3 準備.2
「で、俺ってこの後どこ行けば良いの?」
(それなんですが、良い場所がありますよ)
「お、マジで?」
(ええ、どこの国にも属しておらず、悪い噂しか流れていない土地です)
「………え?」
(冗談だと重いますか?)
「いや、本当だと思います………」
(あ、正面に見えるあの山の裏側です)
「…………」
オーリア国の領土を出てから20分、不可侵地帯という場所に俺は案内されていた。
「え?1つ聞きたいんだけど、良い条件の揃ってる場所なんだよな………?」
(ええ、この大陸の中で1番最高な場所です)
「凄い自信だな……」
(ええ、ちょっとした理由がありますから)
ーーーーーー
馬車は遂に山登りを初めた。舗装されていない、いわゆる獣道のような道を登ること30分で山頂を越えた。そこから更に坂道を下り始めること5分。
なんと、川の源流があった。
「おお、川だ……」
(これで飲み水、魚には困りませんね)
「ああ~……確かに……」
(さあ、初期建設予定地はすぐそこですよ)
ギリギリ馬車が1台通る狭い道を進み、山の中腹まで下りてきた時、山を大きく切り開いた土地にたどり着いた。
(ここがあなたにお任せする土地です)
「意外と良い場所……」
(ええ、いろいろと条件が揃っていますから)
育ちの良い樹木が覆い茂る山に、飲み水とちょっとした食料になる川、そして、山を少し降りればこの世界の3大海洋の1つ、ハスフォニア海が広がっている。
「好条件だな……」
(ええ、良いでしょう?)
「でも、なんでこんな良いところが不可侵地帯なんだ?」
(ああ、それはですね……あ!あそこです、左斜め前を見て下さい!)
「あれって……」
オークの集団だった。
木の実を集めているらしく、こちらには気がついていなかった。
(実は、この大陸で唯一魔物がこの森に出るんです)
「あ~、それで不可侵地帯なのか……」
(でも安心してください。彼らはこちらの言語を理解しますし、悪意もそこまで持っていません)
「へ~、勝手に危険だと判断してるのか」
(彼らも国に苦しめられた者達ですね)
昔から、見た目が我々と違うという理由からオーク族は蔑まれてきているらしい。だが、オーク族は人間よりも筋力があり、きちんと教育すればしっかりと成長するらしい。
ここには大きな体育館3つ程のスペースが確保されていた。どうやらミーティアが俺を転生させる前に整地しておいてくれたらしい。その時に伐採した木材が山積みになっており、しっかりと真っ直ぐ育った良い材木が3桁程あった。
「これ、ミーティアが全部集めたのか?」
(ええ、この森の者達に手伝ってもらいましたが)
「知り合いがいるのか?」
(ええ、私のことを神様と崇めている者達です)
「ほ~、神様ねぇ……」
(川の反対側に集落があるので行ってみますか?)
「行っていいのか?」
(彼らに手伝ってもらいましょう)
というわけで川を渡り(橋など無い)、小さな洞窟に入る。賑やかな声が響き、俺を見た瞬間、一気に静かになった。
なんとそこには、手のひらに乗ることができるサイズの小さな人間達がいた。
「え?これって」
(あなた達の世界で言う小人族です)
「こんにちは!ミーティア様!」
頭に小さなバンダナを巻いた小人が近寄ってきて、いきなり膝まずいた。
「この人達も喋るんだな」
(ええ、彼らの知能は高く、力も普通の人間と変わりません)
「ミーティア様!この人がミーティア様が言っていた救世主ですか?」
腰の下に屋根があるというミニチュアの世界で、メルヘンらしい小人達がわらわらと集まって来ては次々と膝まずいていた。
(ええ、そうです。では約束通り手伝っていただけますか?)
「ミーティア様のご命令とあれば何でもする覚悟があります!」
「何?もう話しをしてたの?」
(ええ、既に)
「全員よく聞け!!これより我らはミーティア様の手足となり、職務を全うする。覚悟はあるかー!!」
「「ウォォォォォォォォォ」」
「何て言うか……真面目なんだな」
(彼らは非常に従順です、しっかりと建築技術を教えてあげてくださいね)
「了解……」
転生初日が終わろうとしている午後6時頃、総勢72名の小人達が部下になった。
前準備を書くのが少し苦手なので変な文になっていますが、多めに見て下さい………