彼女と俺と2人の出会い
「…誰、あんた?」
雪が降るだけあって、やはり寒い。
身体も唇も声も震えている。
だが震えるのは寒いからという訳では無かった。
弱りきっているのだ。
自分の身体だからそのぐらいはわかる。
だが、聞かずにはいられない。
彼女がわざわざ話しかけてきたのだから。
「あんた…?ルルはあなたを迎えに来たんだよ?」
「っ…は?…ルル?」
身体を起こしながら、彼女の顔をしっかり凝らして見てみる。
金髪に青い瞳。
「うん、私はルルだよ。」
ああ、こいつも法律で縛られた奴なのか。
だから誰かに寄生虫みたいに引っ付いて、生きるつもりなんだ。
でも、残念だったな。
俺は法律に縛られて絶望して死のうとしているんだ。
寄生するなら別の奴にするんだったな。
「どっか行けよ…」
「え?」
俺はゆっくりと再び横たわり、目を閉じながら言った。
「…俺は、死にたいんだよ。頼むからどっか行ってくれよ。」
しばらく静かだった。
本当に彼女がどっかに行ってしまったかのように。
どっかに行ったのかな?と思い、ふと目を開いてみると
「あ、起きた!」
目と鼻先に彼女の顔があった。
「…ん、なななぁーっ!?」
俺は思わず、飛び起きて彼女と距離を取った。
しかし、思うように立ち上がれず尻餅をつく。
そんな俺の顔は火照り、鼓動がかなり早くなっていた。
「死にたいなんて、嘘だね。」
「はぁ…?」
彼女は顔を覗く為に屈んでいたらしく、ゆっくり立ち上がり
俺に手を差し出した。
「ボスは言ってたよ?死にたいって口にする人は嘘つきだって。」
「う、嘘じゃねぇよ!」
絶望したんだ、世界に。
悲観したんだ、未来に。
死にたくなるぐらいに酷い世界なんだ。
逆に希望を持てる奴なんて、楽観視し過ぎてる。
「俺は…死にたいんだよ…」
もう一度呟くと彼女が近づいて来てまた傘を傾けてきた。
「怖かったの?」
彼女の顔を見ると、心配そうにしている。
本当、何なんだこいつは。
「死にたいなんて、言わないで。怖いなら怖いって言って?」
鼻の奥が少し熱くなった。
何故かは解らないが、涙が出そうになる。
しばらく俯いたままになり、涙を堪えた。
そんな、しんみりとした空気を彼女はいきなり変えた。
「ね、ボスの所に行こうよ!ボスは優しいから、あなたも友達にしてくれるよ?」
「はぁ?ぼ、ボス?」
空気が一瞬でがらりと変わり、呆然とする俺の顔は
さぞ、気持ち悪かっただろう。
差し出した手をさらに差し出して、彼女は無邪気な笑顔を見せた。
「ボスなら守ってくれるよ、あなたが怖がるものから。」
周囲は全て敵、そんな絶望的な世界。
そのボスとやらは本当に守ってくれるのか?
ルルってこの女は、本当に信じてもいいのか?
いや…。
どうせ、死ぬつもりだったんだ。
期待を裏切られて殺されても構わない。
なら、面白可笑しく人生を終わらせようじゃないか。
俺は、彼女…ルルの手を握って頷いた。
「あ、そうだ。あなたの名前は?」
手を引かれながら立ち上がり、ルルに手を握られたまま答えた。
「俺は、八木文明って言うんだ。」
ルルは笑顔で俺の名を呟くと「案内するね」と言い、傘を折りたたみながら歩きだした。
雪はいつの間にか止んでいたようだ。




