第54話 初めてのダンジョン外活動2
前回のあらすじ:
ユウキたちがダンジョンの外へ出た。
タマキの転移はダンジョンの外、地球上でも利用できるが、ダンジョンの外からダンジョンの中の目印へと転移することはできなかった。
スミレたちが所有する飛行船に乗った。
「あれ?
魔石の反応が分からない?」
飛行船に乗り込んで暇になったユウキは周りの様子を確認しようとして違和感に気が付く。ユウキの<収納>の知覚は、魔石などの単品にだけ絞り込んで確認すれば、既に半径1km以上は確認できるはずなのだ。これが絞り込まずにいるとそこまで分からない状況になるので、ユウキは処理能力の問題であると考えている。
しかし今は、魔石だけに絞り込んでも反応が見当たらない。
魔石以外に普通の木や石、小動物などは感知できているので、<収納>を用いた知覚自体が効果を発揮していないわけではない。
「ユウキ君。前にも説明したけど、地球上はダンジョン内と違って魔物は復活しないの。今の小山ダンジョン出入り口には防衛軍が大勢いるわ。住民移動時の護衛用ね。だからダンジョン周囲の魔物程度であれば見つけ次第倒されているはずよ。
これから行く方面なら倒されていない魔物もいるはずだから、その時に見つかると思うわ」
ユウキの疑問にスミレが答える。
既にユウキも説明されてはいたが、ここまで魔物の反応が無いとは思っていなかったのだ。地球上は魔物があふれる世界となり、人が住むのは難しい世界と聞いていた。
そのためダンジョンの中同様に魔物を見かけるものだと思っていたのである。
「そうなんですね。なんか聞いた時にはもっと危険な気がしていました」
「地球上で暮らすのは危険よ。
日本だけではなく、世界中であふれている魔物が押し寄せてきてしまうからね。日本の形とか位置とかは習ってるわよね?」
「多少は授業で習っていますが、俺はあまり詳しくないです。俺がいた学校はダンジョンから出る事など想定していませんでしたので、地球上の地理とか歴史はあまり重要視されていませんでした」
「まぁ、そうよね。基本的にダンジョンの外に出ることなんてないんだし。
前にも言ったけど、問題は魔物がどんどん集まってくる事なの。
日本の魔物だけならまだしも、地球上で暮らし続けてしまうと海や大陸側からも来るのよね。地上のダンジョンだけでも手が回らないのに、海の中のダンジョンまで相手には出来ないわ。
そして大陸にはドラゴンが出てくるダンジョンがある。流石にドラゴンを相手にするなんて死にに行くようなものよ」
「俺が囮になってドラゴンを倒したりすれば地球上で暮らせるようになるんですかね?」
ユウキはただ単に魔物を倒すだけであれば種類はもはや関係ないと思っている。
魔石さえ回収すれば死なない魔物は今のところなく、そして魔石を回収することができない魔物も今のところいない。
さらには<魔化>で攻撃を受けることも今のところないので危険な状況とも思えなくなっている。
「うーん、そうねぇ。
……それはやめた方がいいと思うわ」
「そうなんですか?」
「ええ。単純にドラゴンを倒したところで、再び現れるだけよ。
そういう意味ではダンジョンから魔物があふれない様にしないとだめね。
でも今のところ、ダンジョン内で魔物を倒し続ける以外の方法は分からないの。そして仮にその方法が分かったとしても、ダンジョンは増え続けているわ。
それに対して、いくらユウキ君だけが魔物を倒せたとしても、ユウキ君だって不老不死と言う訳ではないわ。100年後にはまた倒せない時代が来ることになる。
そうなったらまた地上を放棄してダンジョン内だけでの暮らしになるから、一時的に混乱させるだけになってしまうわ」
「単純に倒すだけではだめなんですね」
「そうね。
仮にユウキ君の力で再び地球上で暮らしを再開する状況を作れるとすれば、まずはダンジョンから魔物があふれない様にすることができるかどうかが最重要ね。次に新たなダンジョンが追加で発生しないようにすることができるかどうか。
この2つさえなんとかできれば、今あるダンジョンをユウキ君に何とかしてもらって新たなダンジョンが発生しないように対処すれば可能性はあるわ。
でも現実的にそんな方法があるのかどうかさえ不明よ。
そういう意味で一番分かりやすいのは、それなりの人数がドラゴンだって倒せるくらいに強くなる事かしらね。そうなったら他の野生動物と同じで対処すればいいだけになるから」
スミレの言葉を聞き、ユウキの中に一つの考えが形となる。
「例えば俺が強力な魔物から素材を回収して魔法装備や魔装具を作ったりなんて言うのはどうなんでしょう。
これまで3人で戦闘をしてみて、タマキとサクラちゃんは身体能力がどんどん上昇しているのに俺は全く上昇している気配が無いんですよね。それなら魔物を倒して強くなる部分はタマキやサクラちゃんに任せて、俺は素材回収と装備作成などでサポートしたほうがいいのかなと。
上手く開発できれば他の人も使えるようになるでしょうし」
とはいえユウキも強くなることをあきらめたわけではない。
魔物を倒しても強くなれないのであれば、他の方法を考えるだけの事である。特に魔物が使用している魔法に今は期待をしている。当然この魔法に関しても、上手くいったところで他の人が使用すればさらに強くなる状況ではあるのだが。
「それは全体の底上げとして考えてもありだとは思うわよ。
ユウキ君が今分かっている素質って、物理攻撃力、魔法攻撃力、魔法回復力の基本3種判定だけよね?」
「はい」
ユウキはあくまで中学入試で素質を測定しただけである。
「小山ダンジョンでは、高校入試の時に8種判定の魔道具を使っていたはずなの。
物理攻撃力、物理防御力、魔法攻撃力、魔法回復力、魔法防御力、力、体力、敏捷の8種ね。これが極小から極大まで判定されるわ。
東京ダンジョンも昔は同じだったはずだけど、今は中西伯爵が言っていた詳細な素質判定機があるという話ね。数値で測定できるという話だけど、私も使った事が無いから詳細までは分からないわ。
それを見て考えてもいいかもしれないわね」
「やっぱり敏捷に関する素質もあるんですね。
2人はどんどん速く動けるようになっているのに、俺だけは変わらないなーとは思っていたんですが」
「そうね。
それにさっきの8種に関しても、魔道具で測れるのがそれだけであって、もしかしたらさらにほかの部分にも関係があるかもしれないわ。
私達が知らないだけで」
あくまで道具で表示されているからわかるだけの事である。
「「「あっ!」」」
そんな移動中の会話でユウキとスミレが盛り上がっている最中の事、ユウキ達3人の視界に突然メッセージが表示される。
<緊急ミッションが発生しました>
ユウキ達は共通ミッション関連の事だと思い、ステータス内のミッションについて確認する。
・緊急ミッション
魔物施設『魔物の塔』の破壊
報酬:魔除けのオーブ、ランダムカード
「どうしたの?
3人とも急に驚いたと思ったら黙り込んじゃって」
ユウキ達は視界にメッセージが表示されているからわかるものの、その他のスミレたちには状況が分からない。
「緊急ミッションというものが発生しました」
それに対して今まで会話をしていたユウキが説明をする。
「緊急ミッション?」
「はい。”魔物施設『魔物の塔』の破壊”だそうです」
「魔物の塔ね。近くにあるという事かしら」
「地図に表示されていますね。というか、タイミング的に地図に表示される位置までたどり着いたから発生した様な気がします」
そうしてユウキは魔物の塔の方角を示す。
「ああ、あの山の奥側にあるのね」
「報酬がミッションポイントではないんですよ。
魔除けのオーブ、ランダムカードって表示されてます。
どんなものかはわかりませんけど」
「そう。
アイテムであることに何か意味はあるのかしらね。
ミッションポイントによる機能開放はあくまで共通ミッションという事かしら。
それに緊急という事は、こっちの方が重要という事かしらね。
魔物の塔はそこそこよくある物だから、中の魔物のボスを倒せば破壊できることは知られているわ。
今は日光と呼ばれていた地域にあるダンジョンを調査する予定だったけど、先に魔物の塔から片づけましょうか」
こうしてユウキ達は魔物の塔へと向かう事にしたのである。




