お姫様だっこ
青春劇「十七歳は御多忙申し上げます」及びそのスピンオフ作品・番外篇と併せて、ご覧下さい。
それは、あの図書室での出来事から約十日後の一月下旬。六時限目の体育の時間のことだった。
その日、私達のクラス・二年一組は男女とも、体育館でバスケットボールの授業だった。
体育館には、二面しかコートがなく、一面は他クラスが使用しているので、男子の試合の時には女子が見学、女子の試合の時には男子が見学という風に授業が進められている。
私は、バスケは好きだ。
小学六年生の時、ドリブルが巧かった私は学校代表メンバーに選ばれ、放課後と休日、特練をしていた。
私のポジションはシューティングガードで、3Pが得意だった。
あまり身長が高くない私がバスケで活躍するには、それが近道だったのだ。
3(スリー)が決まる時の快感は最高で、何より夢中でボールを追う時間は楽しかった。
そして、授業も半ば過ぎ。
いよいよ、私に順番が回ってきた。
私は、あの小学生時代に戻った気分でボールを追っている。
パスが逸れたボールを無理に捕えようと、私は宙へ思い切りジャンプした。
そして、着地した瞬間。
物凄い激痛が右足に走ったのだ!
何が起こったのかわからなかった。
私は、コートへと倒れ込んだ。
「純……!!!」
皆が、私の周りに駆け寄ってくる。
体育の菊池先生が、私の右足首を慎重に、動かす。
「アキレスは何もないようだな」
しかし、その痛みは尋常ではなかった。
立ち上がれない……
私は、痛みのあまり、苦痛に顔を歪める。
「誰か、男子! 神崎を保健室に連れて行くのに手を貸してやってくれ」
菊池先生がそう言った時。
すくっと立ち上がった生徒がいた。
「神崎」
私の名を呼んだのは。
守屋君……
彼が、私の体を抱き起こした。
そして、抱きかかえる。
私は、皆が呆気に取られている中、彼にお姫様だっこされて、体育館を後にした。
「も、守屋君……!」
私は、言った。
「い…いいわ。悪いわ。私、一人で歩く……」
彼の腕の中で、恥ずかしくてもがくと、
「暴れるなよ。落とすぞ」
と、彼は不機嫌そうに言った。
その言葉にビクリとする。
彼は何を怒っているのか、本当に機嫌が悪そうだった。
それにしても。
守屋君に「お姫様だっこ」!
ああ、クラクラきそう……
彼の節太く細長い指を思い切り意識しながら、暖かい彼の躰の温もりを感じている。
あの秋の夜の「HEVEN」で、初めて感じた彼の温もりを思い出す。
守屋君。
どうして……
しかし、そんな複雑な想いが交錯している間に、保健室へと無事到着した。