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魔力の使い方

 短剣を拾い、穴に入り、男のしていたベルトで手を後ろで縛り上げる。

 男の顔は腫れ上がり、うんともすんとも言わなかった。心臓は動いているようなので気絶しているだけのようだ。

 防具を外し、男が穿いていたズボンで足を縛り、違う落とし穴に移す。


ポケットに冒険者カードが入っていたので確認すると男はジェイハンという名で、レベル16の盗賊だった。

 男の持ち物は金が銀貨2枚と道家が5枚。しけてんなぁ。

 防具は大きすぎて俺のサイズには合わなかった。もちろん俺より小さいアイズにも。


 とにかく、牢屋の鉄格子の扉が開いた。

入口まで行き、外を見るとデカいトカゲが隣の家の側で寝ている。

隣の家には人の影が幾つか見て取れた。


「ここがどこだかわかる?」


「いや、わからないわ」


どこだか方向もわからないまま、砂漠を逃げ出すのは危険だ。それに見つかったら、すぐにあのトカゲに追いかけられて、連れ戻されそうだ。それか、殺されるか。

 危険な橋は渡らない。なにせ俺はレベル2になったばかりだ。この世界がレベルによってどのくらい強さが決まるのかしらないが、自分が弱いってことくらいはわかる。


 一人目がうまくいったからか、このまま牢屋に戻り、誰かが来るまで待つことにした。

誰か来なくても、男が意識を取り戻した時にここがどこだか聞き出せる。

そういえば、さっき男の顔を見た時にアイズが驚いていたな。


「アイズ、さっきこの男を見て驚いてたみたいだけど、知ってるのか?」


「いや、詳しくは知らないんだけど。たぶん冒険者よ。ギルドで見たことがある」


「こいつが言ってたサラマリってのは?」


「私が働いていた冒険者ギルドがある街よ。サールシュタットでは3番目に大きな街ね」


「サールシュタットって?」


「え?この大陸よ」


「ああ、大陸の名前かぁ。東の大陸か?」


「世界地図で言えば一番に西の大陸よ」


テスに描いてもらった世界地図を思い出す。確か直角三角形のような大陸だ。北には北の魔女の島がある。そこに転移する予定だったのに・・・。


 鉄格子の扉を閉め、カギをポケットに入れる。

 あとは扉の向こうを意識しつつ、誰かが来るのを待つだけ。暇だ。


 レベルが上がり、魔力も1しかないがとりあえず、上がったので落とし穴に薄い砂の蓋が出来るか試してみた。

 イメージして穴に向かって手をかざす。

 何も起こらない。


「下手ねー」


「じゃアイズ、やってみてよ」


「あたし、罠のスキル持ってないもん」


「なあ、魔力ってどうやって使うんだ?俺の世界で魔法なんてなかったんだよ」


「魔法なの?スキルの一種だと思うんだけど。わかった。冒険者ギルドのお姉さんが初心者に魔力を教えてあげる。いい?」


と、アイズが俺の手に自分の手を合わせるように近づける。

すると、触れてもいないのに手が押される感覚があった。


「はい、これが魔力。やってみて」


「そう言われてもなぁ」


とりあえず、自分の手の平に集中し、アイズの手を押してみる。

普通に手と手が触れる。

あれ?


「ちょっと、何してんの?」


アイズが俺の手のひらに人差し指を立て押してくる。爪が立ってるのか些か痛い。


「痛い痛い」


なんだ?その嫌がらせは。

アイズは俺から指を離し、


「今、人差し指が当たってたところを意識して、そこから力が出るような感じでやってみて」


なるほど、意識しやすいようにか。

アイズの爪の跡が残っている部分に集中して、力を込める。


「腕力じゃなくて、そこから腕の中に魔力の管が通っているイメージで…そう」


言われた通りにイメージしてみると、ちょっと手のひらが温かくなってくる。

イメージの管が腕を通り、肩を抜け脇腹から心臓。心臓から腹。腹から腰。腰から足。足の付根からつま先と、どんどん通り抜けていく感覚があった。身体の左から右へ行き、頭を通って帰ってくる。

 すると、手のひらに見えない野球ボールのような感触があり、それでアイズの手を押した。

 今度は手が触れる前に、アイズの手が押された。


「やった!できた!」


「私の教えがいいんだわ」


「ああ、ありがとう」


「ふふふ、もっと崇めてもいいわよ」


「いや、あの寝相を見てしまうと無理だ」


「寝相?」


今朝は首を絞められて殺されるところだった。

このまま、この牢屋にいれば、この栗色の髪の乙女に殺されてしまう。


そんなことより、魔力を使えるようになったようだ。良かった。これで、俺もこの世界の住人になった気がする。

 ま、魔力が使えたところで、何かのスキルが増えるようなことはなかったんだけどね。


 とりあえず、穴に向かって、砂の蓋が出来るイメージで手をかざす。

 フワッと周囲の地面の砂が舞い上がり、落とし穴に蓋が出来る。

 触ると何の感触もないように通り過ぎる。


 できた!これで、穴さえ掘れれば、落とし穴の罠が張れる。

 男が入っている穴にも手をかざし、砂の蓋をしようとすると、周囲の砂がフワッと浮き上がるものの、蓋にはならなかった。


「魔力切れじゃない?ユキトは魔力、どれくらいあるの?」


「1だけど」


「あ、そう(笑)ま、それなら5分もあれば回復するから、ちょっと待ってからやってみたら」


「わかった」


なんかちょっとバカにされてない?

ま、いいか。レベルが上がったら、もっといろんなことができるようになるだろう。


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