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聖女様は怯えて逃げました

異世界に来た。

乙女ゲームのように逆ハーしちゃえ!!


そんな聖女です

「乙女ゲーム……」

 げんなりという様にメイプルが口を開く。


「知ってるのか?」

 そのおとめげぇむとやらは。


「まあね……。お姉ちゃんやってたな(**********)

 後半聞き取れなかったな。何言ったんだ?


「でも、聖女様って、いくつだっけ?」

「さぁ? 20代後半だったろ想うけど……」

 何で急に。


「乙女って年齢じゃないでしょうが……」

「良く分からんが………お前。女性のほとんどを敵に回したと思うぞ」

 なんか殺気がブっ刺さってくるような感じがしたんだけど。


「で、今回のお仕事だけど」

「――行くわよ」

 告げるのに合わせて用意される荷物。二人分て事は俺のも用意してくれたのか。

「こっちが必死にアプローチ掛けているのに全く見向きもしない兄さんが横から逆ハールート狙いの女に取られるなんて見てらないわよ」

 妨害しないと。いや、これを機に兄さんを押し倒してしまえば…………。


(何か分からないけど、またどこかにトリップしてるな)

 それにしてのメイプルって博識だな。


「俺が拾う前はどんな生活してたんだろうな……」

 ぼそっ


「兄さん?」

 何か言った?

 我に返って尋ねてくるメイプルに何もと首を振り、

「何でもないよ」

 と告げる。


 メイプルは聖女様(仮)と行動をしている時に何度も浄化の奇跡を起こしている。まあ、それでも騒がれてないのは、浄化をしているのは聖女様(仮)だと思われているから。

 だけど、彼女が明らかに浄化している。


(浄化が出来るって事は……)

 今まで考えない様にしていた事実。

 

 メイプルは聖女。

 しかも本物だ。


「……………」

 本当なら神殿に報告しないといけない事かもしれない。だけど、今までの聖女を見ているとメイプルがああなったら嫌だなという想いがあるし、メイプル自身に自覚はない。


 それに………。

 

 くすんくすん

お母さんお父さん(********)。おうち帰りたいよぉ~』

 ああやって夜中こっそり泣いていたのを覚えてる。

 バレない様にこっそりと。

 俺らに心配かけさせないように――。


 聖女として認められて、きちんと役目を貰って、崇められたら多分。

(メイプルはおうちに帰れない)

 あんなに帰りたいと泣いていたのに。帰してもらう事は出来ない。


「兄さん?」

 メイプルが覗き込んでくる。

「何でもないよ。――ああ。暗殺の話が来たら断れよ」

 後で面倒になるから。

 そう告げると。

「分かってるよ~。私は兄さんみたいに厄介な事の前に逃げれますから~」

「………………………」

 あれっ?


「逃げれたっけ?」

 なんかいろいろ巻き込まれている気がするけど。


「それは兄さんが原因でしょ」

「……………」

 いや、そうじゃないだろう。


 まあ、そんなこんなでその聖女様の元に行ったが。



「******~♡ わたくしの元にいらっしゃ~い♡」

 その聖女様にすり寄られるなんて思ってなかった。


「すみません。仕事中なので……」

 聖女様の周りには皇太子とか第二王子とか公爵御子息とか将軍御子息とか最年少司祭が群がっていて、微笑んでいるけど。

(殺気がばんばん刺さって来てるんですけど~)

 俺なんてただの下働きですよ。

 マジでやめて下さい。


 ってか………。


 怖くて、聖女様を直視できないが、20代のはずだよな。

(若く見える……)

 勿論直視はしてないが。指先とか肌の艶とか。


「仕事中っていっつも!!」

 むにっ

 胸を押し付けてくる。


「すみません」

 やんわりとそれを退ける。


「酷いわね」

 くいっ


 どうやらしびれを切らして顎を掴んで視線を合わせようとする。

 そんな聖女様の行動でイライラしているなら止めてくれませんか。俺を殺してやりたいなんて目で見ないで下さい。


「兄さんっ!!」

 そんなタイミングで声を掛けられる。


「メイプルっ!!」

 助かった。

 歓声を上げるとメイプルがすっと俺と聖女様の間に割り込む。


「――兄さんが何か粗相でもしましたか?」

 粗相って……。俺をどう思ってるんだよ。


 メイプルと聖女が向かい合い、睨み合いになり、その時になって、

「あれっ……?」

 妙な事に気付いた。


 睨み合って、ようやく聖女の顔をまじまじと見たのだが、

「似てないか……」

 メイプルと聖女。


 メイプルの方が動きやすさを重視して化粧っ気もないのだが、なんと言うか顔のパーツが似通っているのだ。

 というか………。

(メイプルって、かわいい系の顔だったんだな)

 あんまり認識してなかった。


 現実逃避に近い感想を抱いてしまったのも無理はない。


 まさか、聖女様とメイプルがそっくりとは思ってなかった。

(怖かったからな。目を合わせると喰われるかと思った……)

 そんな空気を纏っていたのだ。


「えっ?」

 信じられないと目を大きく見開く聖女。


「………えっと…?」

 呆然とまじまじと――失礼だけど――凝視しているメイプル。


「………………聖女?」

 聖女ハーレムの面々も信じられないという想いで見ている。


 それを見て、

(司祭の方々まさかっ!!)

 聖女とメイプルが似た顔だと知っていたのではないだろうか。

 似ているから。今回のお仕事来たんじゃ………。


 さぁぁぁぁぁ


 そう想像した途端。怖気が走る。


 メイプルを似ているからという理由で子のハーレムを手玉に取らせなんて事考えているとしたら。それは買い被りというか。

 メイプルに出来ると思っているのか。

 似ているからって納得すると思うのだろうか。


「…………………………………………………………………………………………………………お姉ちゃん?」

 ぼんやりと呟く声。


 それがメイプルの動揺して掠れた声だった。


「何言っている。サトウに!!」

 皇太子の無礼を責める声。


 だが、

「……………………………………………………………………………………楓?」

 楓?


「メイプル?」

 わなわなわな

 怯える顔。


「ちッ…違っ⁉」

 恐怖。

 後ずさりする。


「楓……」

「違うっ!!」

 聖女が伸ばす手をメイプルは振り払う。


「私は……私は…」

 がくがく

 怯えた顔で、メイプルは。


 ――その場から逃げ出した。


まあ、黙秘で

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