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トルバスの冒険者  作者: うち
セッション2
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06話「セッション2-3 重斬撃の場合」

 第一回戦、第五試合。

「それでは~、試合開始っ!」

 その声を聞き、レナちゃんは巨剣を抜く。

 横薙ぎ一閃、豪快な風音を鳴らして戦闘体勢を取る。

 そんな頼もしい……女ながら頼もしい姿を。

 ―――僕は正面から迎えている。

 えぇ、端的に申しますと剣を向けられている。

 つまり、彼女の対戦者である僕に剣を向けているだけなのだが。

 あぁ、凛とした顔のレナちゃん可愛いなぁ……。

 だけど、もう賽は投げられてしまった。

 本音を言えば、今すぐにでも逃げ出したい。

 しかし賽は、投げられたしまったのだ。

 槌矛を握る。

 息を整えろ……。始まる前から手が汗ばむ。

「さぁクロさん、いっきますよぉ~っ!」

「わわっ! ちょ、まだ心の準備がー!」

 真っ直ぐ向かってくるレナちゃんは巨剣を握り締め―――。

「我が求めるは神速を尊ぶ『韋駄天の足輪』!」

 急いで詠唱した速度強化の神聖魔法が発現する。

 ―――レナちゃんが振り下ろす巨剣を横に躱して距離を取る。


「うおっと! こんな事になるならッ! 闘技大会なんて出たくなかったー!」

 クロは喚き散らしながらもレナが振り回す巨剣を避け、弾きながら凌ぐ。

「中々当たらないっ! 流石ですねクロさん!」

 攻撃を避けられてもレナは始終笑顔で―――。

「楽しそうに剣を降るレナちゃんも良いなァ……」

 無駄にフラグを立てた気もするけど、気にしない。

 しかし、避けども避けどもレナの小さな身体から繰り出される巨剣の斬撃は止まる事を知らず、勢いを強めて更にクロへと振り下ろされる。

 やがて、クロは闘技場の端まで追い詰められる。

「しまっ!」

 レナが体を回転させながら巨剣を下から振り上げ、クロに渾身の一撃を繰り出す。

「ッ!!」

 流石に逃げ道のなくなった状態ではその巨剣を受けざるを得ない。

 クロは右手に持った槌矛でレナの一撃を防ごうと構える。

「やああぁぁぁぁぁぁっ『天空割り』っ!!」

 所詮、槌矛は槌矛、巨剣の余りある力に、威力に勝てる筈もなく、クロは右手を槌矛ごと弾かれる。

「今っ!」

 言って、レナは跳ぶ。

「ぐぅあぁ……重いっ……、腕、痺れっ……」

 バランスを崩したクロに巨剣が迫る。

「我が求めるは悉くを拒絶する『聖なる盾』!」

「一撃ぃ粉砕っ!『大地砕き』!!」

 跳ぶ。

 クロの前に現れる聖なる盾に、レナは全身全霊を込めた振り下ろしを繰り出す。

 如何なる打撃をも弾く聖なる盾はその巨剣の一撃に耐え切れず、呆気なく粉砕される。

「んなっ!!?」


 あぁ……汗が滴る首筋って良いなぁ。

 違う、今はそんな時じゃ……。

 あ……、若しかして、これが走馬灯ってヤツですか?

 ハッ! 跳んでるからパンツが見え―――。

「ぎゃあああああああっ!!」

 凄惨な姿になったクロが闘技場の壁に叩きつけられ、勝負は決した。

「なんか最後の最後でクロさんから悪寒を感じて力み過ぎちゃいました……大丈夫ですかクロさん?」

「黒? いや、白……白だったよ…………。あは、あははは……ガクリ」

 こうして、あっさりと僕はレナちゃんに敗北した。

 こんな筈じゃなかったのに……。


 試合後、勝ち残ったレナ達は医務室に送られた二人の仲間の様子を見に行く。

「二人とも大丈夫ですかっ!」

「アタイは当たり所が悪くて気絶しただけだから大丈夫。見れば分かると思うけどクロの奴もピンピンしてるよ」

「あはは……いやぁ、お恥ずかしい」

「良かったですぅ~。クロさん、レナちゃんの一撃をまともに受けちゃったみたいで心配してたのよ~」

「ま、まぁ聖なる盾越しだったので威力も半減されてて、僕に傷とかは無いです」

 クロの言葉にホッとしたレナはクロの手を取る。

「あたし、クロさんの為にも勝ちますから! 絶対勝ちますからっ! 見守ってて下さいっ!」

「はい。僕の分も頑張ってねレナちゃん」

 行き成り手を取られたクロはドキッとしながらもレナには笑顔でそう返した。

「ふふっ、私も負けるつもりはありませんよぉ~」

 ラヴィとレナが決意を固めている内に大闘技大会は順当に進み。

 第二回戦、第二試合。

「ラヴェンナ選手、フェンリル選手。闘技場へ!」

「バレッタさんの仇は私がとりますよぅ!」

 両手で杖を握り締め、ローブを翻し、ラヴィは闘技場へ向かう。

「ラヴィさん、ファイトです!」

「大丈夫よ~ふふっ、じゃあ行ってくるね」


 闘技場に先に着いていたフェンリルを見ながら、ラヴィの表情は真剣なものになった。

「それでは、試合開始!」

 合図と同時に魔力を集中。

「『赤光の熱線』!」

 無詠唱で放たれる素早い熱線がフェンリルの右肩を狙う―――姿勢を低くしたフェンリルに避けられる。

 魔法の初弾を躱したフェンリルは真っ直ぐにラヴィの下へと間合いを詰める。

「我が前に立ち塞がりし愚かな者へと火を放て『紅炎の魔弾』!」

 人の頭ぐらいの大きさの炎弾を真っ直ぐに放つ。

「『飛翔する脚』」

 更に間合いが詰められないように飛行魔法で空へと飛ぶ。

「『影狼〈かげろう〉』」

 フェンリルが静かにそう言うと同時に、黒い……漆黒の狼が足元から2匹現れ、1匹は炎弾を回りこんでラヴィに、もう1匹は炎弾に飛び込む。

 正面の漆黒の狼が炎弾に噛み付いた所で爆発し、フェンリルはその余波を食らって後方へと吹き飛ばされる。

「なっ、なんですかあれは!」

 観戦していたレナが叫び。

「早いっ!?」

 ラヴィも回り込む狼に気付くが、漆黒の狼は素早く空を飛ぼうとする隙だらけのラヴィの横腹に噛み付く。

「これ、召……喚……?」

 飛び立つ直前に力尽きたラヴィはそのまま前のめりに倒れ、吹き飛ばされたフェンリルが立ち上がり、そのままラヴィは立ち上がれず二回戦の第二試合は幕を下ろした。

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