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第74話 2度目のガイド

前回のあらすじ:

小山ダンジョンから東京ダンジョンへの住人移動を後押しした。

 魔の10日間。



 関係者の間でそう呼ばれている小山ダンジョンから東京ダンジョンへの移動作戦は、一ヵ月後には終息した。


 色々と想定外の事態が連続したものの、最終的には予定していた時期よりも早く移動は完了したことになる。

 これは当然、10日間途切れることなく人々が移動し続けた影響によるものである。



 防衛軍の対応。

 これは10日間の24時間体制には全く問題なく対応することができた。

 そもそも護衛の必要がある距離が地球上ではわずか100mが2回だけなので交代で部隊を展開させておくだけで十分である。

 さらにダンジョンの中も出入り口付近は魔物を排除するように土地をかさ上げ整地しており、押しやられた外側の魔物を倒すだけだ。

 ここも交代制で部隊を展開するだけで問題なく対処できた。

 元々約100㎞という距離を護衛しながら移動するつもりだった人数が居るので、防衛軍自体には余裕があったのである


 そして小山ダンジョン側のバスも、問題なく対応できた。

 移動が都市の出入口からダンジョンの出入り口迄という単純な移動であり、さらに並ぶ住人の為に整理券も配られた。これにより整理券を貰った住人は常に並んでいる必要はなく、自分の番付近になるまでは休憩することができた。

 大型バスは防衛軍の兵士でも運転が可能であるため、交代制での24時間運営に支障は起きなかった。


 これに対して大変だったのは東京ダンジョンの方である

 当初はバスによる移動のはずであり、小山ダンジョン出入り口に到着した都市から順に順次移動してくるはずだった。

 そのため小山ダンジョン内での都市単位で移動してくるはずであり、受け入れ体制も簡単なはずであった。バスの出発時間を調整することで、24時間受け入れ続ける等と言う地獄を経験しないですむはずであった。



 交流都市ウエノ。


 東京ダンジョンに入って直ぐの位置に存在する巨大都市で、当然ムーブコア設備である。東京ダンジョン内では中央都市トウキョウに次ぐ2番目に大きな都市であり、都市部の半径は約100㎞。これは魔法都市マジクの10倍となる大きさであり、面積で考えれば100倍である。

 しかし魔法都市マジクが約20万人の人口であったのに対し、現在の交流都市上野の人口は約500万人である。この都市だけで小山ダンジョンの全人口よりも多いとはいえ、面積的に考えれば本来ここまで大きな都市にする必要はない。

 これは過去に、国有ダンジョンでは人口増加のために人口集中を行った時の名残であり、当時は中央都市トウキョウと交流都市ウエノの二つしか都市を用意しなかったのだ。そして二つの都市を際限なく大きくし続けていった結果が今に残るのである。

 当然のことながら今は他にも数々の都市があるため、ウエノの人口は面積のわりに抑えられているのであった。



 そんな小山ダンジョンからの住人を迎え入れる交流都市ウエノは、魔の10日間の辛さを実感した一番の被害者であった。

 先ずは24時間体制などできていなかったところに急に人が到着し続けた。しかも出身都市はバラバラであり、最初の頃は一時住居の配置が出身都市ごとにまとめられない状況となった。最終的にはまとめることをあきらめ、落ち着いてから入れ替えるという対処に切り替えられた。

 さらには備蓄品の放出や、受け入れ後の仕事や学校など様々な問題が起きたが、やはり10日間を乗り切ってから考えるという対処に切り替わった。当初の計画では出身都市ごとにまとまって対処して貰うはずだったので、バラバラになってしまうとマトメ役を選べなくなってしまったのである。



 そんな多大な作業を行っている人たちが居ようと、ユウキたちがやることに変わりはない。スミレ側の新ダンジョン攻略準備が整うまでは、修行と受験勉強である。





 そして月日が過ぎる事約一か月半。

 10月の半ばになってようやく出発の準備が整った。



「さて、行くわよ」



 スミレの号令に合わせて出発する飛行船。

 今回向かう場所は、日光ダンジョンから海底ダンジョンに向かう際に発見したダンジョンである。

 タマキの転移を使えば簡単に向かう事が出来るのだが、今回は極力ボス戦以外は通常戦力での行動を想定している。

 ダンジョン管理室で出来る事を報告するだけでなく、訓練施設『初級コース』をクリアした後であればこういう事が出来るようになるという事も併せて報告するための行動だ。



 今回ダンジョンへと向かうのは、ユウキたちを含めたクラン黄昏のメンバー25人に加えて防衛軍からは神薙中将と秘書の後藤、ダンジョン探索協会からは会長、そして国から要請された国立ダンジョン研究所の所長及び主任研究員が1名の計30名である。


 そして今回の移動手段は、ダンジョン探索協会所有の高速大型飛行船を使用する。200人以上搭乗可能な大型船体の上に時速500㎞程度まで加速できる優れもの。

 小型模型での保管が可能なスーパーレア級の飛行船であり、当然スミレが持つ飛行船よりも上位の物である。



 東京ダンジョンからおよそ150㎞。

 目的地が分かっているダンジョン迄の移動であり、移動経路近くは一度ユウキが魔石自動回収をしながら通っているので魔物が飛びあがってくることもなかった。


 さらにダンジョンの中に入って約5時間。

 初級ダンジョンコアの位置はユウキたちの地図で分かっており、海底ダンジョンではなく地上タイプなので耐水ポーションなどの準備も必要ない。



 移動手段と目的地が分かる地図機能さえあれば、わずか数時間で未知のダンジョンのコアまでたどり着く。この状況を理解した新メンバー達は、訓練施設『初級コース』突破の重要性を実感したのだった。





 その後ダンジョンボスとの戦闘を行うのだが、今回は海底ダンジョンの時とは少しだけ変化を加えることにしている。

 それは、2段階目の開放である。


 海底ダンジョンの時は、1段階目のままいきなり最大値迄エネルギーを供給したが、既に既存ダンジョンでは2段階目以降の開放をしている所ばかりである。そのため今回は2段階目開放後でも100億EPの補充でいいのか、最大値となる200億EP必要であるのかを調べてしまおうというのだ。



「では、供給するわよ」



 今回のユウキたちはあくまで対ボスの戦闘要員であるため、スミレが次々と進めていく。先ずは10億ポイント補充し第2段階の開放。

 とはいえこの段階開放のボスはこれまでも普通に倒せている相手であり、クラン黄昏の通常戦力であっさりと方が付く。


 ユウキから見たらもはや何が起こっているんだろうというレベルの戦闘であり、タマキやサクラから見ても超一流のダンジョンシーカーの『普通の』戦い方を見学できたようなものである。



 2段階目が開放され、初級ダンジョンコアのエネルギー最大値が200億に増えたところで次を試す。

 ……が、100億EP補充した所では変化が現れなかった。



「100億EP固定ではなく、最大値迄補充するという事が条件のようね。次は最大値まで行くわ」



 さらにエネルギーを追加する事100億EP。初級ダンジョンコアのエネルギーが最大値となったことで、ダンジョンボス出現のメッセージが表示される。そして……。



<ダンジョンボス消滅まで残り20000000000>



「さらに長くなったわね……流石は古代エルフ族とやら。

 地球人とは時間の感覚が違いすぎるわ。ボスはどっちの方向?」



 今回はスミレたちもボスと戦ってみることになっている。

 どうせ死んでも入り口に戻るだけなのだ。海底ではなく地上戦なのだから、やれるだけやってみようという事になっている。

 しかし……。



「えっと、こっちとこっちです。

 ボスが2体現れました」



 スミレの声に答えたユウキは、地図上でボスが2体出現しているのを確認したのである。



「そう、2体ね。

 まぁエネルギーを2倍使っているんだし、2倍強くなったよりはましだと思いましょ。

 1体はユウキ君とタマキちゃんでお願い。サクラちゃんはこの間みたいにユウキ君たちへ状況報告の連絡で。研究者の二人はここで待機。私達と会長、中将に後藤さんは攻め込むわよ」



 こうして初めての、ユウキの魔石回収以外によるボス戦が始まったのである。





『こっちのボスは空を飛んでいました。ワイバーンよりも大きくて硬い鱗があります。

 名前は上位空竜グレータースカイドラゴンです』



 スミレたちがボスへと向かっている最中、ユウキからのクラン会話でボスの情報が伝えられた。



「あっちはもう片付いたのね。こっちはまだ向かっている最中なのに」


「まぁ、あいつらがセットになるとこうなるからな。

 それにしても空を飛んでいるのか」



 などと言っているスミレとアヤも空を飛んで移動している。

 クラン黄昏のメンバーがレイドポイントで揃えた装備は全員薄い緑色で統一されており、セット効果には空中移動が付いているのである。地上を動くのと同様に空中を移動できるため、並の飛行装備よりも使い勝手がいいのだ。


 会長は別のセット装備を装着しており、中将と後藤は通常の装備だ。

 それでも当然のように飛行装備は持っている。

 さすがは一流の達人たちである。



「散開!」



 何かが光ったことでとっさに指示を出したスミレだが、全員がその光から逃れるには時間が足りなかった。



「光の咆哮ブレスが来るのね。

 海の中では衝撃波だったから助かったけど、これは厄介ね」



 ブレスによる先制攻撃で、クランメンバー数人と中将が消滅した。



「サクラちゃん、居る?」


『はい、いますよ』


「タマキちゃんに入り口を見てきてもらってくれないかしら。

 メッセージを疑いたくはないけど、一応確認したほうが良いと思うのよね」


『見てきますね』


「あら、来てたのね」


『スミレさん、<魔化>ではその飛行速度について行けないわよ』


「あ、そう言えばそうよね。

 すっかり忘れてたわ」


『では見てくるわね。

 ユウキとサクラちゃんはこのままで。必要になったら呼んで』



 そして入口へと転移するタマキ。

 そこでタマキが見た光景は、ボロボロに破壊された装備に包まれたクラン黄昏のメンバーと、全裸の中将の姿であった。



『入り口にはボロボロに破壊された装備のクランメンバーと、全裸の中将が居るわ。

 どうしてクランメンバーが装備と一緒に転移されたのかは分からないけど』


「はっ」



 タマキの言葉に我を取り戻した中将は、予備の装備を装着する。

 同じようにクランメンバーもボロボロの装備から普通の装備へと着替えている。



「どこか近くに居るのだよな。

 たぶん違いは、彼らは個人依存装備をしていて、私は通常の装備だったからだろう」


『あ、なるほど。個人依存装備だから一緒にくっついて転移してきたんですね』



 タマキは答えながら<魔化>を解除し、普通の状態へと戻って姿を見せる。



「あくまで予想だがな。

 それにしても……何もできんかったな」



 会話している間にも、次々と出現するボロボロ装備のクランメンバー。

 そして全裸の後藤。



「後藤も全裸で来たな。まぁ恐らく予想通りだろう」


「はっ。あれは強いですね。

 空を飛ぶ上に硬くて速い。倒すにはさらなる速度と力が必要です」



 後藤は予備の装備に着替えながら返答し、神薙中将の元へと歩み寄る。



「数はいくら使ってもいいとして、防衛軍の戦力で倒せるか?」


「無理でしょうな。

 あのブレスをかわせるものがどれだけいる事か。しかも移動速度が我々よりも速い為、すれ違った後追いつけませんでした。黄昏のメンバー数人がとりつきましたが、ブレスは収まらず、範囲魔法も使ってきましたので厳しそうでした。私はその範囲魔法でこの通りですが」


「そうか……」


『タマキ、そろそろ戻ってきてー。

 俺達でやらないと全滅しそう。戦場が速く動きすぎていて、俺とサクラちゃんだと追いつけない』


『分かったわ。そっち戻るわね。

 ではまた後ほど』



 タマキは転移してきたクランメンバーや中将たちに挨拶をすると、ひとりユウキの元へと転移していくのだった。





「良かったわ。MVP団体であれば、死んで転移してもちゃんとこの部屋にみんな集まれるのね」



 タマキが戦場に戻り、ユウキとタマキのコンビプレイで魔石を回収したところで前回と同じメッセージが表示された。

 そして管理室へ現れたクランメンバーや中将を見て、スミレは安堵の声を発したのである。



「やぁ、やっぱりまた来たね。

 今度はいっぱい連れて」


「そうだね。えっと、スミレさん。

 時間制限があるので質問を」



 相変わらず何故<魔化>を見破れるのか分からないと思いながらもユウキは<魔化>を解除してスミレに先を促す。

 時間制限があるので、戦場に残っていたメンバー以外も入れたことを喜んでいる場合ではないからだ。



「そうね。ガイドさん、管理人を指定した後でもガイドさんと話せるの?」


「希望があれば可能だよ。

 管理人へ使い方の説明などに通常は使われるんだけどね」


「ではまず私を管理人に指定して」


「他の人はそれでいいんだね?」



 ガイドは周りを見渡し、皆が頷いていることを見てスミレを管理人に指定する。



「指定したよ」



 スミレはステータスを確認し、≪ダンジョンマスター≫の称号が付いていることを確かめる。



「確認したわ。次の質問だけど、何で魔物は存在するの?

 前回の話は聞いたけど、魔力の淀み対策はダンジョンさえあれば問題ないような気がしたのだけれど。実際魔物の発生をオフにできるそうだし」


「最初はね、魔物は存在しなかったんだ。

 ダンジョンの中は無制限の土地と資源に溢れた空間。ただそれだけだった。

 古代エルフ族は元々魔法がつかえたから、それだけで十分だったんだよね。

 でもその星の現地生物たちは違った。最初は無限の資源に喜んでいたものの、自分たちも魔法を使いたいと言い出した。

 そこで用意されたのがダンジョンシステムに組み込まれている魔力流用システムさ。

 自分自身でいきなり魔法を使えなくても、システムの補助で色々と学べるようにとね。このダンジョンシステムを使うために必要な魔力因子を取り込む方法として用意されたのが、魔物なんだ。

 当時現地では体感型アトラクションというのが人気でね。運動不足解消と娯楽のために魔物を倒すと強くなるという仕組みに決まったそうだよ」


「確かに、魔物が居ないとステータスや収納なんかも使えなくなるのよね。そっか……。

 えっと、次はこの管理人室には今ここにいる人達しか入れないという話だけど、ここにいる人がみんな死んじゃった後はどうなるの?」


「ダンジョン外生物はみんな外に出されて、中は新しいダンジョンにリセットされるよ」


「中で作ったものとか設備とか設定とか変更したエリアとかは?」


「全てリセットされて標準状態のダンジョンに戻るよ」


「ダンジョンボスを倒せないで時間が過ぎたら?」


「同じくリセットされるよ」


「ダンジョンボスが居る間に中から誰もいなくなったら?」


「カウントはそのまま続くよ」


「その時にスタンピードは?」


「ダンジョンボス出現中は、スタンピードはないよ。その時に出現中の魔物だけはそのままいるけど倒しても復活しないよ。

 っとそろそろ時間だね。ではまたいずれどこかで」



 その言葉を最後に、ガイドはうっすらと姿を消していった。

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