第69話 修行と稼ぎとお宝と
前回のあらすじ:
ユウキが雷衣の魔法スクロールを作成した。
キョウイチロウを除く5人が苦戦する中、キョウイチロウだけはあっさりと雷衣を扱えた。
キョウイチロウは気合いだと言うが、オーラという名前で自前の魔法的なものだとスミレが気付く。
そして<魔化>の状態ではあっさり維持できるユウキたちにスミレが拗ねた。
それから3日、ユウキとキョウイチロウ、タマキとアヤ、サクラとスミレという3チームに分かれてムーブコア3個を別々に移動させた。
違う経路に分かれた方が当然ゲートや施設の発見効率が良い為であり、どこかで見つけたらPT会話で簡単にやり取りができるためでもある。
見つけたという話になればタマキが転移で全員回収し、後はユウキとタマキの転移コンボにユウキの魔石回収を合わせて一気にボスの前まで移動。6人そろって初めての制覇をするという流れが出来ていた。
これは魔物や宝箱の回収だけであればユウキとタマキの二人だけで移動したほうが耐水ポーションを使用する必要もなく楽なのだが、制覇時の個人報酬は人数分貰えるために6人で来ているのである。
そして……。
「……8、9、10。10秒達成です」
「「おぉー」」
パチパチパチパチパチ……。
カウントをしているサクラの声が達成を告げるとともに、ユウキとタマキが拍手を送る。
今夜も全員集まって宿泊設備の中にいるところで、お互いの達成報告会が行われていた……雷衣の維持時間の。
しかも雷を纏う雷衣だけではなく、魔力を纏う魔衣も同時発動である。雷を纏う雷衣は速度特化なのに比べ、魔衣は身体能力全般の強化があるようだ。キョウイチロウが言うにはオーラが増えているという事で、やっぱりオーラとは魔力なのではないかという結論により一層の説得力が加わった。
「ふっふっふ。どう?」
スミレはドヤ顔である。
未だにアヤは5秒を突破した所であり、ユウキやタマキ、サクラに至ってはまだ3秒まで維持できない程度だ。
様々な経験を積んできている一流のダンジョンシーカーたちとユウキたちの間には、適応力という意味では大きな差が出ているのである。
「スミレさん凄いですね。
俺達だって<魔化>によって感覚はつかみやすい様な気はしているんですけど」
「そうね、あれが無かったらいまだに動けば消えるほどの維持しかできていない気がするわ」
ユウキの意見にタマキも同意する。
今の計測は、微動だにしない計測ではない。魔衣と雷衣の魔法を使った後に動き回っているのだ。
そこへ……。
「……」
無言で様々なポージングを披露し続けるキョウイチロウ。
魔衣と雷衣を同時発動どころか、魔衣に関しては3段重ねである。
当初魔衣を重ねることはキョウイチロウにもできなかったのだが、いつの間にか出来るようになっていた。コツは相変わらず、気合だとしか分からないのだが。
「あれは放っておくわよ……」
元々オーラという独自の操り方を対処していたキョウイチロウを見ていると、スミレの10秒達成がばからしく見えてしまうのである。
スミレは裁縫士であり、アヤは錬金術士であり、キョウイチロウは格闘家である。これはあくまでダンジョンシステムのクラスの話だが、普段の生活行動の実態もそのままだ。
とはいえキョウイチロウのオーラはクラスの取得とは関係が無く、本人の修行の成果である。別のクラスに変更したところで変わりは無く、オーラに対応するようなスキルがステータスに表示されているわけでもない。
そういう意味ではダンジョンシステムのクラス効果であっさり手に入る能力ではないために修行が必要ともいえるのだが、本来の人間が持つ力として本物の魔法使いの力は確かにあるという結果を示しているともいえる。
「これって、昔は限られた人しかできないような技術だったんですよね?
短時間とはいえそれができるという事は、やっぱり魔法を扱えるようになった影響なんですかね」
「ユウキ君、それはちょっと勘違いよ。
私達が出来ているのは外部から魔法で供給した魔衣と雷衣を維持しているという事で、今のところキョウが言うオーラを発動できているわけではないわ。
あれはおそらく自分の中に有る魔力、いわゆる魔法を使うための魔法力を直接身体強化に結び付ける力だと思うわ。魔衣や雷衣を使わずにあれが出来たら本物の魔法使いと同じ事が出来るようになったという意味ではないかしらね」
「……あ、そういう意味ですね。
俺たちはあくまでダンジョンシステムとしての魔法を使って魔力を自分達に回りから集め、それを操作出来るようになりつつある。だからダンジョンシステムの魔法が無ければまだ意味が無い、と」
「そうね。実際魔衣や雷衣が無かったら今やっていることはまだできないんだから。
とはいえこの<魔力操作>とでもいえばいいのか分からないけど、そういう技術が人間にあるというのは確かね。キョウにも確認したけど、スキルにそんな表示は出て無いから。
これは普通に歩いたり走ったりというのと同じように、人間がやれば出来る事なんだと思うわ」
そして試していることはもう一つ。
「ぐっ!」
構えた剣にスミレは魔力を流し込む。
もちろん魔衣と雷衣を用いて。しかし剣には先端まで雷が届かず、未だ剣の半ばまでである。
これはユウキたちが<魔化>を使用した際は、体だけでなく装備や所持品も魔力状態に変化しており、武器を持った状態では武器にも雷が発生していたことでスミレが思いついたことだ。武器を魔力化は流石に出来ないものの、武器にも魔力は纏わせられるのではないかと。
魔法武器はあくまで武器に魔法の効果がある装備であり、魔装具は装備として使える魔道具だ。それとは別に、外側を魔力で纏ってしまおうという発想である。
体の内側からの力でないものを体に纏わせられるのだから、武器にだって……と単純な理屈で半ば成功しているのは、スミレのずば抜けたセンスがあっての事なのかもしれない。
ちなみにユウキたちもチャレンジしてはみたが、今のところ全くできる気配はない。アヤもキョウイチロウもこれはできていないので、スミレがある意味異常なのである。
そして翌日、とうとうユウキがEP100億ポイント所持を達成した。
「制覇するのは簡単ですが、見つけるのが面倒ですね」
「このダンジョンはまだ、初級ダンジョンコアで段階を1個も開放してないからね。
開放すると、ゲートも施設も数が増えやすいのよ」
途中で報告や集合、制覇する行動が含まれはするものの、探索期間は約3日半。3方向に分かれて見つかったのがたった9個である。
それでも元から貯めていた魔石もEPに変え、スミレたちが手持ちのEPもユウキにある程度集めたことであっさりとたまったと言える。
クラン所持のEPは財務担当にほとんどを持たせていたため、スミレたちの手持ちEPは少なかったのである。
取りに行くか迷ったスミレではあったのだが、どうせなら新発見ゲートや施設のお宝も気になる。特に温泉旅館の宝玉が出ないかとスミレは期待していた。
そしてお宝は出るには出たが、少し予想外の物だった……。
海底ダンジョンの海底ゲートや施設から出るのだから、基本的に水の中で使う用なのだ。ついでに陸上呼吸の魔法スクロールが出た時には、皆で唖然としたものである。陸上生物が水の中で呼吸をできる魔法があるのだから、水中生物が陸で呼吸できる魔法があったとしても不思議ではない。
ただし人間には不要な物なので想像していなかったのである。
武器は基本的に銛等の水中向き物であり、出てくる装備は水中で動きやすい装備。水中移動の乗り物も出て来たが、当然乗り込んだ中も水中である。
そして宿泊施設も出て来たが、水中で過ごす生物の為の宿泊施設に温泉や風呂の設備があるわけもなく、調理設備も当然ない。ベッドがあるわけでもなく、人間が過ごすには不向きだったのだ……残念なことに。
ただしユウキやタマキが使っている思考操作器+2が、+は付いていないものではあるが全員に出たのは幸いであった。いざとなった時にアイテムをいちいち収納から取り出さなくていいのである。
「さて、何か起きるかしらね……」
すでにタマキの転移で初級コア施設へ戻り、最大値迄の不足分EPはエネルギーキューブにして出してある。
後はこれをコアへと接触させるだけの作業だ。
未だにPTを組めているところを見ると、戦闘はまだの様である。
とはいえ、いつ分断されてもいいようにユウキとサクラは<魔化>のエネルギー状態であり、残り4人は耐水ポーションと水中呼吸の魔法使用済み。タマキは会話の中継用である。
ただしスミレの発言通り、ダンジョンボスを倒すという行動がこれで合っているのかは分からない。あくまで可能性の一つである行動をしているだけである。
『では、接触させます』
ユウキがPT会話で宣言し、エネルギーキューブを接触させる。
即座に吸収されたエネルギーキューブ。壁際にある操作画面上ではポイントが一気に最大値に。そして……。
<初級ダンジョンコアのエネルギーが最大値になりました。
100秒後にダンジョンボスが出現します。ただいまより、順次全てのダンジョン内設備が消滅します。
なお、ダンジョンボスに倒された場合はダンジョン入口へと強制転移させられ復活します。その際は収納内の物以外は倒された場所に残されます。
ダンジョンボスとの戦闘を望まない方は速やかに帰還石を使用してください>
いきなりシステムメッセージが表示され、PTが分断されたのだった。




