表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/104

第62話 海と夜空と温泉と2

前回のあらすじ:

温泉で一休みして夜の海岸で楽しんだ。

「えっと、これって俺が地球上の魔物を倒し続けたらっていう話と同じじゃない?

 ドラゴンとかを倒せば地球上で暮らせるんじゃないかって。

 でもスミレさんには、意味がないって言われたよ。100年後、俺がいない世界になった時に困るだけだって。

 一度地球上を取り戻した分、余計に混乱する可能性があるって。

 このミッションに関しても、スミレさんの考え通りダンジョンを破壊するなり制御するなりの状況までたどり着いたとして、俺たちしかできなかったら100年後はどうなる?

 ダンジョンは増え続けているらしいから、結局破壊も制御もできないダンジョンがまた増えてくるだけなんだと思うよ。

 そしてそれを防ぐためには、多くの人がミッションを達成できる状態にならないと意味が無い。

 多くの人がミッションをできる状態になるのが前提なら、今は俺達だけしかできないからと言って俺たちにこだわる必要もない。

 多分そういう結論になると思うよ」



 ユウキの言葉に唖然とするタマキ。

 確かに地球上に出た後で、ユウキがスミレと話していた内容は聞いていた。

 しかし自分自身がその立場にならないと分からない事もある。



「私達しかできないから私達がやらないといけない。

 使命感のような意識に縛られていたのは、私の方だったのね。

 ユウキとスミレさんの話は隣で聞いていたはずなのに」


「俺は直接アレンジスキルの事で言われたからね。

 他の人に誰かが言っていた内容だったら、俺も自分がその立場になった時に同じように考えられたかどうか。

 サクラちゃんは平気だったの?」


「私は2人に付いて来ているだけなので。

 ユウキさんの修行時や、タマキさんの戦闘時に私の魔法や踊りが役立つのは分かってますけど、これってミッションとは関係ないですよね。

 私がいないとミッションが進まないという訳ではないんですよ。たぶんそれでミッションをやらなければいけないという感覚がないんだと思います」



 移動や破壊に必要なのはタマキであり、魔物の対処に必要なのはユウキである。

 ユウキの修行や魔物を倒して戦闘経験を得るという部分においては役に立つサクラだが、ミッションの攻略自体には影響がないついでの作業である。

 サクラにとって、ミッションとは2人に付いていくだけの状況なのだ。



「私は2人と一緒に居られればそれでいいですので、ミッションに行くなら一緒に行きますし、他の事をするならそれはそれでいいんです。3人で末永く幸せに暮らせれば」


「えっと、サクラちゃんには悪いけど、俺は将来的にはタマキを選ぶよ」


「ん? 私? 別にサクラちゃんと3人で暮らせばいいじゃない。

 もちろん私を1番に選んでくれるのは嬉しいけど、それは両立出来る事よね」


「え?

 タマキは2人暮らしじゃなくていいの?

 PTとしてならともかく将来的にも」


「良いんじゃないの?

 サクラちゃんが他の人の所に行きたいならともかく、3人でダメな理由は無いわよね?」



 ユウキとタマキの間に明らかな感覚のズレがある。



「えっと、俺が他の女の子を抱いたりしても気にならないの?」


「ん?

 ……ああ、なるほど。根本的な感覚が変わってしまっているのね」



 タマキは自分やサクラと、ユウキの間にある感覚的なずれの原因を理解した。



「えっとね、ユウキ。ダンジョンシーカーPTにとって、抱いて抱かれては当たり前という話は前にしたわよね」


「うん」


「これは本能的な話だから、魔物と戦い続ける道を選ぶなら本来避けられない道のはずなのよ。極端な安全性や魔物の強さに関わらず倒せるユウキがいる私達の状況が例外という事ね。

 私たちの学校では、PT内で抱いて抱かれてというのは当たり前のことだという教育があったわ。本能で起こることで悪い事ではないって。自然な事なんだって。あくまで将来そう言うことになったときのための思想教育としてだけどね。

 これはサクラちゃんが実際にそうだったけど、本能の部分って一段落つくと治まってしまうみたいなのよ。たぶんその時に、抱いて抱かれてが当たり前の感覚になっていなかった場合、抱かれた後で気まずくなってしまうんだと思うの。

 戦いの中ではその影響が連携にも支障をきたし、あっさりと死んでしまうかもしれない。

 心が折れて魔物と戦う事を止めてしまうかもしれない。たぶんそれを防ぐ目的の教育なんだと思うわ」


「俺たちの方の教育にはそういう思想は無かったかな」


「魔物と戦う事によっておきる本能の部分だからかしらね。

 とはいえ、もちろん好みはあるのよ。PTを組む段階で嫌な人とはPTを組まなければいいんだし。

 でも、たぶん思想の根本がグループの関係なのよ。

 だからトオルにも彼女が一緒じゃないとPT組まないよって言ったでしょ」


「そう言えばそうだったね。あれってPTを組んでいる間だけの話かと思った。

 だいぶ感覚が違うんだね」


「そうみたいね。

 でもスミレさんも言ってたじゃない。1級市民と2級市民の時に。

 私達ダンジョンシーカーだって似たような者って」


「そういうものかなって思ってたけど、実感がなかったかな」


「まぁそういう意味で、私はサクラちゃんと一緒に3人で暮らしていくのは賛成なのよ。

 勿論、ユウキの1番を譲る気はないけどね」


「だそうですよ、ユウキさん。

 私も一緒に居て良いですか?」


「もちろん大歓迎だけど、良いのかな。こちらこそ末永くよろしくね……わぷっ」



 そんな事を話しているユウキたちの元に、大きな波が押し寄せてきたのだった……。



「ふふふ、温泉に戻りましょうか」



 サクラと目配せをしたタマキは、ユウキに向かってそうつぶやく。タマキとサクラの作戦は、まだ終わったわけではない。ある意味本日2つ目のメインイベントがこれから始まろうとしている。





 転移で温泉に戻った3人は、海水の汚れを落とすために洗い場へと移動する。クリーンの魔法で終わらせてもいいのだが、温泉に居るのであればきちんと体を洗いたいのである。

 そして……裸になったタマキとサクラがユウキに襲い掛かる。



「ちょっ。2人ともまた……」


「ちゃんと全身洗いましょうねー」


「ユウキさん、力を抜いて任せてもらっていいんですよー」



 二人は自分の体をユウキに押し付けてのサービスタイムを実行している。



「これ、前に俺の腕が砕けたとか言ってなかったっけ」



 ユウキは気絶してしまったので破壊の瞬間のことは実感がない。魔法で治された後で言われた知識として知っているだけである。



「大丈夫。ほら、体は素直に喜んでいるじゃない」



 タマキはユウキに身体を押し付けながら、手も動かし続けている。



「ちょっと。そこはデリケートな部分……。

 破壊されたら俺、ショック死するかもしれないよ」



 ユウキとて、2人との関係を進めたくない訳ではない。

 それでも、関係を進めるにしても問題がある。一度進め始めると、一気に進めたくなってしまう可能性だ。

 しかしそれは、身体能力的に不可能だろうとユウキは考えている。今のユウキの攻撃力では、2人の防御力を突破する事などできないだろうと。


 魔物を倒しても、2人との身体能力の差は開く一方である。そのためユウキは、魔物が使う魔法の身体強化に期待を寄せている。上手く行けば、自分も身体能力を強化できるのではないかと。

 幸いにも今はタマキの力が強すぎるため、リザレクションがないと万が一に対応できない可能性があるという事で歯止めがかかっている。

 ユウキとしては、リザレクションを手に入れる前に何とか突破口を開いておきたいのだ。


 しかし……。



「大丈夫よ。これ、なーんだ」



 タマキは激しく手を動かしながら、もう片方の手で1枚のカードを取り出す。



「あ……」



 ユウキは見過ごしていた事実を思い出す。

 特殊カード(女神の微笑)。使用場所の限定はあるが、蘇生可能な消費アイテムである。

 魔物の塔はいくつも発見しているし、その度に緊急ミッションが発生し、報酬も手にいれている。カードは既に複数枚、手元にある。

 そしてタマキがいれば、場所など簡単に移動できる。


 タマキとサクラの本日2つ目のメインイベントはこれである。既にユウキの退路は断たれているのであった……。



「だから大丈夫だって。ねっ……あっ」



 タマキとしてはほんのちょっと、軽い気持ちでユウキの大事な部分をピーンと弾いたつもりであった。

 しかし興奮状態にあるタマキは力加減が上手くいかない。



「サクラちゃん!」


「め、メガ・ヒール!」



 強い光と共にあっという間に修復が終わる。

 ユウキは当然のように気を失っている。

 2人は目を合わせ、再びユウキへの行動を再開してから何事もなかったかのようにサクラのキュアでユウキを目覚めさせる。



「あれ?」


「あら、ユウキ。気持ち良すぎて寝ちゃったの?」



 内心冷や汗をかきながらも何事もなかったかのようにごまかすタマキ。



「そうかな?

 確かに気持ちいいんだけど、何かぞぉっとしたような」


「大丈夫よ。ほら。

 全てを私たちに任せてね……あっ」


「メガ・ヒール!」



 刺激を強めようとしたタマキが、再び力加減に失敗する。



「おかしいわねぇ。だいぶ力加減は出来るようになったはずなのに……」


「平常心ですよ、平常心」



 簡単に言うサクラだが、この状況でのタマキが平常心で力を制御することは難しい。



「押し付ける段階はうまくいったのよね」


「握ると力の逃げ場所がないからかもしれませんね。握って動かしたら引っ張ってしまいますし。挟んだり咥えたりも力加減は重要ですし、動かす距離も考える必要がありますよ」



 当たり前のように言うサクラだが、当然サクラにも経験などない。踊り子のお姉さまがたから聞いた話を元にした妄想体験のみである。


 それでも興奮した少女たちの暴走は止まらない。


 この日、サクラのメガヒールは何度もユウキに使用されることになるのだが、幸いにも女神の微笑のカードが使用される事態にはならなかった。

 そしてユウキは危険なときだけ毎回気絶していたので、回復時の記憶自体が存在していない。



 ユウキにはただ、幸せな一日だったとの記憶だけが続いているのであった。

最後当たりのサクラのセリフは大丈夫かな……。

温泉と名が付く回がいきなり変更されたら、運営様から恐怖の手紙が届いたと思ってください。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 複数のプレイは好きじゃないので、話の内容はとても面白いし、続きが気になるけど、ブックマーク外します。 ごめんなさい。 続き、頑張って下さいね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ