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聖女様は転職する事になりました

浄化の旅は今回はお休み

「羽振りが悪いよね!! 神武国って!!」

 ただいまメイプルはすこぶる機嫌が悪いです。

「そう思わない!!」

 同意を求められても、

「それよりも明日からの仕事どうしようか……」

 俺とメイプルは本日。


「そんなの気にしてもしょうがないでしょう!! 探せば見つかるでしょ!! ったくホントむかつく~!!」

 神武国の仕事を首にされました。


 話は数日前に遡る。

 神武国の聖女カタギリ様が禍つ気を浄化された奇跡。その旅の下働きとして俺とメイプルは雇われていた。成功すれば聖女(本物)できなければ聖女(偽物)という旅なので、旅はお忍び。供は少人数。


 その少人数の旅で人手が足りず忙しいのに給料は少なく。

 それに、

『お前達はカタギリ様の奇跡を吹聴するのだ』

 と言われて、

『嫌ですよ』

 メイプルは即答してしまったのだ。


「貴方だってそう思わないの。直接見てないし、奇跡よりもその旅での態度の方がいろいろいいたい事があったし」

 ああ。まだ機嫌悪いな。


 メイプルは機嫌がいいと俺を兄さん呼びするが、機嫌が悪いとあんたか貴方。場合によっては、それとかこれと呼ぶ。

 因みに名前は呼ばない。ってか、俺の名前は俺自身が言えないのだ。


 俺の名前はとある神職から付けて貰ったものだ。

 俺が生まれた当時。神職の者達が自分の名前を広めるために――聖人認定が欲しかったらしい――貧しい家の子供でも名を与えるのがあちらこちらであり――神職が名を付けるのは金を積まないと無理なのだ――俺の名前もその一つだったのだが、

「■■■■■■」

 発音できません。

 なんか凄い名前を付け過ぎて神職というかそちら系の事を学ばないと口に出して言えない複雑な名前だったらしくて、俺の家族は誰も言えなかった。

 名付けた神職は、

『教養がないのが悪い』

 と告げて、発音できない名前で戸籍を登録してくれたので、俺は名前を言えないのだ。


 愛称も不可。別の名前に付け直そうとするが、神職の力が変なところで強すぎて付けようとしても付ける事が出来ないので、俺の名前は今では誰も口にできない。


 いわゆる名無しというものだ。


 メイプルにそう告げたら、

『本人が言えない名前を付けるなんて何考えてんだろうね!!』

 と憤慨していた。


 話がそれた―――。


「まあ、それはそうだけどな……」

 奇跡か……。


 聖女様の奇跡。俺はそれを見ていた。

 ただし、カタギリ様ではないが………。


 先日の旅。洗濯をするたびに清められた空気。そう――メイプルが起こした奇跡だった。

 でも。

(メイプルは自覚ない……)

 告げる事がいいのか悪いのか分からないから何も出来ない。

 それに、言っても信じないだろう。


(メイプルがもし本当の聖女なら…いや、本物だろうな。おそらく権力争いに巻き込まれるだろう)

 聖女候補は何人いるか分からないけど――そんなの下々に伝わってこない――メイプルはどの勢力にも所属していない。

 狙われるだろう。それに危険性もある。


 それが怖くて俺は誰にも言えない。

「……兄さん?」

「まあ、下働きはどこも必要としているだろう。――探してみよう」

 その前に首になったのを母さんに報告しないといけないが。



「――で、首になったの」

 ニコニコと――この母さんはかなり怒っている――確認して、

「座りなさい」

 と笑ったまま――目が笑ってません――告げて、俺とメイプルは床に正座する。


「どうして首になったのかな?」

 母の言葉に一から説明する。

「はぁ~」

 どうしてそこで臨機応変って事をしないのかしらね。

 母さんの言葉にそうだよねとメイプルを未然に止めれなかったのを悔やむ。

「だって~」

「だってじゃないでしょ。メイプル」

 メイプルの両頬に手をやって。

「あれだけ考えてから口にしなさいって言ってるでしょ!!」

 思いっきり抓る。

「いひゃいいひゃいいひゃい」

 メイプルが悲鳴を上げる。


「まあ、いいわ」

 手を放す。

「あんた達の次の仕事を用意しといたというか都合が良かったというべきか……」

 はぁ~。

 顔に手を置いての言葉。


神門かむどから下働きに来てほしいと話が来たのよ。あんた達二人に」

 神門?

「ああ。知らないのか。――神職の……聖女様の教育をしてきたところよ」

 出現した聖女様にこの世界の常識と言語。力の使い方を教えてきたという言う神域。

「神武国の聖女の奇跡に他の国の聖女を擁護してしているところが出まかせだとか本物だと吹聴したいだけだと言い出してね。騒動になっているの。聖女が本物かどうかなんて誰も分からない状態でこのままだと戦争になると言っていてね」

「俺らに関係ないけど……」

「それが関係あるのよね。――その奇跡を目の当たりをした者達。その旅に同行していた供達を自陣に引き入れたい輩がいてね。場合によっては自分達の都合のいいように言わせたいと裏で手を回すものも」

 意味分かるわよね。

 ああ。うん。分かった。

「? 分からないけど」

「都合のいいこと言わないと殺すぞと脅すのよ」

「……ばっかじゃない」

 そうだけどさ。そうきっぱり言うなよ。


「じゃあ、俺らを雇いたいというのは」

「公平性と保護のため。それに……」

「それに……?」

「多分。これからあっちこっちで起こるわよ聖女様のお忍び浄化の旅。お忍びだから少数精鋭の供を求めるからそれを確実に確保したいのよ」

「えっ~~~!!」

 また忙しくなるのぉ~!!

 メイプルの不満。うん。俺も同感。


「給金は上がるわよ。神武国よりも高価で払うとそれだけ危険性の多い仕事だし」

「「是非!!」」

 声が重なる。


 神武国の安い給金に辟易したのだ。それより多いのならいい仕事だ。


「じゃあ、引き受けるわね」

「うん♡」

 そういう事で、俺とメイプルは転職する事になりました。


「そういえば……。聖女様達って王族の婚約者だけど。そろそろ結婚しないと婚期逃すんじゃないの?」

 みんな20過ぎてるでしょう。

「ああ。そうね。……聖女様の世界では20になってからの結婚出来ないそうだけど」

 20なんて遅いわね。


 なんかやばい話題に行きそうだ。

 逃げようとするが足がしびれて上手く逃げらない。

「13はちょうど結婚適齢期よね。メイプルもそろそろ結婚したいでしょう」

「そうよ。貰ってもらいたいけど……」

 二人の目が完全に向けられる。


 あっ、詰んだ。


「いつ結婚してくれるのかな? 兄さん?」

「息子?」

 二人の言葉に汗がだらだらと流れるが、

「ご…ごめんなさい!!」

 まだ所帯持つつもりはないと慌てて逃げる事しかできなかった。











こういう事で聖女様(候補)の旅のお供の下働きになりましたとさ。めでたしめでたし

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