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砂漠の街に帰還

短いです!


 智龍が俺に着いて行くことに初めは反対していた地龍も


「300年も世話をしたのじゃ。いい加減一人立ちせい!」


 という智龍の一言で了承した。

 智龍の話によると、地龍の親が当時の勇者に殺され、たまたま遺跡や地層について調べに来ていた智龍が幼い地龍をダンジョンに隠して育てたそうだ。ちなみにサラマリの中心部にある凱旋門は勇者が地龍の親を倒した時に建てたものだという。


 智龍が、旅立つ前にダンジョンの罠にかかった死体を土に埋め、罠をもう一度仕掛けておきたいと言った。引っ越す前にせめてちゃんと掃除してから出て行きたいというのと似てる。

 罠スキルを持っている俺は、死体を埋めて罠を直し、たくさん落とし穴を作った。罠を直しているうちに、踏むと矢が飛び出す仕組みや紐を切ると落下する岩など新しい罠の仕掛け方を覚えた。その他にも毒沼や武器が錆びる酸などの罠があり、人間も魔物も協力して各自、罠を直していった。最後に皆で転がる大岩の仕掛けを戻し、ひと通りダンジョンの中の罠を仕掛け終わった。

 

 龍の住処に戻ると魔物たちの中からトカゲ男が前に出て、


「俺はここに残る」


と、言った。

 同じ鱗を持つもの同士、意気投合したのかと思ったら


「砂漠の岩場にいるよりここにいるほうが安全だし、地龍に鍛えてもらいたい」


と、わりと真面目な理由を言った。

 俺が通訳して地龍に伝えた。


「我は構わん。他にも魔物でここで暮らしたいものが入れば勝手に暮らすがいい。もともとモンスター達と一緒に住んでいたのだ。問題はない」


 身体からすっかり痺れが治った地龍は、尻尾をブンブンと振り回しながら、壁の穴に入っていった。


「照れているのじゃ。よろしく頼む」


 智龍がトカゲ男に頭を下げると、両手を振って「やめてくれ」とトカゲ男が慌てた。




 地龍は穴から金色に光る宝玉を持ってきて、智龍に持たせた。

 智龍の荷物はその宝玉を入れた風呂敷一つだった。

 智龍は一度得た知識を忘れないと地龍が言っていた。


「智龍よ、長い間世話になった。いつでも帰ってくるが良い」


「うむ。達者でな」


 300年、共に暮らした龍たちの別れはあっさりとしていた。

 長生きだから、また会えるだろう。

地龍とトカゲ男を残し、仕掛けた罠を踏まぬよう外に出た。




帰りは智龍の風の魔法でデザートサラマンダーの走る速度を上げ、3時間ほどでサラマリの街の前まで辿り着いた。普通に人間の足でダンジョンからサラマリまで行くと2日はかかるというからかなり早い。夜だったため、寒いかと思ったがメイサが風の魔法で壁を作っていたし、クズ屋の主人がカイロ(温かい布袋と言っていた)を持っていたのでそこまで寒くなかった。


魔物たちとサラマリの街の前で別れた。


「岩場に帰ったら、地龍のところに行きたい者とユキト殿について行きたい者を募っておこう」


 顎ひげのゴブリンはそう言うと、デザートサラマンダーの上に乗り、手を振った。

 丸い月の明かりが一仕事を終えた魔物たちの背中に当たっていた。

魔物たちが砂の丘の向こうに消えるまで見送り、街に入った。

智龍が衛兵に止められそうになったが、知り合いだというとすんなりと押してくれた。


「お前らは街の英雄だからな!」


 そう言って、衛兵はバンバン肩を叩いた。


 サラマリの街は深夜だというのに、喧騒に包まれ、そこらじゅうでどんちゃん騒ぎが起こっていた。

智龍は珍しそうに街の建物を見て


「少し調査が必要なようじゃ」

 

と、酔っぱらいの中に入っていった。

 俺達に気づいた者達は酒や食べ物を勧めてきたが、疲れていて一刻も早くベッドで眠りたいので、断った。

 あくびをすると、つられるように宿屋の女主人も薬屋の主人もクズ屋の主人も、あくびをした。


「地龍を追い返したんだから、胸を張っていいんだよ!」


 メイサは言ったが、めんどくさかったので


「明日、ギルドに報酬を取りに行くよ」


と言い残し、俺たち4人はそれぞれの寝床に向かった。


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