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第40話 小山戦争1

前回のあらすじ:

神器を手に入れた。

模擬戦争への協力のために防衛軍と合流した。

「戦争っていうけど、やっていることはただ単に魔物を倒しているだけだよね」



 ユウキは木の杖でベビータートルを倒しながら声をかける。



「そうね。そもそも私達が知っている戦争って、授業で習った歴史の知識だけよ。それも数百年前のまだ地球上に人類が暮らしていた時代の。ダンジョンをめぐる内戦があったという話はスミレさんから聞いたけど、まだ授業ではやってないし。

 スミレさんが今の人類にそんな余裕は無いというなら、そういうものなのかもしれないわね」



 ユウキの雑談に、タマキも木刀でベビータートルを倒しながら答える。



「土地や資源が不足しているわけではないですから、人口を減らしてまで勝ちたいわけではないという理屈も分かりますね。勝っても負けてもお互いに手に入れる人口差は少しだけですし、それ以上に人口が減る本当の戦争をする意味はないかもしれません。

 戦争を決める、上の方の人にとっては」



 サクラも二人のそばで踊りながら会話に加わる。



 3人は今、模擬戦争の一部である対魔物戦用の緑ゲートをくぐった中にいる。

 スミレに連れられて神薙中将との面会を終え、模擬戦争の条件を聞いた翌日である。



「いつもと違う武器だから、どこまで私が倒せるか。

 スミレさんにも言われたけど、それまではユウキの魔石回収はまってね。

 邪魔の入らない戦闘経験稼ぎだから」



 タマキはいつものハイレア級の太刀ではなく、木刀を装備している。

 これはゲートに入った最初の部屋に備えられている装備で、このゲート内では手持ちの武器や盾、そして鎧上下、足、手、頭の装備は最初の部屋に置いてある装備しか使用できないのだ。

 アクセサリーやオプション装備はそのまま使えるので、3人にとってはタマキの武器以外は影響がない。対魔物結界の指輪がある時点で防具はただの飾りなのだから。



「ここってどう見ても訓練施設だよね」


「そうね。入ってすぐに装備も用意されていて、死ぬことは無い。

 さらに最初の魔物はベビータートルと誰でも倒せそうな弱い魔物。

 しかも最初の部屋は1体、次が2体、3体、6体、そして今の10体。

 だんだん数を増やして行くのもどう見ても訓練だと思うわ」



 ユウキの言葉にタマキも同意する。



「入り口近くに訓練施設。

 ダンジョンって、なんのために有るんでしょうね」


「ダンジョン入り口には石碑もあるし、EPで帰還石も手に入る。

 何か意図はあるような気がするけど、作ろうとして作れるようなものでもないよね」


「色々と都合が良すぎる気もするけど、実際は魔物に追い詰められている人類。

 かろうじてダンジョンの中で生活はできているだけ。

 中途半端というか、良く分からないわね」



 そんな話をしながらもゲートの中を進む3人。

 たどり着いた1Fの最奥の部屋は休憩室だった。



「ボスが出るのかと思ったら、休憩室なんだね。

 この先に下へ降りる階段がある。

 ここでは装備を全部脱いでも大丈夫みたい」



 ユウキは部屋の案内を確認しながら二人に伝える。

 このゲート内では装備全損ではじき出されてしまうため、迂闊に装備を全部脱ぐわけにはいかない。つまり野営を行うにしても、通常の戦闘エリアではどこかの部位の装備をつけておかないといけないのである。



「下の階層も同じ構成の作りになっているから、多分各階層の最後が休憩室かな」



 既にユウキは収納の知覚で先の構成を把握しており、魔石の数もやはり順番に1個、2個、3個、6個、10個と反応が同じである。



「まだ休憩には早いし、行けるところまで行きましょ」



 まだゲートに入って1F進んだだけ。

 ユウキが既に5Fが最下層だという事をつかんでいるため、全体的なイメージも問題ない。

 とはいえ各階層同じ構成の一本道なのだけれど。





「緑ゲート5Fの時点でオークとは。

 タマキ、木刀でも倒せるようになったんだね」



 緑ゲートの最下層まで到達した一行、いまだにユウキの魔石回収は使わずにタマキが戦闘を続けている。



「いつの間にかだいぶ強くなってたようね。

 さすがにハイレア級の太刀のように、首を一撃という訳にはいかないけど」


「でも木刀で倒せるなんてすごいですよ」


「ありがと。

 サクラちゃんの踊りのバフもあるけどね。

 というか、サクラちゃんの忍術の成長がすさまじいわね」



 タマキの言葉に照れる4人のサクラ。

 分身の術である。

 それぞれのサクラは先ほどまで別パターンの踊りをしており、複合効果のバフを形成していた。



「歌と演奏のスキルも取れれば、踊りと合わせて上位バフの舞台が発動するんですけどね。

 今はまだスキルが無いので、歌は気分だけで踊りの種類を変えていますけど。

 演奏は楽器を持ってきていませんし、練習すらできません」



 タマキが中心となって魔物を殲滅しているため、PTを組んでいる3人に戦闘経験が入ってきている。そして戦闘経験を積むと、スキルは成長する。

 材料の要るタマキの錬金術とは違い、魔法力で発動するサクラの忍術はどんどん先に進んでいるのだった。






「私の方は、新しい錬金術のレシピは増えてないわね」



 5階のオークを突破し休憩室までたどり着いた3人は、黄色ゲートへは入らずに温泉旅館の宝玉を使って休憩している。今回のゲート突破は1週間以内と言われているため、時間的な余裕はあるのだ。

 むしろタマキの攻撃が通じない魔物まで到達した場合、攻撃手段がユウキの魔石回収になるので一瞬で終わる。つまり今よりも移動速度が上がるのだ。

 のんびりするくらいでちょうどいいのである。



「やっぱり解放されたレシピの中で作れていないものがあるからかしら」


「私の忍術も、解放されたものを一度すべて使わないと次が出てきませんでしたね。一通り使ったらいきなり増えたのでビックリしました」


「下級ヒールポーションと下級キュアポーションは作ったけど、下級マジックポーションは手持ちに材料が無いのよね。これが終わったらギルドで買える物を買ってどんどん作ってみたいわ」



 魔物の素材であれば、悪くならないものはそこそこ保持している。しかし下級ポーションの材料となるような薬草類やキノコ類は、宝箱の中か、魔物からのドロップか、採取にて獲得するかなのだ。

 残念ながら手持ちの種類や数は少ないのである。



「タマキがヒールポーションをどんどん作れるようになると、俺の修行もはかどるよね」



 ユウキは、運動をしては回復魔法やヒールポーションで体力を回復させるという修行をしているが、今の使用方法ではギルドの入荷よりもユウキの消費の方が早く、手持ちの数がどんどん減っているのだ。

 自分達で作れるのであれば、その方が量を確保できるのだ。



「材料を買ったとしても、作るのに時間がかかるし魔法力もいるのよね。

 例えばヒールポーションは薬草と蒸留水を入れ物に入れたまま錬金釜に入れて、魔法力を使用してスタートするとタイマーが働くの。

 昨日は約1時間で出来たけど、今は約30分というところね。これは<錬金術>スキルが成長したという事かしら。どっちにしても私の魔法力の限度もあるし、材料があっても無制限には作れないわよ」


「都合よくはいかないか。

 そういえば俺の<解析>も成長しているみたいで、魔法陣の解析ができるようになったみたい。昨日取り込んだ魔法陣を解析してみたら、魔法陣のパーツごとに分離させて意味が分かるようになった。

 魔法陣って、意味のあるパーツとそれを配置する位置や線でつなぐ経路で出来ているんだね。

 帰ったら魔法のスクロールを解析してみたいな」



 ユウキも【神器】万能工作機を操作しながら今日の成長結果を説明する。



「魔法陣の解析って、それだけですごいんじゃない?

 ユウキ、<解析>ってスキルよね。だったらこれも解析できない?」



 そう言ってタマキはユウキにヒールの魔法を使用する。



「あ、できるね。ヒールの魔法陣か」



 魔法を使用する際に現れる魔法陣を解析したユウキは、タマキにそう告げる。



「ちなみに工作機には登録された?」


「されてるね。これって俺が魔法陣として認識すれば登録されるのか。

 俺が魔法として使えるようになるわけではないみたいだけど」



 そして3人が持つ魔法を使用しながらユウキがどんどん解析を進めていく。

 サクラが使用する忍術も、魔法陣が出現しているので同様に解析が可能だった。

 既にユウキが覚えている魔法でも、魔法陣を表示させてスキルで解析させるまでは【神器】万能工作機に魔法陣としては登録されないことも判明した。

 そして登録された魔法陣をさらに解析してパーツ毎にばらばらにし、別の組み合わせや配置、経路をつないだりを試みる。

 出来上がった魔法陣を解析すると、魔法として発動するかしないかという結果も判定できた。



「応用魔法を作るっていうのはこういう事なのかな。

 新たな魔法陣を作れても、俺が実行できるわけじゃないのが悲しいけど」



 道具に組み込むにしてもスキルが要る。

 生産系のスキル取得が待ち遠しいユウキであった。

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