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転生先は普通RPG  作者: 万紫千紅
2/5

2 準備.1

ミーティアの指示に従って、ゆっくり歩くこと1時間。この大陸の中心となる3大国家の1つ、オーリア国の大門が見えてきた。


「ここが酷い国なの?」

(ここだけではありません、3つの国全てが酷いのです)

「あ、そう……」


ごめん、それは聞いてなかったというツッコミを飲み込み、大門をくぐる。


「お~、凄い!綺麗な町並み!」

(ここは、近くにある鉱山から取れた希少な鉱石を使って興行をしています)

「へ~、だから綺麗な町並みなんだな……腕が悪いけど……」

(そりゃあ、あなたに比べたらね?)


全体的に白をベースにした壁に青い屋根と、空を意識した配色となっていた。

だが、


「売店ってあんなに品揃え悪いのか……?」

(……………)

「路上生活者がそこら辺にいるのは見間違いか……?」

(……………)

「窃盗って叫ぶ声が聞こえてくるんだが……」

(……………)


見かけ倒しにも程があった。これはあまりにも酷すぎる生活レベルだ。


「これは……酷いな……」

(せっかく産まれた勇者が乳児で亡くなってしまう可能性があるのです……)


それでも、街の中心に堂々と構えているオーリア城は、とても輝かしく見えていた。


「で、ここに俺を連れてきてどうするんだ?」

(まずは、あなたの為の道具を揃えます)

「大工道具か!?」

(ええ、それもですし、日常品も必要でしょう?)

「え……?あるの…?ちゃんとした物………」

(探すんですよ……)




ーーーーーー




この世界のお金は持っていないと伝えると、ミーティアは1つの石を俺に手渡して、オーリア城に向かえと言い始めた。

かなりの高額に変わるらしいのだが、街の換金所では払いきれないらしく、宰相と交渉するらしい。


「交渉か………」

(はい、良い値で売れると良いんですがね………)

「心配事があるのか?」

(あの宰相、セコいんですよね………)

「まぁ、どうにかなるでしょ」


門番に説明し、中に通される。

天井画の描かれたエントランスに負けないレベルの綺麗なシャンデリアに、銀色に塗られた鮮やかな鎧。そして、あらゆる宝石をちりばめて作られたであろう玉座の裏には、おそらく現在の王位についているであろう、若い顔の男がふんぞりかえっている絵がデカデカと飾られていた。


「…………………………」

(…………………………)


そして、昼食時だったので、食事中の宰相のもとに案内された。大きなロングテーブルの上に広げられた大皿の食器に盛り付けられた食事をゆっくりと口に運ぶ宰相は、1度こちらをチラ見しただけで食事に意識を戻した。


「カルロス様!換金目的の客人をお連れしました!」

「どうも」

「……………」


宰相カルロスの反対側に座らせられ、長いロングテーブル越しに、見たくもない優雅な食事を見せられること30分程。遂に口を開いた。


「……………帰れ」

「は?」(は?)

「何を持ってきたが知らんが、換金する気はない、即刻立ち去れ、目障りである」

「…………」(やっぱり………)


鼻の下の、クルッとしたカーブをしている髭を撫でながら呟いた。


「わざわざ金の為にここまで来たのならご苦労、だが、無駄だ、帰れ」

「んなこと言わずにちょっと見て下さいよ、良いものですから………」

「そんなものいくらでもこの城にはある、もういらん、帰れ」

(このオヤジッ……!)

「………わかりました、失礼します」

「ああ、そうだ、さっさと帰れ」


何のために時間を使ったのかわからなかったが、これ以上ここにいても無駄だと感じたので城からさっさと立ち去ることにした。


(どうするんですか!?何もできませんよ!?)

「一応街の換金所あたってみようよ」

(そんなにお金を持ってないのに!?)

「少し貰えたらどうにかなるでしょ」




ーーーーーー




大門付近にあった小さな換金所に入り、年老いた店主に換金を頼む。最初は金が無いと断っていたが、石を見るなり目の色が変わり、鑑定を始めた。


「どうでした?」

「これを……どこで……?」

「あ~………拾いました?」

「そうか………」


老眼鏡を外し、少し待っておれと言い残すと、老人は店の奥へと消えて行った。


「どうにかなりそうだな」

(嘘でしょ……?)


待つこと数分、大きな革袋を抱えた老人が店の奥から出てきた。


「これを……受け取ってくれ……」

「あ、ありがとう……」

(嘘でしょ……?)

「全部で13万2500エソだ……」


1000エソと書かれたボロボロの紙幣や、掠れている硬貨等、さまざまな種類のお金が革袋に詰まっていた。


「え……?1000エソって円換算で考えると何円?」

(円と同じ価値ですよ……)

「はぁ!?」


いわゆるあり得ない料金だったのだ。


「あんた……何者だ?」

「え……?」

「この鉱石……なかなか市場に出回らないやつだぞ……?」

「あ、そうなの?」

「………それすらも知らんとは……」

「すんません……」

「謝ることじゃないさ……まぁ、それで良いもの買いなよ?」

「ああ、わかってる」


革袋を担ぎ、石を老人に渡す。


(これだけの大金を払って、この人は大丈夫なの……?)


それはおそらく老人も分かっている筈だ。だからこそ、珍しい仕事をしたかったのだろう。


「ありがとうございました」

「…………」




ーーーーーー




ハンマー、ノコギリ、カンナ、ノミといった建設用道具や、生活で使う道具をある程度買い込むと、ミーティアに言われて馬車を1台購入した。

予想通りで物価は高く、ハンマー1本が2400エソだったのにはびっくりした。

13万以上あった初期費用を使い切り、オーリア国から移動した。


本当にあの老人には感謝の念しか無かった。




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