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◆大雨シャワーと初夜な夜の水だけ茶会? の巻◆

こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。


 パサパサパサッ――


 鬱蒼と生い茂る木々の枝葉に弾かれる雨音が妙に聴覚をくすぐる。

 マイナスイオンでも出ているのだろうか。

 のぞき放題の穴のあいたベニヤ板&青竹の壁からはっきりと視認できる降雨の原因である低く垂れこめた雨雲がこれでもかと大粒の大地に降り注ぐ。

つくしに懇切丁寧に教えられたのだがこの島では、朝・昼・夜と言う一日の

周期はなく、朝・昼・曇り・雨と言うのが一日の周期らしい……らしいというのは俺も今日が初体験だからだ。


「おおっ! 気持ちよいぞい、ダーリン!! 一緒に水の恵みを満喫しようぞ」


 一寸先が見えない視界の中、ばしゃっと泥をまき散らしてつくしは快活に駆けまわる。


 両手を天高く掲げて、スコールのような雨粒を全身に浴び、喜びを全身で表わしているつくし。


 煤ぼけた白亜の肌を滑る水玉がスレンダーな曲線を包むようにおおい撫でていくようすが、思春期真っ最中の俺には苦行なのだ。誘惑だ。心臓破りの坂を駆け上がったように拍動がバクバクと高鳴る。ときより本能に負けてチラチラと見てしまう。


――恥じらいはないのかーっ!――


 などと理性が心で叫びながらも視線は泳いでします……もう、眼球そのものが金魚のように泳ぎまくっている。

 俺は煩悩てんこ盛りの健全な男子高校生なのだーっ。


「夫婦に恥じらいなどないぞい、わしの素肌を見たいのであれば後でじっくりみせてやるぞい」


 うあぁぁーっ、つくしぃぃぃ。


 なんで俺の心の叫びが見透かされてんねん!

 とは言え、腹立たしいが、今の俺は完全無欠の無力である。

 かなり可愛い女の子が俺の視野の中でにフリーダムすぎるすっぽんぽんで大地を無邪気に駆け回りダーリンと呼んでくれる。

 ごく普通の常識が通用しない世界に飛び込んでいる俺。

 だからじっとしている。


 つくしに雨浴びを誘われてもじっとしている。

 もはや頭も心も理性もガクガクしすぎて白昼夢をみている気分だ。

 時折見てしまう、つくしの裸……幼いながらも生唾ごっくん状態だ。

 この事実だけはどうしようもない。事実を甘受するのだ。

 自他ともに受け入れることは素敵なことだとオードリー・ヘップバーンも白黒の画像の映画生活の自伝で言っていたではないか。


 俺は頭をかかえてうつむいてしまう。

 思考が煮詰まってしまうぞーっ!


「我らは晴れて夫婦になったのじゃぞ、何故、よろこばんのじゃ?」


「俺には嫁を選択する権利はないのか?」


「権利とは……古都にゃんの夕飯として骨の髄までむしゃぶられる権利のことか? 命知らずのドMじゃのう。我はダーリンの命の恩人……いや恩神ぞい」


 プイっと頬を膨らませて子供のように両手をパタパタさせて身体全体のジェスチャーで抗議してくる。


ガサガサッ――


 鬱蒼としている茂みが揺れる。


 この音は雨のためではない、人工的な揺れだ。


「つくつく、私のお肉を返して」


 突然、透徹した鋭い声が俺とつくしをねっとりと捕える。

妹にベッドの下に隠していたエッチDVDが見つかり『お兄ちゃん、近寄らないで』と軽蔑の視線で見られた時ほどの悪寒が全神経を駆け巡る。

つくしに視線を移すととてもクレバーな表情だ。先程までの子供じみた表情の欠片もない。


 「古都にゃん、見逃して。ダーリンはダーリンでダ―ジンなダンジリなのぉぉぉ」


 ――ダンジリなのぉぉぉってなんやねん!――


 「ダーリンは黙っていて!」


 ――なんでやねん――


 もう心で会話、心が一方的なテレパシーで読みとられまくりだ。

 つくしは切羽詰まった様子だ。


 しかし本当に切羽詰まっている人物は大友ゆうき。


 そう、俺なのだ。だって、俺のことをお肉呼ばわりしていますよねーっ!


「つくつく、私にとって短く儚い、人生最後の大きなお肉なの……ネズミじゃない大きなお肉なの……炭火の準備もバッチリなの……」


 茂みからキラリっと光る眼光。

 爛々と光彩陸離よろしくなみの輝きを放つ視線が俺を射抜いている。

それは獲物もみるハイエナだ。

 自然界のヒエラルキーならこちらはミジンコクラスの格下ぽいぞーっ。


 「でも、ダーリンはわしの夢なの! 希望なの! 生殖器マシーンなの!」


 ――生殖器マシーンてなんやねんーっ!――


 はにかみながらも凛とした佇まいでつくしはぴしっと茂みに指を指す。


「ふふっ、相変わらず、つくつくはすっとボケた思考の持ち主だな。まだ、結婚とか人間の風習のまねごとにうつつをぬかしているのか!?」


 ガサガサッ――


 茂みから、土砂降りの雨でずぶぬれになっている純白の巫女服を着た、白銀の髪の少女がつくしに向かい『しかたないなぁ』とばかりに肩を軽く下げた。


「すまんのぉ、古都にゃん。代わりに我が明日の夕飯を捕まえたら差し出すから見逃してたもれ」


「黒ごきぶりもどきなど、いりませんわ! あんなものを食べるつくつくの食生活が理解できません」


「わしも好きで食べているのではない。非力なわしにはダーリンを捕縛することができても食べ物は虫の捕縛が精一杯の獲物なのじゃ!」


 自分の能力のなさをせせら笑うように嗜虐的な吐露をするつくし。

 凄く哀しそうな面持ちを浮かべている。

 もしかして、俺を助けたことでつくしが馬鹿にされているのか!?

 たしかに、下水みたいな飲み物にゴキもどきの虫……酷過ぎる晩餐会だけど。


「こら、コスプレ女。つくしはつくしなりに全力で頑張った結果、あの程度なのだ。貧乏なこともつくしが悪いのではなく、その存在が悪いだけなのだ。生きているという存在が悪いだけなのだ!」


 と完璧な俺のフォローのはずなのにつくしよ。


 何故、そのように棘比率当社比200パーセントのようなジト目でこちらを見るのだーっ!


「おい、肉。食べ物がシャシャリ出で来るな」


 つくしに古都にゃんと呼ばれた白銀の髪の少女は鋭い眼光で俺を睨む。

古都にゃんその眼光鋭すぎます、その切れ味は大包平(おおかねひら)か村正か。


 日本刀なら国宝級の鋭さに切れ味だろう。

 俺はおおいにたじろいだ……あれっ? 突然、空からたんまりと落ちてきた雨がぴったりとやんだ……夜の雨は定時になるとやむらしい(つくし談)

たっぷりと水分を含んだ純白の巫女の服は、妖艶なまでにピッタリと少女の豊満なボディーの曲線にへばりつき、何処か淫靡で艶やかな雰囲気を醸し出している。


 「だれが、食べ物だ。俺は大友ゆうきと言う立派なお気に入りの名前がある」


「そうじゃ、そして、わしは大友つくしなのじゃ」


 仄かに顔を赤らめながら俺の言葉につくしは乗っかってくる。


――というか、いつの間にお前、俺と同じ名字になっていたのだぁぁぁ。


「昼に婚約したではないか」


 つくしは平然と俺に答える……あああっっっやっぱり心がぁぁぁーっ!


 ――もしや、夜にあんな事やこんな事を……妄想した俺のプライバシーまでも……少しでもつくしで想像してしまった十代特有の妄想も見透かされたのでは――


「もう、ダーリン、だから、本日は夜伽をするといったではないか! ほらほらダーリン、夜伽のキーワードにビックマンモスが反応しておるぞよ」

ちーん……ご臨終です。


 頬に手をあてていやんいやんと身体をクネクネさせながら恥ずかしがるつくし。

 

その百倍は恥ずかしい俺。俺の心に安寧はなくなってしまった。


「わかった、肉。そこまでつくつくが肉のことを想い慕うのなら今回は見逃してやろう。つくしに謝辞して謝念して謝意しろ。土下座しながらつくしに一生身を捧げますと天地神明に誓っておおいに感謝しろ」


 な、なんて自分勝手でわががまで小生意気な奴なのだーっ!


 ……などと心の片隅にも想ってはいけない。

 白銀の髪の少女・古都にゃんは腕を組み『ふんっ』と顔を背けたが一瞬、つくしを見た瞳がとても優しく儚げに見えた。


……が、すぐに冷凍庫よりも冷え切った冷厳な眼差しを俺に向ける。


「古都にゃん、せっかく来たのじゃ、しっかりもてなすぞ。お茶でもすすっていけ(、、、、、、、、、、)」


 トコトコと白銀の髪の少女・古都にゃんの傍らに行くとグイッと腕を絡める。


そして上目遣いに覗き込んだ。


遠目には仲の良い姉妹のようにみえるぞーっ!


愛嬌があるあどけなさ満載のつくしの笑顔がニパァーときらめく。


白銀の髪の少女・古都にゃんは軽く肩をすくめて『しかたがないなぁ』としぶしぶ頷いた。


「お茶ではないだろ。つくつくの家は真水を嗜んでいけ(、、、、、、、、)まちがえだろう」


白銀の髪の少女・古都にゃんの表情が柔和になっていく。


少し口角をあげるとつくしの頭をぐりぐりと撫でまわして首根っこを掴んでひきずりながら小汚い廃屋のようなつくしのテントに入ってきた。


その時二人の仲の良い雰囲気。

それは、心地よい……不思議と淡い暖色を含んだ感覚だった。


いかがでしたか?

少しでも笑っていただけましたら嬉しいです。

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