◆最後の晩餐!? 真実は虚無の果にの巻◆
こんにちは、楽しんでいただければ嬉しいです。
すっかり雨雲が空を覆う時刻になっていた。
今、俺は果てが見えないほどの反省を迫られている――えっ、誰にだって? ――ボロボロテントの石畳に三つ指ついて正座外交真っ最中の俺はちらりと視線をあげてみた。
それはタコ入道……いやいや、つくしが相貌を真っ赤にしてぷくっと頬を膨らませている。
とっても怒っている。ランク的には激怒から憤怒の間ぐらいだろう。
煤汚れた着物の胸元でがっしりと腕組をしながら攻撃的な視線で俺を射抜いている。
この視線、レーザー兵器に転用できれば加電粒子ビーム砲にも匹敵する軍用兵器になりそうだ。
さて、説明は後にしてまずは……
「つ、つくし……物凄い、誤解です……俺の言っていることを信じてもらえませんか?」
とても下手に出る。
それはまさしく平身低頭……簡単にいえば、ペコペコ頭下げまくっている状態だ……なんせ俺の命がかかっているからだ。
「あのぉー……つくし……」
「ダーリン」
つくしは俺の言葉を遮断する。
悪気がないことはわかっているがこの状況は辛い。
誤解に誤認が孕んで見当違いの勘違いスペシャルコースを堪能している状態なのだ。
つくしはぷっくり膨れ上がったほっぺのままで。
「わしというプリティな奥様がありながら、初夜を待たずに浮気とは……」
「その勘ぐりのベクトルは間違っているぞ……完全な誤解です……弁護士を呼んでください」
「ダーリンに権利などは存在しない、権利とはするべき事をおこなって子供ができて初めて発生します」
――するべき事ってなんだろう――
「この朴念仁! シラをきっているのか? それとも本当に、わ、解らないのですか!!!」
――ひぃぃぃ!! 俺の心を読みやがった!――
ぴしっ!
つくしは極貧天然系質素倹約の限りをつくしたスラム部屋の隅に向かって指を指す。
「あれはなんなのじゃ! えぇぇぇぇい、浮気者!! 我とさしつさされつ(、、、、、、、)の夜もせぬままに!!」
――さしつさされつ(、、、、、、、)ってどういうことだーっ!?――
つくしの指す指のむこうにはベニヤ板&青竹の壁に向かって体育座りしまがら「責任とってくださいぃぃぃ」と恨めしそうに一人つぶやくゆきなの姿があった。
その一心不乱さ……何だか俺が「えへへ、お嬢ちゃん」などと言ってエッチな悪戯をしたようにみえるぞーっ!
「許せぬ! ダーリンはこのいたいけで純真で貧乏なわしを裏切ったのかぁ、しかもおっぱいがメロンボインな奴と! ええーい、とっても許せぬ!!」
つくしはドタバタとタタラ踏む。
ばたつく足に込められた憤懣やるかたないと言う感情だろうか……黒いモヤがみえますよーっ!
超絶必死に地団駄を踏んで全身で富士山大噴火並みの怒りをあらわにする。
――ふぅ……心の中で嘆息する……仕方がない、ここは、身を削って話をまとめよう――
俺は怒りのあまり小刻みに震え、涙目で必死に悔しがっているつくしの両肩をグイっと掴む。
両肩を震わせていたつくしはびっくりしたように瞳を大きく見開き、上目遣いで俺を見上げてきた。
俺は視線をそらすことなく、じっとつくしを正眼した。
つくしは完全に凍ってしまったように動かなくなる。
まるで身も心も囚われてしまったように……ただ、瞳だけはしっかり俺を捉えていた。
「つくし、俺の心の奥底を覗いてみろ。俺がどれだけお前の事を思っているかすぐにわかるぞ」
ぎゅっとつくしの顔を引き寄せ、俺の胸元に押し当てる。
つくしは身体をあずけるようにつくしはしなだれかかる。
「ううっ……」とこらえきれないようにつくしは小さく声をもらす。
しばらくしてつくしの中で何かが弾けたように慌て始めた。
「……ひゃゃゃゃゃ、ダ、ダーリンはほんにそんな事を思っているのかーっ!」
いきなり全身真っ赤になるつくし……それはそうだろう、勝ち誇る俺。
見たか、これが思春期の男の子の願望的妄想だ。
「う、うむ……わかった、わしが勘違いしておった……ダーリンの愛はわかったぞい。し、しかし、縄は堪忍してほしい、痛さそうではないか。それに、あのブルブルと震えるバナナや丸っこい玉のついた棒はなんぞや……ダーリンはあんな事がしたいのか!?」
つくしはうつむいたまま絞り出したしのび声で訴えかける。
俺やゆきながいることなど意に介さない恥ずかしさだ。
――そんなに凄い映像を見たのだろうか!?――
「ううぅ、夫婦になればわしも覚悟を決めなければ……ダーリン、今回の浮気は特別に許してやるのじゃ」
コクコクと何度も頷き得心をしているつくし。
その小さな両手いっぱいにお土産の二つの麻袋を渡した。
きょとんとした面持ちだったが麻袋の中身を見るなりつくしの心臓が止まりそうなほどびっくりした表情に切り替わる。
そして漆黒の闇にさした曙光のように眩しい笑みをこぼした。
「ダ、ダーリン! こ、これは!?」
袋には魚が三匹とゆきなに聞いてとった緑色の大きな果実が入っていた。
下山の時、ゆきなに良いスポットを白日のもとに白状させて寄り道を収穫した努力の逸品達なのだ。
よほど嬉しかったのか涙腺が緩んだようにつくしの瞳からはらはらと涙が石畳に落涙していく。つくしの表情をみるとなんだが自分の行動が誇らしく想えた。
「ひっく、食べ物じゃ、うううぅぅ、生きているうちに魚や果実が食べられようとは……」
つくしは涙を流して喜びの感情を爆発させた
俺が想像したよりも感無量といった雰囲気だ。
「最後の晩餐に相応しいのじゃ、華美なのじゃぁぁ」
爛々と瞳を輝かせてグルグル~とお腹を鳴らすつくしとは対照的に壁に向かいそっけなく自分の世界に没頭しているゆきな。
何だか可愛そうなのでベニヤ板と青竹の壁際で存分にへこたれるゆきなの傍らまでいく。そしてそっとゆきなの肩に手をおいた。
「……責任とってください……」
壊れたCDのように同じ言葉をリピートするゆきな……。
「落ち込むな、失禁したぐらいで、脱糞だったら指をさしてわらってやるけど」
出来るだけ優しく声をかけたのに「デリカシーの欠片が一ミクロンも感じられないですぅぅ」とゆきなは加速したロケットのようにプンプンしながら声を荒立てる。
「びえぇぇぇん! 最後の夜なのにぃぃぃ」
――最後の夜……そういえばつくしも最後の晩餐って――
「案ずるな、ダーリンは大丈夫じゃ」
『パチリン☆』と可愛くウインクするつくし……やはり俺のプライバシーは……。
「ダーリン、すまぬが囲炉裏に火を灯してくれぬか……わしは……ダーリンと出逢えて幸せぞい。だから、今夜は想い残す事なくいっぱい甘えるのじゃ」
黒ずみ薄汚れた着物をばさぁっと豪快に脱ぎ捨てて一糸まとわぬ貧相な裸体で俺にニッコリ微笑んだ。
「おおっ、雨も降ってきた……綺麗に身体を洗ってくる。ダーリン、ひと時の夢を叶えてくれた感謝しているぞい。今夜は濃密な子作り……いや、想い出をつくるぞい」
スコールのように横なぐり土砂降り雨が降る中、しとやかなそぶりで両手を天に掲げて空の恵みに感謝するつくし。
まるで、暗闇にさした一筋の遮光のように輝いて見えた。
そう女神のように……あっ、あいつ、貧乏じゃなくて赤貧の神様だったな……女神にはかわりないかぁぁ。
いかがでしたか?
少しでもクスッと笑って頂ければ嬉しいです。




