◆異界と現実の狭間にての巻◆
こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。
「わしには姉妹なぞおらんぞよ!!」
きょどりまくる……ドッペンゲンガーを見た程の衝撃!
古都にゃんもほのかも目を見開いて茫然としている。
つくしがブルブルと震えた指でさしたその先にシルクトラがイタヅラッぽい笑みを浮かべ立っている。
つくしのクリクリと大きな栗色の瞳にはつくしと瓜二つな……いや、つくしより血色が良く、煤ぼけていない肌の分だけ……つくし、ビフォーアフターと言ったところである。
「懐かしいのぉ……古都にゃんにカマイタチのほのかちゃんまでいるではないかぁぁ」
悠久の時を越えたノスタルジックな雰囲気を醸し出しながら、シルクトラは頬に手を当てた。
「なんなのじゃぁぁぁ」ムンクの叫びのように両手を頬に当て驚きを隠せないつくしにシルクトラは一歩一歩、優雅な足取りでつくし近づき、頬に当てられた手に優しく手を重ねる。
その瞳にはうっすらと涙が溢れている。
「つくし……絶対に想いは叶うから……どんなに辛くても……心が折れそうになっても……どんな結果になっても……ダーリンはずっと見守ってくれるから」
シルクトラの両腕がつくしの首に絡み、嗚咽が入り混じる声を耳元で大事に囁くように。
「……誰なのじゃ……お主は……」
酷く緊張した声色……微かに足が震えている。
「わしはつくしじゃ。心から愛していたダーリンを失った、別世界のつくしじゃ」
つくしは大きく目を見開いた……直感では理解できても思考が理解できていない。
「わしの世界はガブリエルに全て燃え尽された死した世界。世界そのものを呑みこんだガブリエル……わしとゆきなとオリムラは……わし達同様にダーリンを愛していた古都にゃんの命を投じた人柱の禁忌の転移法によってこの千年も前のこの世界に送り込まれたのじゃ」
苦渋の選択をなつかしむように下唇を噛みしめ、大粒の涙が頬を辿る。
「千年……わしとゆきなとオリムラは力を蓄え、監獄島を……ガブリエルの動向と張り裂けるほど心苦しく同胞達の死を見守りながら……機をうかがっていた。すまぬ……わしはしかたがないとはいえ……長年、同胞を見殺しにして……その罪は……死して罪を償わねばならぬほどの大罪人じゃ。ただ、信じてほしい……わしは心からダーリンを愛している……」
華奢な腕をつくしから外すとゴシゴシとたまった涙を拭きとる。
「ダーリンと一緒に暮らしたい……ダーリンにめいいっぱい抱きしめられたい……ダーリンに……」
その言葉に嘘偽りはない。
真実のみで語られた純然たる想い。
暗闇の中の一筋の僅かな光を手繰り寄せて、やっと邂逅したこの世界への想いはつくし達一同に身震いするほどの衝撃を受けていた。
ただ、古都にゃんだけは「わ、私があの変態の事をーっ!」などと真っ青な顔で一人どよ~んとしてぶつぶつ呟いている。
「どうすれば、その。巨人を止められるのだ」とほのかが真摯な視線をシルクトラに向ける。
少し困った顔をしたシルクトラだが、意を決したようにつくしを見つめ、とても悲しそうな雰囲気を滲みだした。
「ガブリエルは止められぬ……ただ、女帝によってこの監獄島ごと、時空の狭間に封印する手はずは整っている。後は、お主らの監獄島の仲間達と共に女帝の城にあるノアの箱舟に乗って、この島を脱出するのじゃ」
びしっと女帝の城の方角に指をさし、シルクトラは言い放った。
「うむ、わかったのじゃ。ならば、共に行こうぞ。お主がわしなら、ダーリンを好きな気持ち、痛いほどわかる。それに、これから死ぬつもりじゃろ、わしがお主の立場なら贖罪の想いで死を選択するのぉ。じゃが、それは駄目じゃ。お主の世界のオリムラや古都にゃんが報われぬ……ダーリンに堂々とあって幸せになるのじゃ!!」
うむうむと何か得心したように頷きながらつくしはシルクトラの手をしっかりと握る。
そして自分のうすっぺらい胸元にしっかり当てた。
古都にゃんとほのかも追随するようにシルクトラを囲んで抱きしめる。
『はらり』とシルクトラの瞳から涙が落ちていく……そして、天を仰ぎながら大泣きしてしまった。
とても大きな声をだして泣いた。
全てに懺悔するようにとても慟哭と慙愧の念を含んだ祈りのようだった。
その嗚咽した声はしばらくやむ事が無い……恥も外聞もすてたシルクトラが
千年の星霜を費やした事実を上書きする本当の意味で許された瞬間だったかもしれないのだから。
いかがでしたか?
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