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トルバスの冒険者  作者: うち
セッション1
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01話「セッション1-1 魔法都市に集う冒険者の場合」

 トラン王国首都、王都アルメトラの南西に位置する魔法都市トルバスは魔術教会の総本山でもあり、魔術研究に勤しむ魔術師や学者の都市だ。

 王都の近くの為に人の流通が盛んで、王国の第二の都市と言われるに相応しい。

 人の出入りが多いという事もあって数多くのギルドが設営されており、冒険者の拠点としても有名である。

 少し昔の魔王との戦争で、趨勢は逆転したが未だに魔族達は跋扈している。

 それらを冒険者や兵士に討伐させながら、人々は平和な日々を過ごしている。


 これは、魔法都市トルバスのとある冒険者の宿『雨地亭』に集まった冒険者達の物語。


 雲一つない晴天の昼下がり、『雨地亭』の扉が勢いよく開かれる。

「こんにちはっー!」

 勢いよく開けられた扉と大きな声が相まって、冒険者の宿の店主だけでなく宿の客や冒険者の注目を集めた。

 声の主は乱雑に切られたショートの赤髪が可愛い、軽装の鎧を着た女の戦士だった。

 それだけなら一目見たら興味が失せ、目を逸らすのが普通だが。

 その女が背負った巨剣が見る者を圧倒し、視線を釘付けにさせた。

「いらっしゃい……ウチに……何か用かい?」

 と、『雨地亭』のマスターが問いかける。

「はいっ! 冒険者として依頼を受けに来ましたっ!!」

 すっきりとよく通る声だな、とマスターは微笑み、顎鬚を擦りながら手馴れた感じで対応する。

「そこの依頼板から好きなのを選びな……」

 つい、と顎で依頼板を指して女戦士の顔を伺う。

「ありがとうございますっ」

 ぺこり、頭を下げて依頼板に飛びついた。


 少しの間、依頼板を見ていた女戦士は、

「ぁの、冒険者のパーティを組みたいんですけど……」

 と、一息ついていた雨地亭のマスターの元に戻ってきて声を掛ける。

「お、おう……って事はアンタぁ駆け出しかい?」

「はい。それでこのゴブリン退治をやろうと思ったのですが、パーティを組んで行った方が良いと聞いたので……その……」

「駆け出しの冒険者かぁ……ぅーん、お? 今、丁度駆け出しのお嬢ちゃんに合いそうなのが3人居るみたいだから声掛けてきてやるよ、ちょっと座って待ってな」

 マスターはそう言うとカウンターから離れ、3人の冒険者を呼び付ける。

「なによマスター。アタイになんか用かい?」

 ほろ酔いのコロポックル〈小人〉。

「はい? どうかしましたかマスター?」

 顔の整ったドワーフ〈山人〉。

「私をぉ~呼びましたかぁ?」

 おっとりした声の人間。

 三者三様の声と共に3人の冒険者がカウンターの所に集まった。


「ぁーこの駆け出しの女戦士さんがゴブリン退治の依頼をやりたいらしいんだけどパーティ組んで一緒に行ってやれないか?」

 マスターがそう言うと、

「僕で良ければ……是非ともお供させて下さい」

 巨剣の女戦士をチラリと見て、蒼い法衣を着る清純そうな男のドワーフ神官はにこりと笑いかけて肯いた。

「は~ぃ、私も良いですよぉ」

 黒のローブに三角帽子を身に着けた人間の女魔術師も肯く。

「んー? この面子ならアタイが必要そうだね……仕方ないねぇ」

 酒の入ったボトルを弄りながら、碧の服を着たコロポックルの女盗賊も肯いた。


「この3人で良いかい?」

「はいっ! ありがとうございますマスターさん!」

「なぁにこれも仕事の内だからな。まずは軽く自己紹介をからなっ」

「はいっ! あたしの名前はレナ。戦士ですっ!」

 レナはやや小柄な人間の女戦士だが、自分と同じ大きさの巨剣〈バスターソード〉を背負ったままぺこりと頭を下げた。

「アタイの名前はバレッタ。野伏や斥候の技能を持ってるから探索ならアタイに任せなっ」

 腰に短剣〈ダガー〉を2本と外套〈マント〉を身に着けたコロポックル族〈小人〉は、背中に背負った小振りなリュックを椅子の下に下ろした。

「僕の名前はクロです。神官をやってます」

 クロと名乗った蒼い法衣を着たドワーフ族〈山人〉の男神官は、腰にぶら下げた槌矛〈メイス〉を避けながらレナの正面の席に着いた。

「私の名前はぁーラヴェンナでぇ魔術協会の魔術師をやってますぅ。気軽にラヴィって呼んでくださいねぇ~」

 ラヴェンナは人間の女魔術師で、長い杖〈スタッフ〉を手に持っている。


「おおおっ?! 魔術師って事はラヴィは貴族かい? これはお金を稼ぎやすそうなパーティに入れたみたいだねぇ……」

 自己紹介が終わった途端にバレッタは目を輝かせてラヴィに飛び付いた。


 魔術師の魔力は大体は遺伝で受け継がれる事と、魔術師の研鑽には多大なお金が掛かるという事で、魔術師の家系は貴族に限られる。

 その為、魔術師の冒険者は希少なのだが……。


「はぁい~トルバスで冒険者として魔術師のぉ力量〈レベル〉を上げていこうかと思いましてぇ」

「へぇ、アタイはお宝ちゃんを沢山ゲットする為に冒険者に……中々パーティ組めなくてフリーだったんだけどねぇ……いやぁ丁度良かったよ。うんうん」

「皆さんは色々と目的があってカッコいいですっ!」

「あれ? パーティ集めたのに、レナさんには目的がないんですか?」

「えへへ、あたしは昔から冒険者に憧れてて剣士にとして冒険者を目指したかったんです……そういうクロさんは?」

「え? 僕ですか? 僕は……生活費等を稼ぐ為に成り行きで……ですね」

 苦笑しながらクロはそう答えた。




 綺麗なものを見た人というのは、まずその綺麗なものを凝視してしまう特性があるのだろう。

 でも、確かに凝視させてしまうほどの魔力が彼女達にはあったのでこれは仕方のない事なのだろう。


 さらさらと長い緑色の髪、宝石のように綺麗な栗色の瞳。

 あとローブの上からでも分かるほどのけしからんスタイルをしている。

 第一印象はおっとりしてるけど才気溢れる綺麗な女性、ラヴィさん。


 その横に居る女の子、レナちゃんも桁違いの可愛さだった。

 やや小さい背丈に鎧を着こなし、綺麗な爛々と輝く黒い瞳はやる気に満ちていて。

 少々乱雑に切り揃えられているショートの赤髪がこれ以上ないほどに似合っている。


 そしてコロポックル族〈小人〉のお姉さん、バレッタさんからも目が離せない。

 綺麗なショートの茶髪に少し大きいバンダナと整った顔が目立っている。


 そんな事を考えつつ、これは初対面の感想じゃないよな、とクロは自分を責めた。

 反省はしている、でも後悔はしてない。

 そう思わせるほどに、その彼女達は美しかった。


「(いやぁ、なんか運が良かったのか日頃の行いの賜物かちゃんと神は見て下さっているのかは分からないけど。見事に女の子だけのパーティに入れたなぁ)」


 レナちゃん。

 やや小柄だが巨剣を背負っていて威圧感を与えてくるが明るくてとても良い子みたいだ。

 冒険者に憧れて、冒険者になったのは本当らしくやや世間知らずな所もポイント高い。

 短髪の赤髪が特徴の元気で活発そうな女の子だな。

 バランスの良いスタイルで身に着けている軽装鎧の上から考慮した所、胸は大きめと見た。

 ……落ち着け。

 今は関係ない。


 バレッタさん。

 小さいけど年上特有の色気を持つ女性だ。

 コロポックル族なので恐らく僕よりは年上なのだが、容姿のお陰であんまり実感がわかない。

 ショートボブで見た目可愛らしい女の子、だけど年上……寧ろコレはステータスだろ。

 小さくて可愛いが色気も備えている、ゴスロリの服でも着せたら物凄い似合うだろうなぁ……。

 いやいや、待て。

 今は関係ないって。


 ラヴィさん。

 おっとり系美少女で、守ってあげたくなる可愛さを持つ女の子だ。

 髪型は緑の髪にふわっとウェーブが掛かった長髪。

 あとスタイルが良く胸が大きい、ローブの間から見えるミニスカのワンピースが高評価だ、流石人間。あと凄く胸が大きい。

 いや、だから待て。

 今は関係ないだろっ。




「クロ……さん? 大丈夫ですか?」

「このドワーフ、どうしようもなくだらしない顔のまま固まっちゃってるよ……こいつに後ろを任せて大丈夫かねぇ?」

「もしもーしクロさぁん、どうかしましたかぁ?」

 皆の言葉を聞いて、クロはハッと正気に戻った。

「あー、あはは……いえいえ。なんでもないです、なんでも!」

 苦笑いで誤魔化してクロは『雨地亭』の店主を呼ぶ。


 こうして、自己紹介を済ませた冒険者一行は改めて呼び寄せた店主に向かってこう言った。

「って事でこのゴブリン退治の依頼を受けます」

「お? 新しいパーティが結成したって訳だなぁ。んじゃあ、手続きは俺がやっとくからお前らは目的地に行って来ていいぞ」


「はいっ!」

「あぃよっ」

「あは、あはは……(これって頑張ったらハーレムパーティ作れるんじゃ……?)」

「いってきますぅ~」


『【依頼内容】コブリン退治 トルバス近隣にあるモルド村がゴブリンによる襲撃を受けた。至急モルド村付近のゴブリンを退治して欲しい。』


 そんな訳で戦士レナ、盗賊バレッタ、神官クロ、魔術師ラヴィ、4人の駆け出し冒険者達はパーティを組む事になった。

 相手取るはゴブリンの群れ、駆け出し冒険者達の冒険が今、始まった……。

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