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第57話 初めての魔物の塔2

第56話のタイトルを初めての魔物の塔1に変更しました。内容は変更有りません。

前回のあらすじ:

魔物の塔に入り、戦闘を開始した。

PT分割についての検討を行った。


「こうしてみると、魔物の強さの違いって分かりにくいんですね」



 ユウキは継続中の戦闘を見守りながら、傍にいるサクラとスミレに話しかける。

 ゲートや施設では階層を先に進むほど魔物が強くなるという単純な判定に助けられていたユウキだが、多くの魔物が同時に存在する状況では全く判断できない状況となっている。

 イチゴの町では周辺のイチゴの大きさや飛距離で多少の強弱は分かったものの、それは相手が動いてこない上に同じ魔物の中での強弱関係を気にした程度である。



「そうねぇ。そのうちある程度は気配で分かるようになるわよ。

 ちなみに中学生ならそんなことは分からないで当然の事だから、今は焦っちゃだめよ。ああやって戦っているタマキちゃんでさえ、実際に攻撃が通じるかどうかでしか判断出来ていないと思うわ。

 ユウキ君なら魔石の大きさでもわかるんじゃないかしら?」


「ある程度大きさが違えば分かるんですが、微妙な線だと何とも言えないんですよね」



 ユウキは今、タマキからの『冷えそうな魔物だけを残して』という無茶ぶりに答えながらアイスゴーレムの残骸に寄りかかっている。

 当初は全ての魔物の魔石をユウキが回収してしまうつもりだったが、雪だるまを見たタマキが戦ってみたいと言い出したのだ。そしてどうせなら冷えそうな魔物は残してと言い出した。今はタマキとアヤ、そしてクラン黄昏のもう一人のメンバーである格闘家の恭一郎も一緒に戦っている。残りはアイスゴーレムの残骸で涼みながらの見学である。

 実際はサクラの分身がタマキのそばで踊っており、スミレは念のためにユウキとサクラの護衛として傍にいるだけなのだが。



「あと今回の事で気が付いたんですが、魔物って生きている間と死んだ後で硬さとか変わっていくんですね。戦っている最中の雪だるまがあんなに硬いなんて思いもしませんでした」



 倒した後の雪だるの表面は手で削れる程度の硬さであった。そのためユウキは当初、かなり弱い魔物だと思っていたのである。



「そうね。魔物の素材自体が硬かったり丈夫だったりという性質を持っている物はあるけど、それでも生きている間はその性質どころではない強さを持っているのは確かよ」


「身体強化のようなスキルが魔物にもあるんですかね」


「同じではないけど、似たようなものはあるのではないかと推測されているわ。

 人間が死んだ場合、蘇生可能な24時間は身体強化によって上昇した物理防御力や魔法防御力は生きている状況と同じままだと言われているの。

 でも24時間を過ぎると、その瞬間にその効果が完全に無くなるようなのよね。徐々にじゃなくて。

 これが魔物の場合、24時間の蘇生の部分はない上に生きている状況からの変化が徐々に起こるようなのよ。<解体>スキルを使用しない場合はその辺を考慮する必要があるのよね」


「人間と同じ仕組みではないんですね」


「そうね。正確には『人間を含めた動物』と『魔物』は違うだろうと言われているわ。違う理由もそういうものだろうという以上の事は分からないし」



 そもそもが突然ダンジョンの中に現れる魔物と、生物として成長する人間を含めた動物では、根本的に存在が別なのだ。差異を比較したところでどうして違うのか等という事は難しい。





「ユウキー、回収お願い」


「了解。クリスタルを壊すのはちょっと待ってー」



 タマキの掛け声に合わせてユウキは倒された魔物を回収する。既に5階の魔物も倒し終わり、残るは最後のクリスタルを破壊するだけである。ミッションの達成条件が確実ではないため、最後のクリスタルを破壊するのとボスを倒すのはユウキ、タマキ、サクラで行う予定である。スミレたちがボスを討伐した場合、ミッション達成になるのか不明なのである。



「破壊していいよー」



 パリーン!


 ユウキの声に反応したタマキが、最後のクリスタルを破壊する。

 その瞬間、最後のクリスタルがあった場所近くに最後のボスが出現する。



「パス。熱そう」



 そしてタマキはユウキの元迄即座に退避し、ユウキに後を任せる。



「あれは熱そうだね。冬ならともかく、夏に近づきたい魔物ではないね」



 炎で出来たトカゲのような魔物。サラマンダーである。

 とはいえ戦わないのであればユウキが魔石を回収するだけの事。

 そしてサラマンダーの魔石を回収した瞬間、全員の視界にメッセージが表示される。



<ボスを討伐しました。100秒後に塔の外へと転移します>



「……魔物の塔をクリアするだけだと、報酬はないんですね」



 ユウキはメッセージが表示されるだけで宝箱が現れない現状を確認する。



「そうなのよ。だからクリアする目的なら、ダンジョン内のゲートや施設の方がいいのよね」


「どうせなら何か欲しいですよね」



 そう言いながらユウキは倒したサラマンダーの素材も回収する。

 スミレの情報によれば、サラマンダーを解体してできる魔炎は鍛冶を行うときに重宝する素材との事だ。収納状態のアイテムもそのまま解体できる為、触らずに回収できるユウキの<収納>はこういう状況でも便利である。



「ミッションの報酬は手に入ったのかしら?」


「まだクリアになっていないんですよね。

 塔から出た後なのかもしれません」



 ミッションの内容は、魔物施設『魔物の塔』の破壊である。現時点ではまだ塔自体が残っているため、外に転移させられた後ミッション達成になるのではないかとユウキは思ったのだ。





<緊急ミッション完了。ミッション報酬を収納内に配布しました>



 全員が塔の外へと転移させられた後、塔が消えるのに合わせてユウキたち3人の視界にメッセージが表示された。ユウキの予想通り、塔が消えたことによりミッション達成となったようである。



「ミッション達成となりました。

 手に入ったのはこれですね」



 ユウキは報酬として手に入ったアイテムを収納から取り出す。それに合わせてタマキもサクラも同じくアイテムをとりだす。

 手に入ったのは魔除けのオーブが3個と特殊カードが3個。

 ミッション報酬にランダムカードと書かれていた通り、特殊カードは3人とも違ったものである。



 ・魔除けのオーブ

  消費アイテム(個人依存アイテム:譲渡不可、所有者以外の使用不可)

  使用地点を中心に半径10㎞の魔物避けの結界を構築する。

  範囲内にダンジョンや魔物施設がある場所では使用不可。

  ダンジョン内や魔物施設内で使用不可。

  魔物侵入不可。破壊不可。10日間で消滅。



 ・特殊カード(女神の微笑)

  消費アイテム(個人依存アイテム:譲渡不可、所有者以外の使用不可)

  魔物除けの結界内に居る全ての者の体力、魔法力を全快にする。

  ケガ、状態異常等も全て回復する。

  蘇生可能な者は蘇生する。


 ・特殊カード(緊急物資)

  消費アイテム(個人依存アイテム:譲渡不可、所有者以外の使用不可)

  魔物除けの結界内に無限の水、食料を出現させる。

  出現した水、食料は魔物除けの結界外に持ち出すことができない。

  収納することもできない。


 ・特殊カード(転移ゲート)

  消費アイテム(個人依存アイテム:譲渡不可、所有者以外の使用不可)

  指定した異なる魔物除けの結界内同士をつなぐ転移ゲートを作成する。

  使用時に両地点を地図上で把握している必要がある。

  双方向移動可能。魔物除けの結界消滅とともに消滅する。



 ユウキが手に入れたのが特殊カード(女神の微笑)、タマキが手に入れたのが特殊カード(緊急物資)、サクラが手に入れたのが特殊カード(転移ゲート)である。



「私が転移で、サクラちゃんが女神の微笑だったら本人の方向性と関係がありそうなのにね」


「そうだね。それっぽいアイテムなのに手に入る人が別という事は完全にランダムなのかな。

 このオーブって、ダンジョン内で使えないという事は地球上限定ってことだよね。

 しかもカードは、オーブで作った結界内での使用限定だし。何に使う目的なんだろ」


「たぶん、復旧か避難目的じゃないかしらね。今の地球では意味がないけれど、もし地球上に都市があったら一時的に結界で守れるわ。そして別の場所にも結界を作ってゲートで避難もできる」



 ユウキの疑問にスミレが答える。



「それにしても、ダンジョンが作られた目的は何なのか、ますますわからなくなってくるわね」



 魔物は明らかに人間を狙っている。

 にもかかわらず、ダンジョンには訓練施設が存在している。そしてミッションが存在し、その報酬はどう見ても人間を助けようとしている。考えてみれば、スキルや魔法も人間を助けるためのものだ。

 魔物は人間の敵。そしてダンジョンも人間の敵、そう思われてきたこの200年。

 新しい事実が判明するにつれ、一概にそれだけとは言えないのかもしれないと思うスミレであった。

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