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◆猫とさんまとТバックの巻

こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。


「……汝、何者ぞ」


 殺意を押し殺した凄みのある声だ。


 腹部を深く蹴りあげられたつくしは甲板をすべるようにのた打ち回る。


「……汝、何者ぞ」


 再び、俺の口から大飛丸が問う。


「かの時に奏でよ……時……空に霧して……長柄陰陽の柄……」


 苦痛の表情でつくしは脇腹を押さえながらもう片方の手を掲げて呪文を唱える。


 その呪文に呼応するように甲板に二つの歪が生じる。漆黒をうつしだす小さな裂け目が空間を割る。


 それは異空間だ。


 そこから一本の銀色に輝く刀と金色の一輪車がわき出てくる。


 鈍い輝きを放つ銀色の剣がつくしの手に治まった刹那。


 パッパラパッパー♪


 豪華クルーズ客船全体から汽笛のような奇想天外なラッパのファンファーレが地響きを熾すように鳴り響いた。


 呆気にとられた一瞬の隙……銀色の剣から発せられた真空波の一撃が大飛丸に迫り、俺の右腕を綺麗に切断するようにぶった切る。


 転がる腕、上腕筋のあたりから吹き上がる鮮血で甲板が一気に深紅に染まった。


 ほんの少しだけ俺の口元が苦笑した。


 口の中の血の濃厚な味わいに大妖・大飛丸が本性を少しだけ剥き出しにする。


 武人も震え上がるほどの冷厳な睥睨だ。


 俺の瞳が鋭さをました。


 咽元がむずかゆくなると獣の如く大きく口を開いた俺は『グォォォォォォォォ!』紅蓮の炎をつくしに向って吐きあげる。


 大飛丸の熱い鼓動が俺の意識にも充分に雪崩込んでくる。


 守勢にまわって身構えたつくしは舌でペロリと上唇を舐めると、銀色に輝く剣を幾重にも振りきって真空波をつくりだす。


 真空波が紅蓮の炎を突破して、超高速の刃が幾重にも俺に襲いかかってくる。


 全てが鋭い一撃だが……ただ、軽く浅い。


 俺の服を切り裂かれつつも、紙一重でかわしていく。


 俺が甲板の中央に差し掛かった時、上空から金色の一輪車が襲いかかってくる。


ドゴーン!


 クルリッと身体を反転させて辛うじて交わした俺の眼中に煌びやかな色彩を放つ金色の一輪車に乗り、シニカルな笑みを浮かべているつくしが道化師(ピエロ)のように肩をすくめておどけてみせた。


 俺の意識が安定して大飛丸と重なった。


 いつの間にか荒れ狂っていた暴雨が治まり、沈黙と殺意が隣り合わせた静寂が甲板を覆う大気に重くのしかかっていた。


 俺の行動に迷いはなかった。


 軸となる右足を一歩出した刹那。


 パコーン!


 閃光一線、高速スナップのきいた必殺のハリセンがつくしの後頭部にヒットする。


 こ、これはいったい!?


 パン! と針に刺された風船のように破裂してしまったつくしに俺はおもわず茫然とするほかなかった。


 しかし、その茫然にさらに拍車をかける出来事が俺の目の前……すなわち甲板上でおこっていた。


 怒り狂った色彩を十二分に宿した瞳にくちびるをへの字にして精一杯抗議の姿勢を見せる少女がいるのだ。


 手の甲でポンポンとハリセンの感触を確かめながら黒のボンテージを着こなした少女は俺を睨めつけながら敵愾心てんこ盛りで近づいてくるぞーっ。


「……ゆうき」


 少女の声は変声期を迎えていない天使のような声なのだが……いや、声に騙されるな! 今までおっぱいにすら騙されていたではないかーっ。

俺は……いや、大飛丸も含めて死よりも恐ろしい何かを感じ取ってゴクリと喉元を鳴らした。


「お前はこんにゃくクリクリぬりかべの刑だ」


――こんにゃくクリクリぬりかべの刑? ……ってこいつ誰?――


 そんな思考を巡らせた瞬間だった。


 俺のジャージの下半身が鋭利な刃物で切り裂かれたようにはじけ飛ぶ。


 このスピードには大飛丸のレスポンスも間に合わなかった。


 露わになったピンク色のパンツ……な、何故にピンクのТパックを俺ははいているのだぁぁぁ!


 ただの変態やん!


 ああ……とと様かか様……ゆうきは決してあちらの世界(薔薇族)に入っておりません――などと心の中心絶叫放送中。


 俺の頭上では雨は止んではいるがまだ厚く雲が垂れこめている。


 熱気溢れる戦いから一気にピンク色のТパックからはみ出たチ○コ丸出し下半身露出プレイの戦いへ俺の方向が変わってしまった。

と、いうか……この、少女……オリムラの面影が。


 パコーン!


 電光石火のハリセンが俺の息子にぃぃぃ、ぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

誰かあーっ、俺のチ○コをたすけだしてーっ!


 この男特有の身を切られるよりも酷い痛みだけは大飛丸や魔女の血の力をもっても堪えきれないぞーっ。


 ああっ、カニさんの泡を吹く気分が理解出来ました……この泡の状態は中性洗剤がお口の中で攪拌されてシャボン泡の出来上がりって……ああっすべての魂がゴーストシップに持って行かれそうです(涙)


「お前は何をしにきたのだ。精子と卵子の結合により発生する出来ちゃった婚と同じで過ぎ去った運命や歴史は変えられない。これから変えられるもの……それを見いだせ」


 うずくまる俺の前で仁王立ちの少女。


 Sっけたっぷりの睥睨した眼差しがキラリン☆ と光る。


 可愛らしいくちびるをプルプル震わせてプンスカしながらハリセンが織り成す電光石火がもう一発、俺の宝物にヒット――ぐおーん、もう、バットがもげそうですーっ!


 何かを見出す前に肛門括約筋が痙攣してお菊さまから何かの実がでてしまうーっ。


「二人の魔女の洗礼を受けているのにだらしない。お前はゾウリムシのようなものまねしかできないのですか! 悔しければ、立ち上がりなさい、ジョー、立つのです、勃起するのです! って何を言わすのですか変態」


 こ、これはもしや、浪速の伝統芸能一人ぼけ突っ込みでわ!? ……などと脳内シナプスを綱渡りしている小人達が結論付ける。


 ジト目より白目をむいている俺に容赦ないハリセン突っ込みもう一発はいる。


 ああっ、バットが折れてしまいました(涙)


「うむ、まぁ、冗談はこのぐらいにしましょう、貴方の大事な部分がもげては可愛そうなので。優しいでしょ、さぁ、褒め称えよ、私を、このビューテフルガールな私を褒め称えやがれ!」


 もう、もげたわい!


 薄っぺらい胸元で両腕をがっつりと組み、少し屈んで覗き込むような姿勢で眼差しを俺にむける。


 ――チャリン♪


 透徹したベルの音が静まりかえった甲板に薄気味悪く響く。


「ほら、ゴーストシップの船長がお目見えするよ……って、ゆうき? ……ゆうき君!?……攪拌した生クリームみたいなものを口から出してないでさっさと立ち上がりなさい」


 ゲシゲシっと俺のわき腹を容赦なく蹴ってくる……やっぱりこいつはオリムラだ! このサドティストチックな雰囲気、ああっ、快感。


――チャリン・チャリン♪


 魂まで震撼するような気配が甲板を支配する。


 俺のピンク色のТバックがずれ落ち、涼しげな変態下半身裸族になったことも忘れて、上空を見上げた。


 ゴゴゴッーっと痛烈な光がほとばしると深い霧が渦を巻き始めた。


 俺はゴクリと息を呑む。


 俺の横で少女・オリムラが「ふぁぁ」っと弛緩したように欠伸をしているぞ。


 とっても退屈そうだ。


 回転すしのレーン上で誰にも取られなかった干からびたネタのように緊張感が感じられない!


 この反応は行き遅れになりそうなクリスマスケーキの当日お昼の割引セールの大胆さを凌駕している、まさしく大物だーっ!


 大きな物体が次元の裂け目から現れ始める。


「ウニャ――」


 ――何、この、今は昔の物語ばりのちょうちんブルマー(先ほどのつくしの数倍大きいタイプ)と胸もとにゼッケンが縫い付けられた体操着を着こなした大きな三毛猫は――


「ウニャ―」


 その猫語は聴覚を劈く大声なのだ。


 その巨体が『ドスン』と甲板に降りると同時に……何故か毛づくろいをしているぞ。


 チラリっとオリムラを見ると、ニヤリと何か良からぬ事を思案している笑みを浮かべている……実るように破顔したら実行に移りそうだ。


 ぺかぁぁぁ―っとオリムラの相好に後光が煌びやかに舞うほどの純粋無垢な天使の笑顔が舞い降りた途端。


 視界が仄かに霞んでくる。


 俺とオリムラの周囲を黒いミストが朝霧のように包み込み始めた。


「お前達、とっても面白いニャ。勿体無いが男のお前からはもう半分魂を徴

収しているみたいだから、もう徴収しないニャ。ありがたくおもえニャ。だから、素直にこの世界から出ていくニャ。あっ、そっちのねーちゃんはこの舟の駄賃のかわりに魂を半分だけ置いていくニャ」


 でっかい三毛猫が大きな口で欠伸をしながらめんどくさそうに俺に語りかける。


 ドスっ――ひぃぃぃぃぃ! 突然、俺のわき腹に激痛が走る。


 いきなりの驚きと痛みで俺の表情は今までにないほど酷く影がさした。


 おもわず腰をひいてしまい屈んだ俺の頭を小さな手がグイッとわし掴む。


 そしてがぶり寄るようにオリムラが俺の鼻先一寸まで近づく。


「……ゆうき、目を閉じてさんまを頭に思い描いてみろ」


「さんまってなんやねん!?」


「自分で目を閉じるか? それとも私の力で永眠するために瞼を閉じるかどっちが良い!?」


「すみません! 俺、滅茶苦茶調子こいていましたーっ」


 それは煙突から降りてプレゼントを持ってきたサンタクロースを捕らえて見世物小屋に売り飛ばすような悪戯果汁300%のキラキラおめめでオリムラは俺を見つめている。


 ――さんま……ぐぅー、なんでさんまなんだよーっ!――


 わき腹を抱えてうずくまる俺に容赦ないハリセンアタックがーっ! 


 スパコーンと良い音を鳴らが甲板に響き上がる。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」


「この童貞インポテツ! 蒟蒻に切れ込みばかり入れる想像をしていないでさっさとさんまを思い浮かべろっ!」


 巨大三毛猫が両目に憐れみの色を浮かべて俺をみているぞぉぉ。


 アンニュイな雰囲気満載の巨大な三毛猫が『ドスドス』甲板を踏みしめてとこちらへやってくる……ええぃぃぃ、さんまだ、さんまを連想するのだーっ!


「むにゃむにゃ……ガブっ!」


 あまりの痛み……痛みって! ビックリして瞳を開けた俺の頭から腹部までがっしりと三毛猫にかじられているぞーっ……ってなんで俺がテカテカ光っているさんまになっているねん!


「うぁぁぁぁぁ!」


 巨大な三毛猫の口でかっぷりかじられて女子新体操のリボンの如く縦横無尽に振り回されていく……ああっっ、Tバックが下腹部から離れて海風に煽られて海の藻屑に……


「にぁぁぁぁ、しまったニャ! 男がさんまになっているニャ、幻覚呪法が裏目に出たニャ」


 大慌てでプルプルと毛を逆立たせ首を振り、ぺっと甲板に俺を吐き出す。


 ぷしゅ~とお尻を突きあげながらグッタリしている俺にグッドジョブと親指をピンと立て、暖かい眼差しで見守るオリムラ。


 この極悪非道がぁーっ!


「前回までとは勝手が違うニャ、お尻割れ割れ男に何があったのかニャ!」


 大いに慌てる巨大な三毛猫に対峙するように口角を上げてにっと笑みを浮かべたオリムラ、そして、塩分たっぷり傷口にしみるような海風に当てられて真っ赤になったお尻がヒリヒリしている俺。


『はぁぁ……お尻割れ割れ男……また、俺の知らない所で知らない呼び名が増えている』とかすかに思考が働いていたがゆっくりと意識が遠のいていく俺だった……


いかがでしたか?

少しでも笑ったいただけましたら嬉しいです。

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