第16話 初制覇者用クリア報酬と温泉旅館
前回のあらすじ:ユウキとタマキのアレンジコンボ炸裂。下の階へと転移できるところがありました。
タマキはとある理由で牛乳を求めているようです。
ユウキがなんでも簡単に倒せてしまう理由にタマキが気が付いたようです。
「どういうこと?」
「魔石って、解体スキルを使わなくても魔物を切って魔石までたどり着くと簡単に取り外せるのよ。むしろ魔石を直接触る事が出来れば収納できるわ。だから魔石は多分他の器官とは元々くっついていないの。切り取る攻撃力が0でも収納できると思うわ。まぁ、あくまで予想だけどね」
「そんなことが。ますます武器が要らなくなったね」
「守るのにも使えるし、そのうち使えるようにはなった方がいいわよ。それに魔物相手じゃなくて人間相手だって考えないといけないでしょ。戦闘試験だけじゃなくて、強盗とかに会うかもしれないし」
「そういえばそっか」
どんなところにでも悪い事を考える者は居る。魔物相手ならともかく、人間相手だとまったくの無力だな。そう思いなおしたユウキだった。
「ゲートコアは同じような感じなんだね」
「細かい部分は違うけどね。さて、一緒にクリアしましょ」
ボス部屋の奥、このゲート最奥の宝箱の中身を回収したタマキとユウキはコアに触れる。すると二人の視界にメッセージが表示された。
<初制覇者用クリア報酬を出現させました。100秒後にゲート外へと転移されます>
「初制覇者用だって。前は普通にクリア報酬だったよね」
前回の初心者向けゲートの時は普通にクリア報酬と表示されていた。
「流石新発見よね」
「それにやっぱり足元にそれぞれ宝箱が出るんだ」
「そうよ。それはどこでも同じで中にクリア報酬が入っているわ。今回は他に未鑑定アイテムがたくさんあるだろうから、区別するために分かる様に鑑定しておいた方がいいわよ」
タマキにそう言われたユウキは、自分の足元の箱の中からアイテムを取り出し、鑑定する。
「思考操作器+2だって。しかもスーパーレア級アイテム」
「私も同じものね。みんな同じ場合と違う場合があるわ。前回と同じく今回も同じだったみたいね。これは装備のオプション欄に装備しておくといいと思うわ」
・思考操作器+2
スーパーレア級アイテム
機器、道具、魔法、スキル等各種操作を思考にて行う事が出来る。
条件判定可能
繰り返し判定可能
プログラム可能
「これ、魔道具とか機械を思考操作できるっていう事かな?便利だね。条件判定とか、鎧が大破したら収納して新しい鎧に着替えるとかプログラムできそうだよね」
「ええ、しかも道具を思考で操作できるってことはポーションとかを取り出す必要すらないかも知れないわ。状態異常になったらキュアポーションを使うとかできるかも。その辺は徐々に試しましょ。
今はゲートの外にはじき出されると他の人に見つかって面倒だから、ユウキの部屋へと飛ぶわよ」
タマキはユウキを連れてユウキの部屋へと転移する。
「今回はハイレア級が結構あるね。スーパーレア級も1つあるし」
「そうね。強い魔物からのドロップやその階層の宝箱は良いものが出るわね。スーパーレア級のは多分最後のボス後の宝箱でしょうね」
「やっぱり最後の宝箱だけでもその場で鑑定するのがいいかも?前回は確かに1個1個鑑定したもんね」
「今回は最後の方は一気に通り過ぎたからね。普通は前回みたいに見つけたらすぐに鑑定するわよ」
「やっぱり」
「だってそこをクリアするのに便利なアイテムが出るかも知れないじゃない。もしかしたら鍵とかも」
「ああ、そういう可能性もあったんだ」
「今回は鍵は無かったけどね。有っても関係なしに進めただろうけど」
「転移すればいいもんね」
「そういう事よ。それにしても、この宝玉はいいわね。スーパーレア級だし」
「タマキが持っている宿泊設備はそういう物じゃないの?」
二人が話しているのはスーパーレア級アイテム、温泉旅館の宝玉。
・温泉旅館の宝玉
スーパーレア級アイテム
宝玉を使用すると指定した領域に温泉旅館が出現する。
見た目はミニチュアだが、踏み込むと実際の大きさの温泉旅館設備として利用可能。
結界により、使用者が許可しない者は見ることも入ることもできない。
宝玉使用時にEPを消費する。
温泉旅館利用時は継続的にEPを消費する。
使用しない時は再び宝玉に戻る。
「私が持っているのも魔道具だけど、こんなにすごくないわよ。これスーパーレア級、星4アイテムじゃない。私のはレア級の星2アイテムよ。これ」
タマキはユウキにそういうと、実際に宿泊施設であるテントを部屋の中に取り出した。
「これも見た目は小さいけど中は多少広いのよ。でも収納するときはこの大きさだし、温泉設備なんて当然ないわよ。EPも中に居るときは継続消費が居るけど、大した消費じゃないわ」
「こっちの温泉の宝玉も使ってみる?」
「でも使うだけでEP使うのよね。しかも多分継続消費もすごいと思うわよ。ユウキはEPどれくらいあるの?」
「魔石は収納容量の邪魔だから全部EPにしてるけど、途中から数値は見ないようにしてたんだよね。……今EP7億ちょっとある」
「……もうそれだけで普通に暮らすなら一生お金には困らないわよ」
「だよね。普段のエネルギーキューブの買取価格を知っているから、そうだと思った。だから試しに使ってもいいかなと。興味あるし。それに使う時を考えると、知っておかないと予定が変わらない?」
「そうね。何ができて何ができないのか知らないとまずいわね。ユウキお願い」
「了解、部屋の隅に出すよ」
そういうとユウキは一度出しているアイテムを収納し、部屋の隅に温泉施設を出現させる。そしてすかさずタマキの使用許可を設定した。
「いきなり表示されたわ。いつ使ったのかわからなかった」
「多分使用許可を設定したから見えるようになったんだと思う。入ってみようか」
「その前に、どれくらいEP使ったかわかる?」
「……ごめん、多分消費した桁が小さくてわからない」
「そうよね。でもまぁその程度と思いましょ。その宝玉はユウキが保管しておいて」
「タマキにEPを渡すという手もあるけど」
「私は一応テントがあるし、それに転移でいつでも戻れるから。ユウキが一人でどこかで宿泊する時の方が役立つわ。二人一緒ならそもそもどちらが持っていてもいいし」
「分かった、俺が持っておくよ。中に入ってみるね」
そうして二人は温泉施設の中へと入って行く。
「継続消費は変わらない?」
「変わらないみたいだね。何をやっている最中でも毎秒1P減ってると思う。もちろん正確に測れるわけじゃないけど」
「だと水も使い放題かもしれないわね。買取価格ベースで24時間で400万円ちょっとの浪費。高いとみるか安いとみるか」
「そもそも温泉が流れ放題だったしね。人数が増えたら変わるかもしれないけど、この設備を使い放題でそれなら意外と安上がりなんじゃない?持ち運びできる時点でとんでもないし。EPベースだと24時間で9万Pも行かないんだし、十分十分」
「ユウキの感覚が富豪になっているわよ。買い物とかは気を付けてね」
「この二日で5000万P以上ダンジョンポイントも稼いだからね。山分けしてこれっていったいどうなっているんだか」
「牛がすごかったのよ。牛が」
既に二人は温泉旅館を満喫した後だ。
宿泊用の部屋には布団があり、部屋数も30以上あった。調理室があり自分で料理を作れ、食堂もあるので食べる場所にも困らない。冷蔵庫も冷凍庫もある。
二人はここに食材を保管しに来ることも検討したが、そのためにEPを消費するかどうかは悩むところだ。宝玉に戻した後も、冷えてくれるのかもわからない点も注意が必要なのだ。
「今回はこの宝玉と、このハイレア級アイテム、万能調味料箱をセットでユウキが持ってて。これさえあれば、後は食料を現地調達出来ればそこそこ外でも生活できると思うわ」
「調味料はありがたいね。使い切ってもEPで再び箱の中を初期状態にできるみたいだし、不思議アイテムだよ」
「全くね。あとは魔法薬などの消費アイテムはまた保管しておくとして、この明かりの指輪はお互い1個づつもっておきましょ。魔道ランタンは持っているけど、これは便利だわ」
・明かりの指輪
ハイレア級アイテム
任意の数の明かりを出現させ、操ることができる。
光量も形も思いのまま。
出現させている間中EPを消費し続ける。
「これって便利なの?」
「ええ、明かりを手で持つ必要が無い上に操れるのよ。手が空くし、遠くに飛ばして視界を確保することもできる。EPに余裕がなければ魔法の方がいいけど、今は余裕があるでしょ。前回の洞窟も今回の迷宮も照明がついていたけど、真っ暗なところもあるわ。ってユウキならそれでも把握しそうだけど」
「把握は出来ると思うけど、目で見てるわけじゃないからね。やっぱり見えないと不安だよ。そういう場所があるなら持っておいた方がいいね。こういうのがあるならタマキにEP少し渡しておいた方がいいんじゃないかな?」
ユウキはそう言って1億ポイントのエネルギーキューブを作成した。大きさは変わらないので、鑑定するか受け取ってEPに変換しないと分からない。
「ってこんなに?
この量って買取DPで50億Pよ」
「本来山分けならもっとでしょ。まぁ確かに俺が倒しているからという理屈は分かるけど、PTなんだからそれくらいは持っておいてよ。俺の方は魔物さえいればEPは手に入るみたいだから」
ユウキの言う事がもっともであった。
EPはユウキにとって魔物さえいれば簡単に手に入るもの。必要以上に貯めておく意味はない。
「分かったわ。それと後の使わなさそうなアイテムは今度どこかのギルドで売るわね。この町で売るのはさすがにいろいろ聞かれそうだし」
「おねがい。任せちゃって悪いね」
「いいのよ。それにユウキはどれが使いそうか分からないでしょ」
その通りである。
「予定も終わったし戻ろうか。この温泉、知られたくない話をするのにもちょうどいいね」
「そうね、見えないし、入れないし。多分聞こえてもいないでしょうね」
宿泊施設は中から外を確認できる。なので間違って人が居るときに外に出てしまうという状況も防ぐことができるのだ。
ユウキは何となく、秘密基地を手に入れたような嬉しさを感じたのだった。




