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第20話 魔法都市マジク

前回のあらすじ:第2章のプロローグ的何か。

今回は話が主人公達に戻り、ユウキとタマキがイチゴの町を旅立った17話直後から続いています。

18話までの間に7日間あります。

「タマキ、こっちも全滅」



 夏休みの初日。

 イチゴの町から旅立ったユウキとタマキは、マジクのギルド広間へと転移した。当然、イチゴの町からある程度離れたところでタマキのスキルを使っての事。そこにある転移装置に転移してきたと錯覚させるために。

 そしてギルド内で食事を済ませた二人は都市の案内を貰い、さっそくギルドの魔法スクロール売り場へと向かったのだった。



「まさか全部無理だとは思わなかったわ」



 ユウキに魔法を覚えさせるべく連れてきたタマキだったが、この結果はさすがに予想外だ。まずは初級を、と思い攻撃魔法、回復魔法、防御魔法のスクロールを使用してみようとした。

 ギルドでは、ある程度の魔法までは消費したスクロールの分だけ費用を払うという清算をすることが可能だ。勿論試す分のお金を持っているというのが前提である。


 タマキは勿論魔法学を勉強している。しかしタマキの素質は物理攻撃特化だ。



 ・素質基本3種判定


  物理攻撃力:極大

  魔法攻撃力:中

  魔法回復力:中


  総合判定:物理攻撃特化



 お金に余裕があるわけでもなかったタマキは、必要最低限の魔法しか覚えていなかった。そして素質と魔法の関係があるようだという研究結果は習っていたが、具体的にどれくらいの素質でどの魔法を覚えられるのかまでは知らなかった。

 今は十分お金に余裕が出来たので、ユウキと同じく初級魔法をどんどん試していった。


 魔法のスクロールというのは初級でも基本的に高い。特に戦闘に関係のある攻撃、防御、回復魔法は1つでも100万Pを超えるのが普通だ。

 それに対してユウキが既に覚えている鑑定魔法やクリーンの魔法のような生活魔法は20-30万Pで買えるものもある。

 イチゴの町ではそこそこの収入までしか見せておらず、ギルドにはタマキの知り合いがいるタメあまり大っぴらに魔法を買う事が出来なかったのだ。


 魔法都市マジクへと来たのだからと二人でいろいろ試して見ると、タマキの方は多くの戦闘系初級魔法を覚えることができたのだが、ユウキは全滅だった。



「戦闘系はダメでも非戦闘系の魔法なら行けるかもしれないわよ」



 鑑定魔法やクリーンの魔法はユウキでも普通に覚えている。なのでまったく魔法が使えない訳ではないはずだとタマキは考えている。



「こっちはいけるね」



 飲み水を出す湧水の魔法、種火を起こす着火の魔法、明かりを出す魔法、水中や毒エリア等で使う呼吸の魔法などなど。基本的に魔道具で代用できるものがほとんどだが、この手の魔法はユウキでも覚えて使用することが可能であった。



「戦闘試験を魔法で突破するのは難しそうね」



 総合判定、戦闘力皆無は伊達ではない。



「身体強化の魔法とかないのかな」


「世の中のどこかにあるのかもしれないけど、ここには無さそうだし、私は聞いたことが無いわね。でも応用魔法として開発とかはもしかしたら?スクロールが全てという訳ではないから、可能性は0ではないわ。でも継続系の魔法って魔法力を鍛えないと、維持が難しい気がするわよ」



 可能性は0ではない。

 諦めない時には有効な言葉だが、頼りにするには意味のない言葉だった。



「だいぶ時間が経っちゃったし、ギルドの外も見てみましょ」



 タマキはそう言ってユウキを外へと連れていく。





「これが魔法都市マジクか。大きいというか栄えているというか、とにかく凄いね」



 ユウキは自分が住んでいたイチゴの町と比べ、まるで世界が違うように感じた。

 ゲート都市カドマツの時は、ギルドを出る時点で新発見ゲートの声が聞こえ、直ぐにバスに乗りこんでしまった。そのためあまり都市を見回してはいなかった。

 ユウキにとって、他の町をしっかりと見回した経験はこれが初めてだった。



「そうね。私も一度来た時は広間に目印をつけに入ったくらいだったから、概要位しか知らないの。でも他の都市もいくつか知っているけど、イチゴの町はかなり小さい都市よ」


「やっぱりそうなんだ。カドマツもよく見えなかったけど大きそうには感じたし」


「ええ、あそこも大きいわよ。やっぱり何かをするために町を訪れる人がいる都市は大きくなるんじゃないかしら」


「イチゴじゃ目玉にはならないか」


「美味しいんだけどね。まぁイチゴは収納に入れられて出荷されているはずだし、その場所に居なければならないというのは強いんだと思うわ」


「ここだと魔法都市という位だから魔法?」


「そうみたいね。この案内によると、マジク周辺には3本の塔が建っていて、都市の名前の由来となっているのがそのうちの一つ。魔法の塔、別名賢者の塔とも呼ばれるらしいわ。塔の形をしているけどゲートの一種のようね。ここでは魔法のスクロールや魔法装備ばかりが出てくるんですって。ドロップアイテムや宝箱で。だからさっき魔法のスクロールがいっぱいあったのかもしれないわね」


「それはここに都市が欲しくなるね」


「そうよね。残念ながら魔法の塔の中に入るにはダンジョンシーカーの国家資格がいるみたいだけど。さらにまだ都市が欲しい理由があって、他に2本ある塔のうちの一つ、魔具の塔では魔道具や魔装具がよく出るみたいなの。こっちは誰でも入れるみたい」


「魔道具と魔装具って違うの?」


「魔装具は魔道具の中でも装備となる魔道具の事をそう呼んでいるの。普通に魔道具と言われることもあるけど、魔道具の鎧とかそういう感じね」


「それは魔法装備とは違うの?」


「魔法装備は、魔法がかかっている装備、もしくは魔法力で魔法を使用できる装備ね。それに対して魔装具は魔法力ではなくEPで発動する効果のある装備よ。あくまで魔道具だから」


「なるほど。そんな違いがあったんだ」


「案内によると、明日フリーマーケットが開かれるみたいね。もしかしたら魔具の塔で見つかる物の実物があるかもしれないわ。今日はもう宿で休んで、明日見に行ってみましょうか」


「そうだね」



 二人は今日の宿泊場所を探しに案内を片手に町を歩いて行く。





「旅館って結構いっぱいあるんだね」


「これだけ大きい街だし、移動の中継になることも多いのかもしれないわね」



 旅館で二人部屋を借りた二人は、少々ぎこちない声で会話をしていた。

 今までは一緒に探索に出かけても、全て日帰りだったのだ。小さな頃は一緒の施設に居たとはいえ、二人だけだったわけではない。

 しかし今回は二人だけの旅。当然日帰りで施設に戻るわけではない。タマキは当然これを狙っていたが、ユウキは部屋に入って急に気が付いてしまった。

 そしてそのタマキも、実際に二人で泊まるとなるとどう進めて良いかで困ってしまっていた。


 タマキは清楚な服を普段は着ており、積極性はあるものの健全でかわいらしい印象を与えるように努力している。そしてシーカー装備に着替えた時のインパクトを大事にしている。

 勿論ユウキにギャップを感じてもらい、自分を意識してもらうために。


 今は通常の清楚モードの服を着ている。浴衣に着替えたとしても、やはりシーカー装備の様な露出モードとは違う。

 ここで自分から誘うというのは何か違うと感じてしまい、上手に甘えることが出来なかった。

 そもそもが年齢的には成人シーカーとはいえ、命の危険など感じたことは無い。タマキにとっても知識として知っているだけで、興味はあれど実際に身体が強烈に求めているわけでもない。

 それにないとは思うが万が一いやと拒否されてしまったら、これからの旅でどうすればいいのか分からなくなるのが怖かった。


 一方のユウキはタマキと一緒に部屋に入ってから、成人シーカーのPTの話を思い出してしまった。成人シーカーがPTを組むという事は抱いていいよっていう事だと言っていたという事を。しかも二人で一緒の部屋でのお泊り。

 これは抱いていいよっていう合図なのかな?と緊張してしまった。

 しかしユウキには2つだけ懸念があった。


 一つは、自分達は本当に成人シーカーなのかという事だ。

 今年から15歳に下がり、確かにユウキもタマキも15歳。しかし15歳になったら成人なのか、15歳になって成人式を迎えたら成人なのか。

 仮に正しい方が分かっても、タマキがどう考えているのかが重要だった。


 二つ目はタマキがそう思っていなかった場合、この後の旅が悲しいものになる可能性がある。ユウキもタマキと同じようなことを考えていた。



「お風呂入ってきましょうか」


「そうだね」



 旅館の風呂なので当然男と女は別である。

 ぎこちない二人の会話は続き、二人ともが同じことを思っていた。



((何かこれは、というイベントが起きないかな))



 しかし残念ながらこの日の二人には特別なイベントは舞い降りなかった。

 二人は同じ思いを抱えながらも、進まない夜を過ごしていくのだった。

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