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聖女様は逃げた理由を語ってくれています

乙女ゲーム系のネタって多いですよね

 どうしてこうなっているんでしょうか……?


「そう。――楓……メイプルもこの世界に来てたのね」

 質のいい一室。


 聖女様に用意された応接室らしい。


 そこで何故か聖女様(?)と一対一で向かい合い――ちなみに聖女様にくっついていた方々は遠慮して(させられて)廊下に控えている。


 きっと何かあったらいつでも飛んでくるんだろうな。扉の向こうから怨念みたいな何かを感じる。


「あの……楓って?」

 あっ、敬語忘れてた。

 扉の向こうから怒気という感じのものが伝わってくる。


「楓? 佐藤楓(***)の事よ。メイプルと名乗っていたみたいだけど」

 教えてくれようとした言葉が途中聞こえなかった。おそらく、聖なる言葉系なんだろうな。俺の名前みたいな………。


「どうやら、ライバルキャラじゃなくて……隠しキャラを出すきっかけだったのね」

 なんか妙な事言ってるな。


「あなたの名前は?」

 聖女様が聞いてくるけど、俺が名乗れない名前だからな……。


「私の名前を先に教えた方が良かったわね。――私は、チェリーよ」

 名乗られたのにきちんと聞こえた。


「あの……?」

「ああ。愛称よ。本名は何度名乗っても聞こえてないみたいだし。……何度も言いたくない名前だし」

 チェリーと呼んでもいいのよと言われて迫られる。


 マジ止めて欲しい。怖いから……。


「それにしても……楓もこの世界に来てたなんて……」

「俺が拾いました。当時は言葉もおぼつかなくて、俺たち家族が教えてました」

 そう。言葉を教えて話せる段階になってから事情を聞く事になったのだが、メイプル自身も幼かった事があり、説明も出来ず、記憶も薄れていった。


「……………」

 ずっとメイプルと呼んでいたから、楓と呼ばれても自分の知っている彼女と結びつかない。


「で、貴方の名は?」

 そう言えば聞かれていたんだった?


「実は……」

 自分の名前が名乗れない事。その理由をしっかり伝えると。


「自分で言えない名前を付けさせるって……妙な話よね」

 渋い顔をされた。うん。そうだよね。


 ところで俺はいつ解放されるんだろうんだろうか……。


「あの……」

「――チェリー。そろそろ解放してあげないと」

 皇太子が口を挟む。

 うん。そのさっさと去れという視線が痛いです。

 

 下々の者は声を掛ける事も視線を合わせる事も不敬なのでそっと去る。


 はぁ

 やっと解放されたと安堵のため息が出る。


 さてと。終えに割り当てられた仕事班んだろう。多分そこにメイプルもいるだろうからメイプルを探さないとな。


 そんな事を考えて、下働きの行き来する辺りに向かうと。


 ごしっごしっ


 洗濯をしている音。


「メイプル」

 そこにはメイプルの姿。


「兄さん……」

 洗濯盥に水を張って、シーツの汚れを取っている。


「相変わらずだな……」

 シーツにこびり付いている汚れを綺麗に取り払っている――ちなみにその汚れというのがただの汚れではなく、瘴気とか呪いとかが染み込んでいる代物なのだがメイプルからすれば取るのに面倒なただの汚れ認識だ。


「お酢とレモンがあればある程度取れるのよ。これおばあちゃんの知恵袋ね」

「……………」

 メイプルの傍には、料理には適さなくなったと思われるレモンとお酢。


「なあ、メイプル……」

 恨みを買っているんだろうな。この国は城に……聖女に向かっている瘴気の量が桁違いだ。聖女の取り巻きの司祭が気付いてないのが不思議なくらい。


 ってか。なんで俺が見えるのかはさておいて。


「あの聖女。――お前の知り合いだよな」

 雰囲気などは違うが、似ている顔立ちだ。


「……………………………………兄さん」

 メイプルの思い詰めた顔が向けられる。


「兄さんは…………私がこの世界の住民じゃないと言ったらどうする?」

「……………」

 いや、知ってたけど。


「お前はお前だろ」

 拾ったの俺だし。育てたのは俺の家族だ。

 拾った時に来ていた服は取ってあり、色んな国の技法を見たが、あの服の様な質のいい物は未だに出てこない。


「………小さくて覚えてないんだけど」

 メイプルは洗濯物を物干し台に干そうとする。大きいからそれを手伝うとありがとうと礼を述べられる。


「私は、ここじゃないどこかに居た。お父さんお母さん。お姉ちゃんが居た。お姉ちゃんの学校に行ってそこで気が付いたら水の中に居た」

「……………」

「兄さんが拾ってくれるまで泣いてた。水が冷たくて、今思うとあのままでいたら風邪ひいていたんだろうね」

「拾って最初にしたのはお湯を用意して体を温めたな」

 忘れられない光景だ。


 ずっとメイプルは泣いてた。


「今は、夢のような気持ちなんだ。小さかった頃の事は。兄さんに拾われた。その時からの自分が今の自分の始まりだし」

「………」

「だけど……あの人を…聖女様に会って……」

 身体が震えている。怯えているのだ。


「あの夢が形になってきたんだと……」

 蒼白だ。


「メイプルっ!!」

 今にも倒れそうなメイプルさ支える。

 洗濯物が地面に落ちる。ああ、洗い直しだなと冷静に判断する。


「兄さん」

 がしっ

 腕を掴まれる。


「私は兄さんの家族だよね!! 兄さん私を手放さないよねっ!!」

 恐怖。

 メイプルは悟ったのだろう。


 当然だ。何度も聖女に関わる仕事をした。


 いくら幼い頃の事を夢だと判断していても何度も何度も関わってきたら夢が夢ではないと分かってきたのだろう。そして、今回の聖女様。


 同じ顔。悪夢が形になって襲ってきたという事だ。


 って、言うか……。


「なあ、メイプル……」

 さっきまで、メイプルを支えていたはずだ。だけど、何時の間にかメイプルによって地面に座らされて上に乗っかられている。


「なんで、こんな状況になってんだ?」

 うん。甘えてるとか縋られているのかというような感じじゃない。何というか押し倒される様な……。


「今なら、そういう対象に見てもらえるかと思ったのに」

 ちっ

 舌打ち一つ。


 さっきまでのシリアスの雰囲気が打っ飛んだ………。

因みに今回の聖女様(仮)は本名は佐藤錦です。だからチェリー(笑)

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