第60話 占有ダンジョンを求めて、海へ2
前話の伐採や採取について、ポイント以外にも普通にダンジョン資源に関しては効果がある部分が抜けていました。表現を修正しました。
前回のあらすじ:
ユウキたちの専用ダンジョンを求めて、海へ到着した。
「あー、また魔物の塔がありました」
「そう……行ってらっしゃい」
ユウキの言葉に軽く送り出すスミレ。
既に海に出てから5個目の発見であり、2個目からはユウキたち3人だけで破壊に向かっている。そのため既に、またか、という対応になっているのである。
海上で海の魔物を倒し、通常の魚介も手に入れ食事を終えた一行は、海底ダンジョンの捜索を開始した。
途中魚介を手に入れる際に、水着に着替えたタマキとサクラのアピールにユウキが目をうろうろさせていたりとか、「水着が取れちゃったー」等と言ってビキニトップスを手に持ち片手で胸を隠すサクラにユウキの目が釘付けになったりとか、「手に持っているんだから収納して装備し直すだけなのよ。わざとよ、わざと」等とサクラの行動をユウキにばらしてむくれるタマキの姿があったりしたが、大人たちからは「若いわねー」で流される程度の微笑ましい一幕であった。
探索を再開してすぐに見つかったのは魔物の塔である。そしてその時点で再び同じ緊急ミッションが表示された。
海中という事で、1回目こそユウキたちだけではなくスミレたちも同行したが、ここでは魔物の塔の中も海中となっていた。そのため<魔化>の状態でユウキが魔物をすべて対処し、後は転移でタマキが近づき一時的に肉体モードになって破壊するという安定的な状況を作り出し、それを見て2回目からは付き添う必要性を感じなくなったのである。
海底での活動の際は水中呼吸の魔法を使用していたが、<魔化>の状態では海の中でも普通に何故か呼吸できる。そのため、ユウキとサクラは途中から殆ど水中呼吸の魔法は使用していない。
とはいえタマキだけは水中呼吸の魔法に加えて耐水ポーションも使用している。
この耐水ポーションは水圧の影響も除外する魔法薬で、水深が深くなってからは念のため使用しているのである。今の強化された身体を持つタマキにとって、水深100m程度であれば水圧などは気にしないでもいい範囲である。しかし、流石に水深1000mともなるとそうもいかない。一瞬でも<魔化>を解除して肉体攻撃を加えるタマキにとって、耐水ポーションの使用は必要な措置となる。そして効果は1時間ほどしか持たないため、長時間海底に居るのであれば、効果が切れる前に再使用する必要が出てくる。
これらの状況に加えて緊急クエストの為にPTが分断されてしまうので、魔物の塔の中ではタマキの転移で一緒に移動できないスミレたちの方が足手まといになってしまうのである。
「あ、ダンジョンも表示されました」
そして新たに地図に表示された魔物の塔へと近づいている時、とうとう目的のダンジョンを発見した。
「よかったわ。でも意外と時間がかかったわね」
「そうですね。陸上の方がダンジョンは多いんですかね」
すでに陸地からは100㎞程度離れている。
日光ダンジョンから海側へ一直線に飛んでいる間に3個もダンジョンを発見したのに、海ではここまで移動してやっとである。
「ルート的に偶然なのかもしれないし、魔物の塔が多いことと関係があるのかもしれない。何とも言えないわね。確認しようにも、幅40㎞の地図表示範囲では流石に地球全体を表示させるなんて時間がかかりすぎるわ」
「もっと広範囲に地図を取得できればいいんですけどね」
「そうだけど、おそらくそれは無理な事だと思うわ。本来その地図機能って、訓練施設『初級コース』さえ突破できれば誰でもすぐに手に入れる程度の位置づけよね。だから一人で全域をカバーできるようになんて考えられてないと思うのよ。
自分が行動する周囲だけ分かれば十分なんだと思うわ。飛行魔法も飛行装備も飛行道具もあるんだし、人数さえいればたいしたことではないのよね」
「そう言われてみればそうですね」
スミレの言葉に納得するユウキ。根本的には訓練施設『初級コース』を突破できていない状況が問題なのである。
魔物の塔を破壊し、発見したダンジョンへと向かう6人。
地図を拡大しながらほぼ真上の位置まで移動した場所でスミレがナビに位置を登録すると、そこは水深が約2000mもあるような深海であった。
「これは……普通に探そうと思っても無理な場所ね。
わざわざ耐水ポーションを使ったとしても、海上と行き来するだけで時間をとりすぎるわ。もっと浅瀬にあるダンジョンを考えていたんだけど。
ユウキ君、この距離でも行ける?」
そう言って移動の状況を確認するスミレ。ユウキは現在地図機能上ではなく、<収納>の知覚で実際のダンジョン出入り口を探している。
「大丈夫ですね。見つけました。
ダンジョン出入り口特有のゲートのようなもので反応してくれましたし、対象を絞ったうえで方向が下だと分かればこの距離でも行けるようです。
とはいえどこまで制御できているのかは分からないので、全方位でも行けるのかはよくわかりませんけど」
「スキルの能力的なものだけではなく、使い方が上手くなっているという事かもしれないわね」
これまでの海中探索も、初回こそ海上から潜っていったものの、途中からはタマキの転移目印をユウキがダンジョン出入り口近くに出現させ、そこにタマキがユウキとサクラを連れて転移するという方法を取るようになった。
水の中に転移して問題がないのか。
当然のように発生した疑問ではあるが、サクラが一緒に居るのでテストは簡単な事だった。足だけ海に入るように転移してみれば、何かあってもメガヒールで治せる範囲なのだから。
結果として水の中に転移すること自体に問題はなく、どうやら転移はその場所の物質と入れ替わっているのではないかという推測を得ることが出来た。タマキが転移した瞬間、その場所に足が押しのけたであろう水が出現したからである。
「よく考えたら、空気だってそこに物質はあるのよね。今までも空気が入れ替わっていたから、転移した瞬間に真空状態が発生したりとか、押しのけられた空気の流れが出来たりとかしていないのね」
実験後に発したスミレの言葉は、考えてみればその通りである。
とはいえ転移先は水の中。実際にユウキたち3人が転移をした時にはさらに驚くことが判明した。<魔化>の完全エネルギー状態になってから転移した場合、転移元には転移先の海水すら現れなかったのである。
今一理屈が分からない状況であったが、実際に影響がないなら特に問題はない。
考えるのは研究者に丸投げすることにして先に進むことにしたのである。
「目印の準備は出来ましたけど、行きますか?」
ユウキは空を見ながらスミレに訊ねる。
辺りは既に薄暗くなっており、夕日は沈みかけている。
「うーん、そうねぇ。既に目的地は分かったんだし、一度休憩に戻りましょうか。
海底ダンジョンで何かあった場合、寝る時間がどうなるか分からないし。
ユウキ君はスキル使いっぱなしだから、かなり疲れているでしょ」
探索に魔石回収に魔物回収。
海の上でも海中でも魔物の塔でもユウキの出番は常にある。
肉体的な疲労よりも精神的な疲労が蓄積しているであろうことは、本人以外からでも想像できる。ユウキは他の人では代えの効かない部分を担当しており、その為にどうしても一人疲労が蓄積してしまうのだ。
「そうですね。頭が重い感じがしますし、多分スキルの使い過ぎなんでしょうね。
海底ダンジョンの中で休んでもいいと思いますけど、何かある可能性を考えると先に休んでおいた方が安全かと思います」
「なら安全優先よ。今日明日を急いでいるわけでもないんだから。
むしろ場所さえ分かってしまえば、後はいつでもいいんだしね。どこまで戻ろうかしら」
そうして悩み始めるスミレ。小山ダンジョンに戻った場合は、出入り口で防衛軍のチェックが入る事になる。ユウキたち3人だけなら<魔化>で見つからないように確実に抜けられるとしても、スミレたち3人は上手く抜けられるかどうかは分からない。ダンジョンの出入りチェックは、不審者が出入りしないようにチェックしているため、気配察知などのスキル保持者も当然配置されているのだから。
「昼間食事をした海岸で、温泉旅館の宝玉を使うのは?
あそこなら目印があるから転移できるし。存在力のリセット問題があるなら、途中で立ち寄ったダンジョンを経由してもいいし」
スミレが考えている間にタマキが提案する。その表情には、何故か強い意志が宿っている。
「夜の海とか、いいですね」
そこへサクラも直ぐに賛成意見を追加する。
サクラの視線はタマキを見ており、明らかにタマキを思っての発言だという事も分かる。
「そうねぇ。リセットは昼前にしたばかりだから特に問題ないと思うわよ。
そもそもユウキ君が周囲の魔物は回収してくれているからね。1日くらいではその範囲を超える存在力にはならないわ。
それに貴方たちの温泉宝玉はかなり強力な結界が働いているから、そもそも魔物を引き寄せるかどうかも不明だし、希望通りそこで宿泊しましょうか
問題がでてきたら、魔除けのオーブを試してみてもいいのよね。既に十分な数があるんだし。
それにこれだけたくさん魔物の塔があるんだから、まだまだ手に入るだろうしね」
スミレの決定に異を唱える者は特になく、ユウキたちの初めての地球上での行動は、地球上で1泊するという貴重な経験をすることになったのである。




