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第6話 装備の重さと面積。そして大破

前回のあらすじ:タマキがユウキを待ち構えていました。

タマキはゲートにユウキを連れて行こうとしましたが、ユウキの基本装備を先に選ぶことにしました。

「うん。それらしく見えるようになったわよ。それなら移動用装備も兼ねられていいんじゃないかしら」



 タマキの合格の言葉に、ユウキは内心ほっとした。やっと終わった、まさにその一言だ。


 基本的な魔法使いの服から始まり、一応金属鎧も革鎧も試着した。そして最終的にジャケットなどの移動用の服の中でも防御力がある物に落ち着いた。

 本来戦闘用装備ではない分、ジャケットとズボンは少し値の張る強化装備を用意した。



「魔法使いの服って、基本的にローブ系なんだね」


「そうね、攻撃系の魔法使いも回復系の魔法使いもあまり動かないからね。全身を一つで済ませる方が楽なんだと思うわ。あまり防御力は期待できないけど」


「戦闘用の鎧装備は、動けなかった」


「かなり重いからね、強くなるまで仕方がないのよ」


「これが素質の必要性か。俺には初心者向けの革鎧でも厳しかったんだけど。鎧って、なんというか何であんなに面積が小さいの?やっぱり重いから?」



 そう、基本的に鎧装備は面積が小さい。上の革鎧はブレストプレート、下の革鎧は半ズボンくらいの大きさしかない。

 それでもユウキは金属鎧では立つこともできず、革鎧でもまともに動くことができなかった。



「重さに関しては材料の問題ね。ダンジョン産の資源で装備品に加工されると重いのよ。かといってダンジョン外の資源で加工すると装備できないの。

 面積は大破とかが関係してくるんだけど、ユウキは装備の効果ってわかってる?」


「何か特殊な効果があるというくらいしか」


「そうよね、基礎知識が無いのよね」


「うん、さっぱり。ダンジョン系に関しては勉強したことがほぼないからね」


「まぁ、そうよね。装備はね、例えば手袋を装備しただけで、手袋の防御効果が全身に反映されるのよ。何も着けていない顔とか腕とかなども含めてすべての部分にね。だから装備面積って実は関係ないのよ」


「え?

ならあの革鎧は着けている部分だけを守るんじゃなくて、全身を守っているの?」


「そういう事。例えば私の装備はこれ」



 タマキはそう告げると、一瞬で装備を変更する。



「……一瞬全部脱いだ?」


「あら、よくわかったわね。驚いてそこまで見えないかと思ったわ」


「いや、驚いたけど、何となく服が消えた気がしたから」


「ふふふ、まぁ一瞬だからまともには見えないわよ。そしてこれが私の装備。私は前衛だけど避けるタイプだから軽鎧ね。初心者用ではないけど革鎧よ」


「やっぱり面積が少ないよね」



 女性用はもっと面積が少なかった。



「ええ、でもこれで肌が見えている部分も全部守れているの。カスタムでもっと面積の大きな装備も売られているけど、防御力自体はあまり変わらないっていう話なのよね。そしてもう一つ重要な点が、装備の耐久身代わりね」


「耐久身代わり?」


「そう、自分がダメージを受ける前に装備がダメージを受けてくれるの。そして装備が順番に大破して、全部大破した後は自分自身が傷つくわ」


「つまりケガよりも先に装備が壊れる?」


「そういう事よ。で、装備の壊れる順番は、まずは上下の鎧が同時進行。その後は、足、手、頭の順番なの。壊れて破れてボロボロになった装備が中途半端に体についていると動きにくいのよ。

 それなら壊れたら外れてくれた方が良いわけね。それに同じ材料を使うなら、面積の広い物一つよりも面積が小さいもの二つの方がいいわ。その分軽くて動きやすいし、今みたいに装備しなおしは直ぐに出来るからね」


「でも、色々見えてしまうよね」


「そうね。でも魔物相手に見られたってどうって事無いでしょ。それよりも生き残る方が大事よ。死んでしまっては恥ずかしいとも言えないじゃない」


「そうなんだ。ちなみに鎧の内側に服とかは着れないの?」


「着れるけど、基本的に動きの邪魔ね。魔法使い系の人以外は着ないわよ。魔法使いの服は、普通の服の上に被る前提でのローブだから。あまり動かないからこその装備ね」


「俺の場合どうなるの?」



 ユウキは今、シャツの上にジャケットを着ている。下は下着の上にズボン、足は靴、手はグローブ、頭は帽子をかぶっている。



「ユウキの場合はシャツや下着は実は要らないわ。装備ではないわね。強化革のジャケットが鎧上の効果よ。鎧下も同じく強化革のズボンね。靴は探索者向けの良くあるシーカーシューズ、グローブや帽子も同じね。特殊な装備効果はついていないけど、防御力と耐久はあるから装備としては十分よ。武器はどうする?」


「武器なんてまともに使ったことないよ」


「うーん、なら杖でも持っておきましょうか。歩く時の補助にもなるし、振り回すだけで効果があるしね。刃が付いた武器はきちんと使わないと意味がないから」


「そうだね。まともに剣とか振り下ろせる自信がない」


「その辺はおいおい考えていきましょ。これが初心者用の杖ね。強化木材で出来ている杖だけど、まぁ木の棒よね」



 まさしく見た目は木の棒だ。



「でも持ちやすいし振り回しやすいし良いね。それにこれでも結構重く感じるし」


「とりあえず魔物が近くに来たら振り回すだけでも意味があるでしょ。移動の時邪魔になる場所なら収納すればいいし。おもさは、頑張って」


「がんばります。とりあえずこれで移動用と戦闘用装備は大丈夫かな?」


「本来は他にも薬とか移動に必要なアイテムとかが要るけど、今回は不要よ。まぁ初めてのゲートなんだし、気軽に行って体験できるところを選んであるから」


「お手数をおかけします」


「いいのいいの、気にしないで。やっとユウキと探索できるんだからね」



 タマキはユウキとの探索をとても楽しみにしていた。

 ユウキがやっとダンジョンシーカーへの道を歩み始めてくれた。一足先に進んでいる自分がいっぱい世話をするのだと張り切っているのだ。



「流石に時間的にもこれからは無理だよね?」


「そうね。ユウキ、明日は空いてる?」


「大丈夫。イチゴと魔石を回収しようかなと思っていた位だから」


「なら明日行きましょ。今日は何か他に聞いておきたいことある?」



 ユウキは聞いていいかわからなかったが、気になっているので聞いてみる。



「さっきの早着替えって、どうやるの?」


「服からこの装備に着替えた時のこと?」


「うん、あれって俺でもできるの?」


「出来るにはできるんだけど、着けられるのは装備品限定なのよ。服と下着等の組み合わせは無理なの」


「そうなの?」


「ええ、やり方はステータスの装備の所に装備登録画面があって、セットを作っておくの。そうするとそのセットを選べば、収納の中に有る選んだアイテムを一括装備できるっていう訳。でもそこに干渉する物があると装備できないから、服とかは邪魔になるのよ。だからセットを使う時にはセットボタンの横にある、すべて収納というボタンを使うわ」


「装備部分に服や下着の項目が無いから、これで服や下着は着ることができないという事か」


「そういう事。正確には服や下着を装備として使うなら鎧上、鎧下の部分に装備できるわよ。水着とかね。服や下着も、それだけを着るなら装備できるけど、その上に鎧装備という事は出来ないわ」


「なるほど、そう上手くはいかないか」


「朝起きて楽に着替えるという事は無理なのよ」



 ユウキはタマキのセリフに驚く。



「俺が何考えているか良く分かったね」


「だってユウキ、基本的に怠けたい派じゃない」


「おっしゃる通りで」


「でも脱ぐときは楽といえば楽だからね。お風呂に入る時とか便利よ。あ、それとクリーンの魔法は覚えた方がいいわ」


「クリーン?」


「そう、洗浄魔法。人に使えばそのまま着ている物ごと綺麗にできるし、装備や服、下着、タオル、食器などに使えばそれもきれいにできるわよ。便利な生活魔法ね。洗濯自体が不要になるし、そもそも探索中や移動中などは洗濯自体が難しいでしょ。安くはないけど、今のユウキの稼ぎからしたら大した額ではないわ」


「でも洗濯機の魔道具って売っているよね?」


「あれは大量に洗濯する場合ね。魔道具はEPで動くから、お金さえあればいくらでも補給できる。でも魔法力は回復アイテムを使わないと直ぐには回復しないから、魔法力の保有量を超えてまで使うと逆に高くつくのよ。自然回復で使える分で使えばクリーンの方がお得ね」


「なるほど、他にもそういうのってある?」


「火だって水だって魔法があるけど、とりあえずは必要か実感してからでいいと思うわよ。私と一緒に居るなら、必要になった時に考えても大丈夫だから」



 こうしてユウキはタマキに手を取られながら、一歩一歩ダンジョンシーカーへの道を進んでいくのだった。

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