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第7話 初めてのゲート

前回のあらすじ:ユウキの装備を揃えました。

タマキの装備を披露しました。

 ユウキの装備を揃えた翌日、再びタマキとユウキはギルドの個室に集まった。



「まずはこれね」



 タマキはそういうと、ステータス画面からユウキにPTへの招待を行う。



<タマキからPTに誘われました。参加しますか? はい/いいえ>



 ユウキは視界に表示されたPTの招待メッセージに、はい、と答えPTに参加する。



「PTを組むのなんて、小学校の課外授業でステータスを取得した後に経験して以来だよ」


「あら、そうなの?中1でも課外授業がなかった?」


「その日は風邪をひいてね。いけなかったんだ」


「そうなんだ。さて、では行くわよ」



 タマキはそういうと、アレンジスキルを使用する。

 ユウキには説明せずに。


 ギルドの個室の中を見ていた視界が、突然屋外の景色へと変わる。

 それはタマキだけではなく、ユウキも。



「え?」



 ユウキは驚きの声を上げた。



「驚いた?」



 タマキは笑っている。

 当然確信犯だ。



「驚いた。転移魔法、覚えたんだ」


「似ているけど違うわよ。あれはものすごく高いの。私のはアレンジスキルよ」


「そうなんだ、転移魔法も詳しくは知らないから違いがさっぱり」


「転移魔法は、転移魔法陣という魔道具が設置された場所に転移できる魔法よ。

 転移魔法陣の魔道具はコストも高いからあまり設置されてないし、もちろん維持も必要。そして一度その魔法陣を登録しないと転移できないわ。当然ここにはそんな装置はないわよ。私のは勿論制限があるけれど違う原理」


「へぇ、でもこれが簡単に行き来ができるっていう理由なんだね。さっきの部屋はあのままでいいの?」



 ユウキはギルドの個室のシステムをよくわかっていない。



「あの部屋は今日一日私が借り切っているから大丈夫。帰りも転移で帰れるから問題なし。日帰りで十分な理由の一つね。これがゲートよ」



 タマキが指さした場所には、キラキラと煌く石のような材質で出来た門が口を開けている。



「キラキラしてるね」


「それが目印ね。独特でしょ」


「町の中では見かけないし、どうやってキラキラしているのかもわからない。町の外はほとんど出たことないから」



 町と町の間の移動は、車での移動が基本となっている。しかも舗装されていないどころか道とも言えないところが多く、速度はとにかく遅い。舗装しても、魔物から守ることが困難だからだ。

 そして護衛を乗せて移動する車の乗車賃は高い。

 転移魔法で送ってもらうにはさらにお金がかかる。

 別の町に行くというのは金銭的にもなかなか大変なことだ。


 ユウキはまだ両親が生きていた小さな頃には色々と行ったことがあったのだが、残念ながら景色を覚えているような記憶はない。



「さて、入りましょうか。ここの魔物はかなり弱いのばかりだし、そこまで気負わなくていいからね。先ずは入ったところが広場になっているわ。そこに魔物は居ないから、中で話しましょ」



 そういってタマキが先導し、ユウキと一緒にゲートの中へと入って行く。



「明るい洞窟なんだね」



 中は岩をくりぬいたような洞窟だ。

 床も凸凹していて歩きづらい。



「そうね、ここは洞窟タイプのゲートよ。でも明かりが備え付けてあるから視界は悪くないわ。真っ暗なダンジョンだと、自分で明かりを用意する必要があるの」



 そういうとタマキは収納から魔道ランタンを取り出す。



「こういう物よ。使用すると明かりがついて、使っている間は継続的にEPを消費するわ。手もふさがるし、遠くまでは照らせないし面倒なの。逆に明かりの魔法であれば遠くまで照らせるけど、今度は自分の魔法力を消費し続けることになるわね。一長一短よ」


「なるほど、そうなると役割を分けて魔法力を鍛える人が居れば魔法で補助が便利なんだ」


「そうね、そういう分担こそが最終的にはPT活動の醍醐味だと思うわ。ここは全部で3階層あるの。ゲートから入って直ぐを1階、下に降りるごとに2階、3階という風に表現するわ。塔のように上に上がる時も、入って直ぐは1階、上に上がる毎に2階、3階という感じね。これは門で移動する階層もあるから、地上とか地下とかわからないのでゲートをくぐってからどれだけ変更になったかだけで表現されているの。特殊な場合はそのときね」



 ユウキはタマキの説明を聞きながら、このゲートの中の把握を進めていく。

 収納範囲内にあるものは知覚できる。つまり埋まっている空間と埋まっていない空間も区別できる。通路が分かり、降り口が分かる。

 しかし、集中しないとまだうまく理解できない。


 先に魔石だけの反応は調べたが、そこまでの数は居なかった。

 普段大量のイチゴの魔物の量を見ているユウキのとっては、大したことのない数だ。ユウキにとって重要なのは、回収する回数だけの事だから。


 しかしユウキはまだイチゴの魔物以外の魔石の回収を試した事が無い。切り取る攻撃力はどこまで通じるのか。

 そこだけは一応心配の種になっていた。


 大体把握したところで魔石の反応と交互に切り替え、位置を特定していく。

 全て覚えておくのは難しかったので、近くの処理する範囲だけ優先で覚えておく。



「この通路の先の広間に魔物が7体いるね。蝙蝠?」



 ユウキは何となくわかる情報をタマキに伝えた。



「正解、こんなに離れていてもわかるんだ。ここから倒せる?」


「7体とも倒しちゃっていいの?」


「良いわよ」



 ユウキは知覚を魔石モードに切り替え、広間に有る魔物の魔石を7個回収する。

 無事にイチゴの魔物以外の魔石も回収できてほっとした。



「倒したよ。魔物も回収する?」


「そんなこともできるんだ。とりあえずは見に行きましょ」



 タマキの先導にユウキがついていく。



「ホントに倒してるわね。これだけ離れていて倒せるなら、普段着でもよかったかもしれないわね」


「いや、奇襲とかの事を考えると、やっぱり装備はあった方がいいよ」


「それもそうね。罠とかもあるから、ダメージを装備が引き受けてくれる分助かるし」



 ユウキは罠の事をすっかり忘れていたと自覚した。

 罠だって設置されているなら把握できるはずなのだ。

 おかしな空間や機器があればそれが罠だろう。



「この魔物、はなれていても回収できるの?」


「うん、こんな感じで」



 ユウキはタマキの前で倒した魔物を回収する。



「便利ね」


「これが俺のアレンジスキルだよ。驚いてくれた?」



 どうやらユウキもタマキを驚かせたかったようだ。



「うん、びっくりしたわ。でもそっか。イチゴもこうやってるのね」


「正解。飛ばしてくる前に回収してる。イチゴも魔石もね。だからイチゴが崩れてないんだ」


「いいアレンジスキルになったわね」


「タマキのもすごいよね」


「ふふふ、後でまだ驚かせてあげるわよ」



 タマキはそういうと不敵に笑った。



 さらに通路を進み、次の魔物は1体残すようにタマキが指示を出す。

 ユウキはそれに従い、1体を残して魔石を回収し、そして魔物も回収した。

 広間の少し前に着たところでタマキが再び指示を出す。



「中に1体残っているのよね。私が戦うから見ててね」



 ユウキの予想通り、残った1体の魔物はタマキが倒すと言い出した。



「分かった。でも天井に居るよ?」


「ええ、でもまぁこれ位は余裕よ」



 タマキはそういうと広間の中へと進む。広間の天井には、1体の蝙蝠の魔物がぶら下がっている。タマキは刀を抜いて大きく振りかぶると、その場で振り下ろしはじめる。

 そして刀を振り下ろしている最中に蝙蝠の真後ろに出現し、そのまま刀が蝙蝠を真っ二つにし、落下する前にタマキは地面の上に現れる。



「おっかない事するね」


「どう? びっくりした?」


「めっちゃビビった。ちょっとそれ反則じゃない?」



 そう、タマキは動きながら短距離転移を行った。つまり攻撃をしながら好きな位置へ行けるのだ。ユウキが反則といった意味も頷けるものだ。



「さっきのユウキの見えない攻撃を見るまでは私もそう思ってたわよ。でも相手の傍に行く必要のないユウキの方こそ反則じゃない」



 タマキのいう事の方がもっともだった。

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