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◆女帝降臨! お尻ピンチの巻◆

こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。



「ダーリンはうまくいったかのぉ……」


 しめったコケがびっしりと生えた岩場にひょっこりと腰をかけて、「ふぅぅ」と可愛らしい嘆息を一つついたつくしは首だけを上にむけて大空を眺めていた。


 ボロボロな浴衣もどきの和服をまとっているつくしの細い肩を『ポンっ』とたおやかな仕草で手を置くと妹を見つめるお姉さんのような包容力で古都にゃんは優しい眼差しをつくしにそそいだ。


「つくつく、ゆうき殿は三回死んでも四回立ち上がりもっとお尻を叩いてーなどと叫ぶドMでタフな奴だ。我らが信じているかぎりあのエロの権化のことは案ずることはない」


 それは信頼と心を寄せた古都にゃんが本音で吐露した口ぶりだった。


 そんな大真面目な表情で諭されるとつくしは安堵と乙女チックな嫉妬が胸をかきむしった。


「うむ、怪しいのじゃ……古都にゃんはあんなにダーリンを毛嫌いしていたのに……はっ、もも、もしや古都にゃん……おっぱい好きエロチック尻バットなダーリンとチュッパチャプスをしたのかぁぁぁ!」


 血相をかえてがばぁっと立ち上がったつくしは真っ赤な相貌で古都にゃんに「本当のことをいうのじゃ」と精一杯つめよっていく。


「……つくつく、落ち着け」


 アルカイックスマイル気味な笑顔の古都にゃんは心を乱して興奮(トランス)状態のつくしの頭に手を置いて優しく黒髪を梳かす。

それは出来の悪い妹の面倒をみる出来の良い姉のそれにそっくりだった。


「わしは真剣なのじゃ……ダーリンとほんに結ばれたい……夫婦なのじゃ、見つめ合う視線がレーザービームほどにフォーリン・ラブなのじゃ」


 地団駄をタタラ踏み、落涙しそうなほど潤んだ瞳……全身から醸し出されるオーラが懇願の色彩を深めていた。

そしてつくしは古都にゃんの豊満な胸元に顔を埋めた。


「愛は超絶絶倒熱湯マシーンなのじゃ」


 言葉の意味は良く解らんが自信に満ち溢れた言葉に古都にゃんは無言で頷く。


「相変わらず仲がよいな、まるで咲き誇る百合の世界……いやいや、姉妹みたいだな」


 くすっと口角をあげてニッコリと微笑んだカマイタチのほのかは岩場にゴロゴロしながら頬を両手に当てペロッと可愛く舌をだす。


「その仕草は何かのおまじないか……ほのか」


 鋭く睥睨した古都にゃんの視線を歯牙にもかけず、ほのかは大きな尻尾鎌でポリポリと器用に背中をかいている。


「……不思議なものだ」


 ほのかは大空を仰ぎ見ながら両手で前髪を押し上げて、遠い瞳を浮かべていた。


 「不思議とはなんぞや?」と古都にゃんの豊満な双丘から解放されて、ふわりっと光沢のある黒髪を靡かせたつくしは栗色の瞳をパチクリさせた。


 そして愛嬌たっぷりにキョトンと小首を傾げる。


「彼は……大友ゆうきと言う男、いったい何者だろうか……と想ったのだ」


 ほのかの瞳に映っているスカイブルーの空には美しい彩雲が天界の位置を示すかのように存在感を露わにしていた。


「単純だが……とても難しい質問だな……」


「うむ、わしが想うにダーリンは……」


 古都にゃんとほのかが興味深そうにつくしを凝視した。


 にぱぁ☆ と天真爛漫に破顔したつくしはせきをきったような言葉が流暢に弾む。


「SМ好きのド変態なのじゃ♪ 縄などが大好きのぉ!」


 つくしはぽっと朱色にそまった頬に手を当てて恥ずかしがる。


 そして、今まさにリア充で縄に縛られている奴が一人……俺はつくし以上に恥ずかしい行為の真っ最中で頬どころか……全身朱色に染まっていた。


 目が覚めた俺は何故か縄で亀甲縛りされている。


 見事な縄さばきだな……って感心してどうすんねん!


 人権はないのかぁ、おおっ、隣でゴロゴロともがいている巨大な三毛猫もしばられているぞーっ!


――って! なんでやねん、なんで、縛られているねん、下半身スースーしてるし、おならでもしたらまるわかりやん!――


 心で絶叫する俺を一瞥したオリムラが不敵な笑みを浮かべて「デリカシーのないやつだ」と俺の太腿をグリグリと足踏みにしやがる。


――くそぉ、こんな事されて……ああっ、快感ではないかぁ、もっともっとーっ――


 オリムラの軽く軽蔑した視線が俺にささる、そして嘆息している。


「おい、三毛猫」

 

 オリムラの氷点下越えのダイヤモンドダストが撒き上がりそうな冷厳な眼差しが縄で縛られた三毛猫を射抜く。


 あっ、三毛猫、にべもなく毛が逆立っている、まさしくバイオレンスを肌で感じているんだなーっ!


「まずは、そこの変態の魂を返せ……いや、永久に奴隷として飼いたいので私によこせ」


「フンだニャ」


『そんな脅しに屈するものか』と首を横に振り、俺の顔とかちあう巨大な三毛猫……扇風機の風のようなフレッシュな鼻息が臭いです。


「ふん、聡明で心優しく素晴らしい私にゆうきの魂の半分をよこさぬなら、この船ごと沈める。ゴーストシップで本当のゴーストになりたいか!?」


「ニャー! いやだニャーっ!」


 だめだぁー! 三毛猫ーっ、俺の魂を絶対にオリムラに渡したらダメーっ!


 にっこりと眩い笑顔の少女・オリムラ。こいつは極Sだなぁぁぁ……ぎぁぁぁぁぁぁ。


 眩い笑顔で俺のお尻にイバラのムチを一振り……ああっ、肛門括約筋が緩んで何か出てしまったかも……(涙)


 隣で光沢のある毛先まで真っ青になる巨大な三毛猫……瞳が完全におよいでいますよ。


「ニャ、こんなことしたら、タダではすまないニャ。女帝様が激怒されるニャ。この船は命の木の肥料……魂を集めているだけニャ。もう、そいつの魂の半分はここにはないニャ。この船の発する邪気に触れた時点で通常は魂が束縛されるのに……その、変態は逃げたニャ。不思議だったニャ」


 重い口を開いた途端、咳をきったように流暢な言葉をしゃべる巨大な三毛猫。


 だが、オリムラは巨大な三毛猫の話しは聞いていない。


 それは小さな違和感に気がついてしまったからなのだ。


 その小さな違和感は大きな波の前兆であることがすぐに明らかになる。


 オリムラは小さな短躯で精一杯背伸びをしながら小首を傾げて宙を見上げた。変化の切っ先を捉えたオリムラは急に押し黙ってしまう。


「ここは、我らにとっては次元の狭間……のはず……」


 激しい魔力を帯びた声音が脳に直接響く。


「次元を切り裂く魔力……七聖のバルケッタの仕業か……」


 甲板を通り越して大海原一面に凍えるような魔力のたまり場が発生した。


 この展開はオリムラも読めなかったようだ。


 その余裕があった表情も驚愕一色に書き換えられてしまった。


「ニャャャャャ! 女帝様ニャャャャャャャャ!」


 どうも巨大な三毛猫にとっても予想外の展開らしい。


 面食らった巨大な三毛猫は狼狽えてドギマギと戸惑い狂う。


 バッタン! バッタン! と大量に釣り上げられた本マグロのように威勢よく全身痙攣状態でわななく姿から推測するとよほど女帝が恐ろしい存在なのだ。


 豪華クルーズ客船全体が軋み、空間がうがりをあげる。


 ブラックホールのような暗黒空間が開くと、金銀の装飾が眩い大きな棺桶が現れた。


 そして棺桶の蓋が見えない力で揺れ動くようにゆっくりとずれていく。


 棺桶の中から全身を純白の包帯でグルグル巻きのミイラのような物体が現れた。


 胸の大きなふくらみからして性転換していなければ女性のようである。


「ふふふっ、その濃厚でトレビアンな魔力はオリムラ。相変わらず、ファクター程度の下僕にするのはもったいない力量だな。うむ……そちらの……」


 包帯グルグル巻きの女帝から一瞬だけ俺に向けて暖かい眼差しを感じたが……すぐに俺を見下げて失笑しはじめる。


「食パンのように可愛いお尻だな、朕の好みだ。オリムラ、そいつを朕によこせ。苺……いや、イチジクジャムを塗ればそのお尻はかなり、遊べそうだ」


――ふえーっ、お尻で遊べるって! ひいぃぃぃーっ、イチジクジャムだってーっ、絶対に浣腸もついてくるぞーっ、たすけてぇアンパ○マン!――


 首を横にブルブルと振る俺の傍らで黒いボンテージに身を包んだオリムラは右足をひょいっとあげてキュートなやわ肌な俺の尻の上にヒールを突き刺す……うぎゃゃゃゃゃゃ! 痛気持ち良いですよーっ!


――足をのせるなぁぁぁ……ああっ、もっとギューっと押さえてーっ! あっ、角度的に黒レースパンツが見えるぞ、オリムラぁぁ女王様バリにエロいですよぉぉぉ――


「女帝様、この者の魂をお返しください。この者は我が主である七聖のバルケッタ公が認めた……」


 俺のことを庇ってくれるのかオリムラ……いえ、オリムラしゃま!


 期待と希望の色を含んだ眼差しでオリムラを見上げると……えっ、こいつ、今、口角をキュッとあげやがった、わ、悪だくみを思いついた代官の顔をしてやがりましたーっ!


 全身包帯姿の女帝が静謐溢れる眼差しをオリムラに向ける。


 流石のオリムラも緊張しているようにふうぅと俺に聞こえる程度の小さな嘆息を吐いたがすぐに佇まいをなおして口を開いた。


「この者はピッチャーマーシーンから投げられるグレープフルーツを尻でダイナミックに受け取りながら髭ダンスを踊る道化師(ピエロ)です。チ○ポをバットに変えれば金玉を打ち返す打率は三割のイチロー級です。どうか、そんな変態をお見逃しください」


 最低の他己紹介ではないかーっ!


 深ぶかとこうべを垂れて礼節を通すオリムラ……あれ? あのマキマキ・包帯ガール……興味津津で俺を見ているやん、あっ、口元からよだれ垂れているぞーっ!


「朕はその男、非常に興味がある」


 女帝はごそごそと包帯の間から一枚の紙と鉛筆を取り出して間近にくると、俺の相貌を覗きこみながら目を細めた。


「この紙に名前を書いたら助けてやるぞ」


――うあぁーっ、このパターンって!――


 俺は必至に首を横に振る……既視感がはっきりと脳裏を横断していくからだ。


「くくっ、可愛らしい。朕の存在を理解していないようだな」


 俺の顎元にガーゼの感触が撫ぜられるように広がる。


「さぁ、書け、直ぐ書け、刹那に書け」


 女帝の表情が一瞬『クスっ』と微笑んだ気がした。


「それって、結婚誓約書ですよね……」


 俺の暗く鋭い視線とは裏腹に探り入れるようなやんわりとした言葉を発した途端……包帯グルグル巻きの女帝の雰囲気が変わる。


 オリムラに目をやると顔面蒼白で構えている、巨大な三毛猫はあまりの怖ろしさだろう、カニのように泡をはいて気絶していた。


「汝、わかっていて何故、署名をせぬ……何故、誓約書が読める。ますます、面白い。朕とともに来い。そなた達に保護するバルケッタの魔力も薄い、もう時間はあるまい。次元の狭間に侵食される前の本来あるべき所へ」


 グルグル包帯の腕が軽やかに天に向けられると、俺を縛っていた縄が消滅して凄まじい重力がのしかかってきた……ここで修業したら界王拳も習得できそうな気がするぅぅぅ♪


 波の音も風の音も澄んだ静寂にのまれていく。


 大きくうねった空間が豪華クルーズ客船やゴーストシップごと呑みこんでいく。


 必至に甲板に捕まる俺……なんで、俺ばっかりこんな目にあうのだろう……と瞳がゴマアザラシのようにウルウルしてしまう今日この頃でした。


いかがてしたか?

クスっと笑っていただけましたら嬉しいです。

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