表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

聖女様は、盗賊に会いに行く事になりました《前編》

今回の聖女様は脳筋です。

「ああ。いい天気だ……」

 今日は洗濯物が良く乾くなと洗濯物をかごに入れながら空を見上げる。


「兄さん。現実逃避しないで!!」

 そんな自分の近くでメイプルがぷりぷりして注意してくる。


「いくらこの洗濯日和の時に神官のお偉い人に呼ばれたからって!!」

「…………思い出させてくれるなよ」

 絶好の洗濯日和。今日みたいな日に洗濯物を干せばパリパリでいい匂いのする洗濯物が出来上がるのに――。


 そんな青空を尻目にどうやらまた旅に向かわされる事になるようです。


「よく来たな。********。メイプル」

 きちんと俺の名前言ってんだよな。相変わらず呼ばれてるのは理解できるけど、一字も耳に入らない。

「今日呼んだのは他でもない」

 うん。その建前いらないから。こっちは洗濯したくてうずうずしてたんだから。

(ああ。青空が呼んでいるのに――!!)

「お前達を呼んだのは他でもない。聖女――ユキムラ様の行方が分かったからお迎えに行ってもらいたい」

 こやつと共にな。

 その言葉に合わせるように現れたのは一人の白金の鎧を身につけた男性。

(神官騎士?)

 鎧には神殿の紋章が描かれている。神官でありながら騎士。神のために剣を振る事を許されている神の神兵。


(わざわざ神官騎士が出るという事はその聖女様はどこかの国が動く事を阻みたいのだろうか。それにしてもユキムラ様だっけ? 聖女の名前を全員知っているわけじゃないけど、いろんな国にそれぞれ聖女様が行っているはずなんだけどな)

 行方が分かったと言っている時点で妙なんだが……。


「………」

 下々のモノに説明するつもりはないという態度だな。まあ、いいや。親父とお袋の情報網で教えてもらおう。


 と思っていたが――。

「この世界に聖女様達が降臨された時にこの世界の事を誰よりも早く学び、知識を得た聖女ユキムラ様は『どこかの国で崇められるのはお断り』と宣言して出奔してしたのだ」

 おやっ。説明しないと思ったのに神官騎士が説明してくれるな。助かるけど。


「アーデル!!」

「この者達は数少ない聖女様の裏の事情もご存じだ。隠しているよりは全てを話して信を得た方がいいと思われます」

 どうやらこの神官騎士の名前はアーデルらしい。

「何を言う。お前がユキムラ様を見張ってないからっ!!」

 あ~あ。言っちゃった。


「兄さん。聖女様に見張るって」

「聖女様を保護するという名目で自分達の都合のいい道具扱いしてたんだよ。第一、聖女様が他国に送られた経緯に聖女様の意思はそこにないからな」

 そう大勢の聖女様が降臨されたのだ。聖女様をいろんな国に送り出したのは政治的なモノが原因だ。


「大方、逃げ出した聖女様はそれに薄々気づいてたんだろうな」

 神殿の都合のいい情報を叩き込まれる前に自分の目でこの世界を見ようと思われたのか。ほっとけと言いたいが、しょせん下働きだ。上の人が命令すれば言う事を聞かないといけない。

 まあ、給料を上げてもらうが。


 そんなこんなで聖女ユキムラ様をお迎えに行く事が決定したのだった。


 それはいいのだが………。

「兄さん。迎えに行くんだよね?」

「ああ……」

「ここ山奥だよね?」

「ああ………」

「なんでこんなところに?」

「…………」

「ってか、下働き(私たち)いらなくない?」

「………………………そんな気がする」

 神官騎士は自分の事は自分で行ってしまう。そういう者じゃないと騎士にはなれない。というか、騎士になる時に叩き込まれるらしい。

 せいぜい、食事の支度をして、神官騎士がいつもより豪勢だと告げる位だ。


「聖女様はなんでこんな山奥に……」

 いるんでしょうか。

 いろいろと不安になって確認する。


「ここらへんで、盗賊狩りをしている義賊が居るんだ」

「義賊……?」

「その義賊の一人がユキムラ様らしきものがおられたと……」

「聖女ですよね……」

「ああ……」

「聖女様って………」

 それ間違えじゃないでしょうか……。

 そんな事を思ってしまう。


「いえ………ユキムラ様は、ご本人曰く『身体能力上昇してる!! こんなちーと貰えるなんてっ!!』とおっしゃって……」

 ちーとというのは聞いた事ある。確か、この世界に来た時にその結果としてもらえる不思議な力。


「聖女様は、本物なんですね……」

「ええ。………明確に判明している本物の聖女です」

 聖女候補ではなく。聖女(本物)か。


 どれくらいの割合で居るんだろう本物………聖女(候補)が何人いるか分からないけど。

「――で、その聖女様(本物)が義賊……」

 何してるんだ。

「………」

 メイプルが何か考え込んでいるな。


「聖女様達って……」

「はい?」

 神官騎士がメイプルを見る。

「皆さんどこかの国に嫁がれるんですよね……」

「はい。聖女が本物であろうか違っているだろうか。その真贋を見極める事も国の価値でありますし、聖女を一つの場所に留めてしまったら権力が偏りますから」

「……………………だからじゃないかな」

「メイプル?」

「だから、嫌だったんじゃないかな」

 メイプルの言葉の意味は分からないのだろう神官騎士は首を傾げるが、この人はいい方だなと思わされる。


 俺やメイプルと言う立場のモノの言葉を真摯に受け止めてくれるのは伝わってきたから。


「義賊の聖女か……」

 しゃかしゃか

 ジャガイモの皮むき――ここら辺の村購入した――をしながら呟く。

「義賊を煙たがっている人が聖女様を知らずに殺されたら大変だよね」

「ああ。――本物だしな」

 どんな災厄が起きるか分からない。

「いい人だよね」

 しゃかっ

 ジャガイモの皮をむきながらメイプルが告げる。

「うんっ? 神官騎士様か?」

 名を呼ぶのは不敬なので呼ばないで敬称で呼ぶ。


「そう。私の考えが正しかったら……」

「………」

 何かに気付いたらしい。

「メイプル?」

「………兄さんも鈍いから分かってないわよね」

 何の事だ。

「分かんないならいい……聖女様に同情するわ」

 でも、なんで義賊なんだろう。そこは理解が苦しむ。


 切ったジャガイモを鍋に入れて薬草――そこらへんに生えていた――を同じように鍋に入れて炒める。

「それにしても……旅慣れしてきたよね」

「そうだな……」

 下働きと言ってもいろいろある。

 食事が得意な者。

 掃除が得意な者。

 裁縫。話し相手。物の修理。馬の世話。


 メイプルの得意なのは選択だ。で、俺の方は馬の世話だが……。

(全般出来る様になってるな……)

 悪い事ではない。無いのだが……。


「このままだと旅慣れしすぎて通常の仕事に就かせてもらえないかも」

 しかも通常の賃金で。

「それは……ヤバいな」

 旅に出されて、通常よりも仕事が多いのに――今回は楽させてもらっているが――旅仕様という事で賃金をいつもより上乗せしてもらっているが旅専門だと勝手に位置づけられて賃金を減らされたら……。


 うん。それは絶対阻止だな。


「この度終わったら休暇貰おう……」

「うん。休暇欲しいよね~」

 旅ばかりになりそうなら最悪転職も考えて………――母さんの伝手を使えば下働きでも雇ってもらえそうなところあるからな――まあ、少し先延ばしして様子見をしてからでもいいかな。


 そんな事を考えながらその義賊――とは聞いているが盗賊でいいだろう――が出ると言われている近くの村――街道添いで商人が行きかう豊かなところだと事前情報で出ている――に辿り着いたが……。


 閉められた店。

 街道から人が来ると住民が反応をして視線を向けてくる。

 そして、神官騎士を見て、住民がはっきり怯えたのをメイプルも俺も気付いた。


「メイプル」

 呼ぶだけ。それだけで互いに何をすべきか判断して、俺はすぐさま神官騎士を村に入るのを阻止して、村の外にまで引っ張り、メイプルは俺らと他人というかのように村に入っていく。


「何をするっ!!」

 村の外の隠れれる場所を目指して、そこまで神官騎士様を連れて行くと――鍛え上げた成人男性+鎧をよくここまで連れてこれたなすごいぞ俺――そこに隠れて貰う。


「………」

 下の者は上の者が言う限り発言は出来ない。その為黙っていると。

「……………発言していい」

「ありがとうございます」

 子人は空気が読める人だな――ちょっと足りないようだけど、

「神官騎士様。いや、あえてアーデルさまと呼ばせていただきます」

 まずそう宣言して、

「今メイプルが、貴方様の服を調達してます」

 神官騎士は普段からそれを切るのが習わしらしくそれ以外の服を持ってなかった――どこぞの王族は衣類だけで馬車何台になったんだろう必要最低限だと口を酸っぱく言っている者が居たのに少しはこの人というか神官騎士の爪の垢を煎じて飲ませたい――その格好では村に入れないのでメイプル待ちだ。


「それにしても……」

 よそ者を警戒していた村の人の動き。街道沿いの村だ。警戒する意味が理解できない。


「おかしいな……」

「何がだ?」

「近くに関所もあって、商人が良く通る街道沿いの村なんですよ。外からの人は村を豊かにさせてくれる歓迎すべきものであって警戒するものではないはずなんです。それなのに警戒していた……」

 まるで外から敵が来るというかのように――。


「このお仕事てこずリそうだな……」

「お待たせ――!!」

 メイプルが戻ってくる。


「この村おかしいよ、物価が高すぎる」

 服を神官騎士に渡して告げる。

「その聖女様。本当に義賊なの? なんとなく話を聞いていたら盗賊が出るから商人が来ないと言ってたよ!!」

 メイプルの言葉に。

「義賊のはずです!! あの方は…サナさまはっ!!」

 はっきりと聖女の名前が耳に入ってきた。口にはするつもりが無いが、俺の耳にはっきり聞こえて口に出そうと思えば出せそうな名前に。


「なあ……」

 つい口にしてしまう。

「本当に、その聖女は本物か?」

 その疑問に神官騎士は、

「………」

 答えなかった。



後編いつ出るかな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ