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聖女様は、聖女様×2とお会いになりました《前篇》

一か月ぶりです。一話完結にしたいと思ってましたが収集付かないので分けました。前中後になるのか前編後編になるかは分からないけど……

 それはのどかな昼下がり――。

 神殿の壁に生えている苔を抜き取る作業を同じ下働き仲間としていると、

「そういや、聞いたか?」

 作業に飽きてきた下働き仲間が噂話を口に出す。


「カラヤン共和国。あそこの国が一夫多妻を法律で発表したって!!」

「マジかよ!! でも、カラヤン共和国って、もともと女性少なくなかったか?」

「ああ。特殊な医療で、同性同士でも子供出来るようにしたって話があったばかりなのに……」

 カラヤン共和国。確か、数年前に女性しか罹らない病で女性の9割が亡くなったと聞いた事あるな……。


 カラヤン共和国。

 そこは聖女候補が向かっている他国と違い。本物の聖女がおられる国であった。


 確か、だいたい権力者が聖女を迎え入れるという流れになっているのに、その国には聖女トオサカ様が、自ら向かうとおっしゃって――逸り病で貴重な聖女(候補)が亡くなるのを惜しまれて――止める言葉を払い除けて、向かわれた途端。逸り病はぴたりと終了したという逸話がある。


 それゆえ、聖女トオサカ様は本物の聖女だと判明し、本日に至る。


「兄さん!!」

 そろそろお昼だからとお弁当を持ってきたメイプルが向かってくる。

「ああ。ありがとう」

「今日も見せつけてくれるね。メイプルちゃん的にはどうなの?」

「? 何の話?」

 急に聞かれても困るよな。


「カラヤン共和国が、一夫多妻を法律で定めたんだとよ」

「………女性をそんなに養えるんでしょうか?」

「あっ。そっち。俺らはもしメイプルちゃんのお兄さんがその法律があるからってたくさん奥さんを迎えたらどうするって聞きたかったけど」

 その時、俺は見てしまった。


 デザートに持ってきたであろうリンゴがメイプルの手で粉砕されるのを――。


「もちろん。――処します」

 その時のメイプルの顔が怖かった。

 うん。他の下働きのみんなが怯えるからやめようね。


「だよな。でもなんで……そんな法律が決まったんだろう?」

「兄さん?」

「ただでさえ、女性の数が少ないので同性婚を認めたばかり。そんな法律が出来たら数少ない女性の取り合いになるだろうに……」

 それとも……。


 ある考えが脳裏に浮かぶ。

 もしそれなら戦争が起こるかもしれないと危惧していたら。


「メイプル。*******。司祭様がお呼びだ」

 ああ。今日も俺の名前は聞き取れないな。

 それにしても司祭様の呼び出しか。


「いやな。予感がするな……」

「うん。同意」

 そんな事を言いつつ、身なりを整える暇もなく――上の人に合う目に身なりを清めないといけないのだが――司祭の元まで連れていかれたのだった。


「で、また旅に駆り出されるのか……」

「兄さん。嘆かないの」

 その当の噂のカラヤン共和国にその隣国であるアファード帝国の皇弟さまが自分の婚約者の聖女アマクサ様を引き連れて向かう事になり、揉めて戦争になっては大変なので、神殿関係者もそこに立ち会うという事でそのお供として駆り出された。


 その神殿関係者の下働きが俺とメイプル――他にもいるが――だった。


「それにしても……アファード帝国は不安なんだろうな」

「なんで?」

「そりゃ。一夫多妻という法律が出来ても女性の数が少ないのだから。それならどこからと調達すると思う?」

「えっと……。近場から調達……調達って言葉がおかしいけど…」

「そう。アファード帝国は自国の女性が人攫いに合わないか危険視しているんだ」

「………」

「人攫いの対策をするとなれば今度は女性の自由を奪われる」

 それを何とかしないといけないだろう。

「ふ~ん」

「メイプル?」

「そんな国の死者の下働きに私が行くんですけど、そこら辺のフォローはどうなるんですかねぇ。お・に・い・さ・ん?」

 きちんと守ってくれるんでしょうね。

「うっ……⁉」

 そう言われても、

「……………善処します」

「それ、断り文句だって聞いた事あるんだけどぉ~」

 メイプルの追及は弱まる事が無かった……。

                ♦

 そんなこんなで、カラヤン共和国に来てみたが……。

「なんだあれ?」

 女性の数が少ないので、女性達の自由が損なわれてないかと思ってみたら、女性たちは堂々と街を練り歩き、男性達が肩身が狭そうにしている。

 中には、女性の顔色を窺い、へりくだっている者もいる。

「……………」

 あっ、メイプルにも近付いてきた。

「お嬢さんこの国は初めてですよね。良かったらワタクシめがご案内を……」

「仕事できたから案内はいらない」

「そうですか……」

 とぼとぼと去っていく男を見て、何だったんだろうと顔を見合わせると、

「――お使者の方ですね。お待たせしました」

 ラクダに跨って現れる女性達。その一人が、

「私が、トオサカです」

 と挨拶をした。


 女性たちに囲まれて共和国の議事堂と言うところに通される。

 そこで代表が話し合いをして、政治を進めていくのだ。


「久しぶり。***」

「お久しぶりです。**さん」

 聖女トオサカ様と聖女アマクサ様は友人同士なのか仲良く挨拶をする。名前が聞き取れなかったのは多分俺と同じ聖なる言葉であったので、理解できなかったのだろう。

「アマクサ」

「ああ。――そうでした。名前で呼び合っても聞き取れないみたいみたいなんだった」

「そういうモノなの?」

「そういうモノ。――トオサカさんはそういう問題は無いの?」

「私は他の聖女候補達と違って、国には志願してきたからね。婚約者を見つけてのパターンと違うよ」

「ああ。そうだったね」

 二人で仲良く談笑して――使者とか皇弟などという存在を完全に無視しているのだ――近況を報告していたが、

「さて、そろそろ挨拶しないとね」

 くるりと体の向きを変えて、

「改めてご挨拶します。私がこの共和国の聖女。トオサカです」

「ああ。私はアファード帝国の皇弟。ラシードだ。それで……」

 王弟の視線には積極的に働いている女性達。

「この女性達は……?」

 先に到着していたのだろう添わり心地よさそうなソファで座っているアファード帝国の皇弟が、ソファの割に居心地悪そうに自国の聖女――アマクサの隣でいるのだ。


 まあ、そうだろう。


 国の代表が集まる場所と言われてきたのはいいが、そこに居るのは男性よりも女性――この国って女性が少ないのではなかったのだろうか――多くいて、数少ない男性も居心地悪そうなのだ。


「兄さん」

「メイプル?」

「あの腕輪なんだろうね?」

 腕輪?

 言われて気付く。

 男性の代表の腕には腕輪がはめられているのだ。


「ああ。あの腕輪が婚姻している者の証です」

 女性の一人が声を掛けてくる。それと同時に机にお茶とお茶菓子――俺ら下働きなのに――を用意される。


「まず最初にお伝えします」

 聖女トオサカの言葉に合わせて、質のいい腕輪を別の女性が持ってくる。

「我が国では、腕輪をはめて無い男性は人権が無いと思ってください」

 ので、使者の方々もはめて協力をお願いします。


 トオサカの言葉に首を傾げる面々――まあ、俺もだけど。


「我が国では、一夫多妻制をしましたが、お判りでしょうか女性の数は圧倒的に少ないのが現状です」

「…………」

「それゆえ、結婚は及びもろもろの権利は女性の方が有利になるように法律を定めさせてもらいました」

「ええと……それに一夫多妻は……」

「――餌です」

「はい?」

 因みに俺とメイプルは発言する権利が無いので聞いているだけであるが、話をしている皇弟と使者の疑問は俺らと変わらないと思っている。


「私はこの女性の少ない環境で、女性を保護するために決まりを……女性を優遇する法律を作成しました。ですが、それは男性陣の数によって阻まれました」

 まあ、そうなるわな。

 誰だって自分が有利な方がいい。不利になる様なものはお断りだからな。


「だから、こそ一夫多妻制を決めました」

「……?」

 俺頭悪いからな。意味が分からない。


「一夫多妻制制度を決めるさ。その条件も書き記しました。その条件は、女性有利にするものと同義です」

 これが原本です。


 そう見せられたものは難しくて、遠回しに書いてあるが、

『一夫多妻制について。

 男性は複数の妻を持てる。

 ただし。

 結婚に関しては男性から申し込めず。女性から申し込まれないと不可能であり、二人目の妻は最初の妻の許しを得ないと持てない。


 また、男性は結婚するまで一人前と言えず、結婚した者は腕輪を付けて一人前の証という事で保証は得られるが、腕輪が無い者は保証はない。

 同性婚の場合は、複数の妻を持つ事は許されず、唯一の伴侶を大切にする。

 男性は女性を傷付ける事は出来ず。そのような行いが見受けられたらその本人は奴隷となり、男の象徴を切り落とされる』

 などなどと書かれていた。


「………」

 うん。その最後の一文で股間を抑えた者は多くいた。

 

 メイプルは女の子で良かったと小さく呟いている。うん。俺も女の子になりたかったよ。


「最初の一夫多妻制の文だけを見て男性の方々は同意しました。あとで揉めるのも面倒だったので、国中にその新法を見せましたが、最初の一文で同意して署名しました。……国民のほとんどそうでした」

 上手くいったと思えばよかったのか嘆けば良かったのかいまだに分かりません。


「………」

 目先の欲だけ見てその後はきちんと読まなかったんだな。

「あの……同性婚とは」

 使者がまだ股間を抑えながら尋ねる。

「そのままです。我が国では女性が少ないので同性同士でも子供が出来る様になりましたので同性同士が結婚出来る様にしてます。――男性の妊婦も多いですよ」

 じゅるり

 今、聖女二人が何か涎を垂らしてませんでしたか?


「いいわね。男性妊娠」

「いいでしょう。男性の同士の結婚」

「萌えね」

「萌えよ」

「まさか。ガチのBLが見れるなんて!!」

「それを狙ってこの国に来たからね!!」

「流石ね!! ***!!」

「そうでしょ!! **さんっ!!」

 がしっ

 立ち上がって、固く握手をする聖女二人。その近くの女性陣は涙を流して拍手をしている。


 男性陣は……肩身が狭そうだけど。


「……腐女子………」

 ぼそっ

 メイプルが呟く。


 ………ふじょし。うん。婦女子だけど。何をいまさら。


「えっと……同じ音だけど字が違っていて……」

 うん。説明してくれるのは嬉しいけど、俺ら下働きだからな。ここで声出しちゃいけないんだぞ。

「今まで、同性愛者で肩身が狭かった人達も大手を振って、いえっ!! 結婚しているから他の男性陣よりも保証は高く生きられる世の中!! 偽装結婚もしなくていい。家族を泣かせる事もない日々を送れると感謝されて」

「最初の妻の許しを前提だから実際には一夫多妻にしてもほとんど実現してない!!」

「許してもらえた男性は、最初の妻をないがしろにしようとしたら処罰される!! 今まで女性という立場だけで弱かったいろいろな権利を十分に使えるのよ。いい世の中でしょ!!」

 聖女二人。そして、女性陣が盛り上がっている。


 男性陣は残らずぽっか~んだ。


「メイプル……」

 意味分かる。

「う~ん」

 メイプルも複雑そうだ。


 でも、なんとなく。

 一夫多妻制で人買いとかの心配していたけど、その前に国が許さないような法律を作ったという事なんだろう。

 知恵者なんだろう。この国の聖女は。

(なんか歪んでいるけど……)


 こほん

 あっ、冷静になったらしい。


「心配なら我が国を見て回ってください。ですが、腕輪のない男性は権利が受けれないのできちんと腕輪をはめて下さいね」

 ニコリと微笑まれて腕輪をはめるように指示される。

「漆……?」

 見た目の割に腕輪が軽かったという事だけ明記しておく。


 そして。この国の滞在が決定した。


腐女子な聖女……なんでメイプルがそんな単語を知っているんでしょう。

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