◆おしめとめしべだから! そのおっぱい……危険につき……の巻◆
こんばんわ、楽しんでいただけましたら嬉しいです。
とても透徹した凛とした空気が漂っていた。
その広間は四十畳ていどあろう。
黄金やプラチナ……大富豪達がのけぞり所望しそうな数多の美しい宝石が所せましと装飾された豪奢で華美のかぎりをつくしている。
王宮……そう荘厳な王宮の一室と言ってよい。
中央に位置する無機質な大理石の六角のテーブルを取り囲むように陰険な笑みを宿した美しい女性や幼さを漂わせた少女が豪奢な肘掛椅子にどっぷりと身体をあずけていた。
「ふふっ、激しい肩入れだな……臨界のファクター公」
悪戯めいた穏やかな口調とは裏腹の鋭く射抜くような視線。
魔力をおびたように煌びやかに輝く銀の髪がふわりっと舞った――魔女が唇の前で指を弄びながら金髪の幼女ファクターに問いかけた。
「ふふっ、ファクター公ともあろう魔女が肩入れか……忌忌しき事かな」
片手でシャンパンを持つとトクトクトクとグラスになみなみにそそぐ。
発泡性が強く泡が液体から大気に向かって無数の炭酸が吹き出ていた。
ちっちゃな唇をつけて可愛く舌をだしてペロペロと舐める。
そして落ちついたシャンパングラスを遊ばせながら豪奢な肘掛椅子にちょこんと腰をおろしている赤毛の髪の魔女も斜め前に座っていた金髪の少女ファクターに語りかけた。
無機質な大理石の卓上には監獄島……そう、今、執行人により狩りが行われている状況がリアルタイムで投影されていた。
監獄島で戦場と化している地域が立体的に浮かび上がり、現在の戦況を映し出していた。
「七聖のバルケッタ公、私は貴公が悔しがる顔を見たいだけだ」
興味なさそうなファクターがぼそりと言葉をもらした。
「それにしては、その名声も高き白銀のカラス・オリムラと貴公の秘蔵レアコレクションの大飛丸・そして、自らが加護するファクターの血を与えるとは……常軌を逸するな……」
ファクターの瞳は少し虚ろだ。
興味なさそうに卓上を見つめている、その視線は遠い、とても遠い世界を見るように。
そして視線の先……遠い世界では俺がいた。
「やれば……できるな……ひよっこ」
これはお褒めの言葉ですよねーっ!
カラスに罵られること数千回……はじめてお褒めの言葉をいただきましたーっ。
口元を器用に上げて、喜色の悪い笑みを浮かべたカラスの面持ちには少し満足げな色が浮かんでいた。
執行人を沈黙させて一時的に静寂を取り戻した古山道。
鉄格子の檻の中からは歓喜と戸惑いが交差した声が鳴り止まない。
その声の出所で古都にゃんが檻の鍵を解錠しようと奮闘している。
俺は満足そうなカラスをじっと凝視すると『どうした? 何か言いたげだな』とばかりに、俺の頭を二度つついて、ついてこいとばかりに、羽をはばたかせ、鬱蒼と緑生い茂る森の中に飛び立つ。
俺はカラスの後を追うように駆けだした。
鬱蒼とした森は『シーン』とした沈黙に支配された世界だ。
大地に根付いた湿ったコケが青々と美しい。
その鬱蒼とした薄暗さの木々の間から差し込む木漏れ日が雄大で幻想的な雰囲気を醸し出していた。
カラスが羽ばたきを止めて少し開けた空間にはえていた小ぶりの木に枝にとまった。
立ち止まった俺は近くに鎮座している岩に腰をおろすと真剣な顔でカラスを見つめる。
そして、俺の人生相談? がはじまった。
俺は真剣なのだが少しコント調であることは歯牙にもかけないでほしい。
「カラス、どうしても聞きたい事がある」
「私の……バスト……サイズは……却下だ……」
「まだ、何も言っていないだろーっ!」
「では……何事を知りたいのだ」
「話せる範囲での事の全て」
「……では、一つ……私……おまえ……おしめとめしべ……ではない」
パカンっ……思わずカラスの頭に魂のこもった渾身の突っ込みを入れてしまった。
――真剣に話しているのに天誅だ、このやろう――
予想していない不意打ちだったのだろう。
カラスが軽く白目をむき、舞い落ちる木の葉のようにひらひらとよろめき落ちていく。
地面にパタリと落ちたと同時『ぷしゅー』とガス漏れのような音に鳴る。
そしてドライアイスのような煙がカラスから大量に吹き上がった。
ぎゃぁーっ! 渾身のいやがらせかぁーっ!?
もはや嫌がらせだろう。目にしみる煙なのだーっ。
こちらも不意打ちだったのでその煙をまともに浴びてしまい目をゴシゴシとこする俺の前で信じられない光景が起こった。
カラスが人に……しかも、とても美しい少女に変わっていく。
「な、何!? ……私の変化を解くほど威力があるだと……」
少女はばったりと倒れながらも驚愕の面持ちだぞ。
「こ、これは、不思議の国のア○スが『永久脱毛しようかしら』などと言ってわき毛の処理をしていたのを目の当たりにしたぐらいショッキングな出来事だな」
――それはショッキングすぎるだろーっ!――
パサパサ……
透き通るような白い柔肌にまとわりついた砂をしなやかな動作ではらいのける。
こちらを向いてすくりと立ち上がった少女……その容姿はアイドル級! 美少女カテゴリーに属しているぞーっ!
前髪は眉の当たりでそろえられて、腰元まである大海原を連想させる深いブルーの瑠璃色の髪、黒水晶のような瞳に眉目秀麗すぎる整ったパーツ。
そして、胸のふくらみから十六歳ぐらいに見える……って一糸まとわぬ姿……おっぱいサイコーっ!
「こら、思春期のもっこり魔獣よ、目がエロいぞ……」
プリンプリンと揺れる形の良いおっぱいを何も隠そうとせずに時間が止まったように動かない俺の前までくるとニヤリと邪悪な笑みを浮かべて、平然な顔して指をチョキにすると俺の両目につきさした……ぎぁぁぁぁぁぁぁ!
「殺されないだけありがたいと思え。いつも、私の裸を隣で見ているのに、何故、いきなり心拍数があがる」
――カラスの裸を見て興奮する青少年がいたらあってみたいわ!――と心で
悪態をつくといきなり咽元をカッ切られた……ぎぁぁぁぁぁぁぁ!
「伝え忘れていた、貴様のもう一つの魂と私の意志はファクター様のお力で連結している。お主が心で描く世迷言は全て私の思考に転送される。理解したか、エロ将軍」
――も、申し訳ございません。俺が調子にのりすぎていましたぁぁぁ(涙)――
心の中で土下座である。この監獄島に漂着してから土下座ばかりだ。
もはや、有段者のテクニックを身につけているだろう。
青春真っ盛りの健康な俺が『おっぱい』と言うおびただしい魔力に心の隅々まで錯乱している事も筒抜けなのだろう。
「我が呼び名はオリムラ……ふふふっ、ゆうきよ。特別に我が名を呼ぶ事は許可してやる」
完全無欠の上から目線だ。
傷口が何事もなかったように回復していく俺を悪戯っぽく蔑むように見下してやがるぞーっ。
「ゆうき、貴公が聞きたい事……一つだけ答えてやろう……感謝しろ、全力で感謝しろ、いや、這いつくばって感謝しろ、むしろ死んで感謝しろ、そうすれば話す手間がはぶける」
からかうような笑みを浮かべると直ぐに襟をただすように真面目っぽい雰囲気を漂わせる――って『死ねってどういう事だ!』と抗議のジト目でみると、オリムラはしかたないなぁ、とばかりに肩をすぼめて腕をくんだ。
美しい裸体のまま腕を組むオリムラ。頭の先からくびれたウエストに引き締った太腿、美しい足首にいたるまで(脳内ライブラリーに画像保存中☆)……俺は本能に負けずに欲情せず、藁にもすがる気持ちがこもった瞳で凝視する。
「私と貴公は……」
「俺とおまえは……」
澄んでいても重みのあるオリムラの声音に……ゴクリ……と無意識に俺は息を呑む。
五秒の沈黙の後……大切に言葉を紡ぐように口にした。
「おしめとめしべではない」
思考を司る神経パルスよりも早くパコーン! と突っ込みを入れてしまう
俺……恐るべき反射神経だ。そのスピードは人知を超えている。全ては大飛丸のおかげだろう。
不意打ちの突っ込みに思わず頬をピクピクとひくつかせる。
オリムラが憮然とした態度をとってくる。
「痛いではないか……そんなにおしべとめしべになって結合したいのか? この粗チンが!」
棘のあるお言葉……さらに年季のはいったジト目で見てくると思いきや。
「おや? 粗チンよ、言い方が悪かったか?」
あれっ!? 突然、笑顔になりうっすらと目をほそめた。
ころころと変わる表情。
女心と秋の空状態でまるっきりこいつの思考が読めない(こちらは読まれっぱなしなのに……)
「いや、内容のベクトル方向が間違っているぞ」
俺の心の叫びを言語化して訴えたが。
オリムラは『ふぅ』と軽く嘆息すると、肩をすくめて俺を上から下まで舐めまわすように見る……鼓動が高鳴る……裸……しかもとびっきり可愛い少女にまじまじと見られては期待してしまう……ただ、高鳴る鼓動とは裏腹に本能が危険なアラートを鳴り響く。
オリムラが唇に指を当てて可愛らしく、楽しそうにクスッと微笑む。
その可愛らしさ……駄目です、もう、下半身が暴走寸前です。
下半身に手を当てようとした瞬間、オリムラの手が俺の胸元に当てられる。
バシャリ!
やはり鬼門には鬼がいましたよーっ! ……いや、追剥だから山賊だーっ。
無言で仕方なくと言った面持ちで、突然、引田天功マジックばりの鮮やかさが光る!
俺の胸元に当てた手がすっと横に動くと、あいやーっ! 俺の纏っていた黒ジャージがパパッと消えてしまったぞ。
そして、気がつくとオリムラの左手に握られている……クンクン……鼻を近づけて臭いを確かめると嫌な顔しながら着始める……って俺、ブリーフ一枚やん。
「崇高な話をしてやる……ちゃんとメガネも取れ」
俺からはぎ取った服をきるオリムラ。
理不尽にもぴしっと伸びた指が俺の鼻の頭から皮膚をなぞりながらグリグリメガネの付け根に指を当て『ポンッ』弾く。
俺のグリグリメガネはゆっくりと孤円を描き、生い茂った下草に舞い落ちる。
メガネは諦めるのでブリーフだけはご勘弁を……ブルブルと震える悲痛な心の叫び、オリムラに届けーっ。
慌てた俺は大事そうに時代錯誤極まりないアンティークなグリグリメガネを大切に拾い上げる。メガネは顔の一部なので正直なところはずしたくないぞ(顔にコンプレックスあり☆)。
おや? 悪戯チック満載の色が濃かったオリムラの相好がビックリしたような色に変わっていく。
そして一度、首を左右に振り、冷静さを装う色を濃く浮かべた。
「おほん……ゆうき、おしめとめしべになってもいいぞ」
先ほどまでの仏頂面の上に冷酷さ二百%(俺的視点……)の相好が熱をおびていくように仄かに朱色がかっている、何故か相好も綻んでいる……やはり可愛いではないか。
「おっぱい、見たければ見せてやるぞ! そしてそこの茂みで結合しよう」
何を思ったか? いきなり身体をあずけるように俺の肩にだらしなくしなだれかかる。いまさらながらだが妖艶な雰囲気でぐぐっと迫ってくるオリムラ……いきなりどうしたのだ、このジギルとハイドさん……もはやヤンデレの域なのかーっ!?
多少、心が乱れてしまったがここは一つ……
「俺の身体は……」
「……私の物」
「いや、そうじゃなくて」
「不服か」
「あの、ベクトルを戻したいのですが……」
「…………」
無言で抗議、凄く不服顔のオリムラ。
「俺は人だよな……」
素っ頓狂な上に調子はずれすぎる質問を俺は真剣に問う。
その質問をぶつけた途端、破顔していたオリムラの表情の色が変わり、嘲笑を色濃く感じる微笑みを浮かべて口をひらいた。
「ふふっ、チンコを露出する幼女好き属性持ちの一般的なエロ高校生だろう……」
「誰がちんこだしロリコンやねん!」
クレバーなオリムラ、ばかばかしいと空ぼける。
「その答えは自分で探せ、孤独なお前の心に一つだけ断言してやる。大友ゆうき、貴公は臨界の魔女・ファクター様の血を頂いたのだ。これが、何を意味するかは考えなくてよい。ただ、貴公は人を越えた存在になったのだ。不死の存在に――至極、幸運」
――不死って……もしかしてゾンビぃぃぃ、ひぃぃぃぃぃ!――
パコーン! 今度は逆にオリムラの鋭い突っ込みが脳天にクリーンヒット!
「痴れ者!あのような爛れきった下の下と一緒にするのでない! どれ程の想いを込めてファクター様が貴公に血を授けたかわからぬのか!」
怒髪天を突く! オリムラはかつてない程の憤怒で俺に迫ってきたぞーっ。
やばかったーっ! ……不意打ちだったので魂がネバーランドに飛び立っていきそうになった。
とりあえず、平身低頭でペコペコと謝ってみる。
「おほん……わかればよいのだ」
オリムラは腕を組み、得心したように頷く。
「ところで、俺の服を返してくれませんか?」
「それは、私のおっぱいが見たいと言うことか?」
「何故、おっぱいなのですかーっ?」
「貴公がおっぱいフェチな事は周知、知るところぞ」
――ええっ!何故、俺の絶対防衛線を越えたところにある高貴な秘密を!――
「ダーリン!!」
困惑する俺の背後から歓喜に満ち溢れた声が聞えるとドカッ! と背中越しに歓喜に溢れる物体が乗りかかってきたぁーっ。
「本物なのじゃ、わしのダーリンが……すっぽんぽんじゃーっ!」
思いっきり煤ばんだ頬を子猫のように甘えるように俺の首筋にこすりつけてくる。
「……つくし」
俺は右手でガシガシとつくしの頭を愛でる。
おや? オリムラの表情が曇ったような……歓喜の舞いでも舞いそうなつくしはオリムラの顔を見た途端、更に驚愕の面持ちを浮かべた。
「か、からくり姫ではないかぁ」
――からくり姫?――
プリミティブな俺の脳みそでは理解できない事態が起こっているのだろ
う……からくり姫……あんみつ姫なら知っているぞーっ。
大空は鉛色をした曇天の雲がじわりじわりと深く覆いかぶさってきている……この島の夜の帳が忍び足でそこまで来ている証拠である。
俺は仰ぎ見ようと大空を見上げた……神様がいるなら今の素直な気持ちを届けたくて……再び、つくしに出逢えた事に感謝するこの気持ちを。
てかがでしたか?
楽しんでいただけましたらうれしいです(☆∀☆)




