第3話 アレンジスキルの真価
前回のあらすじ:アレンジスキルを実際に使用してみました。
魔石の回収というヒントを貰いました。
「イチゴの回収ばかりに夢中でさ、魔石の回収の事なんてすっかり忘れてたよ」
「あらら、もったいないわねぇ。魔石も回収すればさらに収入が増えるわよ。
魔石というかエネルギーキューブは納品クエスト扱いにはなってないけど、いつでも買い取っているからね。自分で使わないと思う余分な分だけでも売るといいわよ」
「確かに。明日はイチゴだけではなく魔石の回収も忘れないように気を付けてみるよ。ありがとね、ではまた。この後もがんばってねー」
(魔石を回収すれば魔物は死ぬ。つまり魔物の討伐という事だ。
そして討伐し続ければ、身体強化で強くなる。
素質は最弱でも、数をこなせばきっと。
スキルを何か覚える事ができるかもしれない。
これはなんだかすごいことになってきた気がする)
この事に気が付いたユウキは少し興奮気味にギルドを後にした。
約80万Pの収入。このポイントはダンジョンポイント(DP)と呼ばれ、1Pが1円として換算される。いわゆる電子マネーというもの。
ダンジョン探索協会が大元で、しかも後ろ盾が国。 ほぼ現金である。
実際にATMで現金として引き出すことが可能で、ライセンスカードでの支払いに対応しているところでは、そのまま支払いに使用することも可能。
このダンジョンポイントでの買取に関しては、シーカーライセンスのランクによる税金を納めるという形で統一されており、その他の収入とは完全に別となる。
確定申告などの面倒な手続きは不要となり、またどれだけ高額の収入であろうがランクによる税率以外は関係がない。Fランクで20%、Eランクで15%、Dランクで12%、Cランク以上で10%となる。
高ランクの高収入者にとっては累進課税の所得税よりもはるかに安くなるため、ダンジョンポイントでの買取が基本となっていた。
(さて、明日も再び実験だな)
ユウキは魔石の事なんて全く思いついていなかった。
(言われてみればなぜ思いつかなかったのか。タマキに感謝だな)
そしてユウキは思った。
(ダンジョンシーカーの国家ライセンスは厳しいけど、限定シーカーでなら生きていけそうだ)
かつて諦めてしまった夢、ユウキは少しだけその場所に近づいたような気がした。
(普通に就職して、これ以上稼げるような先は思いつかない。
そして俺のアレンジスキルなら、まず危険なことは無い。
可能性としては、イチゴがあふれてもう買取は要らないといわれる事があるかもしれない。
まぁ、それでもそうなるまでに十分稼げるだろうし、定期的に需要はあるだろう。
魔石が回収できれば、魔石を回収するだけでもいい。
この方法なら、体格や素質なんて関係ないし危険も全くない)
そして翌日、ユウキは再び町の外を探索する。
今回のメインは魔石の回収を試す事だ。ユウキはこれ次第で色々と応用ができるだろうと考えている。
(まずは実験だ)
弱いエリアの人気が無い辺りで実験を開始しする。
(はじめはイチゴの魔物本体の収納)
失敗。
(やはり生きている魔物をそのまま収納することはできないか)
当然である。
これができるならアレンジされていない通常の収納スキルでも、触れば収納できるという事になる。生きている魔物を収納することはできないと既に知られていた。
(次は魔石を避けてのイチゴとツル部分の収納。部分出納のアレンジの影響なのか、魔物の体の構造が何となくわかるな)
成功。
ユウキは収納したツルとイチゴを取り出してみたが、当然動かない。
(魔石から離れた部分は多分死んだ扱いという事か何かなのだろう。
次は魔石を含むイチゴとツルの収納)
失敗。
(本体と魔石が一緒の間はまだ生きている扱いになるのかもしれない)
魔石が埋まっているのは茎のような部分。
さらに実験は進む。
魔石を含まないイチゴとツル、根の方も含めて次々と回収。すると少しして残っていた魔石を含む本体側も動かなくなった。その状態であれば収納可能であった。
(おそらくは魔石が魔物の中にある間は、生きている状態に限り収納不可能というようなものなのだろう。 他の人だって魔物を収納するときに、倒した後いちいち魔石を外して収納とかしていないだろうしね。多分)
実際にその通りである。いちいち魔物を倒した後に、魔石を取り出してから収納という手続きは踏まない。
魔石だけが欲しい場合を除いては、解体は安全なところまで運んでから行うのが基本となる。
(最後は本命。魔石のみの収納)
成功。
(よくわからないが、魔石のみなら抜き出せる、そして残った部分は死ぬ。
そうなると残った部分も収納可能、ということかな? 実験結果から考えると。
収納できた場合にその対象が生きている結果だとだめ、とかそんなような判定なのかもしれない。
元々魔石自体は収納出来るしね)
ユウキは本命の成功に安心した。
(取りあえずは何となくの状況は分かったし、実用上問題はない。あとはこれを繰り返して身体強化に影響があるか、そしてスキルを取得できるかどうかだ)
そしてユウキはイチゴと魔石を次々と回収して回る。実験で回収したツルや根の部分は捨てていく。納品対象ではないし、買取も期待できないので当然の対応だろう。
昨日と同じように、弱い方から強い方へと移動しながら次々と回収。
とは言えできる限り強い方で回収したいとユウキは思っている。
これは同じ1回の回収なら、大きくて重い方が回数的に楽だからだ。当然買い取る方だって美味しい方がうれしいだろう。
ユウキにとっては、どちらも1個回収という労力に変わりはないのだから、当然の判断だ。
人が傍に居ない部分のイチゴと魔石を積極的に回収。イチゴも魔石もザックザク。
しかしユウキに身体強化の影響は分からない。
新たなスキルも取得できていない。
(これは気長にやるしかないか)
しかしアレンジスキルに関しては、収納可能範囲にあるものがある程度判別できる様になった。
特に対象を絞り込む事になれてきたのか、感覚的にはマップに表示された光点を回収するだけのような状況だ。
ただし、2種類を同時に対象として絞り込むことが上手くいかない。
1種類づつなら上手くいっているのだけれど。
そのため今は、先ずイチゴを回収し、その後魔石を回収するという流れにしていた。
(成長したのか使い方に慣れたのか。
毎秒5個位は回収している気がするな。
それに収納領域も大きくなっている気がする。
というか、方向性を出せるようになった?)
ユウキは上下方向とかの領域はあまり要らないから水平方向をもっととか思っていたら、急に変化したように感じたのだ。
昨日と同じように半分くらい埋まったら休憩をして折り返し。帰りも特に何事もなく無事に町への入り口に到着。やはり倒したイチゴの魔物はすでに復活していた。
結局その日は新しいスキルは手に入らなかった。
(やはり難しいのかな)
納品の結果はすごかった。
イチゴだけで2060㎏、さらに回収した魔石をエネルギーキューブにして売却。税引前で約260万P。今回はEランクとしての納品だったので15%分税金を納め、約220万の手取りとなった。
(イチゴの買い取り額が増えているという事は、収納可能容量がやはり増えているのだろう。アレンジスキルは成長しているようだ)
2日で手取りが約300万。しかも回収に慣れればまだまだ効率が上がりそうな気がしている。
お金のことをずっと気にしてきたユウキにとって、まさに夢のような世界。
ランクもDに上がった。
しかし残念ながらこれ以上はイチゴを納品してもランクは上がらない。税金的な意味でCランクを目指したいとユウキは思い始めた。
しかし明日は月曜日。再び学校があるので次は来週になる。
(そういえば高校受験で悩んでたんだった。うーん、何だかこれだけ稼げるなら高校いかなくていい気がするな)
ユウキは稼げる会社に就職するために大学に進学を目指して高校に行くか、もしくは高専経由で就職するかと悩んでいただけだ。
普通に中学を卒業して限定シーカーで暮らしていけるならそれで十分だ、そう思ってしまってもそれはそれで仕方のない事だった。