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帆布に描くぎじゅつ  作者: Aa_おにぎり
二話

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14/28

#14

街中で独特な臭いと嫌な予感を感じた冬歌はある男の後を追っていた。

その男は茶髪に赤色のメッシュの入れた最近の若い男と言った様子でよく風紀とかで怒られそうなタイプの染め方をしていたが、最近の東京ではあまり違和感はなかった。



ただ、彼から死臭に近い匂いがしなければ……。




新宿で見つけたその男の後を追いかける事一〇分、その男は新宿の繁華街に入る。

新宿は戦後の大発展で生まれた所謂新繁華街と呼ばれる場所で、今では庶民のよく通う店が立ち並んでいた。

銀座や浅草などの店は客層を華族などの金持ちに焦点を合わせ、新宿や池袋の新繁華街はそれ以外の客層を狙った商売をしていた。そしてそう言った場所には必ず風俗と言った店も並んでおり、今日も昼間から客引きをして居るのが伺えた。


そんな人混みの中を冬歌はその匂いのする男を追いかけていると、その男は裏路地に入った。

冬歌もそれを追いかけて居るとそのまま裏路地を臭いを辿って探し回って居ると、遠くから怯えるような声が聞こえて来た。


『や、やめてくれ!!せめて命だけは……!!』


その声を聞き、冬歌は銃を持ってその声のした方に向かって走る。

そして建物の角を飛び出すと、そこには鞄を抱えて地面にへたり込む一人の小太りの男と、その前に立つ赤メッシュの男が立っていた。


「そこで何をして居る!!」


咄嗟に銃を構えて叫ぶと、その赤メッシュの男は一瞬驚いた素振りを見せた。すかさず、そこで私は警戒をしながら銃を向けて言う。


「両手をあげて、地面に伏せなさい」


すると、赤メッシュの男は一瞬だけ自分を見た後、一瞬で目の前から消えた。


「っ?!(何処に行った?!)」


咄嗟に耳に意識を向けると、一瞬だけ空気の擦れる音が上から聞こえた。


「上かっ!!」


そして咄嗟に冬歌は上を見て有り余る体力を使って建物の外階段を登り始める。

下では腰を抜かした男がへたり込んで困惑した様子で動けずにいた。




咄嗟の判断で階段を上り切ると、ちょうど反対側のビルに先ほどの赤メッシュの男が立っていた。丁度向こうを向いており、顔は見えなかった。すると咄嗟にその男に向かって冬歌は叫ぶ。


「お前は……連続焼死体事件の犯人か?」


そう聞くと、その男は困惑した様子を見せながら答える。


「どう言う事だい?焼死体事件?何を言って居るんだ?」


惚ける男に向かって、冬歌は追求する。


「二ヶ月前ほどまで起こっていた右派を唱えた人物達が焼死体となって発見された事件だ。手口は全て術師の発火術式による物だ」

「それと俺に何の関係が?」


そう言って惚ける男に対し、冬歌は言う。


「では、その右手に隠し持って居る物は何だ?」

「……」


そう言い、ゆっくりと動いて居る右手のことを指摘すると、その男はすぐさま行動に移った。


「やれやれ、これに気づくとは……なぁっ!!」


するとその瞬間、男は持っていた札を一枚取り出すとそれを冬歌に向けて投げつけた。すると、冬歌は拳銃を撃った。刻印済の.500S&Wマグナム弾が発射し、硬化術を施された札を破壊すると共に赤メッシュの男に向かって飛んでいったが、赤メッシュの男はその弾丸を避けていた。


「っ!!この距離で避けるか……」

「生憎と、動体視力は良い方なんでね……」


そう言い、此方を振り向いた男を見て冬歌は一瞬息が止まりかけた。正確には、その男の瞳を見て……


「お前…その眼は……!!」


その特徴的な鉤十字の柄目をした右眼を見て、思わず固まってしまって居るとその男は今度こそ驚いた様子で冬歌を見た。


「おやおや、まさかこの目のことを知って居るなてね……これはちょっと予想外だ」


そう言うとその男は目元を細め、完全の戦闘態勢に移行した。対する冬歌も即座に意識を引き戻すとそのまま銃を構える。

対術師用に強力な弾丸を装填するこの拳銃を持って居るのだ。此処で仕留める他あるまい。特に、鉤十字の柄目を持った者は…何としても私が殺さなければ……


「(まさかこんな所で出会うとは……!!)」


内心、そう愚痴りつつ冬歌はビルの柵に足を掛けて男のいる方に飛ぶ。

そして銃を両手で構えながら引き金を弾く。


ダンダンッ!!


それはそれは恐ろしいくらいデカい銃声が響くかと思ったが、銃声はそれほどでも無く。至って普通くらいの拳銃弾の音が銃口から漏れていた。それを見ながら男は言う。


「やっぱりあんた術師か……」


すると、その男は冬歌を見ながら持っていた札を取り出して前に出す。

すると縦に三枚の赤いガラスの様な板が札を中心に現れると冬歌の発射した弾丸を最後の三枚目にヒビの入った状態で防いでいた。


「ちっ、この威力を抑え込むか……」

「うおっ、危ねっ!!最大出力でこの威力かよ……伊達な霊力じゃねぇな」


そう言うと、その男は展開していた障壁術式を解くとそのまま札は燃え尽きていた。

そして、冬歌と同じビルで相対するとその男は言う。


「お前、俺の事を知って居ると言うことはアメリカの犬か?それとも狼八代の手下か?」

「……」

「返答なしか……まぁ良いや」


すると、その男は冬歌を見てこう言った。


「生憎と俺も忙しいからな。また会おうぜ」


すると、その男はビルの屋上から飛び降りていった。冬歌は慌ててその落ちた方に走ると、そこにあの男の姿は無かった。


「逃げられたか……」


冬歌は悔しがる様に呟くと、携帯で心陽に連絡を入れていた。






====






「はぁ…危ねぇ……」


慌ててビルの屋上から逃げて拠点のクルーザーの停泊してある河岸に慌てて戻って来た。

すると、その様子を見ていたのかクワトがクルーザーに乗ってきた宇野を見て呆れた様に言う。


「また、何かやった?」


すると、そんなクワトの問いに宇野は答える。


「……いや、ちょっとした問題が起こった…。全員を呼べるか?」


宇野の尋常じゃない焦りに何があったのだろうと今までの経験から判断したクワトは、即座に同じくクルーザーにいた数人の色とりどりの髪を持った少年少女が現れて、船内の部屋に集まっていた。

合計八人居る船内の部屋で、宇野が口を開く。


「……さっき、情報屋を追い詰めた時に俺たちを追う術師に出くわした」

「「「っ!!」」」


宇野から出た言葉に全員が驚いて居るとさらに彼は続ける。


「腕利きの術師だ。最高出力で作った三重の障壁術式が寸前まで破壊された」

「そこまでの腕利きなら…アメリカが国外で動くとは思わないから……狼八代家の者の可能性が高いわね……」


宇野から聞く実力に赤紫の髪を持った青年が答えると、緑髪の少女が言う。


「まさか、此処に来て狼八代家の関係者と出くわすと来たか……」

「あぁ、済まない。俺もまさかこんな事になるとは思っていなかった……」


そう言うと、頭を下げた宇野に全員が慰める様に励ましの言葉をかけていた。


「気にしなくて良い。今回の一件は仕方ない」

「そうそう、偶々なんだから仕方ないよ。次を頑張れば良いし」

「まだ、此処はバレていないから良いよ」


そう言うと、今度は青髪をした少女が冷たくあしらう様に宇野に言う。


「さっさと仕事お終わらせるわよ。早く彼女の所在を明らかにする。ファーターから情報を受け取って居るとはいえ、見つかるとは限らないのよ」

「えぇ、分かって居るよ」


そう言うと、彼らはボートの机に置かれた写真を見た。そこには雪色のボブヘアの狐耳を持つ幼女が写っていた。


「家族を早く見つけないと……」


最後にクワトがそう言うと、全員が頷いていた。






====






例の男の顔と特徴を思い返しながら、冬歌は心陽の運転する車で考え事をする。


「(あの鉤十字の赤い眼……間違いない)」


冬歌は思わず顔が青ざめて気絶してしまいそうになるが、深刻に物事を考える。

すると心陽がそんな冬歌に声をかける。


「お嬢様、御気分は……」

「えぇ、大丈夫。心配要らないわ。それよりも……」


変装具を外し、かつてない程焦りの色を見せて居る冬歌に心陽は聞こえて居るのかは分からないが、言われた事を冬歌に伝える。


「お嬢様、件の男から情報は聞き出しました。あの男はどうやら左翼団体の幹部のスケジュールを持ち逃げしようとした所を助けられた様です」

「そう……」


すると心陽は冬歌にさらに情報を伝える。


「そして、その左翼団体の会合が…その……」

「言って頂戴」


冬歌は心陽に促す様に言うと、心陽は冬歌に一旦息を整えると言った。


「その左翼団体の幹部会合は、お嬢様が狸道様と参加される花火大会の会場近くで行われると……」

「……」


心陽の話を聞き、冬歌はしばし沈黙が流れる。その沈黙が心陽に取ってはかつてない程恐ろしい何かを感じた。


この空気を出せると言うことはやはり冬歌は狼八代家の人間なのだと認識できる。


術師としての能力はトラウマから余り強い術は発動できないが、それでも狼八代家の跡を継ぐには十分な素質がある。




そう感じて居ると、冬歌は暫く間を置いてしっかり考えた後、心陽に言う。


「心陽…」

「はい、お嬢様」


すると、冬歌は心陽にある事を伝えると、心陽は柄にも無く若干の驚きの表情を見せてしまった。

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