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虫の鳴き声

作者: 天海六花

この短編は、「即興小説トレーニング」で書いた作品を清書した作品です。


夏の終わり。今日もまだ暑い。

私は大急ぎで学校から帰ってきた。

 ジリジリと照りつける太陽。もう9月だっていうのにこの暑さ。堪らない。

 私は日陰に入って、パタパタと手で顔を仰ぐ。なんの解決にもならなかったけれど。

 私は一息吐いて、意を決して日陰から飛び出した。そして照りつける太陽に、またもや大負けする。

 駄目だ、この暑さ。一歩も動けない。


 暑さは弱まるどころかますます強くなっていくような気がしてならない。でもここで立ち止まっていても、家まで帰る事もできやしない。

 やっぱり暑さを我慢するしかない訳で。


 再び決意。そして駆け出した。


 熱いアスファルトの上をタッタタッタと駆ける私。汗は滝のように流れてくる。

 そしてようやく家へと辿り着いた。私はキッチンに飛び込み、浴びるように麦茶を駆け付け二杯。人心地ついて、もう一杯。

 それでようやく体の熱さが少しマシになった。


 大袈裟なため息を吐き、私は制服を脱ぎながら自室へ向かう。そこで鞄を投げ出し、私服へと着替えた。制服は汗でびっしょり。絞れば大量の汗が出てくるんじゃなかろうか?

 制服のシャツを一階の洗濯機へ放り込み、私は再びキッチンで麦茶をコップへ注ぐ。いったいどれだけ私は麦茶を消費しているのだ。いくら暑いからって四杯目はちょっと飲み過ぎかもしれない。でも暑いんだから仕方がない。

 コップに注いだ麦茶を手に、私はリビングのソファに腰掛ける。そのままテレビを点けて、たいして面白くもない番組を適当に流し見した。

 時間はもうすぐ六時。さすがに夜になったらもう少し暑さはマシになってくれるだろう。

 ふと、ニュース番組で手が留まった。

 京都のお寺特集が組まれている。そのニュースは、夜のお寺が映し出されていた。

 ライトアップされた金閣寺と、画面から聞こえる虫の鳴き声。

 ただそれだけで、ぐっと気温が下がったように感じられた。


 虫が鳴く。ああ、それだけで分かる。もう秋なんだなぁ。

 これから毎日日をおう毎に、日中は短くなって、セミに代わって虫が鳴き、秋の訪れを知らせてくれる。怒涛のように、秋の螺旋が舞い降りてくる。


 たったそれだけなのに、私の体の暑さは一気に冷え込んでいったような気がした。

 そして……。


 私は麦茶の一気のし過ぎでトイレの住人となった……。

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