表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/63

プロローグ

 番号が呼ばれた。215番と216番。


 小窓の空いたドアの向こう、研究者達が僕らを呼ぶ。この四畳ほどの狭い部屋で、隣の男がゆっくりと起き上がる。


「行くぞ、215(ニーゴ)


 その声にせかされて、重たい頭を持ち上げる。


「今日で終わるかな、216(ニーロ)

「どうだか」


 216は呆れたように笑う。さっさと終わって欲しいぜと呟くその声は小さく、不安を感じさせるほど沈んでいた。僕より体が一回り大きく、いつも明るい彼ですら不安に思うのだから、僕が憂鬱なのも仕方がない。


 ドアの外の研究員が早くしろと語気を強める。216が先に部屋を出た。薄暗い部屋とは違い、ドアの外は明かりが煌々としていて眩しい。僕は目を細めながら後に続いた。


 国家主導による「能力の覚醒及び軍事的戦力としての投入」に関する研究。


 それがこの施設の目的だと入所初日に簡単な説明を受けた。施設の名前は知らない。個人が持つ特性、能力については、覚醒する年齢や内容などは個人差がある。


 入所から4か月経った今も覚醒をしていない僕たちだが、研究者達から漏れ聞こえてくる話を信じるならば、そろそろ終わりが近いらしい。僕たちは自身の能力が何かわからないまま、よくわからない研究の対象となっていた。


 この国の人々は貧しい。そして僕たちは身寄りがない。


 孤児院を出て数年、宿屋に住み込みで働いていたところに施設からの連絡がきた。売られたのだ。しかしながら、宿屋の主人を恨む気はない。身よりのない僕たちに居場所をくれた恩もある。仕方がないことである。人は皆、余裕がないのだ。


 懐かしい顔に思いふけっている間に研究室についていた。頬が緩んでいたようで、216に肘で小突かれた。


 研究員に促され、渡された薬を飲むと二つある台へそれぞれ仰向けに寝る。様々な器具を取り付けられている間に意識は朦朧となり、いつも通り夢の世界へと深く飲み込まれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ