと不思議な建物にしてもいいわよね」


「謎のオブジェとかも欲しいですね」



 そんなユウキの言葉にタマキとサクラも物足りなさを口にする。



「初めて見学に来る子供達も、似たようなことを言うのよ。

 やっぱり研究所というともっと不思議な空間であって欲しいみたいなのよね」



 3人が門で迎えを待つ間、受付の女性も話に混じる。

 国立ダンジョン研究所はあくまで研究機関であり、博物館などのように人に見せるために作られたものではない。ごく普通の建物の中で研究をしているだけである。



「おまたせ。久しぶりだね」



 そんなちょっとした会話で時間を潰している間に、迎えの者がやってきた。

 前にダンジョンボス討伐時に同行した主任研究員だ。



「主任さんお久しぶりです」


「「こんにちは」」



 とはいえ何時会ったかなどという細かい話はお互いにしない。ここは隔離された空間でもなく普通の場所なので、ダンジョンボスの事など話すわけにはいかないのだから。



 主任研究員に案内されて研究所の敷地内を移動する。



「なんていうか、外観通り内部も普通の建物なんですね」



 歩いている廊下には一定間隔で両側に扉があり、中に入らないと部屋の中で何をやっているのかは分からない。



「そりゃそうだよ。研究なんて部署によって変わるし発表するまでは色々と秘密があるからね。廊下を通っているだけで色々見えてしまうのは不味いんだよ」


「でも見学者が来ることもあるんですよね?」


「あるよ。

 でも今回の君たちと僕みたいに、あくまで一部の部屋の研究員の所へ見学に来るだけさ。

 研究所全体で見学を受け入れるわけではないよ。

 さ、ついた。僕の研究室はここだよ、入って入って」



 そうして案内された部屋は、本棚に大量の資料が収まっているまるで書庫のような部屋だった。



「研究室ってこういうイメージなんですね……」


「小さな図書館っぽいわね?」


「不思議な器具とかも散らかって無いですね」



 ユウキたちは思い思いに感想を口にする。



「僕達のグループの研究テーマはずばり、『ダンジョンとは何なのか』だからね。

 所長に連れられて君たちに同行したのはそのためだよ。あんな形でそれを知る存在と出会えるとは、まだまだ世界には知らないことがたくさんあるね」


「あれ?

 だと研究することが無くなってしまわないんです?」


「そんなことは無いさ。

 あくまであれは情報がひとつ手に入ったというだけの事。それが真実であれば今までの資料の読み解き方も変わってくるし、新たに見えてくることもある。

 誰かが言ったことをただ単に信用するよりもね、それを裏付ける資料があった方が納得できるんだよ。

 さて、早速測定しようか。

 誰からやる?」


「えっと、じゃぁ私から。

 それにしてもずいぶん準備が良いんですね」



 先ずは自分からと前に出たものの、その手際の良さにタマキが首をかしげている。

 タマキはスミレから書類を貰って研究所に到着したのはつい先ほどなのに、すでに測定用の魔道具が用意されている状況が気になったのだ。



「ん?

 ああ、僕も朝はダンジョン探索協会本部に居たんだよ。

 今日は例の訓練用ダンジョンの事で話し合っていたからね。それでスミレさんから後で君たちが来るから測定するようにって言われてたんだ。

 訓練用ダンジョン計画はいわば国家プロジェクトだけど、最初の一歩は君たちにかかっているからね。はっきり言ってしまえば、時間の調整は君たちを基準にしているんだよ。

 だからここで君たちが時間的に拘束される日数を1日分削減しておこうと思ったみたいだよ。もしもう1PT来たらなんだかんだ理由をつけて別々に測定するように言われていたんだけどね」


「ああ、そういう事なんですね。

 確かに詳細素質判定は日程が決まっていなかったから、確実に動ける日がいつというのは分からなかったんですよね」


「少人数なら君たちが空いている時に訓練用ダンジョン計画を行ってしまえばいいんだけど、今回は将来のダンジョンマスター候補も含めて大勢連れていく必要がある。当然その人達の日程調整もしなければならない。

 その日に合わせて君たちの都合を空けなければならないとすると、変に勘繰られる可能性が出てくる。そういう配慮なんだと僕は思うよ。

 はい、ではこれに触れてね」



 タマキは指示された球体に手をのせる。水晶のような透き通った丸い球体は、中で不思議な光を放っている。



「はい、終わったよ。

 なかなかに良い素質だねぇ」



 測定結果は紙に出力され、そのうちの1枚がタマキに手渡される。

 そしてタマキがその内容を確認し、ユウキとサクラに見せようとしたところで先に声がかけられる。



「とりあえずは3人とも終わらせてからにしないかい?

 そうすれば僕もお茶を用意してゆっくり話せるんだけど」


「すいません、そうですね。

 次はユウキかしら、サクラちゃんは念のため最後の方が良いかも?」


「ああ、神山さんの話は僕も聞いているからどちらでも大丈夫だよ。

 僕が驚いて各所に連絡するようでは意味が無いからね。とはいえ結果は結果として最終的には報告されるし、高校に行けばそれらは普通に見られてしまうんだけど」


「そうなんですね。

 とりあえず2番手は俺がやります」



 ユウキとしては、自分の素質の事がずっと気になってきた。

 これまで分かっている極小というのは、実際どれくらいの数値なのか。

 スミレに教えられた8種の中で、少なくとも敏捷の素質もそうとう低いのだろうとは思っている。



「はい、終わった……ちょっとまって。

 もう1回測定」



 出力された紙を見た主任研究員は、ユウキの測定を再度やり直す。

 そして再び出力された紙を見て頭を捻る。



「すまない、神山さんを先に測定してもいいかな?」


「はい、構いませんけど。

 どうかしたんですか?」


「測定器が不調なんていう事があるのか分からないが、ちょっと確認したくてね」



 そしてサクラの測定が終わり、紙を見た主任研究員は1枚をサクラに渡す。



「うーん。正しいように見えるねぇ。

 確かに神山さんの魔法回復力は100になってるよ。

 最後にもう1回、並野君の測定を良いかな」


「はい、お願いします」


「……やっぱり測定ミスという訳ではなさそうだね」



 そう言って今度こそ、測定結果の記録された紙をユウキに手渡す。



「え?」


「そう思うでしょ。だから測定し直したんだ」



 結果を見て驚きの声をあげるユウキに、主任研究員が何度も測定した理由を告げる。



「どうだったの?」


「何かあったんですか?」



 結果を見て絶句しているユウキに、タマキとサクラが心配そうに声をかけた。

 しかしそんな2人の声にも、ユウキは全く反応しない。


 ユウキの詳細素質判定結果の書かれた用紙には、次のように記載されている。



 ++++++++++

 ・詳細素質8種判定


  物理攻撃力:0

  物理防御力:0

  魔法攻撃力:0

  魔法回復力:0

  魔法防御力:0

  力:0

  体力:0

  敏捷:0


  総合判定:最弱

 ++++++++++



「「え……」」



 その結果を覗き見たタマキとサクラも、まさかの結果に驚きの声をあげてしまう。

 しかしそんな声はユウキの耳には届かない。



(0って極小じゃなくて皆無とかじゃないの……普通……。

 あ……そう言えば戦闘力皆無ってあったな……でも……えー……)



 その時のユウキは、頭の中で現実逃避の文句を言っているのであった。

タイトル回収!(長かったですね、はい)


さて、ユウキに流れ込んでいる戦闘経験が何に使われているのかとか、素質が無い分何たらかんたらは既に予想できているでしょうがお付き合いください。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] これは、戦闘経験の経験値をどれだけ効率よく身体に反映できるかと言う比率と見るべきか。 少なくとも100が最高値と分かっているなら、サクラは回復系の能力は100%で確実に反映、習得出来る…
[一言] 素質に対しての強化って「足し算」ではなく「掛け算」なんですね。 逆に、ゼロだから「異能」可能になっているわけですか……
[一言] こうなってくると、 (アイテムを使っても戦闘はできているのだから) 測定器には表れない未知のステータスが存在するという新発見ってことなんでしょうね。 今までは詳しい測定結果をする前に、戦闘…
感想一覧
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