◆恋する乙女たちは暴走気味の巻◆
こんばんわ(☆∀☆)
楽しんでいただけましたら嬉しいです。
何故か招き猫の貯金箱が一つ……
「兄っち! ゆきなが頑張って貯めたお金ですぅ」
――はて、この監獄島に通貨なるものが存在するのか?――
ゆきなは訝しんだ俺の表情をジト目で仰ぎ見ながらグーにした手を口元にあててコホンとわざとらしい空咳をした。
「それは、いつか……ゆきなの、け、、けっこんの為に貯めたお金ですぅ」
ぱぁぁと白い頬から首筋そして肢体全体がを朱色に染まっていく。
そしてつぶらな瞳は潤んだように煌く。
生真面目すぎる瞳を俺に向けながらはにかむ、ゆきなは恥ずかしげに身をよじった。
――結婚……それはまた、大切なお金では……ってけっこん!――
ゆきなの視線と言葉の意味を悟ってしまった俺はコホンと思わず咳払いをしてしまう。
「ゆきな」
「はいっ! 兄っち!」
元気の良い返事です。
「俺は兄っちと言うことはだな。すなわち兄弟だよな」
「今更なにをいっているのですかぁ。脳みそにウジ……いや、カピパラでもわいたのですかぁ。カピパラは可愛いので大好きなのですぅ。一度ペットにしてみたいですぅ。ああっ、今、兄っちは夜のペットはお前だぜ! とか妄想しましたね。もう、子作りがしたいだなんてぇぇぇ。今すぐでも良いですよ! 心も身体も準備はできていますぅ。なので早く結婚するですぅ」
――こらこらっ!――
と心で叫ぶ俺だがゆきなの直球愛情表現は真剣そのものなのだ。
「ゆきな。兄妹は結婚できないぞ」
ここは強く主張する。
ゆきながどんな反応を見せるか、場合によっては気まずくなるかもしれないがはっきりと枠組みを理解してもらう必要があったからだ。
「兄っち……もどかしすぎますぅ。その遠まわしに近親相姦したいって言い方は。ゆきな達の世界では関係ないです。兄っちは人間じみてないから、ゆきな達の仲間ですぅ。結論はゆきなとラブラブチューですぅ」
「ラブラブチューってなんやねん!」
俺のツッコミを躱して上半身をフラフラと左右にゆらめきながらいやんいやんと頬に手を添えて破顔する。
「兄っちの子供なら……百人は産んでも大丈夫ですぅ」
きゃっ! と更に恥ずかしがる。
某物置きメーカーのような決め台詞、百人も産んだら。
――俺、つくしよりも貧乏になってしまうきがするーっ!――
俺は佇まいを直して改めてゆきなに視線をおとした。
躍動を忘れた痛々しい両足。
ゆきなはその現実を受け入れているように気丈なのだ。
足の感覚がまったくないことへの不安や失望は忘却の彼方に置き去られたように。
俺の右手は愛おしみ撫ぜるようにゆきなのふとももに指を這わせた。
白く柔らかくてあったかい肌。
体温と感触が指先から伝わってくる。
「兄っち……エッチ……」
ゆきなの表情から無邪気さや子供らしさが片隅に追いやられていた。
そこには瞳をうっとりと細めて僅かにくちびるを開き、峯麗しくも妖艶な
『大人の女性』の色香を覗かせていた。
ゆきなのトロリンとした瞳……こら、何を期待している、あっ、そこは駄目だぞ。
ゆきなの手がやんわりと俺の下腹部に添えられる。
「ごめんね、兄っち、困るよね……つくしもいるし、ゆきななんかじゃ……」
金色の髪がしおらしく揺れる、恐る恐るくちびるから零れるゆきなのこわばった言葉は大切な人を想うがゆえの言葉だった。
ちらりちらりと俺の顔を伺い見ては目線を下げる……ううっ、ゆきなの愛らしすぎる表情。
「おほん、ゆきな、世界には一夫多妻制と言う都合の良い制度があってだな……」
――って俺はなんてことを口走ってしまったーっ!――
ああっ、あの、ゆきなのめっちゃ期待していますよぉぉぉ、裏切ったら三丁目の閻魔様に頼んで貴方をしっかり殺して閻魔様と濃厚なBLの刑ですよぉぉ、みたいな確固とたる決意を秘めた眼差しで見てくるぞ。
うぐっ、本末転倒だけは避けなければならない。
ここは一つ、ゆきなの目を覚まさせないと。
「ゆきな」と呼んだ俺の声にうっとりしながら光彩陸離の輝きを放つ満面の笑みを浮かべてペロっと舌を出して恥ずかしそうな上目遣いで「何んですかぁ?」と返事をする。
ゆきなの雰囲気から察するに求愛の言葉をまっているようすだ。
夢見ごごちの表情のゆきなに俺はコホンと咳払いをした刹那、洞窟の入り口から風が吹き込んできた。
その風は俺の肩に突き刺さるような痛みが……って突き刺さっているやん!
目の前のゆきなが口を金魚のようにパクパクさせながら凝視している。
強い痛みはない。
痛覚神経が微弱程度の反応しかしていない。
これはファクターからうけた血の力によるものなのだが、異物がささる感覚。
カラスのくちばしがしっかりと肩を貫いていた。
ジョークにしてはタチが悪すぎる。
ずぼりとくちばしを抜いたカラスが定位置にかえってきたように俺の頭に止まる。
「くくく……久し……ぶり……エロチカ……大王」
『鳥ガラのダシでもとってやろうか!』と脳裏をかすめる俺だが……荒ぶる心を押さえて極めて冷静に振る舞わなければ。
「どう……した……浮気……男」
バコーン! 閃光一線、高速ハリセンでオリムラのくちばしにトマホークアタック!……すみません俺の冷静さの度量は緑バッタやカマキリよりも小さかったもようです。
白目をむいて地面にヨレヨレと落ちていくカラスのオリムラ。
ぼあぁぁぁとカラスから大量の蒸気が噴き出る。
ゆきなは茫然としてしまっていた。
一体何がおこっているのやらわからないといったようすだ。
オリムラは嘆息した。
右手で眉の当たりでそろえられ前髪を右手で掻き分けて、腰元まである深いブルーの髪をゆらして立ち上がった。
あいも変わらず一糸まとわぬ姿のままで。
俺を見つめる黒水晶のような瞳は完全なジト目なのだ……おおっ、可愛いおっぱいまるみ……グサッ……えぇぇぇぇぇぇ。
オリムラの指が容赦なく俺の両目を貫いた。
「こぉぉぉらぁぁぁぁ! 兄っちに何するのぉぉぉ!」
ゆきなは額に青すじをたてて激怒した。
いきなり住居(洞穴)に不法侵入したうえに俺の目を突いたのだから。
プンスカっと両手をあげて激高するゆきなに「うるさい黙れ」と見下した面持ちでオリムラは軽く一瞥する。
なんだが女の修羅場がおこりそうなきがするぅぅぅ♪
「愛とは略奪するもの、こいつは私の美乳であるおっぱいをこよなく愛しているように私はこいつのポークビッツをこよなく愛しているのだ」
その不条理な理論を正しいと言い切りながら腰に片手を当て、ゆきなにパシッと人差指をさして威嚇。
そしてオリムラはニヤリと意味しんな含み笑いを浮かべる……ってポークビッツってなにぃ?
「ふにゅ! ゆきなのほうが立派なボインボインで大きいですぅ! 知っていますか、兄っちはド変態な上の巨乳好きの嗜虐嗜好のどうしようもないドSの最低人間なのですぅぅぅ。もうクズの頂点を極めた一子相伝の継承者なのですぅぅぅ。だよね、兄っち」
と同意を求められてもいったい俺にどうしろというのだ。
オリムラとゆきな……とってもいがみ合う二人。
俺の事を罵倒し合っている感は否めないが……とりあえず……
ぷにゅ―
圧倒的な豊潤さのゆきなと綺麗な丸みのオリムラ。
甲乙つけがたい二人のおっぱいの感触……掌には至極なほど弾力と柔らかい感触に包まれる……が刹那、オリムラの手刀が俺の首根っこを引き裂いた……うぎぁぁぁぁぁ!
甲乙を確かめた俺に「いきなり何をする」と柳眉を釣り上げるオリムラと雪のように白い頬に赤みがさしているゆきな……その赤み、私の血ではありませんよねーっ!
「ふふふっ」
突然、オリムラの口から笑いが出た。
左手で口を塞いでもわらいがとまらない。
笑いつづけるオリムラをしばらく眺めていたゆきなも納得したように笑い出す。
真意のほどは俺には理解しかねるがオリムラとゆきなは心のずっと奥の部分が触れ合えたように打ち解けていた。
とても曖昧におもえるが二人は共通するなにかをお互いに受け入れたのだろう。
オリムラは鋭い表情は剥がれ落ち今はとても柔和だ。ゆきなはもとものアホな表情だ。
「面白い見せものだな」
呆れたような声が洞穴内に響いた。
すると洞窟内の雰囲気が一瞬で変わる。
オリムラに目をやると、先ほどまでの柔和な佇まいを直し、ファクターの使い魔として、姿を見せない声の主に真剣な面持ちで向き合っている。
「貴方には似つかわしくない貧寒の場に何用でございますか? 七聖のバルケッタ公」
オリムラの声には抑揚のない。
それはオリムラの中で一つの結論が出ていたからなのだ。
オリムラはすぐに俺とゆきなを庇うように一歩前に出る。
バルケッタの気配と向き合うように凛とした態度をしめした。
「オリムラ、貴公にはようはない。私はカノンに逢いに来たのだ。それに、この度の賭けはもう終焉したのであろう。いまさらファクター公の使い魔が何故、いつまで人如きに馴れ合う?」
バルケッタの姿はどこにもない……ただ、洞窟内には肉体や魂ごと消し飛びそうな魔力のおびた声が脳内にまで共鳴していた。
「七聖のバルケッタ公、貴方の御約束は明日ではないのですか? ……確かに、六人の魔女の賭けは終焉いたしましたが、監獄島のルールはまだ、動いております。執行人の行動が鎮まるか滅びるまで護衛せよとのファクター様より勅命をいただいております。故に七聖のバルケッタ公の申し出とはいえ、この者、大友ゆうきへの干渉は見過ごすことは出来ませぬ」
「あんずるな……魂の監獄である、この監獄島においてカノンに手出しする者があれば私自らが滅びの道を授けてやろう。千年の約束を守りし……我のカノン……」
何だか……二人、殺気だった会話をしているぞーっ!
俺の心は杏仁豆腐のように真っ白で二人の会話が理解できないような気がするぅ♪
ふと、ゆきなに目をやると、ピコピコとアホ毛を揺らしながら遊園地のコーヒーカップに揺られ過ぎて気分が悪くなった親御さんのように物凄い涙目と真っ青な相貌でブルブルと震えている。
「失礼いたしました。確かにバルケッタ公がゆうきを殺害する動機は存在しません。では、何故、まだ、執行人達の行動が続いているのですか? 後衛の女帝はお許しなのですか?」
――後衛の女帝、誰なのだ?――
「魂の煉獄、この監獄島は魂そのもの……カノン、少しだけ私とともに……二人だけの時間を……」
バルケッタの声は威圧的な魔力の中に困惑と懇請という異なる要素が混ぜ合わさっていた。
俺はゆきなに目をむけた。
ゆきなはとても切なそうに動かない足を両手で引き寄せて抱える。
ゆきなははっきりと不安の色をまとっていた。
その部分を隠そうとする素振りはみせない。
たとえ、迷惑だとわかっていても。
「逢いたいよ……その心に嘘偽りはない。だけど、俺の大切な妹が……俺が不甲斐ないばかりに下半身不随になってしまって一人置いていくことはできない」
それは俺の本心だった。
内に秘めている言葉を口にすることはとても恥ずかしいのだが真実は語らなければならない。
それはゆきなを家族と認めた証しなのだから。
「あ、兄っち……」
ゆきなは両手を胸元で強く握りしめた。
臆病だといわれてもしかたがない、ゆきなは俺と離れることが怖かったのだ。
「それはまことなのですか……」
言葉が途切れたと同時に洞穴の入り口に巨大な魔力の渦が肉眼で見えるほどに膨らんでいく。
次の瞬間……俺の身体が宙に浮いた。
まったく身じろぎができない。
重力どころか、空間までネジ曲げられた感覚が洞穴全体を覆った。
しかしその感覚もすぐに収束する。
目を開けた俺は見知らぬ大きな広間に立っていたのだ。
当然のように俺の周りにはゆきなやオリムラの姿はない。
おおよそ想像はついていたがバルケッタの魔力は空間を転移させるほどの強大な力をもっていることを俺は改めて認識することになった。
ふんわりとした赤絨毯の感触が足元から伝わる。
恥ずかしながら着るものもない露出狂の極みという姿だった俺の身体に鳳
凰の羽ばたきをあしらった紋章が全体にデザインされているアンサンブルの上着にデニムのジーパンが着こなされていた。
「気にいってもらえたかな? カノン。私はラフな服装が好きなのだ」
その声の主であるバルケッタは窓辺の冷気と暖炉のぬくもりが交差する場所に佇んでいた。
窓辺のレース越しの柔らかな影を振り払うような深みのあるエネルギッシュな赤色のドレスを身にまとい、ボーイッシュな白銀の髪をキラキラと輝かせる。
意思の宿ったその瞳から熱い眼差しが俺を捉えていた。
バルケッタの表情は親愛の情をこめた柔和な笑みそのものであった。
「案ずるな、空間転移させた。カノンを助けし、雪の娘は我が居城にて手当をさせている」
俺とバルケッタ……大広間にはこの二人しかいない。
バルケッタは笑顔にまま軽く目を細めた。
そして懐かしむようにじっと俺を見つめている。
それだけバルケッタのカノンへの想いと過ぎ去った星霜は語りきれないほど濃厚に積みあげられていたのだろう。
「……カノン」
バルケッタのその声は愛しみに溢れている。
「私は貴方を愛する者として、二つの加護を授けましょう」
優しさの中に凛子とした想いの彩色がはっきりと現れていた。
「一つは私の血を授けます。臨界のファクター公が貴方に授けた血に加え、私の血を受け取ればこの監獄島より……」
突然、言葉を摘んだバルケッタは首を左右に振ったと同時におっぱいもプルプルと揺れる。
俺は大真面目な顔でバルケッタを見つめた。
それはバルケッタの胸の内がはっきりと読めたからなのだ。
バルケッタはもう敵ではない、その確信めいた想いが俺の中で広がっていた。
「二つ目はカノンの……いえ、大友ゆうきの魂の半分が囚われているゴーストシップへの道しるべをかざしましょう」
――半分の魂が囚われている? ど、どういう事だ――
俺のその疑問にはバルケッタは答えるつもりはなかった。
「では、儀式を始めます」
その言葉が淡々と紡がれる。
とはいえ……儀式にしては魔法陣もなければ魔道書などの怪しげな道具もない。
魔女といえば大概が儀式は黒魔術や魔女と悪魔の契約に基づく概念だがそれは俺の先入観でしかなかった。
突然、バルケッタが赤いドレスを脱ぐ。
胸に二つたわわに実った巨肉がプルリンと揺れる。
引き締まったウエストが更に胸を強調していた。
一糸まとわぬ……おおっ、おっぱいスイカっパイ!
い、いかん、おもわず大興奮。
「カノン……さぁ、私を抱きなさい。そして、心の底から愛の言葉を叫ぶのです! ファクターの時以上でなければ、許しません。むしろ、私の力で貴方を永久にダニの姿に変えてしまいたい衝動にかられないように。私を世界で一番愛しなさい!」
――ふえぇぇぇぇぇ―っ! ダ、ダニって、愛の言葉って、まさしく、前門の虎、肛門の浣腸……いや、後門の狼状態ではないか、さっきまで、俺を殺そうとした敵だったやん――
もはや俺はバルケッタの気持ちに反駁することはやめた。
バルケッタの好意を素直に受け入れる。
それは『カノン』という二人だけの秘密の共有していることで生まれた仲間意識が後押ししたのだ。
俺はバルケッタに歩み寄ると小さく苦笑した。
それはこの状況の恥ずかしさを改めて理解した証明でもあった。
「さぁ、カノン。儀式を……」
その言葉は麻薬のように人の意識を虚ろにする。
俺の手はしっかりとバルケッタを抱きしめていた。
真剣な表情の俺に比べてバルケッタは緩やかな微笑みをうかべていた。
バルケッタにとって心から待ち望んだ邂逅なのだから。
鼻腔をくすぐる甘いパフューム……催眠術にかかったように俺は『愛の言葉』を心から叫んでいた。
いや、俺というよりも『カノン』が叫んだような感覚だった。
そして、俺の魂が和らいだ光に包まれたような気がした。
いかがでしたか?
クスっとでも笑って頂けけましたら嬉しいです。




