飛んでいく娘
岩山までやって来たわ良いが
酷い天候であった
木が無い岩肌には
辺りの風が、否応なく、吹き付け
金髪をなびかせ
赤髪を、まき散らそうとしている
されど、とうのふたりは
たいしてそんな事は、気にも留めず
それを、村長は、さすが業者の方だとも
馬鹿なだけなのではとも思ったりもしたが
その人とは違う二人をこんな時だけは、頼もしく感じた
「それで、どこらへんなのですか」
男は、雨も降りだした
岩山で、白髪交じりの老人に、聞いた
「さあ、出るか出ないかは、わしには、分かりかねます」
「それはそうでしょ、何時でも出れる怪異なんて
番町皿屋敷のお菊さんくらいでしょ」
「お前信じているのか」
「っえ・・・・どういうこと」
娘は、まさかと言う顔をして、男を見たが
そんな時
いきなり、娘が、何者かに吹き飛ばされた
それはそう見えた
娘は、空中を、川に流されるかのように
男たちの頭上を、流れていく
「おっおい」
男は、それを、平然と見て言った
しかし、娘はそんな余裕はなく
何とか地面に降りようとしたが
それは、娘をしつこくつかんでいるように
一向に下に下げることはない
「おい、大丈夫なのか」
男の背後で、風の音にまぎれながら
別の男の声が聞こえた
「ああ、これぐらいでは死なんだろ・・ただ、どうも妙だ」
「妙だと」
後ろで、男が面白そうに言った
村長のみは、あたふたと
飛んでいく娘を見ていたのである




