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(三)
日曜日の午後。天気のいい公園のベンチで座って母娘が来るのを待つ。
探偵社の報告で顔は知っているからすぐわかる。
カバンに入れたサヤを見てペットボトルのお茶を飲んで時間を潰す。
「今日は駄目かな」
ダメ元で来たから落胆は少ない。空がオレンジ色に染まり始めた。
「来た」
右側の入口からヨチヨチ歩きの娘を連れた女が来た。
彼女は私より二つ年上。上品な柄のワンピースを着ている。
私は立ち上がって歩く。
わざとらしく転んでサエを落とす。
「あっ」
彼女が小さく叫んで急ぎ足で駆け寄る。
「大丈夫ですか」
彼女の声に「すみません。大丈夫です」と答えて落ちた化粧品をカバンに入れる。
佳奈が黙ってサエを私に差し出した。
「あっ、ありがとうね」
佳奈に礼を言っても返事をしなかった。
「すみません。うっかりしていて。ありがとうございました」
彼女に礼を言って私は早歩きで公園を後にした。
「ごめんね、サエ。痛くなかった?」
カバンに入れたサエの頭を撫でた。
別に彼女に恨みはない。佳奈は彼女に似ていた。
電車に乗って買い物をして帰宅。夕食をしながらサエと話した。
「あの子がサエの妹よ。佳奈っていうの。もうすぐしたら連れて来るからね」
腹違いの妹──
言葉にすると不快だが、サエに妹がいるのを実感して嬉しかった。




