既に遅せー企画Ⅱ『魔法の歌姫とバレンタインっ!?』
てな訳で。又々企画話でお送りします今回は?
あの万次郎さんの。
"粒々甘苦バレンタイン企画"に乗っかりまして。
とある男女のちょっぴり不思議な履かない物語っ!
始まり始まりっ。
カナデーディヴ。たしかそんな名称をした国。北緯165度に位置するガラリヤーダ大陸の最南端に位置する比較的暖かな住心地が良い地域だ。
今現在俺は、そこのガラリヤーダ総てを統括するカナデーデ神殿に祭られた玉座の間に、詩べの歌姫と呼ばれるお姫様と御同行し、 この国を救った英雄として誓いの器を手にしている所だ。
この俺が英雄とは――数年前のあの冴えなかった俺からしてみればまったく持って夢でも見ているのかと腰を抜かすだろうがな。
うん。何故このような場所に立ち神殿を司る王の前にいるのかという疑問は…まぁ…あの頃の冴えなかった時代に遡るのだが。
無論――今現在俺の隣で微笑むコイツも…
「ねえ――トモミチ、さっきからなに心ここにあらずなの?」
トモミチ、聞いてる?―――
――トモミチってば?
―――――――――
―――――――
―トモミチ―
トモミチ―
◆
「知道っ!」
「はっ!?」
「ったくよぅ又々いつもの妄想か?…で?どうだ?――なかなかお目にかかれない代物だっただろうっ?」
「ったく…」
んな妙な声で囀るなよ。こちとら生徒会に呼び出され、誇り高い我が校の自覚がたりないだのなんだのって散々だったのによぅ…。
コイツは反省の色も微塵もないが、つーか意味わかってるんか?
「はぁ…ったく…"よっすぃ〜"。アンタと居るとほんっと退屈しねーよ。マジいい趣味してっぜww」
「なははぁ〜。それっ誉め言葉か?」
「あ〜はいはい。勝手に言ってろ!」
俺はため息混じりな一言を目の前の親友? じゃなく悪友に呼び掛ける。
一体どんな経緯で俺達はこんな場所に立たされているのか。
「うぅっ…吹きっさらしの風が地肌に突き刺さるぜ」
立春とはいえ、時々吹き抜ける風が首筋からヒンヤリと俺の体温を奪って行く。
流石に2月は未だ真冬であり……ていうか何故こんな状況下で吹きっさらしなベランダに俺達は立たされているのか。そしてこの俺達は一体何者なのか。
まぁ…この今まで俺と言う人物を最初から追求すればきりがないからな。
こんな事態になったのは彼此数時間前まで遡る。
◆
「ほれっ…又々入って来たぞ? ちっ。なんだ有名なバレー大会のエース様ご来場かよっ…お嬢様来いってんだ、なぁ〜トモミチクンよぉ〜」
ナニを眺めているのか。鼻の下をだらしなくのばしながら手すりを掴む両手を器用に握り直す。
そこから下方を一望出来る位置まで腰を引っ掛ける。
視線上にとある地点を辞任し、まるで目標物を自動照準に捕らえ、ロックオンするかの如く斜め下方を向き一点に集中――そこから更に"ニヘラ"と口元を緩ませるのだ。
うっわ"バカだ"――こいつ重度の"エロ野郎"だと。
まぁそんな悲痛な痛々しい思考は一旦停止させながら、コイツ事"あらゆるトラブルメーカー野郎。吉沢 多香は歪ませた口元を今度はパクパクと謎の挙動不審に陥るのだ。
無理もない。我が学園ぜい一の視力を持つので有名な問題の彼女の一番弟子。
荒井正美に睨みを利かされたのだからww
その結果は当然。生徒会員であり噂のエース様でもある時彩早苗が放つ。"パトリオット"じゃなく。必殺のバレーボールの餌食になり。 未だ奴の真後から白い目線を向ける俺事。池田知道を巻き込みながら撃墜され。現在に至る。
◇◆
「ねえ。姐御〜…。あのヘタレ野郎二人。もうそろそろ反省してるんじゃ――」
「詰めが甘いわよ尚美っ! この際決定的に私達女子の更衣室を覗いたお仕置きをもっとして」
「そんな事じゃなくてっ、いい加減あなたの妹。知美がプレゼント待ってるじゃない? だからさぁ〜…。きりのいい所であの"バカ"二人を解放して早く出かけようよ」
未だ俺の隣側で数時間前での出来事の興奮が覚めないで騒ぎ立てている多香を横目にスルーし、今現在俺が立たされている二年二組の教室があるベランダ。
そのベランダの大きな窓を背中に付け、更に壁を隔てた内側。只今机を挟みながら意味ありげな会話を始める彼女等に耳を傾ける。
たしか。明日――だったよな。俺もこんな場所で何時までも油売ってないで早く準備をしなくちゃ。
あいつとの約束…、あの昨年の事件――忘れもしない今日と同じ日以来俺はあいつの為に少しでも尽くすと心に誓ったのだから。
俺は今日。あいつのたった一人の掛け替えのない妹。時彩知美に最後の約束を果たしにこの教室から早苗に悟られないようこの校舎を後にした。
◇
真冬特有のツンと冷めきった風に赤いマフラーを首元まで巻きながら足速に街路樹のあるストリートを駆け抜ける。
吐く息が白く。正午から夕方に差し掛かるこの時間帯は既に気温は下がって来ているのか。
かじかんだ手袋ごしの両手をグレーのコートの懐に入れる。
とても寒い。目的のある物を探しながら、たどり着いたのは街外れにある古びた書店だ。
(駅前は既に売り切れ――ショッピング街にある数ヶ所の書店も完売。一足遅かったか…残るは、期待薄だけどな)
「なあなあ。もう多分ここも売ってねえんじゃ…そんなに拘る事しねえでさぁ〜…。諦めて今回は何処か適当な売店で普通のお菓子やチョコでもいいんじゃ?」
ずっと校舎を出てから走りっ放しなのか。俺の後を必死に着いて来た多香が両肩を激しく上下させながら駆け寄る。
「拘るとかそんなんじゃねぇ〜よ。今日発売の筈の最終巻をアイツはじっと楽しみに待ってんだぞ」
そう――俺と昔から幼なじみの双子の姉妹の妹。知美。まったく持って読書のどの字もない無縁な俺に何時も目を輝かせて聞かされていた冒険活劇の物語を。
つね日頃から俺とアイツは近所が近いのもあいまり幼少の頃から良くつるんでは遊んでいた。
しかし、男と女…やはり年を重ねる事にそれぞれが気を遣い。何時しかあまり交流の無い日々を迎え。
そんな矢先。"アイツ"は俺に愛想つかれるのを恐れてか。ある決心をした。
それがあの忌まわしきバレンタインの日。アイツが必死に拵えたお菓子を胸に俺と会う約束をする。
しかし、そんな俺はバカだった――俺を信じて時計台の見える丘に一人待たせ。最近良くつるむ楽しい仲間達と彼女との約束をすっかり忘れてカラオケの真っ最中だった。
そしてあの悲劇は起こったのだ。想いを寄せたこんな冴えない俺に愛想つかせてアイツは――
知美は、あの丘のシンボルタワーから身を投げ…その結果。意識不明の重体。
その悲劇を招いた俺に言えた事じゃないが。毎月アイツが楽しみにしているあるライトノベルを――「カナデーデ戦記」をアイツの病棟で読んで聞かせてあげる。
それがアイツの純粋な心を踏み躙ったこの俺が唯一出来る罪滅ぼしかもしれない。
そして、今日のこの日。20XX年2月14日の特別な日に偶然にも最後の巻が発売され。それを気に俺はアイツに――アイツの心に俺の想いを総て告白すると誓ったのだから。
◇
「知美――特別な最終巻な。実はどこも売ってなかったんだよ」
ツン――と鼻に突き刺さるアルコール臭が漂うここ。地元の総合病院。そこの売店付近で付き合ってくれた多香と別れる。
俺にわざわざ気を使ってくれているのか。
右手人差し指と中指を器用に突き立て行って来いと言わんばかりに合図を促す。
ちゃっかりしていて案外確り者かも知れない悪友を横目に俺は四階病棟四二号室へ向かう為にエレベーターに乗り込む。
微弱な浮遊感の中。申し訳ない気持ちが胸一杯に支配していた。 人知れずじっと病室で楽しみに待っている知美にどう言い訳するかと。
しかし――そのようなマイナス思考はあの知美が寝ているであろう病室に立ち寄った瞬間微塵にも砕け散ったのだ。
「うそ――だろ!?」
「知道くん。ずっと待っていたよ」
生命維持装置特有の一定周期の電子的な音源だけが支配する特別病室。
確かに今現在知美はこの病室のベットに寝かされている筈だ。
「随分と見ない内に変わったね。少し太った?」
何気ない笑顔で少しハニカムように覗く仕草を俺に向ける。その度に背中まで程よく伸びた茶髪が揺れる。
間違いない。俺が良く知る知美だ。
しかし、多少違う所は彼女が着ている淡いグリーンを主調とした何処かの民族衣装にも見える服装くらいだろう。
「つーかお前っ! まさか?」
「詳しい話は後! ここから先はあなた自身が選択するんだよ。まず一つ! もしこのまま私と共に着いて別世界に行くか――」
――えっ!
「いやちょっと待ってくれよ知美っ」
想い出した。この違和感のある彼女の服装は紛れもなく魔装。そして、この最終巻が手に入るのではなく。今正しくここから先を描く俺がこの物語の終盤を切り開く意味も――
「ああっ。随分待たせちまったな知美。そんじゃ行こうぜ! あの世界を…そして今現在のこの世界を救い出せるのは俺達だから」
「うん。じゃ行くよ。知道っ」
20XX年2月14日――昨年の時彩 知美に続き。今年のこの意味のある日に――俺事。池田 知道もこの世界から消滅した…。
◆
周りを群がる人混みのその奥に眩ゆくスポットライトが照らされている――この世界はある事情により人々は闇から逃れるかの如く彼女が奏でる歌に酔い痴れる。
とある見知らぬ街中の一角にもうけた酒場なのか。 この世界に突如舞い降りた希望の天使の如く歌姫の声が響く。
赤や紫に染められたスポットの中を独自の程よく伸びた茶髪を揺らしながら。 知美は歌を歌う。
その脇には常に彼女と共に旅をするメンバー。俺と同じく異世界から流れて来た人物事。佐々木紅と。
そしてこの俺も混じるメンバーだ。
どうしてあの本の世界に俺達は来てしまったのか。 知美が教えてくれた冒険の旅を自身が体験するとは夢にも思わないが――
ここや世界をつなぎあわせる歪みから救う目的はあの本と同じであり。
こうしてあの現実世界から選ばれた俺達の壮大なドラマが始まるのは事実なのだから。
ふと。希望の歌を奏でる知美の横顔を眺めつつ。あの選択をけして後悔はしていないと――今度こそ。あの彼女を守り抜くと再び心に誓った。
――END
かなり無理がある意味不明的な感じになってしまいましたこの話は…もう短期間の内で暇な時間を作っては執筆と(汗)
かなりストーリー的に突貫工事要素満載なんですけどね。
もしこのまま連載作品まで持って行くとなると。以前短編で投稿しました『かぼちゃ』と同じく"プロローグ"になりますねっ。
その内。他作品の方が安定いたしましたら。やってみたい気もします。
てな訳で。読者の皆様方――この作品を含む短編作品での連載は見送りという事でっ!?
ではっ(^3^)/