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第8話 初めての宝箱、そしてボス

前回のあらすじ:タマキのアレンジスキルでゲートに移動した。

ユウキとタマキのアレンジスキルを用いて魔物を倒した。

どっちも反則級だった。

「あれ? そっちは降りる方向と違うけどいいの?」



 タマキの先導について動いていたユウキだが、タマキが分かれ道を降りる方向とは違う道へと進んだために確認した。

 全階層を把握し続けるのはまだ難しいが、今いる地点から降り口への道は把握している。



「こっちには宝箱があってね。降り口とは違う方だけど見ておいた方がいいのよ」



 ユウキは今までに宝箱という物を見た事が無い。



「宝箱は初めて見るよ」


「お宝は探索の醍醐味だからね」



 タマキにとっても探索で見つける宝箱やドロップ品は楽しみだ。今回は過去にクリアしたことのある初心者向けゲートであり、ユウキの案内の為に連れてきただけだ。

 それでもユウキに楽しんで欲しいと思っている。


 ユウキは宝箱がどのような形をしているかわからなかったため、どこにあるのか上手く把握できていなかった。

 想像できないものを調べることは難しい。一度見て理解すれば、次からはその形を確認すればいい。



「これが宝箱よ」



 タマキはそういって宝箱を指差す。

 半円の筒状のふたが付いた四角い箱。材質は木製の様に見える。



「宝箱って全部こんな感じなの?」


「材質や大きさは違うわね。形はこんな感じよ。少なくとも私が知っている範囲では」


「そうなんだ。これ中だけを回収しちゃっていいの? 開けると罠とかがある場合ってないのかな?」


「やっぱり反則よね、それ。でも回収していいわよ。確かに宝箱によっては罠がある物もあるから」



 回収して確認すると、葉っぱの形をした未鑑定アイテムと表示さている。

 そして収納から取り出して鑑定する。



「最初は未鑑定アイテムになるんだね。毒消し草?」


「そうね。毒を治す草よ。猛毒は無理だけど、それでもいざという時には便利よ。ユウキが持っておいて」


「分かった。持っておくね」



 そして今度は降り口の方へと向かっていく。



「ここがボス部屋。階層ごとにボスが居て、倒して先に進むと次の部屋に宝箱がある。その先が降り口よ」


「ボスというだけあって、今までよりも大きいっぽいね」


「そういうのも分かるんだね。中に入らなくても倒せる?」


「多分。やってみる」



 ユウキはボス部屋の中に入らずに、中のボスの魔石を回収する。



「倒せたよ。魔物自体はまだ中に置いてあるけど」



 タマキは扉を開けて中を確認する。



「ホントね。もうなんていうか、何でもありね」


「まだ弱い魔物なんでしょ。強くなったら分からないよ」


「このゲートには弱いのしかいないわよ」



 苦笑するタマキであった。

 宝箱の中身は、毒消し草が5枚入っていた。

 そして2階に降りると、魔物の種類が違っている。



「もしかしてこの階層のヘビは毒があるの?」


「そういう事よ、だからさっきの毒消し草ね。本当は加工して毒消し薬にした方がいいんだけど、草のままでも効果はあるわ。錬金術や薬学のスキルを持っていたりはしない?」



 ユウキは念のためステータスからスキルを確認する。



「残念ながら持ってない」


「まぁそうよね。結構勉強して初めてスキルが取れるという話も聞くし」


「そうなんだ。この階の魔物は全部回収しちゃっていいの?」


「そうね、特に見せたいものがあるわけでもないし、いいわよ」



 そうしてユウキは魔石の反応に集中し、この階の魔石を全て回収する。

 最後の魔石を頼りにヘビも回収し、蛇の魔物自体も回収。



「この階の宝箱の中身も回収する? 2個反応があるけど」


「もう宝箱にも対応したのね。お願い」



 ユウキは宝箱の中身を回収し、やはり未鑑定アイテムとなっているそれらを取り出し鑑定する。



「今度は両方とも薬草か」



 薬草が1個と薬草が5個。

 5個がボスの後ろの宝箱だ。



「ここは簡単なゲートだからね。初心者向けだし、あまり良いものはないの。だから日曜日の今日でも余っているのよ」


「月曜日リセットという事は、ここは今週誰もやらなかったっていう事か」


「そういう事よ」


「人気のダンジョンは月曜日に人が集まったりするの?」


「中にはそういう所もあるみたい。実際に現場を見たことは無いけどね」



 いくら詳しいとはいえタマキも中学生。月曜の午前中は普通に学校である。



「3階の魔物は、鶏?」


「正解。ミニダンジョンコッコと呼ばれているわね」


「ミニという割にはそこそこの大きさがある気がするけど」



 ユウキは既に、近くに居た魔物を1体回収してあるので目の前に出す。



「それは『ダンジョン外の普通の鶏』と比べてよね。町の中で飼われている鶏は、ダンジョン外の鶏だから。あれは魔物じゃないわよ。ダンジョン外の動物に比べてダンジョン内の魔物は大きいそうなのよ。だから同じくらいの大きさなら、それはミニサイズという事ね」


「なら大きいのも?」


「この階層のボスがダンジョンコッコ。ミニよりは大きいわ。といっても私達の腰位までの大きさかしら」


「鶏としては十分大きいね」


「そうね、せっかくならボスと戦うところを見てみる?

ユウキがやると、またボスが動いているところを見る前に終わるわよね」


「だね。ここから魔石を回収しようかと思った」


「なら、ここはボス以外の魔物をお願い」


「了解」



 ユウキにとって既に慣れた回収作業。魔石を回収し、魔物も回収する。そして宝箱もと思ったところで一度手を止めた。



「ボスの奥の宝箱も回収する?

このゲートの最後だよね」


「それは実際に見ながらの方がワクワクするわよ。ボスの奥の部屋の宝箱には罠はないからね」



 ユウキも何となくそう思っていた。

 しかも今回は宝箱が多い。今やっている作業はとても安全なのだが、確かにワクワク感は減っている。



「了解」



 二人は余裕をもって洞窟の中を歩いていく。

 タマキはあまりにも簡単すぎたか、と少し反省していた。でも普通の戦闘も経験しておいた方がいいわよね、とも思っている。



「さて、ここがこのゲートの最後のボスの部屋よ。とりあえず普通に攻撃してみましょう。魔物の強さを知っておくのも重要よ」


「つまり俺も普通に杖で攻撃するという事ね。結構強い?」


「そうよ、ユウキもその木の杖で攻撃してみて。強さはまぁ初心者がちょっと苦戦する程度よ。直線移動だけは速いから気を付けてね。私は手加減するから」


「分かった、試してみる」



 二人で両扉を開けると、ボスであるダンジョンコッコが部屋の中央で待ち構えていた。

 タマキとユウキが部屋の中に入ると、ボス部屋の扉が閉まる。



「来るわよ、さっきも言ったけど、直線は速いからね」



 タマキが言い終わると同時に、コッコはタマキへと向かって突進する。当然のようにそれを読んでいたタマキ。スッと横にずれると予備として持ってきていた木刀ですれ違いざまに一撃を入れる。

 それを食らったコッコは突進しながら横向きに転倒した。



「こんな感じね。いつもの刀でやったら私だと首をはねちゃうけど、ユウキもやってみてね。良い経験になると思うわよ」



 そう言うと、コッコが起き上がる前にタマキはコッコから離れていく。そしてコッコはユウキの方を向く。



「近くに居る人に向かって突進するの?」


「そうよ、単純でしょ」



 そして再び始まるコッコの突進。ユウキもタマキの真似をしようとするが、避けきれずに突進に巻き込まれた。



「あいたたたた、あれ? 痛くない」


「それが装備の効果よ。防御力が全身にかかっているし、ケガする前に装備が壊れるわ。その程度では多少耐久が減った程度よ。がんばって」


「どう見てもこれ、修行だよね」


「いいじゃない、ちょうどいいんだから」



 そして再びコッコとユウキの戦いが始まる。

 タマキから見れば、コッコとユウキがじゃれあっている程度にしか見えない。攻撃の構えも素人だし、避ける動き見切りも素人。全く武術の心得の無い素人だ。


 ユウキのアレンジスキルが異常だっただけで、タマキが思っていたユウキの動きは本来これだ。やはり修業は必要だろうと確信する。

 しかしアレンジスキル自体はお互いに相性がいい。


 どこにでも行けるタマキとなんでも倒せるユウキ。

 実際にどこにでも行けるわけでもないし、本当に何でも倒せるのかもわからない。しかしそれでも、二人での探索を夢見てきたタマキにとって、この事は予想以上の収穫だった。


 そんな事を考えているうちに、ユウキはコッコを倒していた。

 強化ジャケットと強化ズボンがボロボロになっている。



(あらあら、初心者向けのボス相手に移動装備とはいえ中級シーカーでも使う位の強化装備なのにボロボロね。頑張って鍛えないと)



 流石は素質総合判定、戦闘力皆無だけの事はある。



「帰ったら防具屋に行って直してもらいましょうね」



 ボスを倒して喜んでいるユウキに向かってタマキはそういったのだった。

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